004:自分らしい技
こちらのTwitterの、フォローもよろしくお願いします。
↓
https://mobile.twitter.com/yusaki_noa
―東京都・亀有・倉知ジム―
圭吾はミット打ちをしているのであるが、倉知から圭吾の弱点についての話を受ける、その弱点とは相手が警戒する様な〈必殺技〉だと倉知は言うのである。
「黒羽で言えば〈ラッシュ〉が得意技じゃが…………小僧には必殺技はあるのか?」
「俺の得意技は…………言わば〈獣スタイル〉が、俺の必殺技だと思うんですが!!」
「獣スタイルじゃと? 聞いた事がないが…………それじゃあ、実際に見せてもらおうじゃないか」
「実践でやるのは久しぶりなんですが、やってみようと思います…………ますは〈熊の構え〉からです!!」
必殺技がないと言われた圭吾は、1つだけ自分がやれる事はあると倉知に言う、その必殺技とは〈獣スタイル〉と言うらしく倉知も聞いた事が無いと口角を上げる。
リングの上で倉知が構えると、圭吾は〈熊の構え〉から行くと言って腕のガードを高く上げて、熊が立ち上がった時のような威圧感を醸し出しているのである。
(熊の構えっちゅうのは、どんなもんなんじゃろか)
圭吾はガードを固めたまま動かないので、倉知の方が痺れを切らして少しづつ近寄る事になったのであるが、1歩強く踏み込んだ瞬間に圭吾は初めて動いた。
すると目にも止まらない速さで、顔の前に構えたミットに1撃を入れてから、足っと叫んでからローキックを入れた。
「そういう事じゃったか。熊の様に急所を的確に狙った攻撃というわけか…………獲物が射程範囲に入るまでは、動かずにガードを行っているのも分かった」
「これなら自分でも戦えるんじゃ無いでしょうか…………どうですか? 会長の言った必殺技になりますかね?」
「まだまだ完成度は低いが、鍛えて行けば必殺技になるのも近いじゃろうな…………よし。さっき小僧の〈プロ入りテスト〉の申請を行って来たぞ!!」
圭吾を鍛えて行けば確実に強くやると倉知は思った、そして圭吾にプロ入りテストに登録しておいた事を伝える。
その話を聞いた圭吾は、グッと拳を握って頑張ってプロになってやると身構えているのである。
「俺らの時は緊張して腹を下したもんだよなぁ…………」
「そうそう。あの独特な雰囲気は、今でも覚えてるからな」
「そうなんですか? そんなに緊張するもんなんですかね」
プロテストを控えている圭吾のところに、加藤と深澤がやって来て自分たちの時の体験談を生々しく離している。
その話を聞いて圭吾は緊張し始めると、倉知がやって来て加藤と深澤に余計な事をするなと杖で叩くのである。
「とにかくじゃ!! 時間はないからのぉ…………全力で穴埋めをして行くぞ!!」
「はい!!」
そこからプロテストまでの3週間は鬼の様なトレーニングを行って行くのである、それによって当初の体重〈63キログラム〉から〈59キログラム〉まで痩せた。
「よし!! 良い体になったじゃないか、これならプロテストは上手くいきそうじゃな…………黒羽よ!! お主は暇そうじゃからな、小僧の付き添いをして来い!!」
「なんでだよ!! なんで、俺が行かなきゃ…………」
「お主の試合を断っても良いんじゃぞ? それに最近は、根性が腐ってるからな…………思い出して来い!!」
倉知は圭吾の付き添いに黒羽を指名するのであるが、黒羽は文句を言って行きたくないと駄々をこねるのである。
しかし倉知は杖で殴りながら、最近は試合がなくて性根が腐って来ているので昔を思い出して来いという。
「なんで、俺がテメェの付き添いをしなきゃダメなんだよ」
「申し訳ないっすね。黒羽さんの時は、プロテストは緊張したりしたんですか? 加藤さんと深澤さんは、緊張して腹まで下したって言ってたんですけど?」
「俺をアイツらと同じにするんじゃねぇよ…………俺様の時は、強い奴なんて居なかったからなぁ」
圭吾は会場に着くまで黒羽のプロテストの話を聞く、しかし俺様感が強くてなんの勉強にもならなかったのである。
そしてプロテスト会場の〈さいたまスーパーアリーナ〉に到着したのである、そこには多くの練習生が居て皆んな緊張している表情をしていて、圭吾も緊張する。
「お前にもチャンスがあるかもしれんな…………他の人間が緊張している中で、圭吾が緊張して居なかったらチャンスがあるってこったぁ」
「そういう事ですか!! 完全に緊張するのは無理ですが、全力を出せる様にしますよ…………プロになります!!」
圭吾は黒羽になんだかんだで励まされて、自分にもチャンスがある事を感じてやる気になっているのである。
圭吾は選手控え室の方に向かって、黒羽の方は2つの班に分かれて居て、1つ目の班が試合をしているので先回りして見学に行ったのである。
「あ〜ぁ。こんなに下手でプロになれんのか?」
「黒羽くんじゃないか。今日は休日で、見に来たのかい?」
「おぉ。服部さんじゃねぇか…………俺らのジムの人間が受けるから、その付き添いで来てんだよ」
黒羽が下手くそな練習生たちのスパーを見ていると、後ろからタバコにスーツを着た髭面の男がやって来た。
その男は総合格闘技の記者をしている〈服部 道夫》だったのである。