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第7話「土建業とエロMOD」


 世の中にはエロが大好きな人々がいる。


 それはどの世界、どの宇宙でもきっと共通だろう。


 現在、戦争準備中だと言うのにエロは人類を救う。


 いや、もう少し小さく戦争を吹っ掛けられた可哀そうな辺境を救うのである。


「にゃふぅん?」


「ふぉおぉおぉ!!?」


「にゃふふふふふ~~」


「にゅぉおぉぉぉぉぉおぉぉ!!? しゃべ、しゃべりまづぅぅぅぅぅぅ」


 マニアクス・ニャァンの捕虜(猫)の女性陣によるエロい事……まぁ、性的尋問で今正に搾り取られ、干乾びつつある四勢力の男達は正しく極楽に消えるだろう。


 言葉は喋れないのに滅茶苦茶ちゃんと言葉は理解出来る猫のエロい事をしてなくて欲求不満ですという層によって男達はペラペラと内部情報を話してくれていた。


 拷問よりも簡単な情報抽出である。


 全裸でベトベトな体のまま親指を立ててまるで歴戦の兵士かガテン系にーちゃんみたいに良い笑顔の細マッチョな彼女達はどうやらまったく性病関連では無双する遺伝子を持っていたらしく。


 自分達の派遣した連中が戻ってこないとやって来た鼻息も大きい荒くれの男達を絞り尽くした。


「―――(゜Д゜)(昇天して劇画調に固まる死に勃ち漢の顔)」


 先日から色々と状況証拠やら爆発した船に載せられていた資料やらを調べていたのだが、派遣されていたマニアクス・ニャァンの殆どは簡易の遺伝導入によって、捕虜になっても生きて帰れるように訓練され、性病も撲滅出来る体質になっていたという事が分かった。


 完全に辺境を手中にして駐屯する気満々だったのである。


 まぁ、結果として彼女達のストレス発散に使われた屈強そうに見えた男達はそっと部屋を覗くと絞り切られたボロ雑巾になっており、最後は昇天したらしいので生きてた甲斐はあっただろう。


 正しく“チーン”状態であった。


 死体はサクッと近隣の野生動物のエサである。


「さてと……襲撃するか。はぁぁ(´Д`)」


 街が滅んだら困る為、勢力を一つずつ潰していく事にして、四勢力に対しての戦略も決まったのでさっさとミスティークに手紙を持たせた猫を走らせる。


「お前らぁ……仕事だぞぉ」


「にゃごっふ!?」


「にゃごごごごご……」


「にゃわっじ!!」


「グニャーゴルッ!!」


「ニャギラッシュ!! シュシュシュシュシュ!!!」


 近頃、喋れないのに肉体労働しつつも辺境ライフを楽しみ始めた猫達は趣味まで持ち始めており、今や将棋やオセロみたいな盤上遊戯やってる個体やらボクシング的な競技で男女混合試合してるやら、滅茶苦茶に謳歌しまくりだ。


