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エロMOD先輩と賢者の窯  作者: Anacletus
第二章 エロMOD先輩と炎の聖杯-I just came to eat with a cute girl...-
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第9話「激突!! エロMOD先輩VS星の収穫者」


―――??年前兵役検査翌日。


『おう。お前、ちょっと面貸せ』


『……金なら無いぞ』


『違うってーの。飯食えるところがあるんだ』


『飯って、昨日の検査で明日までは食うなって……ああ、そういう事か』


『このまま兵隊になっても死ぬぞ?』


 兵舎の奥。


 元々は数十年前の自衛隊の基地の宿舎だったという場所での話はまったく自分でも現実感が無かった。


 葬式は出せずじまいだし、金融資産が少しだけ遺産として残っていると言っても、数百万程度……それも株価と連動した複数の暴落に巻き込まれて引き出せば、馬鹿高くなった税金のせいで80%を取られ、残るのは極僅かだ。


 物価高は天井知らずで今やコメの価格が1kg30万なのが笑えない笑い話であった。


『いや、いいんだ。家族が蒸発してな。職場になるかもしれない場所も無くなったし』


 その暗闇で顔すら覚えていない相手が顔を覆ったような気がした。


『……そうか。何処もそんなんか……』


『ああ、人の身の上話を聞いてる余裕も無いし、聞いてたい気分でもないって事だ』


『悪かった。オレは行って来る。市街地の南にある繁華街のモールの端に格安でラーメンが食える店があるんだ。一杯3万だぜ?』


『ははは、分かった。生涯最後の晩餐に行きたくなったら行く事にする』


『ああ、そうしてくれ。じゃあな』


 街は明かりを失っていた。


 今や軍施設すらも明かりを閉じて、警戒用のセンサーだけがハリネズミのように赤く小さな光をあちこちに輝かせている。


 きっと、脱走兵扱いされるだろうが、兵役検査の部隊は見逃すだろう。


『………はぁ~~ヽ(^o^)丿 どうすっかなぁ……』


 やりたい事なんて何も無い。


 世界は物理的に灰色になり、そろそろ冬が来る。


 なら、後に待つのは地獄だけだろう。


 人類の食糧が持つ時間は凡そ10年だと言われている。


 それまでに冬が終わらなければ、遺された人類が再興するのに1000年は掛かる計算だとも。


 それ程に人口が急減する事は既にAIによる予測で出ていた。


『大陸行きか。本土用か。どっちも地獄だよなぁ……』


 ふと今まで沈黙していた端末が明かりを灯して。


『……お祝いメール。まだ、こんなサービスしてたのか』


【ひろ。就職おめでとう。お母さんはブラックな所か心配でしたが、この間の様子を見て少しだけ安心しました。大人になんてならなくてもいつか人は大人になる日が来るわ。子供のままという事も悪い事じゃない。ただ、どちらだとしても貴方は好きに行きなさい】


『―――』


【お父さんは不器用な人でしたが貴方の未来に期待もしなければ、文句も言わないという人でもあった。だから、お母さんは貴方にこう言うしかないの。生きなさい。ちゃんと自分がやりたい事をやって死ぬまで生きなさい】


『………ふふ』


【勿論、時間は守ってね? 貴方の唯一お父さんに似ているところはその5分遅れて来るところなのよ? まったく、どんな記念日にもそうなんだから、失礼しちゃうわよね】


『ウチの女性陣が時間に煩過ぎるだけだと思う……』


【お父さん、貴方と同じでどんな時も遅れて来るの。でも、酷い遅刻はしないから、責めるに責められなくて……結局、ガミガミと構っていたら、いつの間にか結婚していたのよ】


『父さん……それで子供の頃、結婚した理由教えてくれなかったのか』


【口癖はね? ヒーローはいつも遅れてやって来る!! だったわ。さすがに結婚式遅れそうになった時は張っ倒したけれど、今になって見れば、良い思い出ね】


『………』


【本当は就職した当日に送る予定なのだけど、就職出来てないかもしれないし、これはお父さんに倣って少しだけ遅れて届くようにしておくわ】


『……ありがとう』


【貴方の人生が貴方の戦場だ。お父さんが私にそう言った時、結婚を決めたの。その戦場で隣に立つ事を許して欲しい。だなんて……ずっと戦地にいたあの人らしい言葉だったわ】


