表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

罪のヒステリア

作者: 藤宮ノーツ


世界が反転した。そのときには既に手遅れだった。

 僕は何がなんだかわからなかった。

 でも、その時既に、始まっていたのだった。


 世界の反転は、僕等の物語は。

 終焉に向かっていたのだった。



 西暦の終わりは唐突だった。

 ほんの十年前に僕等が学生をしていたときに、終わりは突然訪れた。

 最初は、混乱していて何もわからない僕が居たが、時間が立つに連れてすぐに全てがわかった。


 クリアになった思考から、

 正解が終わったことを理解させられた。

 そして、新しい時代が始まったのだと認識させられるまでにさほど時間は掛からなかった。


 目の前には、


 いや、上空には陸が浮いて居たのだった。


 目を疑った。

 もしも、目をくり抜いて丸洗いできるなら、幾度も行うだろう。

 目に大きなゴミが入ったかのようにも思った。

 しかし、それは本当だった。現実だった。

 あまりにもリアリティのないリアルに、僕は何も声が出なかったのを覚えている。

 そして、この時代には新しい生命も存在していた。


 それも、人類の敵である。

 僕が何をいをうと、何をしようと、その人類の敵は人間を見ると、食いつく。

 喰い散らかす。食い殺す。殺して殺しまくる。

 

 人類は、その敵に逃げ回る今年いか出来なかった。

 良くも悪くも、その敵は空に浮かぶ大陸には近づいてこないことがわかり、

 人間たちは、逃げるように、大陸に逃亡して、現在の平和を手に入れたと言ってもいい。


 それも、十年前に話だが。



 僕等の西暦が終わってから、既に四十年が過ぎていることから。


 つまり、今から三十年前の話で、人類は、百数十年分後退してしまった。

 敗退して廃退した。


 

 逃げた人類の技術力は十分に衰退してしまったが、それでも特殊な人間が生まれたことで補われていた。

 特殊な人間。それは超能力者である。


 人類は、どうやら追いつめられたときに真の力を発揮するようで、空から超能力者は多く存在するようになった。

 

 生まれた超能力者のお陰で、人類は的に反撃の力を手に入れたのだった。


 そして、良くも悪くも、時が経てば人間と超能力者の境目ができるわけで。

 それから、指揮官がまだ地上を知っている人間ということもあり、超能力者を受け入れることが出来ていない人間が殆どで。

 僕は、どうしてか地上を知る四十年以上前の人間なんだけれども、どうして課長能力を使えるようになってしまった哀れな人間でもある。


 だからか、人間都庁の力者達を区別する案が出て承認されてしまったときに、その群のリーダー的存在に僕が推薦されていたのだろうと、愚直する。

 群は軍に昇華し。僕らは、何も戦えない人間たちを守るための壁役として、空中大陸の敬語を任されるようになったわけである。


 



「大将。自分はこれからどうすれば良いのでしょうか?」


「そうやね。全然することもないし、休んでていいよ。これまで任務とかで結構疲れたろ? まじで。休んでるってのが君の任務ってことでよろしく」


「い……イェス、大将」



 敬礼をして、その若い少兵は部屋から出ていくのだった。

 別段きらびやかでも、何かの調度品があるわけでもない、良く言えばシンプル。悪く言えば牢のような飾り気のない部屋に、大きな司令官が座るような椅子と机を用意しただけの、そんな部屋。

 僕、ことイマガワ・ヨシノリが両手を組んで座っていた。


 五十七歳とも思えないほどの若作りをした顔に、色の違う双眼。

 そして、顔も真ん中には、ちょうど顔を半分に割蹴るような大きな傷が一本。

 

「肩が重い。どうしてこんなことを僕がしないといけないのか。

 外調査とかが一番気楽で、楽勝だろうに。

 彼は、何があったのか。別にあの《アルファ》程度しかいない平野の調査とか、一人でも出来たろうに。

 どうして結構な傷を負うまであるのか。不思議でたまらない」


《アルファ》と言うのは、人類の敵である人間を食べる怪物の一番多い個体の名前である。

 全く警戒する必要もないものであり、RPGで言う、スライム程度の存在である。

 僕ら超能力部隊、【カルマ】にとっては。


 そういうのは、《アルファ》でも、【カルマ】ではない人間と退治すれば、1vs1000であっても勝つのは《アルファ》だからである。

 人間は、【カルマ】……僕ら超能力者より、遥かに弱い。体の作りが違うというより、【カルマ】は生まれてからすぐに体の表面に結界のような断層を構築している。それは、物理攻撃を弱めることのできるような、防御結界であり、それを自然に発動しているに等しい。

 それが在るか、無いかでは、前例に上げた通り1vs1000を覆す。


 1vs100を可能にする。それは、基準にする者は逆になる。

 すると、人間と【カルマ】の肉体スペックも、必然的に10万倍ということになり、【カルマ】は人間というより、人間の一種の進化形態と言っても過言ではない。


 だから、人間から離反することは当然と思っており、自分たちを人間と思っていない。


 思考的には人類という括りにはまとめられると思うが、能力を使える時点で、人間と【カルマ】は区別するべきだ。

 いや、しなければならないだろう。

 そうやって僕らは、




 ――――――生きている。

 

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