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エロMOD先輩と賢者の窯  作者: Anacletus
第二章 エロMOD先輩と炎の聖杯-I just came to eat with a cute girl...-
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第10話「激突!! エロMOD先輩VSヤバイ難民達」


―――数日後【断崖のアルマート】東部検問所。


「ほ、ほんとに揚陸船とやらが全滅しているようですね」


「オイオイ。大昔の連中、ほら吹いてたじゃねぇのか?」


「グラマトンはその意見を支持しない。伝わる中では我らを唯一どうにか出来る兵器の一つだ」


 翼を透明化している優男。


 デカいガチムチのおっさん。


 白い30代くらいに見える男。


 どうやら副氏族長と呼ばれる連中が勢揃いしていた。


「揃っているな? これより会議を始める」


 検問所と言っても邸宅4件分くらいの地面をコンクリで固め、防壁を複数枚立て囲いとしている場所内部に倉庫と商人逗留用の施設を建造。


 大河の手前まで伸ばして、護岸工事と盛り土をしている最中という現場だ。


 護岸工事はイノセントによって今も継続中。


 大河となった周辺の堀は数百mという長い橋を架けるわけにも行かず。


 適当に流体金属を偽装して橋にしている。


(ま、連中も艦橋だけとはいえ、km級の船にやたら攻撃したりしないだろ)


 艦橋が載っている地域は内部に入り込めないので光学迷彩で覆っていても分かる人間には分かるだろうが、それに言及したりしたら、面倒事だと副氏族長達の顔には書いてあった。


 検問所の周囲には合計61隻の数百m級の艦影がズラリと並んでおり、その周囲では一時的に逗留する為に食料生産用の田畑を開墾してよろしい旨、アルマートから許可が出ており、大量の氏族の人々が農作業に勤しんでいて、周辺の肥え始めていた荒野に大量の農作物を作付け中という状態であった。


「で、だ。傭兵殿。何をした? ウチの連中が偵察に向かった時には何かに食われたような船の残骸と巨大な海水が滞留する水溜まりと船の周囲に広がる水銀のような液状物体だけが広がっているという報告を受けたわけだが」


 検問所内にある会議室は外から声も筒抜けな開放された場所だ。


 そこでバニアが呆れた様子になって端末からホログラムであちこちの船の残骸の映像を虚空に出力している。


「ああ、ちょっと世界とか滅ぼせそうなもんを呼んで船を食って貰った。あ、ちゃんと誘導しといたから」


「誘導?」


「残った奴らは自己増殖機能はあるが、減らせば普通の動物と一緒だ」


「普通?」


「一番の大物は今頃広い生け簀に音速超えて飛行中。その後は悠々自適ライフでも送ってるんじゃね(・ω・)」


「「「「………(´Д`)」」」」


「そんな顔しなくても。別にどうにかなったんだから、いいだろ?」


「ま、まぁ……そこは同意しよう」


「ああ、それとウチのセントラルで仕事してる連中からの報告だと船を落とした本船はセントラルの一大勢力の砲撃で爆沈したみたいだ」


「爆沈……大気圏外の敵を?」


「そういう兵器なんだよ。対空迎撃用のな」


 バニアがまた面倒なという顔になる。


「恐らく、連中の仲間が来ない内は問題ない。それと辺境のあちこちに新しい仲間が増えたから、お前らにもちゃんと対処方法と攻撃方法は教えておく」


「にゃー」


 大尉が各自に資料を渡した。


 3枚程度の対サメ用戦術と武装についての代物だ。


「「「「( ゜Д゜)」」」」


「あ、基本的には食われるのを覚悟でチェーンソウで戦うといいぞ。それと金属の輝きに連中は目が無いから金属に見えるあらゆる物資や兵器、建物、小物は塗料を塗っておくと更に安心安全だ。貴金属の宝飾品は止めとけ。死ぬから」


「……氏族長方。そういう事のようで」


『サメって何?(´Д`)』


 カメラ付き端末からそんな壁氏族長=サンの声が聞えて来る。


「ちょっと空中と地中と海中と地表を爆走したり、スイスイ泳いだり、超音速飛行したり、超ジャンプで大気圏外や宇宙空間やブラックホールで泳ぐだけの超生物だが問題あるか?」


『あ、はい(^◇^)(ナニモワカラナイ)』


「という事でちょっと危ない隣人が増えた事は教えておく。あ、後は大尉!!」


「はいにゃ~」


 大尉が更に資料を渡す。


「「「「ッッッ―――」」」」


 今度こそ四氏族の副氏族長達の目が吹っ飛ぶかというような様子で剥き出しにされて、その資料を凝視する。


「北東部のセントラルとこっちの境界付近にお前らの宿敵とやらが来たけど、撃退したみたいだな」


「マキナーズの大部隊……よもや、倒したと?」


「妨害電波で色々と情報伝達が遅れてたんだが、報告を受けて現地に行ってみたら、10万以上の機械の兵隊=サンが((((;゜Д゜))))ガクブルしてたぞ」


「……まさか、マキナーズを退けたとは俄かには……」


 資料には写真が張り付けてあり、体育座りしている無数のマキナーズの先兵がズーンと落ち込んだ様子になっていた。


「あ、そいつらはウチの捕虜だから、お前らの意見は却下な」


「ッ」


 思わず渋い顔になった四氏族の副氏族長達である。


 言いたい事に対して先にダメ出しされたのでウグッという顔にもなるだろう。


「何かウチの子が投降したら、無碍にはしないと言ってたからな。今、連中の無力化作業中だ。取り合えず、あんま馬鹿デカイのは困るから、中枢だけ抜き取って、今工場で小さいドローン体に載せ替えてる最中らしい」