 知能が下がって倫理や道徳が吹っ飛んだせいで男女間で致しまくりの夜に煩い事だけが難儀なところだろう。


 その内、個室と防音壁を用意したいところである。


 まぁ、結果的に周辺の整備が終わった寝床は毎日べとべと。


 その寝台の主に河へ毎日洗濯に行かせる事になったが、それで統率が取れているなら問題は無いと言える。


「略奪者死すべし慈悲は無い、と」


 イソイソ現場を後にして、外に出ると猫達がウロウロしている。


 朝の体操をする者。


 食事の支度をようやく手伝えるようになった者。


 トイレに向かう者。


 朝から元気が有り余ってランニングする者。


 多種多様である。


 そういう者達の中でも戦闘向きそうな猫を選抜し、隊長格に8人のスチューデント・スーツを着込んだ最初期組を抜擢したのは昨日の事だ。


 大尉を隊長として部隊を作ってみたのだが、近接格闘オンリーとはいえ、結構らしくはなっていた。


 細身の細マッチョ・イケオジと細マッチョ女性陣が軍服姿で親方に頼んでいた武装……猫的な手に鉤爪を付けて切り裂く朝練の動作は堂に入っている。


 原始的なクローアームを装備している様子はまったく血に飢えた獣の群れであり、近接格闘戦ならば恐らく普通の人類は即死だろう。


「ぐっぐっぐっ」


 これであの蛮族共を切り裂いてやりますよと言いたげなイケオジもいれば。


「グニャクククク……」


 この刃に塗った痺れ毒でこうどうふのうにしてやるのにゃぁという女曹長もいる。


 ほぼ勝手に組織化されつつある猫達の統率者。


 大尉だけは喋れるせいか。


 近接武装以外にも射撃武装が使えるようだ。


「ぱーんぱーん。ひっとにゃ。ひっとにゃ」


 朝からサプレッサー付きの何処からかっぱらって来たのか分からないFNブローニング・ハイパワー……大昔の傑作拳銃で藁人形よろしくいつの間にか造営されていた傍の砂山の的に的確に当てていた。


 いつの間にか市販の拳銃を装備して、部下達を指導している様子は正しく上に立つ者の風格。


 その統率力は圧倒的だ。


 今まで好き勝手していた連中が彼女が一声上げるだけでササッと統率の取れた軍隊に早変わりするのだから。


 まぁ、戦争になったって出番は全くないのだが。


「じゃあ、街の外壁の補修建て増し工事行って来るように」


 ガーンと口を開けて放心する選抜メンバー一同である。


「お前らだけで千人規模の勢力を捌き切れるわけないだろ。はぁ……それより街の外壁を強化して殺し間……トラップ地帯と相手の攻撃を受け切る壁造った方が有用だろ。どう考えても」


 はい。


 仰る通りです。


 とトボトボ部隊の基幹員達は仲間達を指導する指導員役としてイソイソと職場へと消えていった。


「連中が部下を指導するだろ。お前はこっちだ。大尉」


「はい~♪」


 何を頼まれるのだろうかとワクワクした様子でひょこひょこ付いて来た大尉であるが、嘗ての人格がどれ程に残っているものか。


「お前にはスポッターをして貰う」


「おまかせにゃぁ~~」


「遠距離狙撃時の計測と指示役だ。オレは技量が低いから、指示に徹する感じになる。計測用の機器は親方に揃えて貰った」


 現代のスポッターと呼ばれるような狙撃手の相棒枠は大概がAI式の機器になる。


 そもそもAI式の狙撃ドローンが主流な以上は殆どそういった機材は現代出回らないのだが、あるところにはあるもので、ヘブンにもそのあまりにもマイナーな機材が狙撃を愉しみたい人向けに存在する。


 殆どは風速を計る双眼鏡タイプのものに集約されており、光波で観測する質量の流れを計測して、現状の風向き、湿度、風速、諸々を総合して、弾道をそのままCGで視界にオーバーライドしてくれる便利な代物だ。


 嘗ての狙撃手はそれを全て自分の肌感覚や五感でやっていたとすれば、正しく職人芸の域だった事は容易に想像が付く。


「オレは弱小状態で強くなれなくなったから、戦闘の指示出しに徹する。今回襲って来る【赤靴】何某【ユッカラの氏族】【力の信奉者】【BOMM】は全部、先進文明勢力とは程遠い有象無象の群れだ」


 説明し出すと大尉がすぐに聞く姿勢になって腕を後ろにした。


「今回のミッションは連中が責めて来る前に連中の侵攻部隊の頭を全員暗殺する事だ。統率が取れてない頭不在の蛮族集団は雪崩れ込む力押し以外の方法が取れない。そして、更に頭を使わないから、殆どの状況でやたらノウキンだ」


「つまりにゃー?」


「連中には他勢力の手紙を装って挑発する文章を送付する事になってる。さっき聞き出した情報を使ってな。これで連中の中に頭のキレるヤツが居なければ、他の三者は敵だと思って仕掛けて来る時間が被ると敵対まで行くだろう」


「いんぼうにゃー♪」


 何故か滅茶苦茶大尉が嬉しそうにワクワクした様子で目をキラキラさせる。


 きっと、猫になる前はそういうのが大好きな人物だったに違いない。


「連中の野営地は特定してある。人員の殆どが此処から3日圏内の位置にある場所で大きな野営地を形成、幕屋暮らしだとの話だ。殆どの物資は近隣から略奪したようだが、あまり数がいても身動きが取れないからと精々が何処も200人程度。つまり」


