表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
14/42

女の尻を触る高齢者

 恋三が暫くして売り場から戻って来る。


 「お待ちどうさまです。はい、コレ」

 「あッ! すいません」


責任者は店印が押された書類を確認して、


 「じゃッ、終わりましたのでこれで失礼します」


そこに、あのベトナム人研修生の助手が戻って来る。

責任者は研修生のメガネを見て、


 「オメー、片方のレンズはどうした」

 「さっき、天井の中を覗いてたら外れました」

 「ハズレた? でレンズは」

 「分かりません」

 「分からねえ?」


呆れた顔で研修生を見る責任者。


 「オメー、そで仕事出来るのか?」

 「分かりません」

 「オメーよー。本当に大丈夫か?・・・ 」


責任者は脚立キャタツをたたみながら恋三を見て、


 「すんません。最近、こんなのバッカり。じゃ、帰ります」

 「あッ、ちょっと待って下さい。コレッ!」


恋三は売り場から持って来た缶コーヒーを研修生の助手に渡す。

責任者がソレを見て、


 「あ~ん。もう、すいませんネ~」


研修生の男は一言、


 「ウッス」


責任者は脚立を置いて研修生とコーヒーを飲みながら、


 「・・・それから天井裏に人形みたいな物が置いてありますよ」


恋三は怪訝な顔で、


 「ニンギョウ? ・・・誰が置いたんだろう。ねえ、石田さん」


石田さんはタバコの火を灰皿に押し付け、


 「知りませンよ、そんな事。でも気持ちワリーっスね」

 「こう云う古い家には、このテの話はつき物ですよね」

 「ハハハハ、都市伝説ですか? 」


二人はコーヒーを飲み干して、


 「あッ、コーヒーすいませんでした。じゃッ、これで失礼します」

 「帰りますか? じゃ、ご苦労さまでした」


研修生の助手が、


 「ウイッす」


二人は事務所を出て行く。

すると通路から責任者の声が、


 「オメー、脚立キャタツは」

 「あッ、置きッパだ」

 「アノヨ~ウ、ほ・ん・とう~に、オメー、大丈夫か? 」


賑やかな二人であった。


 ひと段落ついて、恋三と石田さんは天井を見詰めて居る。


 「・・・ちょっと覗いてみましようか」

 「そうだねえ」


恋三はテーブルの上に乗り、天井の蓋を開けた。

中を覗きながら、


 「ホオー ・・・こんなふうになってるんだ」

 「なんか見えますか?」

 「暗くて見えないなあ。石田さん、机の一番下の引き出しに懐中電灯があるから取ってくれる」

 「はい」


石田さんが引き出しを開けて懐中電灯を取り出す。


 「はい。どうぞ。・・・どうっスか?」

 「え~え?・・・うん。あッ! 有った。光ってる」

 「アイツの外れたメガネのレンズじゃないっスか?」

 「いや、違う。レンズなんかじゃない。・・・目だ!」

 「メ?」

 「目が光ってる。でも・・・人形か? あ~あッ! 猫だ。ネコが干乾びて死んでる」

 「ネコ? あッ! 分かったッ! チューネズミにやられたんだ」

 「ネズミに? うんなバカな」

 「いや、アイツならヤリかねない。一匹、でっかいボスネズが居るんスよ」

「ボスネズ? 石田さん、店長呼んで来てくれる」

 「は~い」


静子と石田さんが事務所に来る。

静子が渋い顔でテーブルの上に立つ恋三を見て、


 「何やってるの?」

 「マイッタたよ。屋根裏でネコが死んでるんだ。ッたく、なに考えてるんだろうなあ」


静子が突然納得した様に、


 「あ~あッ! それだ。それであんなにハエが居たんだ」

 「あ~あ、なるほど。そう云う事か。店長、わるいけど隣りの大家さん(家主)呼んで来てくれる」

 「はい。でも、あのお爺さん居るかしら」


静子が事務所から出て米屋の大家を呼びに行く。

石田さんはタバコを吹かしながら、


 「・・・あのスケベジジイ」


恋三は天井裏に頭を入れながら、


 「え? なんか言った?」

 「あの大家、シトケツをやたら触るんスよ」


恋三は下の石田さんを見て、


 「何だい、それは?」

 「この店の女の客、ほとんどが 触られてンじゃないっスか。店長も今頃、触られてますよ」


恋三は驚いて、


 「え~え!」


暫くして、静子と大家が事務所に入って来る。

この米屋の大家がまた典型的な江戸っ子である。

まるで『歌麿の絵』に出て来るヤッコの様な顔立ち。


 「アンだって、ネコが死ンでる? ど~ら、ちょっとドイテみな!」


大家はさりげなく石田さんのシリをさわる。

石田さんは驚いて、


 「キャッ! またやった。このスケベジジイー!」

 「軽い挨拶だ。なんだい、子供じゃあるめえし」

 「ナニ言ってんスか! いい加減にしてくださいよ。警察呼びますからね」

 「おお、呼んで来い。オマワリが怖くて米が売れるかい!」


恋三は威勢の良い大家を見て、


 「さすが、江戸っ子ですねえ」

 「浅草の生まれよ」

 「ごもっとも。すいませんねえ、忙しいところ」


大家は持参した脚立を開き身軽に上がり、屋根裏を覗く。


 「おうッ! 暗くて見えねえぞ。何かねえのかい」


恋三はテーブルの上の懐中電灯を渡す。


 「これどうぞ」

 「良い物のあるじゃねえか。でッ、どこだい?」

 「左の柱の下です」

 「ヒダリ?・・・ああ、アレか。分かった。ちょっとその辺のナガモノ、貸してみな」


恋三は床に立て掛けで有るカーテンレールを取り、


 「このカーテンレールなんかどうですか?」

 「ダメだいそんなんじゃ。おう、そこの壊れたモップの柄、取ってくれ」

 「あッ、はい」


モップの柄を取って天井裏を探る大家。


 「・・・よっしゃ! 待ってろ。今、取っちまうからよ。ウッ! チッ、しぶてえネコ野郎ダ。干乾びてヒッ付いちまってる。・・・ヨイショット~ッ! おッ、取れた。よーし、・・・今 落とすぞーお、どいてろ! セーノ、アラヨット!」


干乾びたネコと、ネズミの糞、ハエのサナギが床に落ちて来る。


 「キャ~ッ!」


静子は卒倒しそうな声を上げて事務所から飛び出て行く。

石田さんも「それ」を見て、


 「すッげえ!」


騒がしい事務所を杏子さんが覗きに来る。


 「何やってンですか?」


石田さんは杏子さんをきつい目で見て


 「オマエには関係ねえ。仕事しろ!」


杏子さんはネコのミィーラを見て、


 「ウワ~ッ!」


売り場に飛んで逃げてしまう。

大家は脚立をたたみながら、 


 「これで一件落着だ! 参っちゃうよな、こんな所でオッチンじゃいやがってよ。おうッ! これ、ダンボウルにでも入れて燃やっしまいな」


大家は干乾びたネコの死骸を石田さんの方に蹴飛ばす。

石田さんは卒倒しそうな声で、


 「ギャーッ!」


石田さんもどこかへ飛んで行ってしまう。

恋三は感心して、


 「いやあ、コンビニっていろんな事が起こりますねえ」


大家は恋三を見てニヤっと笑い、


 「賑やかで良いじゃねえか」

                         つづく

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