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9話 コン力説っ!、フィロソファーになる為の苦労とはっ!

 「いくわよ……はあっ!」

 「ファイヤー・ボールっ!」


 弓術士の女の放った矢と魔術師ギルドの男が放ったファイヤー・ボールの魔法による火球がコンへと襲い掛かる。


 時間差で放たれた二つの攻撃……。


 コンはまず女性の放った矢を紙一重かみひとえのところで身を傾けて躱したのだったが、その少し体勢を崩したところに魔術師ギルドの男のファイヤー・ボールによる3つの火球がそれぞれ別の軌道と方向から襲い掛かる。


 先程自身の灼熱の恒星メテオ・フレイムが受け止められたことを考慮しなるべく多角的な攻撃を仕掛けるよう意識して放たれたのだろう。


 計算された魔術師ギルドの男の攻撃にコンはやむかく後方へと飛んで3つの火球を躱したのだが、その着地の瞬間を狙って今度は武器を構えた近接戦闘メインの仲間達が襲い掛かってくる。


 「……っ!、かわされたっ!」

 「なら今度は俺達の出番だぜっ!。……うおぉりゃぁぁぁーーーっ!」


 コンが着地した瞬間を見計らって今度は戦士の男が自慢の斧を振り上げ襲い掛かってくる……。


 しかしジェイスの剣に比べて重量が重い斧による攻撃の速度では隙を突いたとしてもコンを捉えることはできず……。


 “ズドォォーーーーンっ!”


 「……っ!。く……くそっ!、……ぐはぁぁっ!」


 やはり速度の遅い戦士の男の攻撃ではコンを捉えきれず、その斧はただ空を切って大きな衝撃音と共に地面へと振り下ろされてしまった。


 攻撃をかわされた戦士の男は慌てて次の行動に移ろうとしたのだったが、重量のある両手持ちの斧をまたそう簡単に振り上げることはできず、その前方へと傾いて斧の振り下ろされた地面へと向けれられている顔面に向かってコンの凄まじい威力の膝蹴りが叩き込まれる。


 その衝撃に耐え切れず斧から手を放して傾けていた男の身体が真っ直ぐになるように浮き上がっていく……。


 そして身体の前側を無防備な状態で晒してしまったところに今度はその腹部へとコンは渾身の力で拳を打ち放ち……。


 「ぐはぁぁぁぁーーーっ!」


 “バアァァァーーーンッ!”


 コンの拳打けんだを腹部に受けた戦士の男は先程のジェイスと同じように大きく吹っ飛ばされて教会の横側の壁へと叩き付けられる……。


 男は口から血反吐を吐いてぐったりとした様子で落下した床へと倒れ込んで行ってしまっていった。


 どうやら今の腹部への一撃で内臓にまで大きなダメージを負いそのまま命を落としてしまったようだ。


 「お……おぉぉーーーいっ!」

 「………」

 「くそがぁぁぁーーーっ!」

 「……っ!、待ちなさないっ!、冷静さを欠いては駄目よっ!」


 ジェイスに続いて戦士の男が倒されたショックで他の仲間達はパニックに陥ってしまっていた。


 恐怖でその場から動けずにいる者がほとんどだったのだが、何人かは怒りを抑えらず冷静さを失ってしまい、なかばやけになってしまったようにコンへと襲い掛かってくる。


 そんな襲い来る剣や斧……そして槍など様々武器を持った者達に対しコンは……。


 「……っ!、ぐはぁぁぁーーーっ!」


 それぞれの武器を持って全力でコンへ襲い来る者達だったが、その全てがこれまでのジェイスや戦士の男と同じように攻撃仕掛けようとした直後……もしくはかわされた直後にカウンターを合わせられあっという間に教会の壁へと叩き付けられ瀕死の状態へと追いやられてしまった。


 次々とやられていく仲間の姿にジェイスに代わって懸命に指示を出しいた弓術士の女もついにその気力が尽きてしまったのか、それ以上仲間達に声を掛けることができずにいた。


 「そ、そんな……」


 「なんという軽やかな身のこなし……そして強烈な打撃……。相手の攻撃も完全に見切っているようですし……コンのそのフィロソファーとは武闘家としての心得も持ち合わせている者のことをいうのですか」


 「いえ。確かにマスターはフィロソファーとして様々な職業の極めていらっしゃいますか剣士や武闘家……主に近接戦闘をメインとする前衛職には就いたことはなくそのレベルはどれも揃ってのはずです」


 「レベルが0……?。よく分かりませんが心得がないのならば何故あの者達を相手に武術であれだけ圧倒できているのですか」


 「それはマスターが自身の近接戦闘に関するステータスを魔力によって上昇させる肉体強化フィジカル・エンチャント能力アビリティを発動させているからです」


 「フィジカル・エンチャント……ですか……」


 「はい。マスターの肉体強化フィジカル・エンチャント能力値アビリティ・レベルはMAXの99・・。これによりマスターはその近接戦闘に関するステータス……STRストレングスDEXデクステリティVITバイタリティーAGIアジリティーの値を一時的に99・・ポイント上昇させることができるのですっ!。……その分肉体強化フィジカル・エンチャント能力アビリティを発動している間のMPの消費量が大きく……、フィロソファーであるマスターでも最大までステータスをプラスした状態で戦えるのは1分程度でしょうが……」


