010:熊、倒れる
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―試合前日・大田区総合体育館―
圭吾は怒りのままに控え室に入ると、静かにアップをしているのであるが、そこに黒羽たち3人が応援しに来た。
「今の小僧は、対戦相手以外は目についておらん…………これが裏目に出るかは、ワシにも分からんがな」
「もしも裏目に出れば、俺が殴り飛ばしてやるよ…………デビュー戦は、陽気に勝ったんだろ? 調子は悪くないんじゃないのか?」
「調子だけなら明らかに、向こうよりは良いわい…………しかしだ!! ちゃんと格闘技をやればの話じゃよ」
加藤たちは圭吾が怒り狂っているのを見て、少し背筋がゾクッとしたが黒羽だけは圭吾を褒めるのである。
格闘技というのは喧嘩ではないが、相手を殴り蹴るという点では頭のネジを取らないければいけない、そこが取れるか取れないかが格闘家とそれ以外を決めるという。
「とにかくだ!! 始まってみないと分からん…………決勝まで行かないと、奴は俺様の前座を務めれないからな」
「お主も身体を絞っておけよ!! さもなくば、今回の防衛戦を取り消してやるからのぉ!!」
黒羽たちは先に席について前座の試合を見ている、そして東日本新人王トーナメントの第1回戦が始まる。
圭吾の方は怒りの表情で入場するのであるが、ボンバー大谷の方は両手を広げて客を煽る様に入場するのである。
『青コーナー!! 体重〈132ポンド〉身長〈5.79フィート〉…………倉知ジム所属。《東 圭吾》!!』
『赤コーナー!! 体重〈132ポンド〉身長〈5.66フィート〉…………新日本ジム所属。《ボンバー大谷》!!』
観客たちは新しい総合格闘技選手たちに惜しみない拍手を行うのであり、ボンバー大谷は余裕そうな顔をしている。
それに対して圭吾の方は鬼の形相を続けていて、ボンバー大谷の煽りにも反応しない状態である。
「良いか!! 相手はラフな戦闘スタイルじゃ…………それに付き合う必要はないぞ!! 小僧のやり方で、相手が間違っていたという事を証明して来い!!」
「はい!!」
圭吾は倉知会長からアドバイスをもらってから、リングの中央に向かっていき、ゴングの合図を待つのである。
そしてゴングが鳴るとボンバー大谷は、手を前に出してグータッチの挨拶を求めてくるのである、それに応える為に圭吾も手を出した瞬間に、ボンバー大谷は顔面を殴って来た。
(バーカ!! こんなのはヒールが良く使うて手だって有名じゃねぇか…………コイツは素人だな!!)
ボンバー大谷はスポーツマンシップに反して、圭吾の顔面を殴って後退させた、その圭吾に対して追い打ちをかけようとするのであるが、圭吾の目がチラッと見えて震える。
(ど、どうなってんだよ!? あの寒気がする様な目は何なんだよ…………クソ。近づけば確実にやられてたな)
(コイツは、ここまでクソ野郎なんだな…………それなら、それなりの戦い方をしてやるよ!!)
圭吾の殺気に当てられたボンバー大谷は、少しビビッて近づけない状況になって来ているのである。
そして圭吾の方は最初から本気でやってやると言って、獣スタイルの〈熊の構え〉で迎え撃つのである。
(これが例の一撃必殺の構えか…………その対策は考えてあるんだよ!!)
圭吾の構えを直ぐにボンバー大谷は理解した、圭吾の構えに対して対処を考えているとボンバー大谷は思っている。
ボンバー大谷は間合いを走って詰めていく、すると例の通りに圭吾は鋭い右のストレートを打ち込む、その右ストレートに対してボンバー大谷は肘を固めて防いだ。
「なに!?」
(どうだ!! テメェの拳は、確かに鋭く重いパンチではあるが…………真っ直ぐ過ぎるんだよ!!)
ボンバー大谷は圭吾の拳を避けると、大振りだったのでカウンターを入れられて圭吾は後ろに尻餅をつく。
そこからテイクダウンを取って、ボンバー大谷はグラウンドパンチを打ち込んでいる、それを辛うじて圭吾は顔面を守っているのである。
(ここから、どうするんだっけか…………そうだ。片方の腕をとって固めてやれば良いか!!)
圭吾はボンバー大谷の右腕を捕まえると両足を使って下から抜け出して、腕十字固めを行ったのである。
直ぐにタップすると思ったのであるが、左腕を上手く使って最後まで決まらずに済んでいた。
(このまま続けても、俺には決めきれないな…………これなら立って戦った方がチャンスがあるな!!)
圭吾は寝ていても勝てないと思って立ち上がる、それに合わせて休憩する様にボンバー大谷はゆっくりと立ち上がる。
圭吾は熊の構えが通用しないわけがないと、思いながら構え直してぶつかり合おうとするのであるが、ゴングが鳴って第1ラウンドが終了する。
「アイツ、熊の構えの練習して来てますよ!! あんなタイミングでカウンターを打たれるなんて…………」
「小汚いが実力に関しては、確かなモノを持っているらしいのぉ…………こっちもギアを上げようじゃないか」
圭吾と倉知会長は、ボンバー大谷の実力を認めた上でギアを上げていこうと作戦を立てるのである。