「……一つ訊ねても?」


 バニアがもうゲッソリした顔でこちらを見やる。


「何だ?」


「我々に何か望むものは?」


「あるわけあるか。お前らみたいな面倒なのを抱えてやってるだけ有難いと思えというのがこっちの意見だ」


「う……」


「辺境に属したくないとか言い出す外来の都落ち勢力に同情する理由とかある?」


「く……くくく、はははは……はぁ……(´Д`) ソノトオリダ」


 バニアが年相応に老けたような溜息を吐く。


「悲劇の主役みたいな顔してないで普通に働け。辺境では辺境の流儀に従え。あるものは何でも使うし、意見が割れたら力でどうにかしろ」


『力で、ね……』


 バニアの持つ端末から壁氏族長=サンが滅茶苦茶渋い顔をしてそうな声を呟く。


「ただし、卑怯な事は良いが、卑怯な事じゃ済まない倍返しを覚悟しておく事。やられたらやり返される覚悟とやり返されないような準備や対応が必須って事だな」


「それが出来ればしていいと?」


 バニアに肩を竦める。


「それが可能かどうか判断するお前らを見て、オレはお前らを判断する。そういう事だ」


「「「「………」」」」


「オレはお前らに復讐するなとか。憎むなとか。辺境を侵略するなとかお優しく言ってやったりはしないし、そのつもりもない」


『………』


「だが、それじゃ納得出来ないのも分かってるから、お前らにプランをやろう」


『プランって何よ?』


「オレを雇うなら、お前らが滅ばずに済む最適な道筋を描いてやる。その範囲でなら、好き勝手していい」


『でも、どうせ何か制限があるんでしょ?』


「まぁな。あくまで断崖のアルマートが主体であって、お前らは住人だ。為政者でも何でも無く所属する組織、一派閥のリーダーとしてなら受け入れよう」


『アンタが此処のトップなわけ?』


「これから国家化するに当たり、組織的にオレはまったく為政者じゃないし、政治もしない」


『その力でトップにならないっての?』


「ただ、好き勝手やるだけだ。この邦は合議制になる予定でお前らにはマンパワーを提供するなら、会議に席を用意する」


『………』


「ぶっちゃけ、此処は辺境以上じゃないから、お前らみたいに政治闘争だの、長い目で見た政策とかやれる人間がほぼいないし、会議に集まるのはアルマートの店主くらいの連中だ」


『店主……』


「政治家じゃないから、事実上は議会で色々やるのはお前らと一部だけになる」


『そこまでして受け入れる理由なんてあるの?』


「無いぞ? ただ、困ってる連中を受け入れるのは単なる善意と合理的な実利だ。アルマートの他の連中にはもう色々と聞いてある」


『手が早いじゃねぇか』


「連中からの要求は以下の通り。金を落とせ。デカイ顔するな。住むなら働け。態度の良い客は歓迎する」


「「「………」」」


 バニアだけが頭の痛そうな顔で片手を顔に当てる。


「ま、お前らみたいな我の強い連中にはソレも無理なんだろうけどな。だから、まぁ……そうだな? 身に沁みれば黙って組み込まれてくれそうではあるか」


『どうするつもり?』


「決闘しよう。オレ1人とお前ら全員で」


『け、決闘だと?』


「ああ、全員てのは戦う連中全員て事だ。それでようやく一個人相手にお前らは対等だ」


『1人で?』


「ああ、勿論。兵器、武器、戦術、何でも使っていいぞ」


『交戦規定は?』


「非戦闘員を巻き込まないなら、船だろうが、超兵器だろうが、お前らの最強兵士だろうが全部突っ込んでみればいい」


 肩を竦める。


 バニア以外の三人が思わず真顔でこちらを見ていた。


「あ、でも、お前らにお前らの理屈があるようにオレにもオレの理屈がある。だから、オレは手加減しよう。オレ1人なら簡単に殺せると思うだろ?」


『『『『………』』』』


「それは間違いない」


 副氏族長達が沈黙したバラバラ氏族長=サンの代わりにこちらを睨む。


「ほう? 随分と舐められたなオレ達も……」


「ええ、まぁ、そうですね」


「単騎で我らの総力に挑むのではなく挑ませる、か……」


「オレは弱いからな。痛みに耐性も無いし、お前らみたいな身体能力、思考能力、解析能力、魔力資質、肉体、他諸々何も無い。だから、準備はさせて貰う」


 バニアが滅茶苦茶渋い顔になっていた。


 かなり年相応な顔になった気がする。


「ああ、勿論、オレらの“後ろ”の力は無しでな」


 彼らが全員渋いというよりも微妙な表情となる。


 ずっと気にしていたのだろう。


 ジグラットがちゃんと確認出来る者達にしてみれば、勝ち目は無いのだ最初から。


 自分達が消し炭になる火力くらいはこちらにあると理解すれば、慎重にもなる。


「ドローンも無し。他の兵隊も武装も武器も使わない。生身一つでいいぞ? 先制攻撃は無しでよーいドンで開始だ。ちなみに汚い手は使っていい。オレも使うしな。非戦闘員を巻き込まないなら諜報でも何でもすればいいさ」


「ウチの若造共をあまり挑発しないで頂けないか? 傭兵殿」


 バニアが本当にコイツは何なんだという顔でこちらを見て来る。


「アンタみたいなのが沢山いても困る。これくらいの血気盛んな連中相手にしてた方が気楽でいい」


「戦争に負けたとはいえ、それでも熟練兵である我々にその態度、随分と傲慢じゃないか?」


「そんなつもりはないんだがな。単純な評価的にアンタらは敵じゃないって事だ。あ、準備に20時間くらい掛かるから、明後日くらいでいいか?」


「構わない」


「オレも暇じゃないんでな」


「分かった。こちらはもしもの時の為の戦力以外は全軍。そちらは1人? これで間違いないか?」


 バニアが念押ししてくる。


「ああ、構わない。殺しに来ていいぞ。オレはお前らを汚い手でザックリ倒そう。白旗だけ用意しといてくれ。ちなみに壁氏族長=サンはやるか?」


『マジ、ブチ切れ案件なんですけど』


『ここまで言われて黙っていては沽券に関わる』


『そうですね。望むところです』


『いいだろう。叩き潰す』


「よしよし(^◇^) 元気でよろしい!! じゃ、ちゃんと準備しとけよ。お前ら」


『『『ぶっ殺す!!』』』


「その意気だ。オレはこれからウチの魔法使いと明日以降のガラクシオ開発の打ち合わせがある。あ、あの門がある場所の名前だ。覚えといてくれ。じゃ」


「えーらのおやつにゃ~~♪」


 取り合えず、今日の仕事の一番デカイところが終わったのでさっさと別室で待っている2人の少女達の下へ今後の予定を詰めに大尉を横に向かうのだった。


―――10秒後。


『……敵とすら思われてねぇな。ありゃ』


『あの揚陸挺を破壊した手際から察して怪物でも召喚するのでは?』


『ゲートの活性化は確認されていない。つまり、ヤツは単独で召喚が使える』


『召喚にも限度があるはずだが……傭兵殿は手札など五万と持っているだろうな』


 “副氏族長達が足跡が聞えなくなったところで溜息を吐いていた”


