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11話 解き明かされていく疑問……

 「………」


 「やったぁぁぁーーーっ!、流石マスターっ!。ねぇ、私の言った通りあんな奴等マスターの相手にならなかったでしょ、サラ様っ!」


 「そうですね、フォンシェイ。……では目覚めざましい活躍を見せたコンを早速ねぎらいに行きましょうか」


 「はいっ!」


 無限の閃光インフィニット・レイよりジェイス達を一掃いっそうしてしまったコン。


 その活躍をねぎらおうとサラとフォンシェイは喜びを露わにした表情でコンの元へと向かって行った。


 「ご苦労様でした……コン。この短時間の間にあの冒険者ギルドの者達を全滅させてしまうとは素晴らしい働きです」


 「ありがとうございます……サラさん。だけどその……」


 「……?、どうしました、コン」


 「敵であったとはいえ僕は今現実の世界で大勢の人をあやめました……。なのにそのことに対して何の抵抗も罪悪感も感じないんです……。僕達の世界でそれは絶対に許されないことだったはずなのに……」


 「人に対する殺生せっしょうをそこまで強く禁じているとは……。あなた達の世界の文明はかなり高度な道徳的価値観を持っていたようですね。それは素晴らしいことであるとは思いますが今のあなたはこの時代に私のしもべとして蘇った死霊レイズデッドです。死霊レイズデッドとしてあなたを蘇らせる際にある程度こちらの世界に適応できるよう相応の知識を与え、その価値観もこちらと近いものになるよう術式じゅつしきを組んでいます。更に死霊レイズデッドとして覚醒したことで様々局面において自身に不利となるような感情を抱かぬよう組み込まれた精神耐性デス・フィアーの術式も正常に機能しているはずです」


 「精神耐性デス・フィアー……」


 自身の価値観に変化……っというより欠落しているようにコンが感じていたのはやはりサラの死霊術ネクロマンシーの影響によるものだった。


 コンからしてみればサラはサラの死霊術ネクロマンシーにより自身を強く束縛しているとも取れるが果たしてそのことを知ったコンのサラに対する反応は……。


 「ですのであなたが自身の世界の倫理りんりに反する行いをしてしまったことを気に病む必要はありません。死霊レイズデッドとしてあなたが行った行為は全て術者であるこの私に責任があります」


 「サラさんに責任……。なら死霊レイズデッドである僕には主人であるサラさんを危険から守り、その命令を忠実に実行する責任があるということですね」


 「理解が早くて助かります。死霊レイズデッドとしての性能を高める為とはいえあなたの霊魂に様々な制約を施していることをお許しください……」

 

 「いえっ!。それはただ僕の死霊レイズデッドとしての性能を高める為でなく、自分の生きていたのとまるで違う世界に蘇った僕のことをサラさんが思い遣ってしてくれたことだって僕には分かっています。もう僕にサラさんに対する不満は何一つありません。むしろそんなサラさんの死霊レイズデッドとなれたことを光栄に思っていますっ!」


 「コン……」

 

 「私もマスターのマスターであるサラ様に全力でお仕えすることを誓いますっ!。優先順位は断然サラ様の方が上などでマスターを通さずともサラ様の方から直接私に指示を出してくださいっ!」

 

 「フォンシェイ……」


 「優先順位は断然上って……それってどういうこだよ、、フォンシェイ」


 「だってマスターと私がこの世界で生きていられるのはサラ様のおかげでしょう。それはつまりマスターのしもべとしてよりサラ様の死霊レイズデッドとしての役目の方が私にとって重要ということです」

 

 「ぐっ……まぁ、それはそうかもしれないけど……」


 どうやらコンもフォンシェイも既にサラを自分達のあるじとして認めていたようだ。


 それは死霊術ネクロマンシーによる術者としもべとしての関係より、サラの死霊術師ネクロマンサーとしての品格とその人格がコン達の尊敬に値するものであったということだろう。


 そんなコン達の言葉を聞いてサラも術者として光栄に思っていたようだ。


 「ありがとうございます、二人共。自身の死霊レイズデッド……それもたった今蘇えったばかりの者達とここまで絆

を深めることができたのは初めてです。もしかしたら私達の魂は元々ハルマゲドンの時代を超えて出会うさだめにあったのかもしれませんね……」


 「ハルマゲドン……」


 「私の方からも改めて……先程は私の死霊術ネクロマンシーの儀式の失敗でお二人に大変不快な思いをさせてしまったように……まだまだ二人の主の死霊術師ネクロマンサーとして至らぬ点が数多くあると思いますがどうかよろしくお願い致します」


