14話✡︎闇と獣✡︎
女神のお茶会が始まる少し前……サイスの宿屋でヴァイオリンを弾いてる、白いワンピースを纏った女性がその手を止めて呟いた。
「それは……凄いけど大変なことになりますね。」
女性はヒューマンの様だが、エルフの様な顔立ちで美しく、更にエルフの様な空気を帯びている。彼女はエレナ達の居る神殿の方を見てから、森の方を見つめ強い闇を感じていた。
一方、エレナとユリナは神聖さを増し祈り続けていた。
その二人の姿を見てカナも美しさに引き込まれ目を奪われていた。
その時カナの持つ羊皮紙が何かを伝えてカナはハッとする、それにカイナも気づく二人は祭壇の間を静かに後にする。
(うーんこれ以上は、ユリナの負担も大きくなっちゃうから無理かな……)
そうエレナが心で思い始めた時……
「「アインの名のもとに行いなさい」」
そう確かな声が三度祭壇の間に響き渡った、その場にいた三人はビックリした。
エヴァ、ウィンディア、ガイアに伝えるつもりがその母、創造神アインに届いたからである、無論天界で何があったかは、三人は知らない……
その直後、創造神アインの印がエレナが祭壇から出したネックレスのアクアマリンに刻まれる。
そしてその直後に、エレナ、ユリナ、ガーラの心にアインの声が響く。
(貴方達の行いで、貴方達の女神三人が慌てていました。
神聖な想い、行いの美しさは天に届いています。二度目は女神に知らせてからそのみわざを行いなさい)
そうアインが穏やかに伝えて来て。
エレナとユリナは思わず笑顔になり、息を合わせ正面を向きながら片手を握り合い、寸分違わぬ動きで礼をして祈りを終える。
二人は声を出して笑い合い、二人は逆の瞳でウィンクして、イタズラ成功を楽しんだ。
その姿を見てガーラは思っていた。
(アルベルトお前のエレナも娘も、本当に気が気じゃ無いが……
お前が言った通り飽きる事はなさそうだな)
そう心でガーラは笑った。
天界でアインは三人の女神とお茶を楽しみながら、カップの底の茶葉を見て言う。
「貴方達、これを見なさい」
「これって、闇の……」
エヴァがそう言うと、エヴァのカップの底には友人を表す模様が浮かんでいた。
「何かある様ですが、私達は手を出してはいけませんよ、あの子達を信じてあげましょう。」
アインは静かにそう言った。
カナとカイナは神殿から出て村の外に向かって歩いていた。
「カナさんも解ったんだ、強い闇の存在がいるって」
「カイナさんも、流石ですね。」
「解るよこの闇は、ガーラが取り込んでいた闇だから、きっとガーラは闇を浄化せずに、外に追い出していたんだ。
だから神聖さを取り戻しても、魔力を失わなかった……それなら説明がつく。
まぁ追い出すだけでも、普通は出来ないけどね、ガーラは私より数段上の存在だったってこと。
ガーラ……
大地の使徒が利用してた闇、最初は小さな闇だったかも知れない、でも六百年もガーラの魔力と共にいたんだ、どれだけ強いか想像出来ない、カナさん気をつけて」
そうカイナが言いうと、村の外に丁度出て二人は立ち止まった。
そこは森とサイスの間にある、僅かな平原、二人は結界から出て始めて感じた。
森からおぞましい殺気が数多く漂ってくる。
「聖者の騎士達よ前へ!」
カイナが叫ぶ。
二人の前に三百は超えるだろうか、聖なる光を纏った、死者の騎士が現れた。
今までカイナが契約を結んだ、光の為に命を落とし全て天に昇れる善なる騎士達が、盾を前にし防御を組む。
カナは弓を空に構えてユリナと同じ様に矢を空に放つと、エルフの弓兵が集まって来た。
「結界内にて二列横隊、カイナ殿を支援せよ‼︎」
カナは目を鋭くし始めると、森から無数のおびただしい数の黒い狼が森から出て村に向かってくる。
「狼?なんで獣が⁈」
「別に不思議じゃないよ、ガーラが利用してた闇だよ……
闇はどんな形でも取り付いたものを見続け吸収していく、長い間にドルイドの技を身につけても不思議じゃないよ」
それを聞いてカナは距離を正確に見定る。
「放て!」
意思の強い声で弓兵に指示をだす。
二十五名の弓兵は一斉に矢を放ち、群れの先頭走る狼達を次々と射抜く、第二射、第三射まで素早く打つが、数が多く接近を許す事をカナは即座に判断した。
「連続速射用意!カイナさん、弓兵全面の騎士を両脇に早く!」
それにはカイナでなくサイサスが答える。
「騎士よ両翼に分かれよ!」
死者であるせいか、瞬時に騎士は正面を開けた。
「第一列放て!……第二列放て!」
カナが指示を出すと弓兵はもの凄い速さで水平に真っ直ぐに狼を狙い矢を放ち続ける。
第二列がタイミングをずらしてる為隙間なく矢が放たれる、一人の弓兵が二十秒に十二本は放っている。
「これが、エルフ弓兵隊……
なんて凄まじい……
カナ殿も多くの戦場を超えてきたのだな……」
サイサスが驚くのも無理ない、速射を始めてすぐに、狼の群れは押しとどめられ、押し返されたのだ、悲鳴の様な鳴き声と共に倒れて行く狼達、残酷さを感じる程一方的である。だが矢の本数には限りがある。前例隊の矢が十本を切った時にカナは指示をだす。
「撃ち方やめ!
