27話 グナーデからの問い掛け
「大丈夫ですか……っ!、コンっ!」
「う……うん……なんとか。でも急に体が重くなってなんだか息苦しい……一体この光は何なの……」
グナーデの地面に突き立てた剣から放たれる光によりコン達に襲い掛かっていたレイス達は全て消滅してしまった。
その光によって視界が照らされそれぞれの無事を確認する皆であったが、そんな中脅威は去ったはずなのに何故かサラはコンの心配をしていた。
どうやら他の者は無事な様子であるのに対しコンだけがこのグナーデの放った光により何らかの影響を受けているようだったが……。
「恐らくこれは聖属性の魔力によって放たれる聖なる光……。聖属性の魔力にあは負の霊力を払うだけでなくこの世の異質である存在を排除する力を持っているのです。本来死者である死霊のあなたには非常に耐え難いもののはず……」
「そ……そっか……。ゲームではいえば僕は今闇属性を持つモンスターやアンデッドの種族に近い存在ってことだものね……。そりゃ聖属性の力に弱いはずだよ……。(でも自分のことを異質って言われるとやっぱりちょっと悲しい気持ちになっちゃうな……)」
「(これ程の聖属性の魔力を放つとはやはりグナーデは聖職者ギルドの……少なくとも司教以上の位に就いていてもおかしくない力を持っているようです。あの剣もギルドから聖騎士として与えられた聖剣であると見て間違いありません……)」
「………」
「あなたのおかげでこの場にいるレイス達は全て消滅してしまいました。ですので早くその剣から放たれる光を消して貰えないでしょうか……グナーデ」
やはりコンはグナーデの放った光の影響をその身に受けていたようだ。
その名の通り聖なる力を持つ聖属性の魔力は死霊であるコンのように本来この世のものでない者の存在を許しはしない。
サラの死霊術による聖属性への対抗の術式によりどうにかコンはこの場に留まることが出来ていたようだが、このままの状態が続けばコンの身にどのような異常をきたすか分からずサラはグナーデに光を止めるよう要求していた。
「あっ……ちょっと待って。僕なら大丈夫だからグナーデさんの光で明るくなっている内に先に屋敷へ向かう為の通路を探して。さっきコンチビが見つけたここの事務室のどこかに地図がしまっているかもしれないから……」
「……分かった。しかし本当に大丈夫なのか?」
「うん。確か事務室はこっちに……」
「ああ言っているが止めなくていいのか。下手をすれば自身の大事な僕を失うかもしれないぞ」
「死霊の弱点である聖属性の魔力に対する術式は十分に組み込んであります。コンに配慮してあなたの放つ聖属性の魔力も大分制限して頂いているようなので特に問題はないでしょう。……我々も坑道内の地図を探すのを手伝いに行きましょう」
「……ちょっと待て、サラ」
「……っ!、どうしました?、グナーデ」
「あのコンという少年の死霊……もしや終焉霊魂をこの世に蘇らせた者ではあるまいな……」
「……どうしてそう思うのです」
「死霊が呼び出した精霊のフォンシェイの持つ力は本物だった。精霊は伝説上の存在であり、我々の知る過去の歴史の中でもそれを呼び出すことができる者がいたという話は聞いたことがない。更に先程ウィル・オ・ウィスプの話の件で少年自らハルマゲドン以前の時代に生きていたことを匂わせる発言があった」
グナーデの聖なる光が放たれる中コンは無理を押して皆を事務室の方へと案内していく……。
その様子を黙って見守るサラにグナーデは先程から抱いていたコンに対する疑問をぶつけるのだったが……。
「なる程……よくお聞きでいらっしゃいましたね……。ですがその質問に答えるつもりはありません」
「なんだと……っ!」
「先程のあなたの言葉をそっくりお返ししますが私やコンの素性がどのようなものであれそれはあなたには関係のないことです。今は事件の解決に関わること以外で私に接するのは控えて頂きましょう」
「ぐっ……」
この坑道に入る前の道中でサラを遠ざける態度を取ったのが裏目となりグナーデは自身の質問に対しても応えて貰うことができなかった。
自業自得であることは承知できていた為グナーデもそれ以上サラを問い詰めることはしなかったが、サラとは違い死霊術師に対し明確な敵意を抱いてるグナーデにとってコンの正体を突き止めずにはいられないだろう。
今は事件解決の為協力関係にあるがいずれは無理にでも聞き出そうとしてくるかもしれない……。
「……っ!。あったぁーーっ!。ここの内部の地図を見つけたよ、皆っ!」
「ナイスだっ!、マーラっ!。……それで屋敷を通じる道は一体どこにあるんだ」
「えーっとね……あれだっ!。あの右から2番目にある通路。あの通路を真っ直ぐ進んでいけば屋敷のある場所へと出られるはずだよ」
「では早速移動を再開しましょう。……グナーデ」
「ああ……」
マーラから屋敷へ向かう為の通路を聞いたグナーデは地面に突き立てた剣を抜き、それと同時に当たりはまた暗闇へと包まれて行った。
コン達はまた懐中電灯と光の人魂の灯りを頼りに進むしかなったのだが、先程の戦闘で坑道内のレイスはほぼ全滅してしまったのかその後何の危機に見舞われることなく坑道の出口まで進むことができた。
そして坑道を出た先には両側が崖となりまるで宙に浮いているように見える道が真っ直ぐに続いており、その先にまるで小さな城と思えるような巨大な屋敷が日の沈んだ中月明りに照らされコン達の視界の中に聳え立っていた。
窓に怪しげな明かりの灯るその屋敷を目指してコン達はゆっくりと道を進んで行ったのだが……。