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4、かっとう

三花ちゃんに案内されお手洗いに向かう。道中パジャマに目を向けると質素ながらも僕から見てもかわいらしいデザインをしていた。


トイレに着き便器を前に僕はちゅうちょしていた。でもみるみる迫る尿意。でも葛藤がありなかなかズボンとショーツを下せなかった。今は身体を操っているとは言え他人の身体。頭の中では三花ちゃんが《早く下して用を済ませなさいよ。》と催促してくるが僕は決心がつかなかった。





そうこうしている内に、決壊寸前まで尿意が迫り意を決して便器にまたがり用を済ませた。


和式便所なんてなんて久しぶりなんだろうか・・・。


感慨にふけっていると《用をすましたら股間をちゃんと拭いてね。》


と言われ、したがい便器の水を流した。





あとは手を洗うだけだと洗面所に向かい初めて三花ちゃんの顔を鏡越しで見つめた。





そこに映っていたのは黒髪ロングで目鼻立ちがすっきりとしてまつ毛も長く、広大な砂漠に咲く一凛の花と言っても過言で無い程美少女がいた。まるでアイドルと言っても納得出来る程だ。





 《とても可愛いね。ほれぼれするよ。》





と言うと、彼女はどことなくはにかんだ状態で自慢げに語った。





 《そりゃあ当然よ。自分磨きに余念がないからね。でも今までは鏡越しでしか自分の姿を見る事が出来なかったけど客観的に見て自画自賛するくらい私は可愛いわね。そうだ、汗もかいた事だしお風呂に入ろうかしら。まずは部屋に戻ってお父さんとお母さんに風呂に入りたい旨伝えないとね。》








手を拭いて部屋に戻り、三花ちゃんは両親に風呂に入りたい旨を伝えた。


寝起きの時はくらくらしていたけど大分治まってきており、両親、兄達も一緒に入る事にした。





 「どうしたんだい?三花。皆風呂場に入ったけど脱衣所で突っ立って。」





お父さんが怪訝そうにこちらを見ながら言ってきた。





 「うんん、なんでもない。今から私も今から入るわ。」





と答えるので精一杯だった。





 《どうしたの?早くパジャマと下着を抜いて風呂に入りましょうよ。》





三花ちゃんが催促してくるが僕の手は止まったままだ。





 《もしかしておじけついてるの?これからはこの身体で過ごさなければならないのよ。》





発破をかけてくるものの、





 《いや、緊張していてね。それにボタンの向きが逆だから外しづらいんだよ。それにいいの?》





彼女に問いかける。





 《いいに決まってるじゃない。あなたと私は一心同体。いえ、この場合は二心同体と言うべきかしらね。ほらほらただでさえ汗をかいているのにもしかして風邪をひかせてまた熱を出させたいの?》





 《いや、そんなつもりはないよ。では意を決して脱ぐよ。》





そうしてパジャマのボタンを外して上着とズボンを脱いだ。そして肌着も脱ぐ。





終ってみれば実にあっけない物だった。


そしてようやく風呂場に入ると、





 「三花、やっと来たか。一体どうしたんだい?脱衣所でしばらく固まっていたみたいだけど。」





とお父さんが心配して声を掛けてくれた。





 「そうよ、どうしたの?」





とお母さんが声を掛け、





 「そうだ、そうだ。どうしたんだ?」





と兄達からも言われた。





 「ううん、なんでもないよ。」





僕は適当にごまかしつつ、湯船に入る前に身体を洗おうとする。


と、お母さんが気付いて「手伝ってあげる。」と言い背中を洗ってくれた。





僕は三花ちゃんに教わりながら、シャンプー、リンス、トリートメントで頭を洗い、タオルに石鹸をなじませてから身体を磨いた。





 《なにしてんの?しっかり見なさいよ。これが今後のあなたと私の身体なんだから。》





どうしても僕は鏡から目をそらしてしまう。





 《いや、どうしてもちゅうちょしてしまうよ。それに神々しいからね。》





どうにか答える。





 《ふふっ!嬉しい事言うわね。》





なんとかして身体を洗い浴槽に浸かると、疲れが癒されていった。


           ・


           ・


           ・


           ・





のぼせ上がる前に風呂から上がり着替えを見た時またちゅうちょした。


するとまだ病み上がりなのかと心配したお母さんの手により、着替えさせられ部屋に戻った。








 改めて三花ちゃんの部屋を見回すと色々なお人形やぬいぐるみに囲まれており、自分自身も着物を着れば等身大の日本人形にでも見間違える程であった。





中には兄達から借りたであろう漫画本や雑誌が置いてあり僕にとっては実に懐かしい内容で思わず涙があふれてきてしまった。





 《急に泣き出してどうしたの?》





三花ちゃんが慌てて質問してくる。





 《いや、つい懐かしさの余り涙が出てきてしまったんだ。》





僕が答えると、





 《そういえばあなたは増刷した物でしか読んだ事ないわよね。でもここにあるのは初版物ばかり。まさにお宝と言う事よね。》





三花ちゃんが答える中、僕は一心不乱に漫画を読んでいた。





 《お楽しみの所悪いけど、漫画の時間は終わりね。あなたはわかっているはず、時間管理をしてメリハリのある有意義な時間にしないとね。熱でここしばらく寝ていたけど、明日からお稽古のレッスンがあるの。


ピアノや護身術、その他もろもろよ。》





 壁をよく見ると予定表が書いてあり、日中は幼稚園に通園し夕方から稽古の予定が組まれていた。





 《明日はピアノの日ね。あなたの記憶から未来の音楽を拾い出してみるつもりよ。まずは先生に驚かないでね。きっとあなたはびっくりするはずだろうからね。》





どことなく含みを持たせ三花ちゃんはきっと驚くはずだと予言する。


まさに驚きの一言であった。


今日はもう遅いので寝る事にした。

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