切り込み準備!
そこの五名は矢の補給準備とユリナ様に報告せよ!」
狼達は森に逃げ帰って行くが、獣のものでは無い殺気が近づいて来る、そして一本の矢がカナ目掛けて森から飛んできた、カナはなんなく小太刀で切り落とす。
その矢は石の鏃にぼろぼろの羽根……
(この矢はゴブリン⁉︎)
カナがそう判断した時、数多くの矢が森から真っ直ぐに放たれ弓兵を狙ってくる。
死者の騎士達は即座に具現化し、カナと弓兵の前に出てシールドで見事に防ぐが、数名の騎士が矢を防げず倒れ消えて行く。
「カイナさん、何故騎士達は具現化するのですか?死者としてなら……」
「それが破壊神クロノスが作り出した。
破壊の定めって理りだよ、また今度教えてあげるね」
カイナが話してる間に、サイサスが指揮し騎士達は、守りを固め前の隊が少し前進する。
「カイナさんは指揮しないのですか?」
「こう言うやり取り私に出来ると思う?サイサスにやらせるのが一番かな」
騎士達は盾を剣で叩き挑発する。
するとゴブリン達は待っていたかの様に突撃してくると前面の騎士は戦わず引き、そこをカナが逃さず、弓兵に指示をだし速射でなく斉射で矢を放ち、勢いを削いだ所に騎士達がぶつかって行った。
サイサスとカナの指揮が見事に連携する。
「カイナ様、これは既に戦さと変わりません今は抑えてますが、もし闇の本体が現れたら我々はそちらに、戦力をさけません。」
「サイサスこの状況で、私が戦えないのは理解してますよね?
貴方達が村を守れる様に私の魔力を今放出し続けてるのだから……
クレリック!サイサスを援護しなさい!」
そうカイナが言うと弓兵の後ろに、聖者の僧侶達三十名ほど現れ、騎士達に援護魔法をかけ始める。
その状況を理解したカナが叫ぶ!
「太刀を抜け!」
カナが弓兵隊に指示を出すがカイナが止めて来た。
「待ってカナさん、何故騎士達が前に出てるか考えて、貴方達は生者、彼らは死者、彼らは貴方達を最後まで生かそうとしてる。
騎士として守ろうとしてる。
貴方達をそして、私達の後ろにあるセレスの村を……」
そうカイナが騎士達の気持ちを伝えて来た時、森に追い返した狼の群れが今度は隊列を組み騎士達を襲って来た、明らかにドルイドの技であるが、それだけではないその後方から巨大な熊、グリズリーまでもが二十頭近く突進してくる。
形勢は明らかに不利となった。
「でしたら、尚のこと我々エルフ一族は窮地に立たされた友、友軍を見捨てることは出来ません。」
そう笑顔でカナはカイナに言い振り向き。
「全員抜刀!我に続け!」
強い気迫を感じさせる声で指示を出し、斬り込んでいく、エルフの弓兵隊でも上位小隊はエレナが師団長になった時から近接戦においても訓練された。
言わば軽歩兵の役目も果たせる精鋭部隊、エルフならではの速くアクロバットな近接戦に持ち込み、敵を翻弄し数において劣勢であるが、その実力を存分に発揮して行く。