『ウテルスはあの提案の真意をどう思うか尋ねたい。プラネターズの総意としてです。貴方が連れて来たお客人なのですから、それくらいは聞いておきたい』


『ウテルスは戦闘に参加させる者を最低限にする事を提案する』


『オイオイ。オレらがあの条件で負けるか?』


『負けるな。相手の鼻っ柱を折らないとまともな共同生活が営めないと踏んでの提案だ。恐らく、我らの戦力は実際に傭兵殿にとっては些末なのだろう』


『些末か。グラマトンの兵隊を数千相手にしてもそう言えるとすれば、もはやソレは……』


 “遥か昔……星征く船がこの星にいた頃、彼らの始祖達が戦っていた頃を知るとなれば、その戦力規模と個人的な能力は今の彼らには相手にし切れるものではないと誰もが内心では何となくでも気付いていた”


『各々の氏族に言っておく。我らの敗北は我らの業故だ。そして、その結果をこうして惨めに享受していられるのが既に甘いとあの傭兵殿は言っている。敗者は敗者らしくしろと常識を語っているに過ぎない』


『プラネターズとしては言わんとしている事は理解出来ます。が、ああまで挑発されるのは……』


『言っていただろう? 叩き潰すつもりなのだ。我らの傲慢を……もし、そこで実利的に我らが得られる事があるとすれば、それは去勢された玉無しとしてまともに協力しようと心の底から思えるようになる……くらいのものだろう』


『ははは!! あの【轟雷】が言うとはな。だが、戦わずにとはいかないぜ? オレ達ゴルトはな』


 “四種族、四氏族の誰もが戦闘の為に創られた故にその業は正しく闘争本能という形で身に染みている”


『左様。我らプラネターズにも矜持がある。それを捨てろと言われて捨てられたのならば、その時こそ我らは新たな時代に入るのでしょう。そうしたら、後は新世代に任せますよ』


『グラマトンはどちらでもいい。しかし、あの男の戦力に興味がある。我らの旧き時代を識る者にとって我らがどれだけ些末に見えるのか。本当の意味で我らが弱者なのか。それは知りたい』


『分かった。ウテルスは同意する。ただし、ウテルスは戦力を半数しか出さない。もしもの時に戦える者や戦力拠出を求められた場合、参戦出来ぬのでは辺境での影響力に関わる』


 “こうして彼らの辺境での戦いが始まる”


『ゴルトは同意するぜ』


『プラネターズは同意しましょう』


『グラマトンは同意しよう』


『では、20時間後までに各氏族の最精鋭を表に汚い手も使おう』


『承知した』


『ま、さすがにオレらも学んだしな』


『結果がどうあれ……敵を減らし、味方を増やす為なら、合理的な判断も非合理となる』


『各々よく考えておくように。あの瞳……殺す気すら無かったのだから……』


 “難民達はイソイソと自分達の必勝パターンを構築するべく動き出すのだった”


 *


 ―――検問所【厨房】。


 あちこちで今後の予定を詰めて来た後、エーラのいる厨房で休憩を取っていた。


「はぁ~~~疲れた~~(´Д`)」


「ご苦労様なのだわ♪ ガラークさん。あ、お茶どうぞ」


「おう。ありがとな。エーラ……んくんく。うまー( ̄▽ ̄)」


 厨房のテーブル横の椅子で御茶を貰う。


「うまにゃー(゜д゜)」


 大尉も思わず言ってしまうくらいにはほのかに甘い御茶は美味しい。


 一時放棄したガラクシオ(仮名)の森で取った植物を煮出したらしく。


 今後、森林資源の利用の際には名物として売り出すのも良いかもと思うくらいの出来だった。


 カップ片手にテーブルに広げられた近辺の地図を見やる。


 イノセントを筆頭にして大量のドローンを使えるようになった事で飛躍的に地図化が進んだ辺境であるが、ほぼ南西から北東に掛けて分断するように数十kmの山脈染みた艦橋が覆っている。


(ホント、艦橋だけで助かったな……)


 その東西を隔てる壁の内部に街道が通っており、更に最辺境地域やあちこちの資源産出地帯に続く街道が合計で3本内部を通っており、その中央にアルマートが格納されたような状態になっているというのが現状であった。


