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予想外
葵は予想外の出来事に混乱していた。
本来なら今日は、烏丸家と互いの両親を交えて会うはずだった。それが前日になって両家に急な会食が入り、2人で会うことになってしまったのだ。
気持ちの整理がつかないまま、葵の乗った車は約束の料亭に到着した。
葵は玄関まで来ると、扉の前で立ち止まり深呼吸をした。緊張からか手が冷たい。その冷たくなった手を握りしめ、葵は扉をゆっくりと進むのだった。
玄関に入ると、料亭の女将が丁寧にお辞儀をして挨拶した。
「西薗様ですね。本日は、ようこそおいでくださいました。奥で烏丸様がお待ちですので、お部屋までご案内致します」
女将はそう言うと部屋へ案内する。
やがて部屋に到着した様で、襖の手前で跪座し声を掛ける。
「失礼致します。烏丸様、西薗葵様が到着されました」
部屋から返事が聞こえると、女将によって襖が開けられる。
葵は覚悟を決め、部屋へ入ると長身の男性が笑顔で出迎えた。
「初めまして西薗葵さん。貴女に会えて嬉しいです」