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13話 コン、この世界で初めての錬金術っ!。そして新たなる仲間の魂ぎつねっ!

 「取り敢えずそこに記されている材料の中でこの蔵にあったのはこれくらいでしょうか……。調合についてはどのように記されています?、コン」


 「えーっと……まず必須となる材料が……純度80%以上の水属性の魔力を持つシソ科の植物……アクアミントや青シロネ等……。それと純度80%以上の風属性の魔力を持つ天然石てんねんせき……翡翠石ひすいせきやエアライト等……だって」


 サラに聞かれコンは本に書かれていたエリクサーの必須となる材料の名を順に答えていった。


 それらは皆コンの世界には存在しておらず、同じ名称であってもその成分等は全く別物であったようだ。


 この世界の物質はそのほとんどが魔力を宿しているので、その時点でコンの世界のものとは大きく性質が異なるものとなるだろう。


 「それらは他の材料から抽出された成分を90%以上の割合で浸透して吸収するポーションのベースとなる『純水じゅんすい』を生成する為のものですね。まずその『純水』をどれだけ高い純度で生成できるかが完成したポーションの品質が大きく決まります」


 「あとそれから……必須ではないが『正の霊力』を宿した物質があればそれから抽出できた『正の霊力』の量に比例して飛躍的に完成後のポーションの効果を高めることができるだって。……『正の霊力』って一体何のこと?」


 「『正の霊力』とはこの世界に愛情や感謝等善き思念によって生まれた霊力のことです。反対に憎悪や嫉妬等悪しき思念によって生まれた霊力を『負の霊力』と言います。霊力は死霊術ネクロマンシーを行うにも必須となるもので、我々死霊術師ネクロマンサーは周囲の空間に漂う霊力に己の魔力を混ぜ合わせ死霊術ネクロマンシーを行っているのです」


 「サ……サラさん達の死霊術ネクロマンシーにも必要とされているものなんだ……霊力って」


 「ですが霊力を宿すことのできる物質はこの世界では珍しく中々手に入るものではありません。なので今回は他の材料のみで調合を……」


 “ガタッ!”


 「……っ!、誰ですっ!」

 「……っ!」


 エリクサーの材料について話すコンとサラであったが、その時突如蔵の入り口付近の棚の方から物音が聞こえて来た。


 また先程のジェイス達のような刺客が自身を狙って来たのかとサラが慌てて……コンも遅れてそちらを振り向いたのだったが……。


 “……コンッ!”


 「……っ!」


 「あ、あれは……」


 コンとサラが振り向いた先には刺客と思われる者の姿はなく、そこには代わりによくお稲荷さんを祭っている神社に置かれている銅像のように首元に赤いスカーフを巻いた子ぎつねの姿があった。


 しかしその子ぎつねはどこか存在が希薄なように感じられ、その体もなんとなく背後の景色が透き通っているように見えた。


 更に足元には青白く揺らめく……まるで人魂と思えるような淡い炎を纏っており……。


 「な、なんだ……あの小さい狐は……」


 「あれは……こんぎつねです」


 「こ……こんぎつねっ!」


 “コンっ!”


 「……っ!、う……うわぁっ!。なんか幽霊みたいに宙に浮いてこっちに……」


 サラにこんぎつねと呼ばれた子ぎつねは足元に纏った人魂のような炎を水ではなく宙に浮く為の浮き輪のように使い、ふんわりと空中を飛びながらコン達の元へと向かって来た。


 『コンッ!』っと明るく鳴く声を発していたことから特にコン達に対して敵意を持ってはいない……どちらかというと友好的な態度で近寄って来ているように思えるのだが……。


 “コンコンッ!”


