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〇4月22日(日)


 式まではあと二か月あまり。サプライズを仕掛けるんだ、と、それに熱中することで何とか立ち直ってきた久我であったが、生来慣れないことをしようとすると、ろくでもない結果になることは多々あるのであった。


 おばあちゃんから譲り受けたゴールドに大きめのダイヤの一粒が光る指輪。デザインは若干古めかしく、キズやへこみなど、かなりの使用感もあるものの、その存在感は数十年を経たと思われる今なお、見る者をしばしの沈黙へと誘う逸品である。


 あたしゃもう必要ないし、おとうさんのもあげるからさ、ガクちゃんの好きなようにお使いよ、と惜しげもなく託されたその豪奢な指輪と、対になっている銀色で装飾の全くない簡素な指輪。見た目は全く異なるものの、何故かつがいの生き物のように見えるその一対のリングは、祖母と祖父のこれ以上ない想い出の品であるわけで、二人の見た目や性格も反映されたかのようなその佇まいに、久我はただただ恐縮するばかりなのであった。


 でもやるなら早いところ行動に移さないと。と、色々へこむ事はあったものの、ここに来て俄然やる気を発揮するのが彼の何とも言えないエンジンのかかり方、あるいはスイッチの入り方であり。先んじて制すでも無く、追い込まれてからの猛追でも無い、期限残り三割くらいのところでプレッシャーを感じずにひとり悠然とロングスパートをかますのが、彼の幼い頃からの性分なのであり、勝ちパターンでもあるのであった。


 今回は、指輪リメイクの業者選定に一週間。さらに自分も手伝って仕上げたいとの要望を巧みに話し込んで組み込むこと半日あまり。これまでのところは、彼には珍しく順風を受けての遂行となっている。佳苗には全て伏せて行っているのだが、勘の鋭い彼女に感づかれてはなるまい、と、ダミーの結婚指輪も二人でショップを訪れて選定と購入をも行っている。


と、そこまでは完璧と思える出来だったのだが、二週間まではキャンセル可能、と事前にしっかり確認していたものの、式前の繁忙に呑まれ、すっかり忘れてしまってキャンセル出来ず、購入を余儀なくされたというオチがつくのであった。


 そんな事を伴侶に言おうものなら、旧姓のごとく激昂されると思ったので、ダマのままで未だ怯えつつ過ごしている久我であり、これはまたスイートテンの時にリメイクしよう、との思いを秘め、思わぬ出費となったその補填を、自らの小遣いと昼食費から捻出する苦難の日々がこの後始まるのだが、それはまた別の話なのであった。


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