 「ス……ストレングスにデクステリティ……」


 「因みにその最大までステータスをプラスしたマスターとまともに近接戦闘で戦うには少なくとも騎士ナイト格闘士ファイターぐらいの職に就いていないと厳しいですよ。拳神ゴッド・ハンドを相手にタイマンで勝利したことだってあるんですから。まぁ、その時は私や他の……ってあれ?、どんな名前と姿だったのか思い出せないけどとにかく私よりもっと強力な力を持った精霊も召喚してフィロソファーとしての他の力もフルに活用してからタイマンとはちょっと言えないかもしれませんけど……」


 「ゴ……ゴッド・ハンド……。神の手とは豪く大そうな名ですがあなた達の世界の言葉は私にはまだよく理解できません……。ですが自身の魔力を肉体の強化に使えているというのであればこの世界では十分武闘家としての心得があるといえるでしょう。時間制限あるというのはまた別の話ですが……」


 自身のマスターであるコンが如何に優れた力を持っているかをサラに対して力説するフォンシェイ……。


 サラはそんなフォンシェイの話す言葉の意味もよく理解できていなかったようだが、コンが武術の心得を持っていることには漠然ばくぜんとではあるが納得できたようだ。


 しかしそんな話を知らない……最も聞かされたところでまるで理解できないだろうが……。


 ジェイスの仲間達は皆コンの想像を絶する力の前に成す術がなく呆然と立ち尽くすしかなかった。


 「くっ……一体どうすれば……」

 「いつまでもビビってんじゃねぇっ!」

 「……っ!、ジェイスっ!」


 完全に戦意を喪失し掛かっていた仲間達の元に治癒術士の回復を受けたジェイスが舞い戻って来た。


 リーダーの戦線への復帰に少しは気力を取り戻し始めた仲間達だったが……。


 「良かったっ!、ジェイスっ!。もうさっきのダメージは大丈夫なのねっ!」

 「ああ……聖職者ギルドの方のおかげでなんとかな……」

 「だけどジェイス……。あの死霊レイズデッドのガキさっきまでとは比べ物にならねぇ強さになってて俺達じゃまるで歯が立たねぇぜ……。もうここは退却した方が……」

 「馬鹿言えっ!。相手があのサラとはいえ俺達はギルマスの制止を押し切って……その上ギルドの肩書きを利用して魔術師ギルドと聖職者ギルドのメンバーにまでパーティに参加して貰ってここまでやって来たんだ……。にも関わらず逃げ帰ったりしてみろ……。いくら温厚なギルマスでも即刻俺達のことをクビしちまうぞっ!」

 「そ……そうでしたね……。俺なんてギルマスに啖呵たんかを切ってまでジェイスさん達についてきたのに……」

 「だから俺達も死ぬ覚悟で戦わなきゃならねぇんだ……。例え命が助かっても一度落ちた名声はそう簡単には取り戻せねぇ……。残りの人生を無様ぶざまに過ごすよりここで死んだ方がまだマシってもんだ……」

 「ジェイス……」


 先程コンに手痛い一撃を食らわされながらもジェイスの闘志は消えることなくむしろ燃え上がってるように感じられた。


 逆境に立たされて初めてその真価をハッキリするタイプなのだろうか……。


 しかし如何に闘志を燃やしたところで今のコンにはジェイス達など取るに足りない相手だったようで、リーダーのジェイスが戻って来た姿を見ながらも何一つ動じず余裕のある言葉を口にしていた。

 

 「初めに蹴り飛ばした奴が戻ってきた……。やっぱり相手の回復役のメンバーを先に倒さないと駄目かな……。でもこの程度の実力の奴等が相手なら別にそんなこと気にしなくても……」

 「おい……そこの死霊レイズデッドのガキ……」

 「……っ!、な、何だ……」

 「お前本当に精霊術士エレメンタラーなのか……。何故精霊を呼び出す力を持つくせにこれだけ体術にも長けてやがる……」

 「違う……っ!」

 「……っ!」

 「精霊術士エレメンタラーじゃない……僕の……」

 「………」

 「僕のゲーム内での職業はその精霊術士エレメンタラーのレベルを500、祈祷師シャーマンのレベルを300まで上げて就くことのできる召喚士サマナーっ!」

 「えっ……」

 「霊術士れいじゅつしのレベルを400、霊媒師ミーディアムのレベルを400まで上げて就くことのできる降霊士コンジュラーっ!」

 「………」

 「その召喚士サマナー降霊士コンジュラー合計レベルを1500まで上げて就くことのできる預言者プロフェットっ!」

 「それから魔術師まじゅつしのレベルを500、呪術師カーズ・ウィザードのレベルを300まで上げて就くことのできる黒魔導士くろまどうしっ!」

 「………」

 「同じく魔術師まじゅつしのレベルを500、幻術士イリュージョニストのレベルを300まで上げて就くことのできる青魔導士あおまどうしっ!」

 「また同じく魔術師まじゅつしのレベルを500、気功士チーゴンのレベルを300まで上げて就くことのできる青魔導士あおまどうしっ!」

 「………」

 「そして黒魔導士くろまどうし青魔導士あおまどうし青魔導士あおまどうしの合計レベルを1800まで上げて就くことのできる大魔導士だいまどうしっ!」

 「………」

 「最後に預言者プロフェット大魔導士だいまどうしの合計レベルを1500まで上げてようやく就くことのできる伝説の職業……フィロソファーだっ!」


 「……なんだ……フィロソファーって……」


 生前自身がNEVER FORGET YOUR SOULのゲーム内でどれだけ苦労してフィロソファーの職に就くことができたかジェイス達に力説するコン……。


 しかしそんなコンの時代のゲームのことなどジェイス達には知る由もない……。


 そんなジェイス達の呆然とした反応が教会内を何とも言えない虚しさで包み込んでいた……。



 


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