 「う……うわぁぁーーーっ!。今僕の顔を通り過ぎて……一体この狐は何なのっ!、サラさんっ!」


 コンの元へとやって来たそのこんぎつねだがなんとそのままコンを顔面をすり抜けて通って行ってしまった。


 その後再びコンの元へと戻り、嬉しそうな表情を浮かべてコンの顔の周りを飛び回っていたのだが……。


 「その子はこんぎつねと言って肉体ではなく霊体を器としてこの世に生きる非常に珍しい霊獣れいじゅうの一種です。こんぎつねは『正の霊力』を好み、またこの世に漂う『正の霊力』をその身に吸収し集めておくことのできる貴重な種です。恐らく私があなたをこの世に蘇らせる時にこの教会の『負の霊力』を『正の霊力』へと浄化したのを感じ取り近くまで来ていたのでしょう。そして今嬉しそうにあなたの周りを飛び回っているのがあなたがこの上なく強い『正の霊力』を周囲に放っているからですよ、コン」


 「ぼ……僕が『正の霊力』を……」


 「さっきも言った通り『正の霊力』はその者の善き思念によってこの世に生まれます。あなたは今再びこの世に蘇ったことに非常に強い感謝の心を抱いており、その心が『正の霊力』となってあなたの周囲を漂っているのです」


 “コンコンッ!”


 サラの言う通りだと言わんばかりにコンの顔の周りを回りながらこんぎつねが喜びを露わにする……。


 どうやら強い『正の霊力』を放っているから大分コンのことを気に入ってしまっているようだ。


 「どうやらなつかれてしまったようですね。特に我々に対して危害を与えることもないでしょうしこのまま連れて行ってはどうですか、コン」


 “コンコンッ!”


 「えっ……いきなりそんなこと言われても……」


 「それにこんぎつねには確か自身に蓄えた霊力を集めた霊石を作り出す能力があったはず……。もし良ければ我々に少しの霊力を宿したものでいいのでその霊石を分け与えて貰えませんか」


 “コンッ!”


 “パアァ〜〜〜ン”


 「な……なんだ……っ!」


 サラの頼みを聞き入れたのか歯切れの良い鳴き声を上げると、こんぎつねはコンに向けて口を大きく開いて見せた。


 そしてその口の中から不思議な光が溢れ出したかと思うと次第に収束していき、透明に輝く小さな宝石へと姿を変えてしまった。


 その出来上がった宝石はこんぎつねの口からポロっとこぼれるように地面へと落下していったのだが……。


 「……っ!、おっとっと……っ!」


 こんぎつねの口から落下する宝石に即座に反応したコンは両手を受け皿のように構えてそれをキャッチした。


 その宝石の中心から不思議な光の塊が輝きが透明となっている内部を通して溢れ出ていたのだが、それを受け止めたコンの両手はまるで日光を掴んでいるとでも思えるような穏やかな暖かみを感じていた。


 「こ、これが今サラさんが言ったこの子が作り出した霊石……」

 

 “コンコンッ!”


 「はい。それは先程の話にあった『正の霊力』を宿した物質となるものです。後はマンドレイクの根とファイヤー・ツリーの木の実……それと白トカゲの尻尾……。これでエリクサーの材料としてはかなり最適に近いものを揃えることができたと思いますので早速調合を行ってみましょう」


 “コンッ!”


 「えっ……でも調合って言われてももやっぱりこの世界の錬金術アルケミーについて何も知らない僕にはどうしたらいいか……」


 「確かに難易度が高いとは言いましたが工程としてはその携帯用の錬金術アルケミーの装置……

アルケルミー・・・・・・に材料を設置して魔力を送るだけです。魔力を送る際のコツに関しては本の最初に……、調合に必要な魔力の属性とその魔力は各調合物のページに詳細に書かれているはずです」


 「う、うん……」


 そんなの読んだところで何も分かるわけないと心の中で文句を垂れるコンであったが、どうにかサラの期待に応えたいという思いも強くあり言われた箇所のページに取り敢えず目を通してみた。