 簡易の地図をそこらに落ちてた枝で地面の土に描いて、度のスタートから一連の流れを説明していく。


「3日で全て潰す。現地の指揮官が消えれば、後は有象無象だ。ついでに夜に別の勢力を装って殺せれば楽だし、街より先に潰し合いに発展する可能性もある」


「ほーほーにゃー♪」


 やはり、嬉しそうな辺り、暗闘大好き青少年だったのかもしれない。


 大尉は分かっているのかいないのか。


 ニヤニヤしていた。


 マニアクス・ニャァンの顔というのは基本的に殆ど同じなのだが、大尉だけは何かやたらと気品のある顔立ちな辺り、遺伝子でも上流階級なのは確定。


 全身サイボーグ状態で首筋は未だにちょっと皮が引き攣っているが、殆ど問題なく動けているのを見れば、本当に初撃必殺しておいて良かったと心底に思った。


 遺伝子によって能力が優秀な上に肉体もマシンナリー化されているとなると、戦闘力は実質的には生身の人間が数十人束になってようやくまともにやり合えるかどうかなのだ。


 それがMOD装備で生産系MODの合金素材製の急所を覆うアーマーを付けていたら、硬過ぎて先進文明勢力基準の火器が無ければ、ヘッドショット以外ではまともに勝つ方法が無い。


「もし、追い詰められたら、大尉……お前のプラズマ・グレネードランチャーか。仲間のキメラティック・アームドを使ってもらう」


「はいにゃー♪」


 最も此処最近で一番嬉しかった軍事関連の情報は大尉が自分の得物を使える事が分かった事であり、売らないで良かったと切実に安堵した。


 今回は装甲を外した素の【スチューデント・スーツ】に首筋にネックアーマーと呼ばれる首筋をグルリと囲むように覆う外装仕様の円形装甲を追加。


 親方に外套を特注して、大尉専用の武器ラックが付いた代物を揃えて貰った。


 外側は出来るだけボロボロに見えるように偽装を施しており、仲間達の武装も電子ロックが大尉の権限で外れるのは確認済み。


 なので暗殺失敗もしくは暗殺後に追い詰められたら、ヤバイ火力の重火器による支援爆撃によって相手を全滅させる事になるだろう。


「ミスティークにバイクを用意して貰った。サイドカー付きで燃料タンク付きだ。野営地に付いたらミッションに入る。今日中にまずは一つやるぞ」


 良い笑顔でビッと親指が立てられる。


 こうして負債の積み上がる最中にも街の外へと目立たないバイクで向かう事になるのだった。


 *


 辺境と呼ばれるには訳がある。


 此処数日、色々と近辺の情報収集を行っていて気付いたのはこの近辺が自分の知っているヘブン始まりの街。


 リントラの住民の移住先であるという事であった。


 何がどうなって、断崖のアルマートに移住したのかは歴史に詳しい者が街にいなかったので分からなかったが、ご老人の話をミスティークが聞いた時には大昔に別の場所に住んでいたご先祖達が大きな災害にあって、移住した云々。


(この世界がもしもゲーム世界でオレがやってたヘヴンの後の時代だとすれば、辻褄は合うが……それにしてはゲームのMOD仕様はあっても、ゲーム的な説明もゲーム的なUIも視界に映らない)


 何か違和感があるのだ。


 ゲーム的な能力がある。


 発動もする。


 だが、それだけでゲーム世界というにはどうにもゲームの内部というには微妙に違和感が拭い切れない。


 リントラの街からはあらゆる情報が消えていた。


 未だにハイエナから追剥ぎした手帳の文字も中身は読めない。


 ミスティークなどや親しくなろうとしている人物には一応聞いて回っているのだが、読めない文字だとの話は全く変わらなかった。


(ついでにMODの能力が使えるのに遺伝子改変用の古代遺跡そのものが無い。スイッチがあるなら、ソレもあるはずだろうに……そして、賢者のカマという言葉……マニアクス・ニャァンの連中が辺境に攻めて来る理由)


