4
それから何年か経過した。
僕らが小学三年生の時に琴音がまた引っ越していき、その後も色々あったけど、僕の傍観者計画は順調に進んでた。
だがそんなある日、僕の計画が一気にぶちのめされてしまったのだ。
もうすぐ小学四年生になろうとした春休み、僕はいつものように朝起きて顔を洗いに洗面所に行って驚愕した。
目の色が違ったのだ。
アジア人特有の真っ黒な目が鮮やかな青色(右)と赤色(左)になっていた。
そして右の手の甲に白い石が埋め込まれていたのを見てさらに驚いた。
これを見たとき今までにないくらい叫んだ。
親はその声に驚いて飛んで来て、僕の目と手の甲をみて二度驚いた。
僕は石持になってしまったのだ。しかも複数持ちの。
複数持ちとは石持の中でも特に稀らしく、複数の能力の持ち主である。
能力の数に合わせて石の数も増えるらしい。
まさか僕が石持になるなんて思ってもみなかった。
しかも複数持ちとか目立ちまくりじゃないか…!!
そんな思いも虚しく、結局同じく石持となった和樹と共に強制的に石持学園に転入することになってしまったのだ。
が、ここでちょっとしたハプニング起きた。
僕の下に届いた制服が何故か男子の制服だったのだ。
一人称もこんなんだし、只今身長174cm、声も男子ですっていっても通用するという僕だが、実は性別上は女子・・である。
もう一度言おう。女子・・である。
そんな僕の下に男子の制服が届いたのだ。
学園側も僕が女子であることは知っているので多分何かの手違いだろう。
両親は学校に問い合わせて変えてもらおうと言ってくれたが、その時僕は思いついたのだ。
昔、前世で読んだ小説に今の僕みたいに乙女ゲームの世界に転生した女の子が傍観者となってヒロイン達を見守っていくというのがあった。
だが、大抵の主人公が何らかの形で攻略対象者に気に入られて気付いたらあれ私、攻略対象者に好かれてる?みたいな感じになっていたのである。
まあ、小学生だし攻略対象者と恋愛に発展することは無いだろうが、成長したら別である。なにを拍子にラブされちゃうか分からない。
だから僕は決めたのだ。
男装して男子として学校生活を送ってしまおう。そうすれば、別に攻略対象者と接触してもまだ安心だろう、と。
当時の僕は既に男っぽくてバレンタインも男子に渡す側ではなく女の子に貰う側だった。それを苦痛に感じたことはなく、むしろ大歓迎だった。女の子可愛い。女の子万歳。
既にそんな思考だった僕は思惑を実行すべく両親の説得を行ったのだ。
「お父さん、お母さん。」
「ん?どうしたの出流?」
「あのね、私男子の制服着て学校に入る。」
「「え?!」」
当然の如く親は僕の発言に目を見開かせた。
「だって、制服取り替えるのにも時間かかっちゃうんでしょ?オーダーメイドだから。」
石持学園は石持のものに限り制服は其の者の能力に耐性のある制服をオーダーメイドで作るのだ。
「そ、それはそうだけど。でもだからって想羅は女の子だろう?」
父が狼狽えながら答える。
「うん、けど私男子の制服でもいいよ。学校でも男の子みたいだって言われてるし気にしないよ?それに折角作ってもらった制服が勿体無いよ。ね?お願い?」
めったにしないお願いと、自分で言っちゃうのもアレだが整ってる顔で上目遣いをしたら、いくら男っぽく見える僕でも可愛く見えるみたいで、両親は快諾してくれた。
母は「男装で学校生活!なんか考えたら楽しそうだわウフフ。」
ってちょっと危ないこと言ってたけど、
父も「まあこれで可愛い出流にわっるい虫は付かないだろうしな!!」
なんて親バカ丸出し発言してたけど、
僕の制服姿を見た幼馴染に「お前…、男にしか見えねえな。」
なんて言われたけど、無事に男装して石持学園に転入することが出来た。
もちろん和樹は、殴っておいた。
こうして僕は男として学校生活を送っていった。
そして今や高校2年生となり、攻略対象者と同じ生徒会に入っている。
正直ここまでガッツリ関わるつもりじゃなかったんだけどそれはそれで楽しいから気にしていない。
むしろ傍観せずにこの立場を利用して琴音の恋愛を応援しよう!!とさえ思っている。
だから、僕は琴音が入学して来た今日からのこの1年が今楽しみで楽しみで仕方ないのである。