始まりの朝
「葵様、おはようございます」
カーテンを開け、メイドの麗奈が声を掛ける。葵はその声で目を覚まし、ゆっくりと起き上がる。
「おはよう」
「制服はこちらに用意が出来ております。もうすぐ朝食の用意が出来ますので、早く着替えましょう」
「ありがとう。わかったわ」
葵は麗奈に返事をしながら立ち上がり、制服に着替え身だしなみを整える。
身だしなみを整えた葵は、家族の待つ食堂へ向かう。既に食堂には皆が集まっており、葵を待っていた。
「お父様、お母様、お兄様、おはようございます。すみません。お待たせしてしまいましたか?」
葵は申し訳なさそうに挨拶をする。
「葵、おはよう。私達も来たばかりだから大丈夫だよ」
父は笑顔で答える。
「おはよう葵ちゃん!新しい制服とても可愛いわ!」
母は上機嫌で制服姿の葵を褒めている。
「葵、おはよう。母さんの言う通り、新しい制服とても似合っているよ」
兄も母の言葉に賛同し笑顔で頷く。
「そうですか?ありがとうございます」
葵は恥ずかしさから、少し俯きながらお礼を言ったのだった。
葵が席に着くと、麗奈が朝食を運んできた。
運ばれてきた朝食を食べ始めると、父が声をかけてきた。
「葵、今日から高校生だね。高校の制服も似合っているよ」
「お父様、ありがとうございます」
「ところで今夜、大事な話があるのだが…」
「大事な話ですか?今では出来ない話なのですか?」
「あぁ、そうだね。出来れば今ではなく、夜にゆっくり話したいと思っているのだけど」
葵は首を傾げながら父の話を聞いていた。大事な話とは何か気になったが、父と母の申し訳なさそうな顔を見ると、あまり良い話ではない気がして少し不安になった。
「大丈夫だよ、葵。僕も一緒にいるから。父さんいいだろ?」
心配いらないと言わんばかりの笑顔で葵を見た後、兄は父に問いかける。
父は少し考えた後、同席を許可したのだった。
「葵様、そろそろ学園へ行く時間になります」
話がひと段落したのを見計らって、麗奈が声をかけてきた。時計を見ると、屋敷を出る時間が迫ってきている。
「本当ですね。お父様、お母様、お兄様、行ってまいります」
「「「行ってらっしゃい」」」
葵は、挨拶を済ませると食堂を後にし、運転手の待つ車へ向かうのだった。