 何か全てが半端なのだ。


 そもそも遺伝子改変出来る技術は既にマニアクス・ニャァンにもあるのは大尉を見れば一目瞭然であり、それ以上の力を求めているにしても辺境に大部隊を送るという状況が意味不明だ。


 大勢力ならば、交渉で片が付く事は多いはずなのだから。


 それを力付くで奪おうというのは大きな勢力だからこそ、何処か不自然に過ぎた。


「?」


 サイドカーに座っている大尉が首を傾げる。


「何でもない。賢者のカマって知ってるか?」


「知らないにゃー」


 手を上げて知りませんと答える大尉の瞳は美少女だけあって澄んでいる。


 背丈は無いのだが、スラリとした体格なので比較的大人びて見える。


「さよか。昼過ぎには連中のいる付近に付く。夜になったら始める」


「ぐっどらっく♪」


「いや、お前もやるんだよ!!?」


「にゃくくくくくっ、ごしゅりんしゃまと夜のでーとにゃー♪」


「仕事だからな? 仕事? 分かる?」


「し、ご、と?」


「何で仕事に来たみたいな事言うの?って顔は止めろ!!? マジで仕事だからな!? ホントに頼むぞ? カッコいいは疲れるんだ……」


 そう、恰好を常に付けるのは疲れるし、襲撃しているというシチュエーション自体でスタイリッシュ度はあまり上がらない。


 戦闘内容よりもシチュエーションでどう振舞うかがチートMODには判断されているはずなので基本的に卑怯な事をすると被弾する確率が高くなるのだ。


「はぁ……」


 荒野の最中。


 街から40km程離れた丘陵地帯の一角。


 疎らな低木の奥に幕屋の群れが見えた頃。


 お誂え向きに曇り空で雨が降り始めた。


 これでようやく準備が整ったとばかりに夕闇を待って潜入を開始するのだった。


―――夕暮れ時【赤靴の同胞団】アルマート攻略部隊幕屋。


『おれたちゃ、アカグツ。血でぬれた~~♪』


『おれたちゃ、アカグツ。ふみつける~~♪』


『あ~~いい酒だ。ここら辺には結構良い酒あんな』


『おうよ。途中で襲ったキャラバンの連中も良いカモだぜ。けひひひ』


『男は身代金になるし、女はお楽しみだからな』


『あの牛女マジでっけぇよなぁ。今日の夜が愉しみだぜ♪』


『オイオイ。嬲り殺しにするなよ? 後があるんだからな?』


『アルマートとやらも、他の連中もみんなぶっ殺せばいいだろ?』


『そうはいってもよぉ』


『テメェら、浮かれてんじゃねぇぞ?』


『は、はい?! 副団長!!』


『いいか? 仮にも連中はあのマニアクス・ニャァン共をボコったんだ? テメェらに出来るか? あの連中の重砲火砲重火器の弾幕を掻い潜って相手をぶっ殺すなんぞ。それこそ全身マシンナリーになってなきゃすぐにズタボロの襤褸クズだ』


『へ、へぇ……そ、そうっすね。連中、滅茶苦茶しやがるから……』


『で、でも、こっちだって、負けてねっすよ!! 副団長は全身マシンナリーな上にアレがあるじゃないっすか』


『けっ、おべっか使ってる暇があったら、テメェの銃でも磨いてこい!!』


『ひ、ひぃ!? わ、分かりましたぁ~~~!!?』


『クソが……兵隊が足りねぇ。他の勢力連中をどうにかしねぇとな……』


『副団長。団長からの連絡です』


『おう? 何だって?』


『そ、それが……他の勢力の連中から挑発するような電文が飛んだらしくて、いたくお冠で……街を襲撃する前に幾らか奇襲を掛けて、戦力を削っておけと』


『はぁ、そうなるか。分かった。団長にはすぐに準備すると言っておけ』


『りょ、了解しました』


『ふぅ……ま、なるようになるか。それよりもお楽しみだな』


『ひ、ひぃ……』


『オイ!! 牛女!! テメェら【牛人キャティー】は家畜だ!! いいか!? オレらゼノ・アニマルにも序列ってもんがある!?』


『う、ぅぅぅ……ぅ……』


『単なる草食のクズ肉が泣いてりゃいいと思いやがって!! テメェらなんぞ、そのバカでけぇ乳からミルクを出す以外何も取柄なんぞねぇんだ!! 他の連中を殺されたくなかったら、オレに奉仕しろ!! さぁ!! 自分でな!!』