 するとこの本で初めて読んだはずの文章の内容がどういうわけか頭の中で詳細に浮かび上がっていき……。


 「えーっと……錬金術アルケミーにおけるポーションの調合は各属性を最適な割合でブレンドした魔力をその素材に

合わせた出力で送ることによって行う……っと。エリクサーの調合に最適な魔力の割合は火・1、風・3、水・5、土・1、その出力は約1000マジー。尚それらの割合と出力は調合にしようする素材の種類によって若干変化する場合もあ……ってあれ?」

 

 「……?。どうしました、コン」


 「なんか初めて読む文章のはずなのに自然と内容が頭に入るっていうか……。なんだか自分がこのエリクサーを実際に調合している時の感覚が勝手に体に伝ってくる……」


 「それは……あなたのエリクサーの調合が上手くいく可能性が高い……っといことですか」


 「う、うん……っ!。とにかくこの感覚が残っている内に調合をやってみるよ。……よし」


 「………」


 “パアァ〜〜〜ン”


 そう言うとコンは腕に装着したアルケルミーへと手をかざし、本に書かれていた通りの魔力を送りエリクサーの調合を開始した。


 するとコンの魔力に反応したのかアルケルミーの装置が起動し始め、円形の容器から抽出された6つの素材の成分が液体となり繋がれたくだを通って中央の薬瓶へと注ぎ込まれていった。


 サラはその光景を黙って見守っていたのだが果たしてコンは無事エリクサーを調合することができたのだろうか。


 「こ……これでできたのかな……」


 「ふむ……横で見ている分には上手く調合できているように思えましたが……。ちょっと実際にあなたが調合したエリクサーを飲んで確かめてみようと思うのでその薬瓶を取り出して貰っていいですか」


 「ええっ!、サラさんにそんな毒見みたいなことさせられないよっ!。もし調合に失敗してたら体にどんな異常が起こるか分からないんだしそれなら僕が自分で……」


 「いえ……錬金術アルケミーによって調合されたポーションは通常に生きている状態の人間が服用するもの……。死霊レイズデッドであるあなたの方こそどのような異常をきたすか分かりません。過去の死霊術師ネクロマンサーの中には正常に調合されたポーションを与えたのにも関わらず自身の死霊レイズデッドを消滅させてしまった者もいます」


 「だっ、だったら別に今飲まなくても……。誰かちゃんとした錬金術師アルケミストの人にちゃんと調合できてるか見て貰ってからの方が……」


 「いえ、私の方から嫌がるあなたに無理を言って調合させたというのにそのような臆病な行いは許されません。しもべである死霊レイズデッドを信じているならば責任をもって自身の身で確かめなければ……」


 「で……でも……」


 “コン……”


 自らコンの調合したエリクサーの毒身をするって聞かないサラに対しコンだけでなくその場に来たばかりのこんぎつねまでもが不安げな表情を浮かべてしまっていた。


 サラも勿論リスクがある行為だとは分かってはいるだろうが、コンの主としての手前あまり度量が小さいと思える行為をしたくはなかったようだ。


 「心配せずとも死霊術師ネクロマンサーとして最低限の毒物に対する抗体は取得しています。それに……」


 「……?」


 「成功した確証がないとはいえあなたの調合したエリクサーからは見ているだけで不思議と体の疲れが癒されていくようなエネルギーが溢れているのを感じます。私としてもあなたの調合したエリクサーが一体どれ程の効果を秘めているのか逸早く確かめさせて欲しいのです」


 「サラさん……分かったよ、はい……」


 サラの強い思いの込められた言葉に押し切られ、コンはアルケルミーから調合したエリクサーの入った薬瓶を取り出しサラへと手渡した。


 どうやらサラも確証とまではいかないがコンの調合が上手くいってると感じていたようだ。


 薬瓶のふたを外したサラは少し匂いを嗅いだ後ゆっくりと口へと運び……。


 「ゴクッ……っ!、これは……っ!」


 「……っ!、大丈夫、サラさんっ!」


 “コンッ!”


 エリクサーを一口飲んだサラは驚嘆した表情を浮かべていた。


 果たしてこの表情はコンのエリクサーに対してどのような意味を表したものなのだろうか……。


 

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