お相手は有名人?
授業も終わり放課後。今日は奈緒に誘われ、茜と3人で個室のあるカフェへやってきた。
注文したケーキと紅茶が運ばれ、店員が個室を後にすると奈緒は葵に問いかけた。
「ねぇ、結局昨日の話って何だったの?」
「奈緒さん。葵さんだって話したくない内容かもしれないでしょう?」
「だって〜気になるじゃん!」
奈緒と茜のやりとりを見ていた葵は、笑顔で答える。
「大丈夫ですわ」
そう言うと葵は、昨日の出来事を話し始め2人は静かに聞いていた。
葵の話しを聞いて、茜がゆっくり話し始める。
「葵さん、その烏丸様ってノースポール学園の生徒会長ですわよ」
ノースポール学園とは幼小中高大一貫教育校になっており、誠実で優秀な男性を育成する学園である。お金持ちの御令息が通い、教養や経営学などを学ぶ。ちなみに兄もここの卒業生だ。
「茜さん、烏丸様をご存知ですの?」
「面識はございませんわ。ただ、ノースポール学園の生徒会長は有名人ですから」
「有名人?」
葵は不思議に思った。茜は有名人と言うが、葵は初めて聞く名前だったのだ。そんな様子を見ていた奈緒は、補足する様に話した。
「うちの学園に烏丸ファンがいるんだよ。それで有名人!」
「まぁ!そうでしたの?知りませんでしたわ」
「烏丸様は、頭脳明晰で運動も得意のようですわ。確かファンの方は、クールで近寄りがたい雰囲気が良いと言われてましたわね」
茜は、ファンから聞いたという話を教えてくれた。
「でも、烏丸様と葵さんがお会いになるなんて驚きましたわ。本当に大丈夫ですの?あまり無理はなさらないでくださいね」
「確かに。葵が自分から男の人と話してみようと思うなんて驚きだよ!応援してるからね!いつでも相談に乗るし」
2人が驚くのも分かる。
正直、興味を持ったので会ってみたいと思ったが不安でいっぱいだ。ただ、心配してくれている友達にこれ以上の心配をかけたくない葵は明るく答えた。
「大丈夫ですわ。当日は2人っきりで話すわけではありませんもの。それに烏丸様も、上手く話せないことを知った上で話したいそうですから」
今までは、上手く話せないからと男性を避けていた葵が、今回は自分で話してみようと決意したのだ。2人には、葵が何か変わろうとしている様に見えた。
そんな葵を見た2人は、全力で応援したいと思ったのだった。