『うっ、ぅぅぅぅぅ……』


『泣いてんじゃねぇオラぁ!!?』


『あぐぅ!!?』


『殴られたくなかったら、自分からやるんだよ!!? はは!! それともお前のお仲間を先にぶっ殺した方がいいか!?』


『や、やめて欲しいのだわ……お願いっ、お願い、しますっ』


『なら、とっとと脱げ!! テメェは家畜なんだからな。くくくく……』


―――「はぁぁぁ(*´Д`)」


「だ、誰だ!? 今、溜息なんぞ吐きやがったのは!!?」


『お前は自分が強者だと思っているのか?』


「ど、何処にいやがる!? お前らぁ?! 侵入者がいるぞぉ!! ライトで周辺を照らせぇえ!! アラートだぁ!!」


 野営地で次々にライトがあちこちで光り出し、眩く世界を照らし出す。


 猛烈なサイレンでテント内の男達が次々に出て来た。


 そんな中に出て来る黄色い豹の男が1人。


 残忍な顔立ちにギラギラとした金属製のネックレスをじゃらじゃらと付けた本当に何処にでもいそうなギャングっぽい相手に思わず苦笑が零れた。


「ぶっ殺してやる!! 何処に居やがる!! 出て来い!!」


『誰もが懸命に生きている。この荒野で……』


「何ぃ!? 何が言いたい!! このクソ野郎!! 姿を表せ!!」


 テントの頭上から男の前に跳躍して舞い降りる。


「へ、へへ、ただの人間か!? だが、その身のこなし……そうか!! テメェが情報に在った反逆の英雄か!!?」


 豹男がこちらに腰から巨大なレーザー銃を取り出す。


【MEZ93】


 大型重火器MOD【HUNTER】の仮想重火器だ。


 長方形の形状は本来銃の機関部に当るところに正方形状のフュージョンパック、核融合反応を使った常温常圧下で使用可能な電池を複数使っているからである。


 現実でも使われているようなレーザーガンとは違って、やたらと高火力な以外は取り回しが悪いという欠点のある撃ち合いでしか威力を発揮出来ない代物だ。


 基本的に重いので腰溜めに構え両手で撃つのが基本。


 が、豹男は軽々と片手で扱っていた。


 どうやら全身に機械を埋め込んだ【全身機械化義肢フルマシンナリー】のようであるが、どうにも動きがぎこちない。


 恐らくはまだ全身を置き換えて日が経っていないのだろう。


「誰が何を言おうと荒野には己1人。だが、仲間達と共に必死に生きる者を虐げる者がいる」


「へ? ご高説どうも!! だが、もうテメェはお終いだ!! 正義のヒーローごっこで死ぬなんざ馬鹿のする事だ!!」


 豹男が勝利を確信してか饒舌になる。


「善良に生きようと足掻く者を踏み付ける者……それ人を悪党と呼ぶ!!」


『ッ、殺せぇえええええええええ!!!』


 さすがに囲んだ状態で銃を撃つと流れ弾が怖いのか。


 男達の何名かが刃物片手に襲い掛かって来た。


「貴様らに掛ける慈悲は無い!!」


『と、跳んだぁああ!!?』


「馬鹿な!? フルマシンナリーか!? いや、遺伝子操作!? やっぱり、あの噂は本当か!? あの最果ての街に太古の遺産がッ、へ、へへ!!」


 どうやらもう勝利後の展開に引き攣り気味ながらも笑みが浮かんでいるらしい。


 跳躍してテントに突っ込み。


 その勢いで頭を抱えて震えていた牛型のかなりカワイイ美少女。


 小柄で小顔。


 ヒト7ケモ3くらいの胸元が“でっかい”彼女の首根っこを掴んで投擲する。


「ひ、ひぇええええええええええええええええええ!!?」


 空をすっ飛んでいく少女が悲鳴を上げるが、すぐに野営地の外で3m程ジャンプした大尉が即座にキャッチ。


 そのまま背後に抱えて着地したのを見やり、振り返る。


 既に銃口の山がこちらに向けられていた。


