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「そろそろだね」
出流は窓から下を見ていう。
「ああ、そろそろ入学式だな。」
出流の言葉を聞いた男がそう返す。
「うん、まあ」
それだけじゃあないんだけどね。
出流は誰にも聞こえない程度の声でボソっと呟いた。
「なんだ、煮え切らないな。なんかあるのか?」
男は少し怪訝な面持ちで想羅を見る。
「いや、別に何にもありゃあしないさ。」
出流は窓から目を離して男の方に顔を向け笑顔で答えた。
男は少し疑問に思いながらも、そうかと頷いた時、外からバタバタと走る音がしたかと思うと勢いよくドアが開いた。
「おいなにやってるんだ、乱暴にドアを開くんじゃない。」
男はドアを開けた男を注意するが、相手は気にすることなく部屋に入ってくる。
「いや、何やってるんだはコッチのセリフだし。そろそろ入学式なんだから早く講堂に行くぞ。生徒会が入学式に遅れるとかありえねえだろ。」
相手は呆れながら2人に注意をすると、さっさと行くぞと行ってまた走って部屋を出て行った。
「全く。忙しいやつだなあいつも。まあそろそろ行かなきゃ確かに遅れるな。俺らも行くぞ出流。」
「ああ、そうだな。」
そう言って2人は部屋を出て行った。
「(いらっしゃい、僕の幼馴染。この一年、君はこの学校の主人公さ。精一杯楽しむといい。)」
そう思いながら出流は廊下の窓から見える、これから入学する一つ年下の幼馴染を一瞥し、講堂へと足早に向かうのであった。