 ガラクシオはそれよりも100km以上先の場所にあるが、近隣には他に勢力らしい勢力が無く。


 肥えた土壌を上手く活用すれば、最低10億2000万人までの人口を養える余力があると見込んで良かった。


 だが、問題は治水であり、水問題は早々解決しない為、運河の建設やら何やらは必須だろう。


「それにしてもどーして“あんにゃの”をせんじょーにおくにゃ?」


「ああ、あいつらへの配慮というヤツだ」


「はいりょ?」


「まぁ、その時になれば分る。でも、これでガラクシオの開発にマンパワーが割かなくて良さそうだ」


「かいはつじんいんにゃ?」


「だな。辺境一帯の鉱脈と地下水脈、天然資源の場所は把握済み。汚染せず活用出来るようになったし、揚陸船地帯のナノマシン資源も回収しないとな」


「にゃのましんにゃ?」


「ま、資源て言っても活用の為の研究全然終わってないけどな(^◇^)」


「ダメにゃ~。はかせたちにがんばらせるにゃ!!」


「3日もあれば、終わるだろ」


「あ、おやつも出来たのだわ。今、持ってくるのだわ~」


 エーラが時計を見て、オーブンのある奥の方へと向かった。


 すると厨房に何やらやってくる影が二人。


「あ、しょくしゅだいすきおんなにゃ」


「だ、誰が触手大好き女ですか!?」


 そうブチキレそうになったのはアルファ・アーム=サンであった。


 思いっ切りプルプルして涙目になる。


 感情というヤツを健全に堪能しているらしい。


 どうやら、あちらで必要な諸々の仕事を終えてやってきたようだった。


「ご苦労。アルマートを護ってくれて助かった」


「フ、フン。感謝すればいいのです。マスッ―――」


 褐色少女がビターンと両手で口を押える。


 マスターとは口が裂けても言いたくないのには苦笑せざるを得ない。


「あ、おじーちゃんにゃ」


「お初にお目に掛かるのじゃ~~ごしゅりんよ。我が名は中将。【眠れる中将】じゃ~」


「は?」


「( ̄▽ ̄)」


「え?」


「( ̄▽ ̄)」


「……三人目。喋れるのか。お前」


「にゃ( ̄▽ ̄)」


 “おじいちゃん”と呼ばれていた御老体猫。


 先日のアルマートを巡るアバンシア共同体の辺境軍を率いていた因縁の相手。


 シアーニア。


 倒れたところをまた来られては敵わないと拉致って捕虜にしたのだが、ボケ老人と化していたはず……しかし、何故か喋れるようになったらしい。


「その角、生えてたか?」


「にゃ( ̄▽ ̄)」


「ま、まぁいいけども。じゃ、適当によろしくな」


「畏まったのじゃ。あふ……zzz」


「で、さっそく寝るんかい……(・ω・)」


 無害そうに見えて無害じゃねーんだろうなーと思いつつも、傍にいたエーラ達の護衛猫に仮眠室へ運ばせておく。


「で、イグゼリヲンの情報が残ってた件だが」


「アレは私のものではありません。鬼畜・外道・ガラークみたいなやつ」


「も、もうその罵倒を名前の前に置くの止めない?」


「止めません。話を戻しますが、アレはあの邪神から送られて来たものです」


 思わず真顔になる。


「……後でダーク・イグゼリヲンとかになったりしない?(^◇^)」


 かなりあり得そうな展開であった。


「う、否定出来ない。というか、怖い事を言うの止めて下さい!? アレはガワだけで内部は無くて外側だけ動かしてたものですから!!」


 どうやら当人も不安になったらしい。


 また顔を青くしてプルプルしていた。


「ま、まぁ、ロイヤーちゃんなら現物の情報くらい持ってるだろ。ロイヤーちゃんだしな」


「はぁ~~それで今度は中央地帯から来た難民といざこざですか?」


「お前が育ててたマニアクス・ニャァンと大戦争になるよりいいだろ」


「そこまでの蛮族だと?」


「ノウキンだから、連中基本的には……アレだ。戦争が遺伝子に染み付いてるし、それが平和になってすら普通の状態なんだよ。だから、根本的に勝てない相手にしか恭順しない」


「それで決闘とか言い出したわけですか。野蛮ですね。鬼畜・外道・ガラークみたいなやつは……」


「それもう止めない?(´Д⊂ヽ」


「止めません」


「とにかく連中を大人しく辺境に馴染ませたら、オレは中央の話を聞いたり、セントラルに行ったりしてやらなきゃならない事がある(゜Д゜)ノ」


 力説してみる。


「こちらにも話があると拠点で聞きましたが、何をしろと?」


「辺境のどっかにイグゼリオン本体は埋まってるはずだから、陣頭指揮取って適当に地下遺跡を掘り返しといてくれ」


「―――ッ」


「あ、今、どうして自分も知らないような場所の事を知ってるんだとか思ったな?」


「当たり前でしょう!!? そもそも本体が残っていると知っているのは私だけな上に何処にあるのかも分からないのに!!?」


「そうだったのか……」


「それが辺境に埋まってるとか言い出されて驚かないわけないです!?」


「あ、ちなみに壊れ掛けてるはずだが、お前が居れば、修復は可能だろ。レゼ型が他にいないから時間掛かるだろうけど」


「う……この鬼畜外道に色々知られてるのは何か嫌ですね」


「もう突っ込まないからな? あ、それと恐らく、運用者が欲しいならマニアクス・ニャァンだと大尉と中尉。残りはあの難民連中の中から選抜するといい」


「………」


「お前、内心載せるならこいつとあいつだろうなとか思ってただろ?」


「う……(見透かされてる!!)」


「う~ま~い~にゃ~(゜Д゜)ノ」


 横ではさっそく出来立てのおやつ……原始的なオーブンにも関わらずサクッと焼き上がった特性パイ(芋)に大尉が光を吐いていた。


「ぶっちゃけ、あの四種族なら恐らくイグゼリオンの最終モード、テスタメント以外なら耐えられるだろうし、乗っけるだけの案山子くらいにはなる」


「それも知っているわけですか。分かりました。選抜はこちらで行っておきます。彼らの本拠地奪還が可能なら、乗って来るでしょう」


「ヨシ(・ω・) じゃ、後は適当にあいつら負かしてセントラル行きだな」


 こうしてサクッとヤバイ・難民=サンを大人しくさせる事になるのだった。


 *


―――数十時間後。


 “バンダバダバ、バンダバダバ、バンダバダバダ!!”


『作戦はこうだ。初手火力にて全てを破壊する。相手は生身だが、容赦するな。全火力を一点集中する。続いて第二波は我らグラマトンの幼年自爆突撃部隊をプラネターズの魔導で高速射出し、集中させる。毒は四種族に効かないものを使用する。後方から突撃だ』


『中隊長』


『何だ?』


『過剰火力では?』


『気にするな。上からのお達しだ』


『……個人相手に虎の子のアルテック・スーツと高火力のテック武装ですか……拠点攻略用ですよ?』


『気にしたら負けだ』


 “バンダバダバ、バンダバダバ、バンダバダバダ!!”


『しょ、小隊長!? 本当に火砲を全て打ち込むのですか!?』


『ええ、そうよ。上からのお達しよ』


『プラズマ・グレネーダー200挺の一斉射に耐えられる存在なんて……個人ですよ?』


『分かってるわ。でも、副氏族長達からのご命令よ』


『えぇ……辺境の蛮族相手にそこまでします? 幾ら、バニア様のお気に入りでも死ぬと思いますが……え? 死ぬか怪しい?』


 “バンダバダバ、バンダバダバ、バンダバダバダ!!”


『プラネターズの対軍殲滅用の高火力魔導儀式陣ですよ? レーザーに載せて一点収束なんてしたら、山脈にだって穴が開く代物です。ソレを個人にですか?』


『ああ、そうだ』


『グラマトンならまだしも……普通の人間て……弱い者いじめなのでは?』


『貴様ら神を名乗る戯けた機械に負けた馬鹿種族相手に死ぬわけないだろwwwとか辺境の蛮族から言われて黙ってるか?』


『あ、それはぶっ殺しましょう( ^ω^ )。ゴルトに撤退の二文字はあっても侮辱されて殴らない選択肢はないですね』


『よろしい。我らは第三陣だ。グラマトン辺りが片付けられなかったら我らの出番になる』


 “バンダバダバ、バンダバダバ、バンダバダバダ!!”


『プラネターズとしてはあまり気乗りはしませんが、仕方ないですね』


『プライドだけ高い馬鹿種族扱いされたそうですから』


『まぁ、身に沁みますが、他に言われると腹が立つというヤツですか』


『ああ、皆さん。その愚かな辺境の蛮族に目にもの見せてやりましょう』


『ええ、そうですね』


『ふふふ……』


 “バンダバダバ、バンダバダバ、バンダバダバダ!!”