「女1人護る為に此処で死ぬとはぁな!! 英雄が聞いて呆れるぜ!!」


「貴様らはどうやら何も分かっていないらしい」


「何だと?!」


「追い詰められたのはどちらかな? お前達は全員此処にいる」


「ッ、おい!! や―――」


「遅い!!」


 瞬時に相手の懐に入る。


 普通の人間には瞬間移動染みて視認出来なかっただろう。


 拳で豹男のみぞおちを抉り抜いて吹き飛ばす。


 その時、まるでアニメのようなナレーションとBGMが周辺に流れ始めた。


 “【弾孔装牙拳(だんこうそうがけん)】……反逆の英雄の力はあらゆる装甲を貫く弾丸、全ての敵を貫く拳は岩をも砕く!!”


 チャッチャッ、チャチャチャ、カンカーン。


 いきなり、緊張感のあるBGMが流れ始めて困惑する男達の中を駆け抜ける。


 “【魔迅思足動(まじんしそくどう)】……悪党達の最中を駆け抜ける一陣の風、強化された肉体は思考の速度で奔り、あらゆる弾丸を回避した!!”


「ば、馬鹿なぁ!? そ、そんな事あるわけない!?」


 思わずツッコミを入れた第一犠牲者の頭部を首から手刀で切り離しながら高速で駆け抜けていく。


 次々に両手両足の何処かを離れさせた男達が悲鳴を上げながら銃を暴発させ、あちこちで流れ弾を受けた男達が悲鳴を上げて倒れ伏していく。


 たった数秒の出来事だが、BGMが盛り上がるに連れて、こちらの能力が上がっていく上、更に無数の弾丸の軌道が先読みよろしく視界に映り始めた。


 それを紙一重で避けるように突進しながら突き抜け、吹っ飛んでどうにか起き上がろうとする豹男の背後に背中合わせに立つ


「ッッッ―――」


 漢の顔には汗が滝のように流れているだろう。


 ついでにやはり機械化された肉体の防護は硬く。


 しかし、装甲が穿ち切られる寸前。


 初撃で男の金属製の背骨は砕ける一歩手前となっていた。


 BGMがそろそろクライマックスに突入しそうなサビの前段階に突入。


「し、死ねぇええええ!!?」


 振り返った男が銃を向けた時にはその銃の切っ先に爪先で立っている。


『―――?!!?』


 その状況に衝撃で固まる部下達が数百人。


 茫然とする以外無く。


「今日を、明日を、懸命に働く者達の未来を刈り取ろうとする貴様らに生きる価値無し」


「ひ、ひ、ぎッぃぃ!?!」


 豹男が思わず唇の端から泡を吹いて顔を笑みに引き攣らせる。


「オレの名はガラーク。ただの傭兵だ」


 手刀が頭部から瞬時に地面までを切り裂く。


 着弾した場所から猛烈な爆風が吹き荒れ、無数の男達が木の葉のように巻き込まれながら野営地の全てのテントが横倒しになり、外に出ていた男達を薙ぎ倒した。


 クライマックスBGMが流れ切ると同時にナレーションが最後の〆に入る。


 “傭兵……反逆の英雄は名乗る。それが己の在り方であると言い聞かせるように……”


 別に言い聞かせてるわけではないのだが、内心溜息が出た。


 ナレーションMOD【ANIME‐ZEN】は生成AI全盛期に造られた莫大なネットに転がっている無償音源と版権が切れたコンテンツを自動収集し、生成AIによる嘘ナレーションを合わせて、実況を行ってくれる便利MODの一つだ。


 よく動画制作者御用達のものとして使われており、ゲーム実況中に大昔の有名声優の声でナレーションやBGMを入れて盛り上げるのに使われる。


 その中で最もゲーム実況で使われる設定は技名創作機能とBGM付随によるクライマックス実況モードである。


 これによって、普通のゲーム実況があたかもアニメの最終回染みた盛り上がりを見せる事がしばしば存在し、これで変な技名を叫ばせたり、実況のタイプを選択可能なのでそれで新しいハチャメチャな動画を作る者が多かった。