 「はいっ!、こちらこそよろしくお願い致しますっ!」


 この僅かな期間で互いの絆を確認できたサラとコン達……。


 死霊術師ネクロマンサーとそのしもべ死霊レイズデッドとして既に深い関係を築けていることを知り互いに喜びを分かち合っていたのだが、コンにはまだまだサラに問い質さなければならない疑問が残されていた。


 そしてそれはサラの方も同様であり……。


 「それであの……今不満はないと言っておきながらまだサラさんに聞いておきたいことがあるんですけど……」

 

 「それは先程言っていたあなた持つ力が空想の世界でのみ存在する……ということについてでしょうか?」


 「はい……」


 「ふむ……ですがあなた方の生きていた世界に対する知識のない私には先程のあなたが話していたことも何が何のことやら……。申し訳ないですが少しこちらにひたいを近つけて貰えませんか


 「えっ……は、はい……」


 サラに言われコンは少し体を傾けるようにしてひたいをサラへと向けた。


 するとサラはコンの額に向けて右手の平をかざし、何かの死霊術ネクロマンシーを発動させたのかその手の平とコンの額の間に、先程までの戦闘を行っていた時の荒々しいものとは違うどこか穏やかな感じのするオーラのようなものが漂っていた。


 この時のコンの身長は168センチ……。


 生前の世界で命を落とす前のコンは17歳の少年であり、その年齢にしては平均より少し低い程度の身長だったのだが、自分よりも少し手の高い女性に直接ではないが手を当てられる……、そしてサラの落ち着いた大人の女性の雰囲気もあいまってコンは幼少期に母親の愛情に抱かれているような感覚を受けていた。


 「サ……サラさん……」


 「なるほど……分かりました」


 「えっ……」


 「死霊術師ネクロマンサーはその死霊術ネクロマンシーにより自身の死霊レイズデッドと意識を通わせることで簡易的ではありますが相手の伝えようとしていることを読み取ることができるのです」


 「そ……それじゃあ今僕とサラさんの意識が繋がっていたってこと……。(それでなんか凄く心地よい感じに包まれている感じがしたのか。サラさん凄く落ち着いている上に優しいからな〜。その上滅茶苦茶美人だしこんな人に蘇らせて貰えたなんて僕って幸せ者だなぁ〜)」


 「……?。どうかしましたか……コン」


 「い……いえっ!。なんでもありませんっ!」


 「そうですか……。それであなたの意識を読み取って分かったことなのですが……」


 「は……はい……」


 「確かにあなた方の世界には自らの意識のみを送り込むことのできる現実とは別の大規模な空想な世界が存在していたようです。そしてあなたの仰る通りその現実の世界においてのあなた方はその身に魔力を宿しておらず、とても先程のような戦闘が行えるとは思えませんでした」


 「で……でしょうっ!。それなのにどうしてこんな力を持って蘇えったのか僕には全然理解できなくて……。今のでサラさんに分かって貰えたか分からないけどこのフィロソファーの姿は僕にとってあくまで空想の産物で、その現実の世界でこんな力は勿論魔力も何も持っていないのが本物の僕のはずなんですっ!」


 「マスター……」


 コンからしてみれば当然の感覚であっただろうが、自身とその自身が存在する世界のことを空想の産物と言われフォンシェイは少し悲しげな様子だった。


 しかし実はフォンシェイも何故空想の存在であったはずの自分がこうしてコンと共に蘇ることができたのか……。


 っというコンと同じ疑問を自身の中に抱いており、できればサラからその答えとなるものを聞かせて貰いという思いもあったようだ。


 果たしてサラのそんな二人の疑問に対する返答は……。


 「あなた方の疑問の思う気持ちは分かります……。ですが私がこの世界に蘇らせたのはその現実と空想のどちらのあなた方でもなく、その存在に宿っていたたましいなのです」


 「……っ!」


 「ですから例え今のあなた方の姿が生前のものとどれだけ違っていようと疑問を抱く必要はありません。それはあくまで私が用意したホムンクルスの器の力によりあなた方のたましいに最も強く刻まれた姿を再現しているだけです。今その器に宿っているたましいをしっかりと自分自身のものであると感じ取ることができているならば何ら問題はありません」


 「自分の魂に最も強く刻まれた姿……」


 「そしてこの世に蘇ることができたということは例え空想の存在といえどその身にはしっかりあなたのたましいが宿っていたということですよ、フォンシェイ。この世に蘇ったあなたのたましいは決して空想などではありません。なのでいつまでもそのような悲しげな表情を私に見せないでください」

 

 「サラ様……はいっ!」


 サラの真に自分達を思い遣る心強い言葉にコンとフォンシェイは改めて自身のたましいがこの世に蘇ったことを実感し、その心に抱いていた疑問と不安を払拭することができたようだ。


