カルミア学園
運転手にカルミア学園まで送ってもらう。
葵の通うカルミア学園は、幼小中高一貫教育校で優美な女性を育成するための学園になっている。
お金持ちの令嬢のみ通うことができ、学園では教養やマナーなどを学ぶ。卒業後は婚約者と結婚する者が大半だが、中には親の事業を継ぐ者もいる。
「葵様、学園に着きましたよ」
「あっ。あ、ありがとう、ございます」
「いえ、行ってらっしゃいませ」
葵は、運転手に恟々としながらお礼を言うと、運転手は笑顔で送り出したのだった。
(やっぱり上手く話せないな…)
先程の運転手の顔を思い出しながら、葵は申し訳ない気持ちになった。
物思いにふけって歩いていると、あっという間に教室へ到着してしまった。
「葵さん、おはようございます」
教室へ入ると、友達の宝来茜が挨拶しながらこちらへ向かって来た。茜は大人しい子で、華道家元の娘である。
「茜さん、おはようございます。あら?奈緒さんはまだ?」
「多分、もうすぐ来られると思いますよ?ほら、噂をすれば…」
葵と茜が挨拶を交わしながら話していると、葵の背後から元気な声が聞こえてきた。
「葵、茜、おはよう!いやー、今日から高校の制服だけどエスカレーター式だし、クラス替えとかもないから変わり映えしないね!」
もう1人の友達である鷲崎奈緒は、ニコニコしながら話している。奈緒は活発な子で、父親の経営するブランドのモデルとして活躍している。
「今日は、簡単な入学式と今後の授業説明で終わりみたいですわよ?」
茜は思い出したように話した。
「やった!じゃあ、帰りに何処かで話さない?」
奈緒は2人に提案した。
「いいですわね。葵さんはどうですか?」
「私も大丈夫ですわ。ただ、夜に予定がありますので早めに帰らないといけないのですが…」
葵は申し訳なさそうな顔で2人に伝える。
「そうなの?じゃあ、放課後に学園のカフェで良いかな?」
「賛成ですわ。葵さんもよろしくて?」
「大丈夫ですわ」
話していると担任の教師が教室へ入ってきた。
「じゃあ、また後でね!」
奈緒の言葉に2人は頷き、席に着いたのだった。