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「ここの生徒会は中学からの引き継ぎ制だ。なので生徒会の選挙などはない。そのため役員全員が能力者ということになる。これは能力者と一般生徒の間での揉め事が起こった場合、そのストッパー役を生徒会が担うためだからだ。」
和樹の言うようにこの石持学園の生徒会は、能力者の暴走を止めるという立場を担っている。なので能力者の暴走を止めるには能力者の力だろう、という目には目をの考えのもと生徒会は石持の者だけで構成されている。
暴走を止めるには実力のある能力者でないと意味がないし、さらには能力者と一般生徒をまとめなければいけないので、自分達で言うのもなんだが生徒会は能力者の中でも極めて優秀な人達が役員を務めている。
能力の大きさ、コントロールが秀でているのはもちろん、成績面、生活面でも優秀な者達が教師に推薦されることによって初めて生徒会役員となれるのだ。
この厳しい審査をクリアした一握りの者が役員となれるので学園内の生徒会への憧れは凄まじい。
女子の人気も高い。
…とそれは置いといてだ、さっきの燈火の「揉め事」という発言で今年からこの学園に入った新入生の顔が少し強張った。
まあ、石持の人自体が少ないから能力を間近で見る機会は少ないし、不安になるのも仕方ない。
石持が広く認知されてるとはいえ、実際どのような能力があってどのように使っているのかは知らないという人がまだまだ世間には多いのだ。
「揉め事と言っても頻繁に起こるわけじゃありません。もし仮にあったとしても僕たち生徒会や風紀委員の人達がキチンと仲裁に入るので安心してください。」
僕がそう付け足すと少し安心したのかホッとした顔になった。
なぜ風紀委員という言葉が出たか説明したいけど、今は後回しだ。
「まあ、そういうことだ。今年入学してきた奴達は石持の事についてまだまだ知らないことが多いだろうと思う。石持の奴らも今迄能力者しかいなかった中学までの環境じゃない。より一層自分の能力について理解してもらわないといけない。そのために今回の3学年合同の合宿が行われている。この合宿については担任から簡単に聞いているとおもうが、今度はこちらから詳しく説明させてもらう。出流、あとは頼んだ。」
「はいはい。…では次に合宿についての説明をします。この合宿は大まかに言うと、お互いそして自分自身の立場をキチンと知ってもらうための合宿です。でもまあ、いきなりお互いの全てを知るというのほ難しいと思うので、簡単に親睦を深めるという感じに捉えてくれたらいいと思います。」
「この合宿は2泊3日で、行動班は3年生から2人、2年生から2人、1年生から2人の計6人での構成となります。メンバーは勝手ながらこちらで決めさせてもらいました。メンバー表は委員長の人に後で取りにきてもらいますが、委員長はもう決まりましたか?」
そう言うと、目の前でピッと手が上がった。手の上げ方がまた可愛らしい。
まさかの琴音が委員長とは…
あ、そういや和樹との最初の接触イベントがこの説明会って我が親友が言ってたっけ?
確か、幼馴染のはずの琴音が話しかけたのに
「お前なんか知らない」
って言って突き放すシーンだって言ってたはず。
「…東堂 琴音さんですね?ではこれが終わった後用紙を取りに行くのでついてきてください。委員長の方達には合宿のメンバーについての説明会があるのでよろしくお願いします。」
「は、はい!」
「ではこれで説明会は終わります。メンバーの顔合わせは明々後日、来週の月曜日に行いますので皆さん忘れないようにお願いします。今日はお疲れ様でした。ゆっくり休んでくださいね。」
そう締めくくると、井無田先生が「今日はこれで解散だ。帰ってもいいぞ。」と言ったので皆バラバラと帰るはじめ、琴音は準備を整えるとこちらの方へきた。
「来たな。じゃあ多目的教室へ取りに行くぞ。」
和樹が言うと琴音は「はい!」と初々しい返事をしてついてきた。なんかチョコチョコして小動物みたいだなぁ。可愛い。
そう思って廊下を歩いていると、琴音が僕と和樹の顔をジッと見つめてきた。
なんだなんだ?僕達の顔になんかついてる?
「なんだ?俺たちの顔になんかついてるか?」
和樹が僕の気持ちを代弁するかのようにして琴音に聞いた。見られて恥ずかしいのか若干照れ気味だ。
「い、いえ。…あの!間違ってたらすいません。もしかして先輩方って、昔○×町に住んでた和樹くんと、出流ちゃんですか?」
「……っ!」
和樹は覚えられているとは思わなかったのか、驚きで目が開いている。まあ、よく見ないと分からない程度にだが。
にしても僕のことも分かったのか。名前はそのままにしろ見た目が大分変わったのに。
「…、お前覚えてたのか。」
和樹が照れ臭そうにそう言った。
…あれ?
「やっぱり、和樹くんと出流ちゃんなのね!覚えてるに決まってるよー!忘れるわけないもん!和樹くんも私のこと覚えててくれただね!嬉しい!これからよろしくねー!」
「お前全然変わってないからな。顔とか全然変わってねーじゃん。身長もチビだし。」
「ひどい!これでも成長したもん!和樹くんの意地悪!」
そう、ぎゃあぎゃあ2人で喧嘩してるのを見て僕の頭は疑問でいっぱいになった。
あれ?確か記憶が正しければここは「お前なんか知らない」って言って突き放すところじゃなかった?親友が間違えてた?いやそれはない。だってセリフ一字一句覚えてるって豪語してたし。じゃあ僕の記憶違い?いや、結構何回も聞かされたからこれは覚えてる。
ということはゲームとは違う展開になったということになるのか?
僕はうるさく喧嘩している2人を止めることが出来ず、混乱した頭を整理させるのに必死になったのだった。