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69話 礼拝堂へと辿り着いたサラ

 「ここがアヴィーンガルデの城の礼拝堂……。城内の施設として建造されたものにしては随分と規模の大きい造りですね。終焉霊魂しゅうえんれいこんを蘇らせる為の儀式を行うにも持ってこいの場所と言えるでしょう。もしジルエッタがここで儀式を行うつもりであるならばあのステンドグラスの礼拝台の前にホムンクルスの器を用意しているはず……」


 コンが懸命にジルエッタを足止めしているおかげもありサラは無事アヴィーンガルデの城の東の端にある礼拝堂へと辿り着いていた。


 礼拝堂の扉を潜ったサラの目にまず入って来たのは最奥まで100メートル以上、横幅も50メートル以上あり、天井までの高さも20メートルはある巨大な空間に礼拝用の長椅子が100列程並べられた壮大な光景と、最奥にある巨大な窓に施された色鮮やかな花の紋章のステンドグラスであった。


 しかし今のサラにそのような光景に目を奪われている暇はなく、まずはジルエッタがしゅうえんれいこん)を蘇らせる為の儀式を行う準備をしているかどうかを確認する為にステンドグラスの前に置かれた礼拝台へと向かって行った。


 そしてその礼拝台の上にはサラがコンを蘇らせる時に使用したものと同じ、髪の毛も生えてなく、性別を区別をするような特徴もない、静かに眠っているように目をつむった裸の人体、ホムンクルスの器が仰向けに寝かされた状態で置かれていた。


 このホムンクルスの器こそが終焉霊魂しゅうえんれいこんたましいを宿す為の肉体となり、夜空瑠那よるぞらるなをこの時代に蘇らせる為の最後のピースとなるものなのだが……。


 「良かった……。やはりジルエッタはここで終焉霊魂しゅうえんれいこんを蘇らせる為の儀式を行うつもりだったのですね。既に礼拝堂内の霊力の浄化も終わり濁りのない正の霊力が満ちている……。ですが儀式を行う前にまずは彼女が用意した術式を私のものへと書き換えなければ……」


 ホムンクルスの器が置いてあるのを確認したサラはその肉体のちょうど胸部と腹部の間の位置に手をかざした。


 するとその地点を中心に肉体から礼拝台の周囲の床の範囲にまるで古代の象形文字のようなものによって描かれた赤みのあるオレンジ色に発光する魔法陣が浮かび上がっていった。


 どうやらその魔法陣がジルエッタがホムンクルスの器に施した術式であるようだが……。


 「流石はジルエッタ……。私のものとは少し異なる部分がありますが見事に構築された術式です。これならば多少術式を書き換えるだけで済みそうですね」


 ジルエッタが構築した術式の魔法陣にサラが自身の魔力を送り込むと多少その図形が変化すると共にオレンジ色に発光する文字の列がサラを象徴するような青白く発光するものへと変わっていった。


 どうやらそれが儀式を行う術者がサラへと移行した証でもあるらしい。


 その後術式の書き換えを終えたサラはコンから預かっていた夜空瑠那よるぞらるなの魂を呼び出す為の霊媒となる流星のペンダントを取り出し、ホムンクルスの器の頭をそっと持ち上げて優しくその首へと掛けていった。


 そしてサラは魂と肉体の中和剤となるポーションをゆっくりとその口へと注いでいき、儀式を行う準備を全て終えるとローブの帯から取り出した懐中時計を片手にこの地に月の光によって注がれる霊力が満ちる時刻となるのをジッと待っていた。


 「儀式を始める時刻まで後1分と37秒……。困難だとは思いますがどうにかそれまでジルエッタがここに来ないよう足止めしておいてください……コン」


 懐中時計が刻む時刻を見ながらコンが無事ジルエッタを足止めしていてくれることを願うサラ。


 コンのことを信頼しているとはいえ相手はあのジルエッタだ。


 如何に心の芯が強いサラといえど湧き出る不安を抑えることはできず、その時計の針の刻む1秒1秒をまるで巨大な大岩を引いて歩く1歩のように重く感じてしまっていただろう。


 だがここまで来れば目的の達成まであと少しであるということも事実……。


 果たしてサラは無事コンと交わした夜空瑠那よるぞらるなと再会させるという約束を無事果たすことができるのだろうか。



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