 とはいえあくまで自分の中で納得がいっただけでコン達にはまだまだ失われている生前の記憶……そして死霊レイズデッドとなった自身の身について解き明かしていかなければならないことが数多く残されてはいるのだが……。


 「さて……ですが今のあなた方の姿がコンの言っていた確か……NEVER FOR GET YOUR SOULという空想の世界のものにもとづいていることは間違いないようです……。私としてはその世界であなた方が持つ力についてもう少しよく知っておきたいのですが……。フィロソファーとその精霊として以外に何か覚えていることはありますか、コン、フォンシェイ」


 「う〜ん……私の方はあんまり……。でも確かマスターの呼び出せる精霊は私以外にも一杯いて、その中でもマスターがよく私と一緒に呼び出してくれてた精霊達とは仲が良かった気がするんですけどその名前や姿は何も覚えてなくて……」

 

 「僕もフォンシェイ以外の精霊ついては何も……。確か精霊は一度に2体までしか召喚できないってゲーム内の制限があったような気がするんだけど……」


 「2体……それも一度に呼び出せるのが……ということは確かにフォンシェイ以外にも召喚することのできる精霊がいた可能性はありますね。それらの精霊達のたましいまで私の儀式によりこの世に呼び寄せることができているかどうかは分かりませんが……」


 「あっ……あとそのゲーム内ではメインとなるフィロソファーやさっきの人達が勘違いして僕に言ってた精霊術士エレメンタラーなんかの戦闘職の他にもう一つ副業職っていうのがあって、それで僕は錬金術師アルケミストの職に就いてよく皆に回復用のアイテムなんかを調合して配ってたような……」


 「錬金術師アルケミストっ!。ではあなたはフィロソファーとしての力だけでなく錬金術アルケミーをも習得しているというのですかっ!」


 「い……いやっ!、だからそれもゲーム内の話であって実際に錬金術れんきんじゅつを使えるわけ……っていうかこっちの世界には死霊術ネクロマンシーだけでなく錬金術れんきんじゅつまで実在しているんですかっ!」


 「ええ……我々の世界ではその錬金術れんきんじゅつのことを錬金術アルケミーと呼んでいますが……。もしあなたが本当に錬金術師アルケミストであるとするなら私にとってはとても有り難いことです」


 「だ……だからそれはゲームの中の話であって実際にこの世界の錬金術れんきんじゅつ……じゃなかった。錬金術アルケミーを使えるわけじゃないし第一ゲームの世界のものとは仕組みが全然違うはず……」


 「それはそうかもしれませんが……確か事前にこの教会を探索した際に地下の蔵に錬金術アルケミーに使用する機器ききがしまわれていたはず……。もし良ければ今からあなたの錬金術アルケミーが実際に使用できるかどうか試して貰えないでしょうか」


 「えっ……それは別に構わないですけどあんまりできる自信が……」


 「大丈夫ですっ!。私を呼び出すことができたんですからこの世界の錬金術アルケミーって言われるものだってマスターならきっと使えるはずですっ!。……あっ、これ以上マスターのMPを浪費するわけにはいきませんので私は一度自分の世界に帰りますね。また用があればいつでも呼び出してください。それでは、サラ様、マスター」


 「……っ!」


 そう言ってフォンシェイはこの場から姿を消してしまった。


 生前のコンのゲームの世界ではフォンシェイのような精霊はプレイヤーの意志で自由に呼び出し、また彼女達の世界へと帰還させることができていたようだったが……。


 「フォンシェイの姿が消えてしまいましたが……大丈夫なのですか、コン」


 「はい。蘇えったばかりの頃は分からなかったけど今は自分の中にフォンシェイの魂があるのをしっかりと感じ取れます。また召喚魔法で呼び出せばすぐ出て来てくれるでしょう」


 「それは良かった……。いきなり消えてしまうので私も驚きましたよ」


 「(だけどさっきのフォンシェイの話の通り僕の身体の中に他の精霊達の魂と思えるものがあるのをなんとなく感じる……。まだ確証はないけどフォンシェイのように彼等の姿や名前を思い出すことができればきっと……)」


 「さて……それでは地下の蔵へと向かいましょうか。案内するのでついて来てくださいね、コン」


 「はい、サラさん」


 こうしてコンはこの世界の錬金術アルケミーが使用できるのかどうか確認する為サラについて教会の地下へと向かった。


 コンのゲームの世界の錬金術れんきんじゅつとは素材となるアイテムを錬金釜と呼ばれる釜の中に入れ、適切な魔力と力加減を込めてかき混ぜるものであったが果たしてこの世界の錬金術アルケミーとは一体どのようなものなのだろうか……。


 



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