051:地獄の英雄
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―大阪城ホール・控え室―
圭吾は敦也がチャンピオンになったので、自分も挨拶してやるかと思って控え室にやって来て居たのである。
「まさかカウンターじゃなくて、ローキックで倒し切るなんてな…………お前らしく無い試合だったな」
「勝てばなんだって良いんだよ。お前も早く日本チャンピオンになれよ…………まぁ。俺は挑戦しないけどな」
「次の試合を勝てば、王座決定戦だよ!! そこで日本チャンプになってから、世界に出てやるよ!!」
圭吾と敦也はライバル関係にあるので、握手をして圭吾も早くチャンピオンになる様に急かされているのである。
―東京都・倉知ジム―
倉知ジムでは、いつもの様にトレーニングをしているのであるが、黒羽の世界タイトルマッチまで1ヶ月を切っていてイライラのピークを迎え始めている。
「圭吾は、女を連れて大阪なんだろ? アイツはチャンピオンなんかにならねぇんじゃねぇのか!!」
「人の事は良いから、自分の事をせい!! お主には、このジム初めてのタイトルを持って来てもらうからな!!」
黒羽は圭吾の文句を言っているのであるが、倉知会長に自分の心配をしておけと言って扱き始めるのである。
加藤と深澤はタイトルマッチのポスターを見て、ある人間の試合がセミファイナルになっている事に気がつく。
「黒羽さんの試合のセミファイナルに、南野の試合が組まれてるけど…………中2ヶ月で試合をするのか!?」
「それならジムの方から、世界タイトルマッチのセミファイナルを任せてほしいって言われたんじゃい…………前の試合は快勝だった為にダメージが無いらしいぞ」
「そんなのは、どうでも良いんだよ!! どんな試合をしようが、俺様の試合の前では薄れてしまうんだからな!!」
黒羽は南野の試合がセミファイナルになっていても、記憶には残らなくなってしまうから可哀想だと言い始めた。
そんな傲慢な発言に対して、加藤と深澤は負ければ良いのにと心の隅で思ってしまっているのである。
―カザフスタン・エルコーファジム―
カザフスタンのエルコーファジムに、黒羽の世界タイトルマッチを行う対戦相手の〈ゲンディ=ゴフロキン〉が、トレーニングをしているがゲンディは41歳の高齢である。
「はい、ワンツー!! ローキックからボディ!!」
ゲンディは41歳にして〈IMA〉と〈IMF〉のベルトを持っており、かつては5階級を制覇した伝説のチャンピオンである。
そのチャンピオンはトレーナーと黙々とトレーニングをして汗を流しているのであるが、その姿はまさしくチャレンジャーの様な姿をしている。
「この後は、どうするんだ?」
「両親の墓参りですね…………」
「そうか。命日は今日だったか…………両親が死んでから、28年も経つんだな」
トレーニングを終えた2人は、引き上げているのであるがゲンディは墓参りに向かう事になるが、ゲンディの両親は13歳の時にアゼルバイジャンの内戦に巻き込まれ死亡した。
その為にゲンディは生活していく為に、裏格闘技を始めてから正式の格闘技を始めると、みるみるうちに頭角を表して5階級を制覇するくらいのチャンピオンになっていた。
(私が、生きていくには拳しか無かった…………今回も同じく、ジャパニーズを拳で沈めるしか無いんだ)
ゲンディ自身は温厚な性格なので、暴力などには向かないはずだったが生きていく為には、長所を生かして仕事をする必要があり、格闘技で食べていくしか無いのである。
ゲンディはフードを被ってから、ランニングを再開するのであるが市街地に入ると、少年や少女がゲンディのところにやって来て自分にも格闘技を教えて欲しいというのである。
「格闘家にはなるもんじゃ無い。人を殴り蹴るなんてのは、気持ちのいいもんじゃ無い…………」
「そんなぁ!! ゲンディさんは、とってもカッコイイから格闘家になりたいんだよ!!」
「私がカッコイイか? それなら少しでも続けて来た事が報われるかも知れないな…………」
ゲンディは自分が人を殴ったり蹴ったりするのは、気持ちの良いものでは無くて、わざわざやる様なモノでは無いと子供たちに言うのであるが、子供たちはゲンディを尊敬する。
ゲンディは、次の日の朝からランニングを行なってタイトルを守る為に全身全霊を尽くしてトレーニングを行う、ジムに顔を出すとスパーリング相手が用意されていた。
「こっちは、俺の後輩がやってるジムからスパーリングをしに来てもらった人間だ…………階級は、ヘビー級で体格差はあると思うが、これくらいしないとダメだな」
「そうですよ。私は歳なんですから、少しでも油断をしていれば確実に負けてしまう…………力を貸してもらおう」
ゲンディに用意されたスパーリング相手は、階級が5つも上のヘビー級の人間だった、しかしゲンディは自分の年齢を考えて無理をしないとタイトルは守れないと言うのである。