『父さん……』


【追伸 初給料日にはお姉ちゃんと一緒に何処か高級そうなお食事処を予約しておきます♪】


『はははは……はぁ~~(>_<)』


 思わず笑いが込み上げて来て片手で顔を覆った。


 その時、街に火の手が上がるのが指の端から見える。


「生きる、か……精々死なないように頑張ってみますか」


 街中にサイレンとドローン戦の開始を告げる爆発があちこちで起こり始めたを見ながら、火の手が上がる街並みの先に家族の顔が見えた気がしたのだった。




 *




「………」


「おきたにゃ~♪」


「大尉か。仮眠は取れた。じゃ、さっそくやるか」


「はいにゃ~~」


 言う程の事はない。


 最初から戦ってどうにかなる相手ではない。


 ナノマシン系の敵の内で最も厄介なのは物量による群体攻撃だ。


 それを生体の拘束と移送、制御に使うのはナノマシンのお値段から考えてもかなり正しい。


 単なる兵器として使い捨てるにはコストが掛かり過ぎるのである。


(ま、直に増殖出来るような高純度の各種金属資源が眠る星で1次増殖だけで済ませられれば、一番効率が良いんだろうが……そこまで上手い話はないんだよなぁ)


「にゃ?」


 自己増殖にも必要な金属資源が現地にあるのが前提であり、それもナノマシンでの構造物製造には限界がある。


 理由は単純にナノマシンが自己増殖して自己の複製を精密に作り上げ続ける事が事実上不可能という事実があるからだ。


 不確定性原理によってまったく同じナノマシンは創れず、許容可能な複製の誤差率は複製品が複製を創る連鎖の中で下がっていく。


 要は劣化複製品ばかりが増えると暴走の危険があるので5次複製までしかグローバル・スタンダード仕様では許されていない。


「ま、取り合えず、戦うというよりは駆除だな。はぁ~~明王号此処で停止だ」


【了解】


 泥で満遍なく汚しておいた車両が止まる。


 揚陸船付近でまだ相手が噴出してない事を確認し、大尉を後ろに下がらせて、明王号のカーゴの上に昇った。


 空にはもう暮れ掛けた日が沈みつつある。


 発光しながら地表に落着した収穫船。


 弾頭のようにも見える300m級のソレらが50隻近く辺境の各地で一斉開放される前にMODを使う儀式を完了せねばならない。


「う~~ん。サメMOD先輩君のアレ以外に簡単に使える物理法則無視系MOD無いんだよなぁ……ま、もしもとなれば……」


 切り札は取っておこうと腰のポーチから儀式用の得物を取り出す。


「にゃ? ごしゅりん、それなんにゃ?」


「釣り竿だ。あ、このエサは水着だ。一応、エロMOD扱いになるのか? 水着に寄って来る性質があるからな。ホラー映画のきゃーきゃー騒ぐカップルの片方が食われるという伝統的スタートに基づいてる」


