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大事な話

学園から帰宅した葵は、制服から清楚なワンピースに着替える。


着替え終わるとタイミング良く扉をノックする音がし、返事をすると麗奈が入ってきた。


「失礼致します。奥様がお戻りになられまして、談話室で葵様をお待ちです」


「分かったわ。今すぐ行きます」


葵が談話室へ向かうと、母は執事の須藤と話をしているところだった。葵が来たことに気付いた須藤は小さくお辞儀をし、静かに談話室を後にした。


葵が須藤と話すことはない。あったとしても、麗奈を通して用件が伝えられる。これは父が、男性と上手く話せない葵のことを想って決めたことだ。そのため、須藤は葵がいる時には近くにいない。


「お母様、お話の途中でしたか?」


「大丈夫ですよ。もう話は済みましたし、葵が心配することはないわ」


母は笑顔で答えた。


「さぁ、麗奈がお茶を用意してくれたわ。いただきましょう」


「はい」


母と葵は、お茶を飲みながら父と兄の帰りを待った。


しばらくすると扉をノックする音が聞こえ、メイドの由美が入ってきた。


「失礼します。奥様、葵様、旦那様と蓮様がお戻りになりました。食堂にてお待ちです」


「あら?早いお帰りね。分かったわ。では、葵ちゃん行きましょうか」


葵が返事をする前に母は立ち上がり、葵の手を引いて食堂へ向かった。


食堂へ到着すると、父と兄が待っていた。


「2人ともお帰りなさい。今日は早いのね」


「お父様、お兄様、お帰りなさい」


母と葵は2人に声を掛けた。


「あぁ、ただいま。今日は葵に話があるからね。早めに帰ってきたのだよ。さぁ、食べながら話をしようか」


父はそう言うと、席に着くように促した。

皆が席に着くと料理が運ばれる。その料理を食べながら父は話を始めた。


「今週末、葵に会わせたい人がいるんだよ。その人は烏丸聡史(からすまさとし)と言って、現在高校3年生だ」


葵は突然の話に言葉が出ない。

すると、兄が父に向かって発言した。


「葵は男と上手く話せない。それなのに何故、烏丸って奴に会わせる?俺は反対だ!」


兄は凄く怒っていた。今まで見たことのない兄の顔に葵は驚く。


「蓮の言いたい事も分かる。烏丸家とは昔から親交があり、前々から葵と婚約関係を結びたいと言われていたんだ。葵は男の人と上手く話せないからと断り続けていたし、葵には幸せになって欲しいから、葵が選んだ人と結婚させたいとも伝えていたんだよ」


父は感情的に話した。


「それでは何故、葵と会わせる話になったのですか?」


「それが、聡史くんから直々にチャンスが欲しい。婚約はひとまず置いて話がしたいと言われて断りきれなかった。私には決められないから、葵に決めてもらうことにしたんだ」


兄は父の言葉を聞いて溜息をついた。そして何かを考えているらしく黙っている。


「葵、急な話ですまない。無理なら無理で断ってもいいんだよ」


父は何も言わない葵を心配して声を掛ける。


葵は悩んでいた。確かに上手く話せないし、相手に不快な思いをさせるだろう。しかし、話せないことを知った上で会いたいなんて変わっている。葵は少し興味を持ち頑張って会ってみようと思った。


「お父様、話は分かりました。婚約のことは何とも言えませんが、今週末その烏丸様にお会いします」


葵の言葉に家族は驚いた。

断られると思っていた父と母は安堵し、兄は信じられないという顔で葵を見ていたのだった。

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