 モードが多種類追加されているが、最後にヘブンを使っていた時のモードは確か……正義の味方Ver9.4だったはずだ。


 嘘技名を漢字や横文字表現しつつ、敵の強さによってナレーションのテンションも上下する仕様である。


 勿論、嘘技だけではなく。


 武器の説明はちゃんとした情報があれば、そちらを使用して上手く説明してくれるし、黙っているのが一番良い時はBGMだけ流してくれる気の利かせようだ。


 そして、このMODと最も愛称の良いチートMODこそ確率操作HERO‐MOD【Dynamite Fever】なのである。


 MOD同士の相乗効果が狙えるものというのもその通り。


 何故ならば“雰囲気”が鰻登りで上がっていく実況MODは盛り上げる要素そのものであり、実況に技名を叫ばれたりしたら、その技になる動作の攻撃力倍率や速度や威力が馬鹿上がりする。


 BGMもそれに拍車を掛けており、一番良いところだと通常の倍率とは掛け離れた強化が発生するという開発者も思ってなかったバグ染みた挙動をするのだ。


 この【ANIME‐ZEN】の類似MODも同じような事になるが、今のところ最も相性の良いコレだけは例えレベル1くらいの強さだろうとレベル1000000越えの惑星破壊級の化け物だって倒せるバフを掛けてくれる仕様のままである。


