表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
26/42

サバンナの悪ガキ達

 出勤入力を終えて杏子さんと弘美さんが売り場に出て来た。

異常に背が高いチンボは半袖のユニホームで売り場内をふらついている。

弘美さんがレジカウンターに入り静子に、


 「おはようございま~す」

 「おはよう。勉強してる?」

 「ハイ」


杏子さんはカウンターの前を通り過ぎながら、


 「おはようございまーす」

 「は~い、おはよう。今日も頑張りましょう」

 「は~い」


静子は杏子さんの服装を見て、


 「杏子さん、名札が上下反対ッ!」

 「あッ、すいません」

 「ちょっと杏子さんも来て。新人サンを紹介するから」

 「は~い」


杏子さんがカウンターに入って来る。


 「チンボくん! 来てー」

 「ハ~イ」


弘美さんと杏子さんが顔を見合わせ、


 「チンポくん?」


チンボがカウンターの中に入って来る。

静子が、


 「今日からここで働いてもらうアルバイトのモンサ・チンボくんです。で、こちらが杏子さんにこちらが弘美さん」


杏子さんは異常に背の高いチンボを上目づかいで見て、


 「・・・どこの国の人ですか?」

 「ケニア デス」


チンボは二人を見て、


 「高校生デスカ?」


杏子さんは消極的に、


 「あ、イエスッ!」

 「ワオ、可愛イー 」


弘美さんは何か聞かれる事を怖がって、急いで雑誌コーナーに逃げて行く。

杏子さんも徐々にチンボから離れて行く。

弘美さんは雑誌を整理しながら、カウンター内の二人の会話を聞いている。

静子はおでん鍋の前で俯いて居る杏子さんに、


 「杏子さん、いろいろ教えてあげてね」


杏子さんは焦って、


 「えッ! え、ええ・・・はい」


弘美さんが雑誌を持ってカウンターの前に来る。


 「店長、チャンピオンの表紙、またヤブけてますよ」

 「ええ! また~あ。ッたくー」


チンボが弘美さんを見る。

弘美さんは急いで離れる。


 「チョット、アナタモ高校生デスカ?」


弘美さんは振り向きもせず、距離を取って、


 「チンポさんは学生ですか?」

 「チンポ デハアリマセン。『チ・ン・ボ』 デス」

 「あ、すいません。チンボさん」

 「ボクハ、大学生デス。大学 デ マラソン ト 政治 ノベンキョウ ヲ シテマス」

 「えッ! アスリートなんですか?」

 「箱根駅伝 ノ レギュラー デス」


静子が驚いて、


 「え~ッ! そうなの」


そこにドアーチャイムが鳴り続け、外に居た少年達がまた店に入って来る。

杏子さんは渋い顔で少年達を見て、


 「いらっしゃいませ~」


チンボも、


 「ラッシャイマセ~。ヤッパリ カラアゲ ヲ カイニ 来マシタネ」


少年達全員がレジカウンターの前に立ち止まり、チンボを見る。

石田さんが帰り支度を終え、売り場を通り過ぎる。

カウンターの前に立ち尽くす一人の少年の肩にぶつかる。


 「イテッ!」

 「ボーっとつッ立ッてんじゃね~よ。邪魔だ。ドケッ!」


石田さんの「迫力の啖呵」に驚き、ぶつかった少年が、


 「あッ、すいません!」


少年達は通りを開ける。

静子と杏子さん、弘美さんは石田さんの迫力に目が点。

チンボは石田さんの帰る背中に、 


 「オツカレサマデス。ボス!」

 「おう、頑張れよ。チンボ!」


少年達は石田さんの最後の一言に、


 「えッ! チ、チンボ?」


カウンター内のチンボが少年達の一人を見て、


 「シヨウガクセイ デスネ?」


少年はムカついた顔でチンボを見上げて、


 「お・と・な・ッ!」

 「オトナ? 小サイネエ」


少年達は黙って売り場の奥へ行く。

恋三はバックルームから売り場に出て来た。

少年達の傍にそっと近寄って、


 「いらっしゃい、マッセ~~ッ!」


少年達は驚いて、


 「ビックリしたなー!」

 「何もビックリする事はないだろう。それとも・・・」


少女が、


 「何でアタシ達の事を疑うんですか?」

 「お客様だぞ」

 「チャントお金払えばな」

 「・・・さっきあの黒いヤツ、踊ってたぞ」

 「踊ってた? あ~、アレはトレーニングと言うんだ」

 「トレーニング? ・・・オーナー、バイトやらせてよ」

 「ダメだ! フラフラして騒いでるヤツにはウチの店では働けない。ジャマだッ! 買わないなら出て行け」


少年の一人が、


 「クソジジイ」

 「うん? 何か言った?」

 「分かったよ」


少年達が店を出て行く。

店の外で一人の少年がチンボを見て『ストリートダンス』を始める。

チンボはソレを見てポケットに両手を突っ込みカウンター内で飛び跳ねる。

少年達はそれを見てチンボに「V」サインを送る。

チンボはポケットから両手を出して、両親指を横に立てガッツで踊る。

杏子さんはそれを見て、


 「カッコイ~!」


弘美さんもチンボを見て親指を立てて真似をする。

恋三は店の外があまりにも騒がしいので、外に出て来る。

路上で踊りはしゃぐ、少年達。

酔った路上生活者の一人が壊れた椅子から立って阿波踊りを踊り始める。

するとソレを真似て酔っ払い達が酎ハイの缶を持ちながら踊り出す。

異様に騒がしく成る店の前の路上。

恋三は堪忍袋の尾が切れて、


 「何をしてるッ! カエレーッ!」


と声を張る。

すると少年Aが、カウンターのチンボを指差す。

恋三が振り向いて店内を見ると、チンボがカウンター内でピョンピョンと跳ねている。

恋三は急いで店内に戻り、


 「ユー、ダメッ! トレーニング ノウ」

 「オウ、スイマセン」

 「ここは運動場じゃないんだ。カウンター内でトレーニングは絶対ダメッ!」

 「分リマシタ。オーナー、オコラナイデ クダサイ」


恋三は店から出て少年達に、


 「ジャマだ! 公共の道路をこんなに汚して・・・掃除して行けッ!」


すると踊っていた酔っ払いの一人が、


 「社長、オコルナッ! 呑めッ!」


恋三は無視して急いで店に入って行く。

少年Aが恋三の背中に、


 「モモチさん、バイト~」

 「ダメ! 絶対に、ダメーッ!」


 ダストボックスの上で『雉トラ(招き猫)』が少年達を見ている。

                         つづく

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