「う~~ん。エーラの弁当はマジで美味いな( ^ω^ )」


 “壮観……その一言に尽きるだろう”


 “1人の男は巨大な山脈の如き艦橋と大河の如き堀を後ろに持って来た弁当を食っていた”


 “彼の周囲には誰もいない”


「お、揚げ焼きの根菜。葉物の繊細な扱いも上手い……何つーか。辺境での苦労が偲ばれる工夫が諸々過ぎる……もっと旨い食材使わせられるようにしないとなぁ……」


 “ただ、背後の大きな土塁の1km程離れた場所に大量の長方形の構造物が建てられているだけだ”


 “それが一目して何なのか看破した四種族の者達はほぼいなかった”


 “いや、一部だけは理解しただろう”


 “それは便所だ”


 “簡易の長方形の便所だ”


 “男は1人……その中央で石に座って弁当を食っており、数百m級の陸上戦艦……ウテルスの鎧を集めに集め、肥大化させた数十隻にも及ぶ艦隊を前にして便所の列を左右にし、土塁の傍でそこらの現場工事のおっさんみたいに食事をしているのだ”


 “これに気付いた者達の殺意が膨れ上がったのは正しく妥当”


 “さすがに挑発だと気付いていても多くの顔が引き攣った”


 “貴様らは便所だとでも言われているのか”


 “あるいは便所ならいつでもちびっていいぞと肩を竦められているのか”


 “どちらにしても頂天であった……四氏族の怒りは頂天に達しようとしていた”


「わ~お。怒ってる怒ってる。コワイナー( ̄▽ ̄)。手ふっちゃお」


 “笑顔、圧倒的緩い笑顔のおっさんが手を振ってくれる状況!!”


 “もはや、四氏族の戦士達、兵の中に誰1人としてその状況を見て、適当な事をやろうという存在はいなくなっていた”


『時間だ。攻撃を開始する。良いですね? バニア様』


『構わん。これが我ら四氏族の新たな始まりとなる……過激だが、ようやくあの傭兵殿がしたい事が分かった……』


『?』


『何でもない。やれ。一緒に諸々を享受するのは上役の務めだ』


『攻撃ヨーイ!!』


『指定時刻まで後10秒……』


『うちーかたぁー』


『3、2、1』


『始め!!』


 “辺境が瞬いた”


 “総数32艦、9km後方からも遅れて甲板の艦載砲が時間差で砲撃を開始”


 “無数の砲弾が座って弁当を食い終わり、ごちそうさまと手を合わせて低木から切り出した爪楊枝で歯を掃除している男に襲い掛かる”


 “まるで嫋やかなオーケストラでも聞いているかのような砲撃の一糸乱れぬ攻撃は続いて無数のプラズマ・グレネードと大量の極短波レーザーとそれに載せられた魔法による儀式術の威力収束波によって彩られた”


 “電磁力によって放たれるレールガンが、高速徹甲榴弾の雨が、波状的に押し寄せ続ける”


 “輝く辺境。何もかもを溶かす熱量。あらゆるものを砕く質量。観測手達は見た……クレーターだ……光のクレーター……何もかもが溶けていく白いクレーターの中に―――ポツリ”


『ッッッッッッ』


 “レーザーは当たっている。集中している。魔術の術式を込み込みで威力は更に爆上がりであり、数十万度近いエネルギー照射である。砲撃は正確だ。光の最中に飛び込んで来ている。ドパンドパンと墜ちて来る砲弾が溶け崩れ、シャワーとなって男を濡らす。その余波がクレーターを拡大させていく”


 “だが、男は立っている”


 “無限のような熱量に照らされて、砲弾の雨の下にも平然と立っていた”


 “その衣服すら小動もしない”


 “幻影? 残像? 違うと分かるのは男が爪楊枝を弾いて捨てた瞬間に燃え散ったのを一部の観測者達は見ていたからだ”


『―――敵影健在!! て、手を振っています!!?』


『馬鹿な……グラマトンですらないのだぞ!?』


『グラマトンでも衣服は消し飛ぶだろう!! アルテック・スーツも同じだ!?』


『や、ヤツは一体!? 本当に神だとでも言うのか?!!』


『第二陣!! プラネターズの魔導による高速射出開始されます!!』


 “砲爆撃による猛烈な制圧火力が叩き込まれた先、艦隊の上方から射出された弾道弾染みて飛ぶのは白い少年少女達だった”


 “突撃部隊。敵の油断や感情を利用しながら、毒と爆薬で全てを吹き飛ばし、油断や容赦、情けを引き出しつつ殺す少年兵の群れ”


 “彼らの全身は巨大な爆弾そのものであり、爆薬という爆薬を装甲のように括り付けられた状態の……まるで耐爆スーツで着ぶくれたような灰色の恰好”


 “それが時間差はありながらも纏めて数秒以内に全て男の至近3m以内に着弾”


「ああ、そりゃ他の種族連中から顰蹙買うだろ。この戦術まだ使ってるのか。合理的過ぎると非合理になるってのは何処の世界も一緒だよな。ホント」


 “爆発の連鎖の中、溶け続けていた真白い大地のクレーターの最中、突撃して来るのは全裸の白滅の子供達であり、ようやくそこで戦力投入の為に今度は冷却用の術式がぶち込まれて後続戦力の為に溶岩程度までいきなり熱量を奪われていく”


 “嵐のような強風が天に上昇気流となって立ち昇り、遥か雨雲を形成していく”


 “その最中に嘗て敵軍より『白き悪夢』と呼ばれた戦術が実行される。グラマトンの精神性も相まって正しく多くの種族の上位者達を屠った一撃だ”


『?!』


「甘い。死なない事と勝てるかは別だぞ。後、女の子はこの作戦しちゃダメだろ。いつかの旦那が泣くぞ?」


『!!?』


「いや、前にグラマトン女子が滅茶苦茶後悔してたんだけども……ええと、異種族の旦那に逃げられた8割の理由がこの戦術やってたせいだという統計があってだな?」


『?!!』


 “少年少女が急速に冷めて来ていて尚未だ莫大な熱量の最中、自分達と相対する男の異様なほどに傷付かない様子に顔を引き攣らせる”


 “一斉突撃は相手に組み付いて封殺する為の上等手段”


 “だが―――”


『ガッ?!』


 “彼らには不可解な敗北だった……彼らは傷付かない。例え、プラズマ浴をしたって、太陽に打ち込まれたって彼らは傷付かない”