 発動条件は色々と設定可能なのだが、最後にヘブンをプレイしていた時は悪の銀河帝国と戦っていたので悪党を倒すというシチュエーションだと発動するように設定していた。


 先日の侵攻は“軍人”による正規の“侵略活動”だったので悪党というよりは正規兵相手の戦争もの扱いされて発動しなかったのだ。


 だが、今回はバッチリ悪党でしかない相手を確認したので起動したようであった。


 本来は【Dynamite Fever】だけで片付けようとしていたのだが、すっかり忘れていたものが起動したのでちょっと驚いたのは否めない。


「大丈夫か?」


「う……は、はい」


 幕屋内部に拘束されていたキャラバンの人々を救出していくと誰も彼も骨が折れていなかったので移動させるのは可能そうであった。


 すぐ傍の丘陵の上に彼らを連れて行くと牛人の青年が助けられた少女に駆け寄って抱き締めていた。


「大丈夫だったか!?」


 兄は思いっ切り牛顔で少女のような美少女とは似ても似つかない。


 どうやら、女性は人間寄り、男性は動物寄りな種族らしい。


 妹が白めの人間肌なのに兄は思いっ切り牛革っぽい白と黒の斑模様だった。


 角や耳に関しては同じなのに顔だけでここまで印象が違うというのも大きい。


 実質、別種族のように見えるが、同じ種族なのだから、遺伝子は不思議一杯夢一杯であろう。


 特に牛の遺伝子が入っているはずなのだが、胸は2つなので豚人の何処かの誰かさんのように腹の下まで滅茶苦茶豊満ではち切れそうな乳を以ていないのはビジュアル


「は、はい。にぃさん。あのお方が助けてくれたのだわ」


 旅装束の外套と下に着込んだパッチワークだらけの厚手の布地のデニム生地っぽいドレスの少女だが、その厚手の生地の上からでも分かる胸元の巨大さはほぼエロ漫画だろう。


 ついでに下乳が丸出しな部分も含めてエロアニメ的ななんちゃってドレスに違いなかった。


「妹を助けて下さり、本当にありがとうございました!!?」


「助けたわけじゃない。悪党を叩き潰しただけだ」


「っ……そうですか」


「大尉!! このキャラバンを街まで送り届けろ!!」


「りょーかいにゃー♪ でも、いっぱつもうてなかったにゃぁ~」


 どうやら不満過ぎる結果だったらしい。


 キャラバンの荷車がいたので思わず潜入中に助けてしまったが、本来の計画とは違う動きなのは間違いなかった。


「キャラバンの人員はコレで全員か?」


「え、ええ、他は……もう……」


「悪い事を聞いたな。キャラバンの荷物は諦めて欲しい。まだ連中の殆どは銃が撃てる状態だ。このまま街までコイツが護送する」


「あ、貴方は?」


「他にもやらなきゃならない事がある」


「そうですか。どうかご武運を……」


 青年が他の歳のいったキャラバンの男女が疲弊しているのを見て、今はリーダー役を引き受けようとしているらしい。


「街まで行けば、一息吐けるだろう。一番重症なのはそのバイクのサイドカーに載せて運べ。街まで一日程度の距離だ」


「あ、ありがとうございます。本当に……この御恩は一生忘れません」


「忘れろ。日常に暴力なんて必要無い」


「ッ―――」


 ボロく造った黒い外套を翻す。


「3日で戻る」


「はいにゃー」


「野営地は焼き払っておけ」


「はいはいにゃー♪」


 ガチャンと大尉が嬉しそうにプラズマ・グレネードランチャーを構える。


 そして、盛大に上向けて弓なりの弾道で野営地へと爆撃を開始した。


 現場に背を向けている最中にも呻く男達が音も無くプラズマ溜まりに沈んで蒸発していくのが見えるようだった。


 それから3日間、干し肉と水筒の水で持たせながら、近隣の勢力のトップの暗殺を立て続けに3度成功、4日目に街に戻って来ると。


 そこには街を半分以上覆い尽くす防護壁が立派に建設されており、3mの壁をせっせせっせと生コンで仕上げている現場の猫達は現地の土建業者と一緒になって一日も早くという様子で働いていたのだった。


「にゃっにゃにゃ~~♪」


「グニャゴルルルル!!!」


「にゃごぉん♪」


 襲った部隊の殆どが別勢力の妨害だと暗殺された生身だった隊長格の死亡と同時に動き出し、他勢力と争って次々に消耗。


 最終的に部隊の殆ど20人以下になるまでに擦り減らし、撤退を余儀なくされた事がその1日後に再び偵察に出ていた大尉より報告される事となる。


「ガラークシャァアアアアアン(´Д⊂ヽ 心配したんですよ。もぉおおおおお!!?」


 牛のようにもぉもぉ言いながら街の外壁付近でミスティークに出迎えられた後。


 結果的に猫達の働きは無駄になったが、街の防壁の再建造が捗った事で行政の方からしっかり給金が出た事は嬉しい誤算であった。


 更に街の外壁の外の所有件を認めるという話が来て、大規模な農地開拓もどうぞどうぞとか言われたが、明らかに足元を見られていたのは間違いない。


 危険な壁外の農地管理はかなりの手間なのは間違いないからだ。


 街の守備隊の多くが穀物類の穀倉地帯を防衛しているが、人手が足りないので広げられない今、猫達を使って街の食糧生産力を増やそうという街側の意向はまったくガメツイものに違いなかった。


 だが、渡りに船だった事もまた事実だ。


「おまえら、よくやった」


「にゃごるるるる♪」


「ぐにゃっごごごごお♪」


 そして、拠点に帰って来たら、更に猫達の寝床と広い食卓とあちこちの建物が補修複合繋げられて、小さな寝室が何故か2棟ブチ抜きのトリプルキングサイズの寝台を入れられた広い空間になっていたりした。


 これからやろうとしていた諸々の車両整備や武装整備の為のガレージ拡張がされて資材と機材が運び込まれていたりしたのも驚くしかない。


「あ、大きくしておきました。反逆の英雄さんの拠点なんですから、大きいに越した事はありませんよね。うふふふ」


 街を救ったご褒美ですと言わんばかりにミスティークがニコニコしているのに頭が上がらなくなりそうだと思いつつ、疲労から倒れ伏すように寝台に身を預けた時。


『泥のように英雄は眠る。それが次なる戦いへと赴く彼の新たな日々の始まりだとも知らずに……』


 何故か時々誤作動するようになったナレーション音声が耳元に響き。


 安らかに眠れそうなBGMが小さく小さく聞こえ始め、落ちる意識の底へ忍び込むように流れていくのだった。


 そう、これもまたエロMOD……女性ナレーションで字の分を読み上げるかのように雰囲気を盛り上げつつ、隠語満載のお〇んこ連呼だってしてくれるというモードが最初の開発者の出発点だったとは多くが知らない。


 そういうベッド・シーン盛り上げ用MODだったのである。

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