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奏で紡ぐ狂想曲  作者: 月夜 志紀
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「めんどくせーなー。何で新入生に説明しなきゃなんねえんだよー。入学式終わったんだからもう帰りてえよ。」


横で幼馴染が怠そうに歩きながらぼやく。


「そういうなよ和樹。生徒会が新入生に3学年合同の合宿についての説明をするのは毎年恒例だろ。…それに、会長のように1人で全部説明するよかマシだろ?」


「…まあ、そうだけど、あんまりこの合宿でいい思い出ねえんだよ。」


そう言って和樹は眉を潜めて思いっきり嫌そうな顔をした。


高校では年に一回、新入生のために石持の生徒とそうでない生徒達がお互いに馴染んでもらうのを目的とした2泊3日の3学年合同合宿が行われる。

その合宿についての説明を生徒会が新入生ににするのが毎年の恒例なのだ。


なぜ、生徒会がこの説明会を担当するのかというと、

この説明会には合宿の説明の他に今年からこの学園に入ってきた生徒に石持の能力についてをある程度理解して貰うという目的もあるからだ。


この学校は高校から石持でない人でも入学出来るのと同様に、教師も高校からは石持でなくとも就職出来るのだ。

まあ裏を返すと中学までの先生は石持の人のみしかなれないんだけどそれはさて置き。


石持でない教師が就職出来るのだから、当然能力を持たない教師が担任を持つこともある。なので、石持の能力を理解してもらう目的もあるこの説明会は、より明確に分かってもらうために石持の人だけで構成されている生徒会が担当するのである。


「和樹あの時大変だったもんなー。生徒会って言ったてもまだ全然説明出来る立場じゃないのに、女の子に質問攻めされてたもんな。」


あれは今思い出しても笑える。

僕は違うクラスだったからずっと見てたわけじゃないけど昼休みとか放課後とか一緒にいる時にみた時だけでも凄まじかった。

この高校の生徒会は中学の生徒会からの持ち上がり式になっているので当時新入生だった僕らも庶務(主に雑用)という形で生徒会に入っていたので説明出来ないことはなかったんだけど、あれは女の子が若干苦手な和樹にはキツかっただろうな。


「お前も人のこと言えねえじゃねえか。散々質問攻めされてたくせに。」


「僕は和樹と違って女の子苦手じゃないし、むしろ女の子可愛いから質問とかウェルカムだし。」


そう笑顔で答えると、燈火はチッと舌打ちしてそっぽを向いた。


自分で言うのもなんだが、両親のお陰で、僕はそれなりに整った顔立ちである。お陰で女子にはもてる。なので、和樹の言うとおり去年は燈火同様かなり質問攻めされた。けど、女の子大好きな僕としてはウェルカムだった。忙しかったけど。

そのことで和樹に同性愛とかやめてくれよと言われたが、それは心配ない。僕は異性愛者だ。


「…そういえば、女子苦手なお前も1人だけ大丈夫な女の子いたよなー。」


そう言うと、和樹ははあ?と怪訝な顔でこちらに向いた。


「ほら、僕らの幼馴染のさぁ、東堂 琴音。あの子だけにはお前仲良くしてたじゃん。それに…」


お前の初恋の相手だし?


ニヤッと笑うと、和樹はこれでもかっていうくらい耳まで真っ赤になって狼狽えた。


「なななななななあああああ!!!おおおおおお前何言ってんだよ!んなわけねえだろうが!!アホか!」


「どもり過ぎ。それにんなわけあるってえの。いっつも琴音ーー!!って言って構ってた癖に。それにお前琴音が引っ越す時に、散々泣いて『琴音いくなよ!お前は俺と結婚するんだろ?!なんで行くんだよ⁈』とか言ってただろうが。」


あー、あれは思い出しても笑えるな。


「っそそそそれ以上言うなああああ!それはもう昔のことだろ?!もう会えねえ奴のことなんて今更引っ張ってくんなよ!!」


さらに真っ赤になって叫ぶ和樹に今度は僕がはあ?と怪訝な顔をする。


「…お前会長に目を通しとけって言われた名簿見てないの?ちゃんと仕事しろよ。」


「は?め、名簿?…ああ、あれか。後で目を通そうと思ってまだ見てねえけど何だ?」


未だ狼狽えながらも答える和樹に僕はため息をつく。


会長に目を通しとけと言われた名簿は今回の説明会の担当をするクラスの名簿だ。だから説明会前までに見てなきゃいけないんだがこいつは見てないらしい。


因みに僕達の担当するクラスはAクラス。これは琴音がいるクラスだから名簿見てたら絶対彼女がいるって分かる筈なんだけどな。


「名簿見てないお前が悪いんだからな。クラス行ってお前がどうなっても僕は知らないから。」


さっさと行くぞ、そろそろ時間になるし。と僕は足早に琴音ヒロインのいるクラスへと急いだ。その間、和樹にどういうことだよ?と散々聞かれたが、こいつが琴音にあった時にどんな反応をするか楽しみで仕方なかったので、琴音がいることを内緒にしておくために全部無視した。

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