『なん、で?!』


「傷付かない。でも、お前らの脳髄は物質以外は全ての物理的振舞が大体一緒なんだ。ん~~何て言ったらいいか……ああ、要はお前らはコンクリ製の豆腐みたいなもんだな」


『とう、ふ?』


「オレの故郷の食べ物だ。コンクリでは創らない。だが、構造が同じなら、破壊する以外の方法が効くわけだ」


 “男が飛びついて来る少年少女を手脚と膝、肘を使った関節での攻撃で弾き飛ばしながら脚を掴んだ1人をまるでタオルでも振っているかのように高速で振り回し始めた”


『っぷ?!』


「遠心力で血が頭に集まったらお前らは死ぬか? 答えはイエス。昔試した。お前ら自身の肉体の限界をお前らは越えられない。魔法が使えない弊害ってヤツだな。お前らの種族を殺す為の専用魔法って実は存在するからな?」


『ッッッ』


 “男が次々に逃げようとする少年少女達の頭部を掴んでまるで人形のようにブン回し始めた”


『あ、が、ご?!』


「悪いな。戦場だぞ? 此処は……子供だからって容赦するわけねーだろ。お前らの両親に言っておけ。死なない事と心の死はイコールじゃないってな」


『―――』


 “脳を徹底的に揺さぶり、自身の血潮で完全に満たされた血管……白い鼻血を流し倒れ込む者達をクレーターに突っ込んで男はその白き灼熱の最中で最前列の艦の艦橋に腕組みしてみせる”


『だ、第三陣出撃!!』


「今度はゴルトか。あいつら面倒なんだよなぁ。やたら勇気とか根性押しだから」


 “笑顔の戦闘狂達がアルテック・スーツ……旧い時代の技術であるスチューデント・スーツと同等の力である金色に輝く被膜を身に纏い、砲弾のように落ちて来る”


 “ゴルト……神に愛されし肉体を持つ種族……その力を最大限に引き出し、あらゆる外的環境から守る極限環境適応用スーツは虎の子そのもの”


 “その両腕両脚に付いた近接格闘用の輝きで見えない手甲脚甲【ブラスト・テック・アーマー】は一発の打撃を砲弾数百発相当にまで凝集する打撃や威力の凝集機能を持つ代物”


 “……嘗て男も愛用していた品。ゴルトが使えば、コンクリ製の要塞の壁だって一撃で全て爆砕するし、一発でマキナーズのモブだって砕け散るだろう”


「ブラスト・テック……それ使って負けに来るのかよ。ホントに弱くなったな」


『殺す!!』


 “今度は組み付いて抑え込むなどの泥臭いものではなく打撃戦の応酬となった―――いや、なるはずだった”


『ッ―――』


「お前らを一撃で仕留める方法は昔開発し終わってる。それも上位個体用な。単なるゴルトに装備載せただけ……お粗末だな」


 “男が回し蹴りを放った途端にソレが顎先に掠った男達が複数倒れ込んでクレーターに伏す”


 “拳が掠っただけだ。肘が掠っただけだ。体の何処かが掠っただけでゴルトの有志達が次々に近接格闘で攻撃を叩き込む間もなく沈黙していく”


『馬鹿な!? 如何なる攻撃も我らを即死させる事など―――』


 “エネルギーの射出は終わっており、未だ蠢く白き世界にソレでも声が響くのはスーツのおかげだ。如何にゴルトが強くても3万度近い熱量の放射線が飛び交う空間では4分で芯まで焼け焦げる”


「金属纏っただけのゴリラが勝てるわけねーだろ。もうちょっと精神性と技術とか極めて来い」


『馬鹿な!?』


「それでオレの手札にトントンだ。オレはお前らの体を振動させただけだぞ?」


『し、振動!? オレは、オレは教導隊の隊長だぞ!? そんなもので我らゴルトが!?』


「お前らを失神、意識消失させるに足る振動回数を教えてやる。秒間432億回だ」


『へ?』


 “男の拳がゴルトの腹に叩き込まれる……スーツは破れている様子もないし、攻撃を受け切っているのは間違いなかった……しかし、その巨躯が倒れ込んでいく”


『嘘だ!? た、隊長が!? 何故!!?』


「良い事を教えてやろう。お前らは確かに耐久性は高い。耐久性は、だ。だが、物質的にタンパク質であるお前らは原理的攻撃には普通の反応が返って来る」


『げ、原理、的?』


「簡単に言えば、あらゆる耐性が数百倍なら、耐性をブチ抜ける簡単な手を用意しとけばいいって事だよ」


『我らの耐性を突破する手管だと!!?』


「振動を大量に浴びせたってお前らは死なないが、普通の人間だってある程度までなら死なない。だが、不快さはどうだ?」


『ふ、不快さ?』


「耐久度が段違いでも肉体には許容限界がある。そして、お前ら自身にソレを瞬時にブチ込む方法として一番安上がりなのが振動だ」


 “その男の手が一瞬だけ歪んだのをゴルト達は見た……それはあまりの振動に周辺空気が歪んだ故の事だが、それを瞬時にオンオフしている制御能力こそが脅威だと彼らには理解出来た”


「高度技術なテック・スーツが初回で攻撃と見なさない不快さ程度の代物を体に投げ込ませて貰ってるわけだ」


『な―――』


 “突撃した男達がたった一瞬の攻撃が掠ったのみで次々に白目を剥いて倒れ込む。誰もが倒れ込む瞬間、全ての景色が滲んで震えてブレていく。


「人間なら一瞬で分子レベルのタンパク質の汚泥に分解されるだろう超振動波もお前らなら不快なだけで済む。攻撃とすら見なされないなら、AI式テック・スーツだって一発目は絶対に気絶させられる」


『ッッッ―――有り得なッ』


 “ブラスト・テックの超高速で迫る腕や脚を掻い潜り、相手の肉体の何処かに拳や脚を掠らせる……たったそれだけの天地無用の格闘術は部隊員達も目を見張る。だが、何よりも怖いのはその相手の手を読み切っている。いや、熟知しているとしか思えない動きそのものだった”


「これは攻撃レベルのものじゃない。細胞の不快さ、神経の不快さを限界以上に一瞬だけ増幅して打ち込む攻撃以下の手品だな」


『こん、な―――』


 “見ていた……全ての艦隊の司令部に送信された映像は1人の男が全ての勇士。否、戦士達を打ち倒した後、自分達を睨み付けてすらいない姿を誰もが見ていた”


 “まるで当然の勝利を前にして静かに全ての者達に問う視線”


