030:世界の人間
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―東京都・ベルサール高田馬場―
南野は順位を入れ替える為の試合をしているが、対戦相手のトリッキーな動きに翻弄されてしまっていた。
ボクシングではあり得ない様な動きに、対応が遅れてしまって南野は最終ラウンドまで引きずってしまった。
「今のままでは、判定で負けてしまうぞ…………次のラウンドで、逆転はできるのか?」
「問題ありませんね」
それだけを言うと南野はリングに向かっていく、そしてゴングが鳴り田辺はトドメを刺そうと向かっていくのである。
田辺はローキックからのジャンピングパンチを打とうとするのであるが、それを避けてボディと顎にパンチを入れる。
(ぐは!? さっきまでは反応できていなかったのに、なんでカウンターを入れられるんだ…………)
田辺は何かの間違えだと思って、トリッキー戦法を辞めずに続けていくのであるが、確実にトリッキーに慣れた南野の前にカウンターを喰らいまくりボロボロになる。
そして最後は南野の渾身のアッパーを顎にクリーンヒットさせて、パウンドを取らせる前にレフェリーが試合を止めて南野の順位が3位に上がったのである。
―東京都・倉知ジム―
倉知ジムでは圭吾がトレーニングをしているが、試合まで1ヶ月を切っていてトレーニングが激しさを増すのである。
ランニングからのミット打ちを行って、少しのインターバルを取っていると加藤たちがやって来る。
「そういえば…………敦也の東洋デビュー戦が、格闘技専門チャンネルでやるって言ってたぞ」
「そうなんですか!? それは気になる試合だ…………今日は、もう上がって試合を見る事にします!!」
圭吾たちがトレーニングをしている日に、敦也の東洋デビュー戦が格闘技チャンネルでやると言うのである。
それを聞いた圭吾は見たいと思って、自分がハードワーク気味である事も考慮して、試合を見る事にしたのである。
―フィリピン・セブ島スタジアム―
セブ島スタジアムに集まった観衆は、約2万人でデビュー戦でありながら10位に入るかの大事な一戦である。
その為に敦也は気合が入っていて、相手のセブ島出身の選手《ジェイス=ヘクター》は日本の無名選手だと言って、少しだけ下に見ている節があると解説者たちは語る。
『青コーナー!! 体重〈134ポンド〉身長〈5.79フィート〉…………京都ジム所属。〈西郷 敦也〉!!』
『赤コーナー!! 体重〈134ポンド〉身長〈5.85フィート〉…………セブジム所属。〈ジェイス=ヘクター〉!!』
2人が入場するとジェイスのホームであると言う事で、明らかに感性の違いが聞いて分かるところではあるが、それすらも聞こえないと言うレベルで敦也は集中している。
「良いか!! 相手は10位とは言えど、東洋では10人に入るくらいのレベルだ…………だが、きちんと攻撃を当てていけばなんの問題も無いからな!!」
「了解です。何の不安もありません…………やって来た事を出すだけなので!!」
敦也は何の不安もないからと言って気合が入っていて、トレーナーも一緒に気合が入っている様子が見えて、面白い試合になると専門家たちは予想しながら見ているのである。
「相手は日本の新人だ…………何にも怖がる事はない。次の試合の調整だと思ってやれ」
「ボスが、こんな試合を組むとは思わなかった…………相手も少しはやる様だし、良い調整にはなるだろうな」
ジェイス陣営は5位の人間との入れ替え戦が控えているので、その調整の為の試合だと思っている。
両者はリングの中央で説明を受けてから、グラブタッチをして両コーナーに下がっていきゴングを待つ、そしてゴングが鳴ると両者は相手を威嚇しながらマットの上を回る。
(コイツのスタイルは、カウンターを狙って来る…………こっちのガードと打ち終わりを気にすれば問題ない)
敦也がカウンターの名手である事を知っているので、攻撃し終わりなどを警戒して攻め込んでいくのである。
それに対して敦也は落ち着いた様子で、ジェイスにカウンターを入れ込む為に腕を振っていく、グルグルッと回るジェイスに対して敦也は蹴りを入れて歪な円に変える。
(コイツ、蹴りを混ぜて来てコーナーに追い込もうとして来てるな…………そんな浅はかな考えが通るかよ!!)
(この男は、俺の考えが分かっているんだな…………それなら、少し変えれば問題ない!!)
(え? 何が起きた…………)
ジェイスは敦也の考えを見透かす様に、わざと自分の方から円を崩して流れを引き渡さない様にして来た、それに対して敦也は左ジャブで感覚を掴んでから右ストレートを打つ。
ジェイスのガードの隙間を通って、敦也の右手はジェイスの顎を撃ち抜く、すると膝が崩れて敦也にパウンドを取らせてしまったのである。




