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37話 悪霊から解放されるアレク達

 「………」


 「ううっ……とうとう完全に追い詰められちゃったわよ……グナーデさん」


 サラがグリーミーに悪霊の憑依を解かせる時間を稼ぐ為これまで上手く屋敷内を逃走していたグナーデとマーラだったが、ついに前後の廊下を何十人者の追っ手に包囲され逃げ場を失ってしまった。


 この状況から再び逃走を図るには相手を傷付けることもやむを得ない覚悟で強行的に突破するしかないが……。


 「どうする……マーラ。こうなってはこの者達を傷付ける覚悟でこの場の突破を図るか……」


 この状況を打破するにはまた聖なる光を浴びせるしかない……。


 そう言わんばかりにグナーデは自身の剣の柄に手をやり鞘から抜く素振りをマーラへと見せつけた。


 しかしこの場に自身の弟であるアレクのいるマーラからの返事は……。


 「駄目っ!。あの中にはまだ私の弟のアレクがいるのよ……。グナーデさんには悪いけど私アレクが傷つくところを見るのだけはどうしても……」


 「……分かった。ならばもう逃走は諦めて敵に投降しよう。私達にも悪霊を憑依するつもりなら命を奪われる心配はないだろう。後はコンとフォンシェイ達が時間を稼いでくれている間にサラがグリーミーを倒してくれることを期待しよう」


 「グナーデさん……」


 マーラの悲しげな表情と言葉にグナーデはそっと剣に掛けた手を放した。


 そんなグナーデの優しさに深い感銘を受けたマーラだったのだが……。


 「やっぱり駄目……」


 「……っ!」


 「やっぱり投降なんかしちゃ駄目……グナーデさん。もし敵に捕まって悪霊を憑依させられたらそれこそアレク達を助けられなくなっちゃう……。それにグナーデさんまで敵の配下となってサラさん達と戦わせるわけにはいかないっ!。もうアレクのことは気にしなくていいからまたあの光を放って……グナーデさんっ!」


 「マーラ……分かっ……」


 “グッ……グオォォォォッ!”


 「……っ!、な……なんだ……っ!」


 自分の身内であるというわけではないというのにアレクの為敵にその身を預けようとするグナーデ……。


 そのどこまでも慈悲深い心に感銘を受けたマーラは直前で自身の考えを改め、弟を傷付けることへの覚悟が決まった旨をグナーデへと伝えた。


 マーラの真剣な眼差しにその決意と覚悟は本物であると悟ったグナーデは再び剣に手を掛け鞘の隙間から聖なる光を撃ち放とうとしたのだが、その直後どういうわけか周り囲んでいた者達が突然唸り声を上げて苦しみ出してしまった。


 苦しみ出した弟の姿を見てマーラは思わず駆け寄って行ってしまうのだったが……。


 「アレクっ!」


 「……っ!、待つんだっ!、マーラっ!。……くそっ!」


 “グオォォッ……”


 「……っ!」


 “………”


 「……っ!、こ……これは……」


 「アレクっ!」


 アレクの元へと飛び出したマーラの後を追おうとするグナーデ。


 しかしマーラがアレクの元に辿り着く前に突然皆の苦しみが収まり、それと同時に意識を失ったように地面へと倒れ込んで行ってしまった。


 その倒れ込んで行くアレクの元へとすぐさま駆け付け受け止めるマーラだったが、抱き抱えられたマーラの腕の中でアレクは眠るように意識を失っていた。


 どうやら他の地面へと倒れ込んだ者達も同様命に別状はないようだが、一体彼等の身に何が起こったというのだろうか。


 「アレクっ!。ねぇっ!、起きてっ!」


 「………」


 「駄目だわ……ねぇっ!、アレクは大丈夫なのっ!、グナーデさんっ!」


 「待ってくれ、マーラ。……どうやら命に別状はなさそうだ。それどころか悪霊の憑依も完全に解けている。恐らく他の者達も同様だ」


 「えっ……それじゃあ……」


 「ああ……サラが無事グリーミーに勝利して憑依を解かせたのだろう。急いでサラの元に行って確認するぞ」


 「待って……。私はアレクの看病をしないと……。近くの部屋のベットに寝かせるからグナーデさんは先にサラさんのところに行ってて」


 「……分かった。だが念の為に部屋に鍵を掛けて敵に気付かれないようジッとしているのだぞ」


 「……分かったわ」


 こうしてマーラと悪霊の憑依が解けたアレクを残してグナーデはサラの元へと向かって行った。


 そしてアレク達の憑依が解けたということはコンやフォンシェイ達が相手をしている者達も同様で……。


 「な……なんだ……あとちょっとで捕まっちまうところだったのに突然こいつらが倒れちまったぞ……」


 「これは……恐らくサラさんが敵を撃ち破ったのでしょうっ!。急いでサラさんのところに向かいますよ、店長マスターっ!、コンチビっ!」


 「あ……ああ……」


 “コンッ!”


 寸でのところで敵に包囲された状況から助かったフォンシェイ達も倒れ込んだ者達の無事を確認しコン達の元へと向かって行った。


 後はコンが相手をしているレイサムだけだが……。


 “グオォォォォッ!”


 「くっ……とうとう鉄の正方体アイアン・キューブを破られてしまった……。また閉じ込めたいけど果たして同じ手段が通用するか……」


 “グッ……グオォォォォッ!”


 「……っ!、な……なんだ……っ!」


 鉄の正方体アイアン・キューブを打ち破り再びコンへと迫るレイサムだったが、グナーデ達の元にいたアレク達同様レイサムも悪霊の憑依から解放され、意識を失い地面へと落下して行った。


 それを見たコンは慌ててレイサムを受け止め、ゆっくりと地面へと下ろして門の壁へともたれ掛からせた。


 そしてレイサムの無事を確認したコンも勿論急いでサラの元へと向かって行くのだったが……。



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