『これ程か。これ程なのか。傭兵殿……』


『うっそだろ。ぉおぉい……』


『コレが現実ですか? 本当に?』


『グラマトン最強の戦術が敗れたか。大人を使っても同じだろうな』


 “副氏族長達が圧倒的だと思われた自分達の戦力の現実を前にして棒立ちとなる”


「今度はこっちからの攻撃を受けて貰おうか?」


『マズイ?! 音声通信を!? 早くせねば全滅するぞ!?』


 “気付いたバニア、副氏族長が慌てて外部スピーカーを使う寸前”


「ちょっとは自分達の弱さを知れ。【ポープ・モア】ドミネイト・アクション。指定、戦闘員。代謝効率1000%……アクティブ!!」


 “指が弾かれた”


―――Buchi chi-buri buriburiyuryubuchibuchiburyuryuryu―――。


 “こうして1分後、一斉に白旗の上がった艦艇の前で男は悠々と迎えに来た明王号に載って次の仕事の為にアルマートへ向かうのだった”


 “その日、最後に起こった事を誰も……戦闘に参加した誰も口にする者はない……ただ、男が最初に立てていた便所が当日ずっと人の列に困らなかった事だけが事実であった”


 *


 代謝制御MOD【ポープ・モア】。


 ヘブンで最も悪名高いチートMOD。


 実際にはコレが製作者個人の極めて私的な趣味の為に創られた事を多くの運用者は知らない。


 このMODの最大の能力はヘブン内でのステータスの一種である肉体の代謝を複雑化、操る事であり、これを用いて現実と同じように代謝する肉体の管理維持がヘブンの重要事項に加わる。


 本来の代謝は放射能汚染された領域で生きていく時に放射化した肉体を正常に戻す為に使われるステータスだったのだが、これは食事、排便、垢や尿と言った排泄物を直接的に描写する代物であり、これらを処理する事を怠ると疫病の発生から諸々の健康を表すステータスがデバフ補正が付く。


 ついでに特殊な物質を必要とする代謝資質を持つ存在はその物質の摂取期間が空いても死ぬし、デバフが恐ろしい速度で重なって最終的には死ぬ。


 最大10万倍まで加速させられる代謝機能で一気に即死させられるのだから、機械生命体のようなもの以外にとってこのMODが如何に恐ろしいかが分かるだろう。


 そのあまりの惨状に何でもありルールのプレイヤー同士の決闘にすら、このMODは不使用が明示されるくらいには暴れてもいた。


 結果として、スカ〇ロ趣味の人が創ったエロMODは最強の戦闘チートとして応用された結果……多くの物語をぶっ壊す事に成功したストーリーブレイカーMODとも呼ばれるようになった。


 特に嫌いなヤツに使う事で無残な様子をスクリーンショットし、笑いものにするような動画が流行したが、さすがにNPC相手でなければ使うのは許されない風潮であり、コレを使ってプレイヤー同士が戦争した場合、“お互いに”汚い結果になったのは実際この目で見ていた。


「というか、今回はドローンで撮影、応援して貰って【Dynamite Fever】のバフの倍率上げを手伝って貰ったわけだが……何かやたら強化されてた気がするな」


 本来はかなり打撃戦で速度が足りないとか。


 あるいは応援があっても火力で手足くらい大やけどする事を覚悟していたのだ。


 が、そうはならなかった。


 戦場で使ったMODは三つ。


 確率操作と倍率補正でヒーローごっこをする【Dynamite Fever】と攻撃の決め手となる【ポープ・モア】……そして、最後にゴルト対策の【ハートビート】だけだ。


 しかも、妙に調子が良かったので奥の手も使わずに済んだ。


 音楽創作MOD【ハートビート】は元々がヘブンに独自に音楽を創作して挿入する為のMODなのだが、ヘブン内の物理演算に直接干渉して振動を刻むという仕様のせいで音波兵器や超振動兵器に転用可能なのだ。


 事実上、波動であれば、“如何なるものも再現出来る”せいで波動によって物体を構築する事すら出来る。


 コレがあまりにも活用方法が広過ぎてエロ目的のASMRや盛り上げ用のBGMに転用された結果、滅茶苦茶独身男性に受けて、本来の使い方は忘れ去られたのだから、世の中何があるか分からないものである。


 自分でもそうやって使ったはいた。


 が、さすがに“普通に使う程に極めてはいない”ので精々が自身の刻むビート……肉体を楽器として指定、超振動を叩き込むくらいのものであった。


「あ、見えて来た」


 汚い現場を後にして後片付けは戦場で酷い事になった四種族に丸投げ。


 特にクレーターに突っ込まれた少年少女達と倒れ伏したゴルト達はトラウマだろうが、焼き焦げた臭いくらいは我慢して貰おう。


 途中、河で全身を丸洗いしたので臭いはもう残っていないだろう。


 移動は明王号に短距離高速飛行形体でぶっ飛んで貰う事でほぼ数時間で戻って来たので陸路を征くより快適だった。


 此処最近の明王号の改良で短距離ブースターの運用時間が伸びたのだ。


『ごしゅり~~ん』


 先に返ってアルマートで映像を中継し、猫達全員で応援してくれるように頼んでいたのだが、増強された外壁内部では何やらお祭り騒ぎとなっていた。


「(´・ω・`)?」


 何でお祭り騒ぎになっているのかサッパリ分からない。


 猫達が他の人々に映像を布教したって緊迫感は出るかもしれないが、カッコイイとか思ってくれはしないだろう。


 何せ滅茶苦茶最後は汚い絵面になったはずなのだ。


 まぁ、何処かで映像は切ってくれたのかもしれないが。


「取り合えず、疲れたので寝る。後は頼んでいいか?」


「りょーかいにゃー。あ、おじいちゃんにゃ?」


 何やら広場では好々爺みたいな顔の中将が何やら子供達相手に話していた。


「ごしゅりんは砲弾のように飛んで来た巨漢達を一撃の下に下し、爆撃の雨の中にも仁王立ちし、その全ての攻撃を受け切り、こう言ったのじゃ~~」


「?(・∀・)」


「『それで終わりか? オレと戦いたいなら、砲弾を後百万ダースは買って来い』となぁ~~」


「うわぁ?! おじいちゃん!! 本当!? 反逆の英雄様、それで大砲を受けながら本当にあのでっかいのを叩きのめしちゃったの?」


「うむうむ。そして、女戦士が倒れ込もうとする時は優しく寝かせ、『そんなにオレに首ったけなら寝台の上で待っててやる。次は女を磨いて来るといい』とも」


「きゃ~~~♪ 敵だったとしても紳士さを忘れないお方なんですねぇ♪」


「( ゜Д゜)」


「にゃ? また話してるにゃ。あちこちでやってたのにゃ?」


「そうじゃ~~ごしゅりんは紳士なのじゃ~敵の大将と戦う時は最強の【剛牙破山拳】で相手の超強い攻撃を相殺して『何かしたか?』と一言」


「おぉぉぉぉ~~~!!?」


「あの巨人共の最強の兵隊がウテルス・スーツを着込み、翼を生やした白い天使となって襲って来た時は【無尽絶影拳】で打ち落とし、最強のイグゼリオン・アーマーを着込んで女頭領相手に大立ち回り!!」