「でんとーてき?」


「工房に造って貰ったらオメェも好きだなぁとか言われたヤツだな」


「???」


 まぁ、大尉の首が捩じ切れそうなくらいに360度回転しても不思議はない。


 紺色のビキニを釣り竿の針に括り付けて、思い切り振った。


「ごしゅりん。ここさかないないにゃ……あと、エサがそれじゃつれないにゃ……(´-ω-`)」


 遂にごしゅりんがおかしくなったにゃ……みたいな顔をされたが我慢して、ひ~らひ~らと虚空に水着を泳がせる事10秒。


 グイッという手応えにちょっと躊躇いつつも、叫ぶ事にする。


 どの道、此処で諦めたらデッドエンドである。


「フィィイイイイイイイイイイイイイイイイイイッシュ!!!」


「にゃ?!!」


 大尉が驚くのも無理はない。


 何も無い空間が歪んで、ビキニが食い千切られたかと思えば、ドパッと海水が遥か天から大量に流れ込み。


 その水の中から猛烈な速度で次々に流線形の姿が暮れた世界に飛び出して来る。


 8m程の全長のホホジロザメっぽいが、実際にはそんな8mサイズはいないので基本的にはフィクションの世界の住民であろう。


「お、当たりか。一番最初にコイツが出ると大体、他のも全部出るんだよな」


「な、なんにゃぁああああああああああああああΣ(゜Д゜)」


「ああ、単なるサメ君だ。海に泳いでて何かエサ(ビキニ美女とか冴えない漁師)とかがあると食い付くだけの生き物だ」


 サメが次々にビチビチと海水に乗って周辺に打ち上げられていくが、その中に次々とオカシなサメが混じり始めた。


「そ、そらとんでるにゃぁ!?」


「ああ、空くらい飛ぶだろ」


 何せB級映画のサメ詰め合わせMODである。


「ひぃ!? じめんにもぐってるにゃぁ!?」


「ああ、地面くらい潜るぞ。サメだからな」


【サメVS地底人】というB級映画で主役だった地底人食いサメ君だろう。


 サメMOD先輩君に見せて貰ったデータでは地底人達が次々に流入する海水に呑まれながら、サメと対峙していたはずだ。


「ひぇ!!?(´Д`) なんかでかくてきかいっぽいにゃ!?」


 ゴボオオオオオッと海水が更に大量に周辺に溢れ出す。


「ああ、ようやく出て来たな。【テラメタル・シャーク】」


 釣り竿を回収する。


 その間にも数百匹くらい出て来たサメ達の一部に100mくらいありそうな馬鹿デカなソレが海水の出ていた入り口を何だか空間を破砕するように出て来た。


【サメVS宇宙怪獣】というB級映画が元ネタのサメだ。


 空が不穏な空気を象徴するかのように強風が吹き始める。


 ビターンッと巨大サメ=サンが海水塗れの地面の上に乗り上がってビチビチしていたが、次の瞬間にはギラッと瞳を怒らせて、ズダァアアアアアアンと跳ねた。


「ひぇ( ゜Д゜)ッ、とんだにゃぁあああああああああ!!?」


 全身フルメタルな金属光沢……いや、黒曜石で出来ているかのような黒い漆黒の金属質の尾で地面を吹き飛ばし、猛烈な速度で砲弾の如く近場に着陸していた揚陸船に襲い掛かった。


 空間の破砕痕がスゥッと消えていく。


 後にはただの夕暮れが終わる荒れ始めた虚空しか残らない。


 しかし、あちこちで跳ねていたサメや潜っていたサメや空を飛んでいたサメ達が次々に【テラメタル・シャーク】に誘因されるように齧られている揚陸船に群がり始めた。


「ど、どうしてこっちをおそってこないにゃ?」


「ああ、あの黒いキラキラしてるサメ君の好物は金属だからな。後、他のサメを統率して生体強化しつつ、自分の同族として同化。最も美味いエサにしか興味が無いグルメにしてくれる」


「……にゃーたちマズイにゃ?」


「単なる人間とかより、もっと旨そうなのが近場で大量にいるからな」


「ああ、それで……あ、くわれたふねからなんかきらきらしたのがでてるにゃ」


「無駄無駄。あいつ、物理法則で動いてないから人型知性体か人型ロボにしか倒せない仕様なんだよ」


 言ってる傍から無数のナノマシンの霧がサメ達を襲っていたが、逆にサメがその霧をムシャッては何かメタルな姿に変貌し、次々に巨大サメ【テラメタル・シャーク】の周囲で無制限強化状態となって狂乱していた。