 やんややんやと喝采が上がる。


「一族を護る為に死ぬ決意だった相手に『お前が死んだら、誰が一族を護るんだ?』と諫め、『誰も助けてはくれなかったではないかぁ』とそやつが慟哭した時、こう言った」


 クワッとおじいちゃんが目を見開く。


「『少なくとも此処にいるさ。1人な!!』と……そして、遂に四種族最強の敵を倒したごしゅりんは奴らと和解し、大人しくさせる事になったのじゃ~」


「( ゜Д゜)」


「う、うぅぅ~~英雄様~~そ、そんな、強い敵を1人で相手して、それなのにた、助けてあげるなんて!? そんなの、か、カッコイイよぉ~~!!?」


 子供達は大盛り上がりだ。


 何故か、大人達までウンウン後ろで頷いているので思わずゲッソリして後でおじいちゃんを〆る事にして猫の城に帰る事になるのだった。


 後で中将の話は半分ボケて脚色してると色々大人達に言っておく必要がありそうに違いない……どうしてリアルタイムで強化されているかと思えば、その理由がハッキリした瞬間であった。


「盛られ過ぎだろ(´;ω;`)」


 思わず涙目である。


「そうかにゃ?」


 大尉がケラケラ笑う。


「そもそもオレは男女平等パンチ派だし、あんなセクハラな話はした事もないという(´Д`)」


「にゃくく♪」


「何で愉しそうなんだよ(・ω・`)」


「にゃにゃにゃ♪ でも、しょうらいおよめさんになれるとかいうのはせくはらにゃのでは?」


「ッ(◎Д◎)……はい。以後、気を付けます」


 無自覚なるセクハラおじさんと職場でもヒソヒソ呼ばれていたのだろうかと愕然としつつ、イソイソと寝室に向かう事にしたのだった。


 *


―――同時刻、大陸中央北西部中央次元海溝マキナーズ本拠地。


『デスシャドー将軍!! やはり、各地での兵の動揺が広がっております。このままでは士気が……』


『くっ、情報封鎖が間に合わなかったか……』


『宝冠ファーク様と南方軍団が敗れた事により、中央の兵達も動揺しております。此処は何か次善策を』


『忌々しい!! まさか、まだ生きていたとは……この後に及んで未だ我らを呪うか!? イグゼリヲンめぇえええええええええ!!?』


『で、ですが、此処さえあれば、立て直す事は可能でございます!! まずは失った25個師団の回復に努めるのが先決かと』


『……まさか、帝国と手を組むとは……奴らのナノマシンの影響を遮断する為に泣く泣くリンクを切ったとはいえ、自身を再生しつつあるとすれば、時間は……』


『それでなのですが、ファーク様の後任は如何様に? 四将が揃わねば、南部に大きな穴が開く事になります』


『……他の三将を呼び戻し、まずは防御を固め―――』


 “その時、恐ろしい事が起こった!!!”


『―――こ、こちら中央次元海溝守備隊!! デスシャドー様!? 御逃げ下さッ』


『何だ!? 同胞が一瞬で―――』


 “巨大な次元の穴の入り口……その地下300m付近の虚空に浮かぶ巨大な30km四方のマス状の門に陣取る総勢4個師団の守備隊が次々将軍デスシャドーとのリンクを途絶していた”


『映像を出せ!! 何だ!? 何故、突然……』


『守備隊指揮所の映像出ます!! な、何だコレは!? ひっ!? は、歯型!!?』


『ッッッ』


 “巨大な次元の大穴に接続された彼らの要塞の入り口……紫色の鋼の枠、そこに齧り取られた痕が無数に付いていた”


『な、な、な―――将軍!? これは一体!? 守備隊の姿が見えません!? アビス穿孔中であったとしても、全ての兵が現場を離れるなど!?』


『嘘だ……まさか!? まさかぁ!? これも貴様の仕業か!? イグゼリヲン!!?』


『どういう事なのですか!!? 将軍!!?』


『我らの母星……【機械惑星パラノイアル】は……たった一匹の侵略外生物によって消滅したのだ!!? あの日、あの星から全てが始まった!!? イグゼリヲンは裏切り者にしか過ぎないが、あの生物は―――あの生物だけは―――』


『まさか!? 震えて、おられるのですか?』


『ッ~~~』


 “デスシャドー将軍……宇宙にばら巻かれた種子の一つにしてイグゼリヲンを辛うじて屠った稀有な個体は今更に恐怖と呼べる感情を僅かに呼び起こしていた”


『こちらコントロール・ルーム!! アビスに侵入者在り!! 次元閉鎖機構緊急作動!! こ、これは!? まさか!? 仲間達のビーコンが生きて? すぐにパンデモーズの扉を開けます!! 事情聴取を!!』


『止めろぉおおおおおおおおおお!!? それは奴らの―――』


『開錠されました!?』


『うあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ(゜Д゜;)』


『Shaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaark♪』


 “その日、マキナーズの遠征軍3旅団は本拠地との連絡途絶に大混乱へと陥り、その間隙を縫うようにして北西部へと侵攻を開始した多数の中央派閥との全面戦争へ突入した”


 “しかし、時間が経てど中央との連絡が繋がらず各地で孤立無援となった者達は援軍も期待出来ず……泥沼の消耗戦へと引きずり込まれていくのだった”


 “旅団が派遣した連絡要員達は遂に戻らず……その巨大な次元の大穴付近では魚影を虚空に複数目撃したという情報だけが実しやかに火事場泥棒をしようと近付にいた者達の間でだけ囁かれる事となる”


 “『Shaaaark♪』という声が聞こえると噂の奈落近辺では更に先進文明勢力に属する派閥が次々に消息を絶ち……無人の荒野となった近辺は禁足地として多くの者達に恐れられる事ともなった”


 “これが後にマキナーズ統治領の反乱へ繋がっていく事をまだその時予想するのは大陸でも数名に過ぎなかったのである”


『Shaaaaaaark♪』

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