 霧はその度に打ち払われ、肉体を固めようとするものの、その体表から何やら吸収されて溶かされた様子で滴った水銀染みた残骸を地面に零していく。


 そのサメ達が回遊した渦が竜巻を発生させてか。


 正しくタイフーンのように周囲が暴風圏となり始めた。


「帰るぞ!! あの黒いヤツの目元辺りにこの端末投げてくれるか?」


「りょうかいにゃ。にゃ~~~とう!!」


 豪速球された端末が巨大サメ=サンの目元に向かうのを確認。


 それを一瞬だけ見たような気がしたソレがビチビチ跳ねながら何やら『Shaaaaaaaaaark♪』と喜んでいたように見えた。


 すぐに明王号内部に戻ると。


 大量のサメを含んだハリケーンが巨大サメと共に回遊しながら平らげた揚陸船の破片も捨て置いて、そのまま次の餌場へと向かっていく。


「なんでかぜにのってるにゃ?! ど、どうしてうかぶのにゃ!?」


「キニスルナ (。+・`ω・´)(キリッ)。サメだからだ」


「あ、はいにゃ(´Д`) でも、アレ……“じぐらっと”たべにこないにゃ?」


「ああ、それは問題無い。あいつ基本視力で視認したキラキラした金属くらいしか獲物の認識方法が無いんだよ。やたら知能は高いけどな」


「キラキラ?」


「ああ、だから、光学迷彩して金属の艶消し塗装しとけば、ほぼ襲われる心配は無い。ま、昔に金属系資源が豊富な惑星(機械惑星)があいつ一匹で壊滅したけど」


「にゃ? ぜんめつにゃ?」


「超科学文明(笑)くらいの戦力差と相性だからな。アレ基本的に宇宙が破壊出来る攻撃だろうが絶対傷付かないし……人型知性体及び人型機械の行う白兵戦の攻撃でしか倒せない。それも特攻武器が無いと増殖率的に根絶不能だ」


「つまり?」


「艦隊とか。人型してない戦車とか。乗り物とか。そういうのに人型知性が載ってるだけじゃ絶対勝てない」


「?!!」


「それが例え宇宙を破壊出来る相手だろうが何だろうが、勝てないものは勝てない。そのせいでモブの人型は良い勝負してたけど、最終兵器類が全部効かずに敗北してたな」


「……(´Д`)」


「あ、今一瞬思ってた事は当たってるぞ。オレ達のとこに来たら、戦って貰うからな? 一緒に」


「ごしゅりんはきちくげどーもっこりにゃぁ!!」


「はっはっはっ( ̄▽ ̄)」


「あんなのかてないにゃぁ~(ノД`)・゜・。」


「ちなみにさっきの端末には“貴重な金属資源”の場所を描いた世界地図を置いといた。ここら辺の揚陸船を食い飽きたら、今度は大きな“生け簀”に自分から行くだろ」


「いけす?」


「その内分る。さ、後はドローン観測で悠々自適に映画張りのサメ鑑賞だ。最近付近にあるだけセンサー類ばら蒔いたおかげで観測だけは簡単になったからな」


 こうしてイソイソ東端地域に満遍なく落ちた揚陸船の破壊を気長に待つ事とするのだった。


 サメ追加MOD【B級サメパックVer3.3】


 知り合いのサメMOD先輩君がコツコツ作っていた小規模なサメMODの盛り合わせ品だが、他にも色々と可能な限り入れていたのでこれからお世話になる事もあるかもしれない。


 ちなみに先程の儀式はかなり幅広くサメを海の無い場所で召喚するものだが、本当は水辺で使うものが多数だったりする。


「ちなみにアレ……あぶなくないにゃ?」


「滅茶苦茶危ないぞ? ま、これで都市部や文明が滅んだら、その時は諦めて貰うしか……」


「やっぱり、きちくげどーもっこりにゃぁ!?(>_<)」


 取り合えず、セントラル近辺の友好的な派閥には金属資源の艶消しを通達しておく事にする。


 キラキラしてたらサメのエサという事実は程なく人々の間に浸透するだろう。


 まぁ……コラテラル・ダメージというヤツである。


 宇宙人に宇宙の果てへ奴隷や生体部品やタンパク質として売り飛ばされるか。


 知らないサメに食い千切られるかの二択である。


「石製や木製の建物なら食われないし、ガラスも問題無い。新しい街の地面は汚して貰ってる最中だ。辺境は被害少ないだろ。たぶん」


「ちなみにふえるにゃ?」


「増えるぞ? あの巨大サメ君は食べた分の質量を分体にしたり、自分の支配下においたサメに供給して分裂する」


「ふ、ふえるにゃんてあくむにゃ……(/ω\)」


「大丈夫だ。問題ない(・ω・)。一定数そうならないような配慮もされて、デカくて空飛んで地中に潜るだけのサメもまぁまぁ残るから」


「もんだいありまくりにゃ!?(゜Д゜)ノ」


「あいつらの弱点武装はこれから供給してやる」


「じゃくてん?」


「ああ、一番効くからな。お前もきっと気に入るぞ。何なら樹木伐採にも使えるし、家を建てるのにも使える」


「???」


 こうしてメタル装甲を途中泥で塗った明王号内でサメ軍団VS星の収穫者(一方的蹂躙)をドローンのセンサーで眺めつつ、アルマートに帰る事にしたのだった。


(おやっさんとミスティークにあるだけチェーンソウ発注しないとな……)


 こうして辺境最大の危機!!という一大イベントは惑星ちょっとピンチ!!くらいの状況に置き換わったのだった。

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