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エロMOD先輩と賢者の窯  作者: Anacletus
第二章 エロMOD先輩と炎の聖杯-I just came to eat with a cute girl...-
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第6話「敗走者の艦隊とエロMOD先輩」


『で、でかい!! 船が向かって来るぞぉ!!』


『へ、へへ、なんつー光景だよ。あ、あれが本当に陸を渡る船だってのか』


『16隻。いや、彼が言ってた事が本当なら更に後ろに数十隻控えているのかもしれんな……大き過ぎるッ』


『デケェ、一隻でどれだけあるんだ?』


『すぐに畑仕事してる奴ら以外は持て成しの準備をしろぉ!!』


『料理長の子が今、煮込みを山程仕込んでるとはいえ……あんな数の船の船員を全部持て成せるのかよ?!』


『分からん。分からんが此処が正念場だ!! 辺境で遂に食えるようになるって言うんだ!! 死んでも此処はオレ達の故郷にするんだ!! 絶対に敵意を向けるなよぉ!! 戦争じゃ勝てねぇんだからなぁ!!』


遠目に到来した船。


いや、無数の色違いの鎧が寄り集まって変形した斑模様の数百m級の船舶が地表を“走行”していた。


本来は重さで全てが圧壊するはずだが、高次元からの操り糸で動く鎧である。


重量は質量が存在していて尚、実は殆ど空間に固定化されたように無かったりする。


キャタピラすらも鎧であり、この圧倒的な屈辱をその種族ウテルスが許容しているとすれば、それは絶対的な死から逃れる為以外の理由は無いだろう。


「来たな」


「ガラークさん!! 寸胴120杯分のシチューが出来たのだわ!!」


声の方を見るとお玉を掲げ、胸を弾ませたエーラが後ろに大量の寸胴を並べて誇らしそうな笑みに汗を浮かべていた。


「悪いな。こんな何時間もやらせちまって。疲れたろ?」


「えへへ。色々な人に食べて貰えるなら、ちょっとくらい大丈夫♪」


「ホント、イイ子;つД`) エーラは将来、絶対旦那が自慢するお嫁さんになるな」


「お、お嫁さん? え、えへへ~~」


大辺境の山脈の麓に帰って来て3日。


巨大な鳥居周辺を祭壇風に建材で囲い。


到着して、さっそく開拓団の村が出来ていたところで開拓団の上層部に掛け合って、色々と整備を始めていた。


巨大な鋼の大地の隅には遂に居住区が出来ている。


(事前の準備が上手くいったな)


ドローンを幾らか残して石切りと建材の事前準備。


更に猫の1人にスチューデント・スーツと大量の建築作業ドローンとイノセントを一緒に付けて先行して受け入れ用資材の荷下ろし場を整備させたりしていたのだ。


元々が石製の居住区を作っていたアルマートである。


開拓団には長期の仕事として石切り場の人々が参画しており、現地で石切り指導。


入植者達は1000人近くになり、大量の乾物にした食料を背景にして大量の馬車と車両で次々に道としての舗装を予定している東部街道(仮)を渡って到着し続けていた。


(石製の建造物は今後博士達の建築関連研究が終わる毎に資材の生産と共に順次切り替え……石は要塞や儀式場に再転用……そこまでの道のりどれくらいになるもんかなマジで)


街道化するに当たって周辺街道を猫達が明王号MarkⅡで人と物をピストン輸送しつつ、各地に補給ポイントとなる野営地を設営。


設営箇所にはドローンへの電力供給用設備にスーツを着た猫の人員と作業用のイノセントを置いて、道の整備と街道沿いの動物達を食料として狩りを続けていた。


危ない動物を駆除しているおかげで長い道のりでも現在は無事に全ての人材が到着する事が出来ている。


そんな荷下ろし場の一角。


炊き出しを行う為の労働者と入植者の合同食堂は最初真っ先に立てた代物だ。


石製ではなく。


防水加工した布地を張り合わせただけの代物だが、まだ家毎に食料を消費させられるような状態ではない為の措置である。


(周辺の水源がほぼ井戸と10km以上遠くにある河川……浄水場と新規の水路建築は必須だな。山脈から上水道用の資材で銅も掘り出したいところだ。ポリマー関連が終わったら真っ先に合金研究して……市街地造成に追い付けばいいが……)


少し遠目の場所には複数のトイレが並んでおり、地下モールで見つけたキャンプ用品の簡易トイレ……宇宙テック仕様で座ったものの便意を制御し、電力さえあれば、あらゆる排泄物を受け入れて即堆肥にまで発酵を加速、消臭して脱水、固形肥料と水を生産するソレが数十機ズラリと並んでいる。


(リサイクル水は引いた水路から溜池に肥料は耕作地帯に順次運び入れ。近隣に河が少ないから基本的には天候制御で雨を降らすしかないのが玉に傷か)


スミヤナが食堂の主と化しつつあるエーラのいる厨房に駆け込んで来た。


「ガラークさん!! 今、あの大きい船から人が下りて来て、入植地の代表者に合わせろって言ってきてます」


確かに入植地となる金属板近辺ギリギリで止まった船のタラップが降ろされて、人がゾロゾロ出て来るのが見えた。


兵隊しかいないようだが、偉そうなのはいたので意思決定者が不在という事も無いだろう。


「ああ、それは街の連中が対応するだろう。何か連中要求して来たか?」


「それが入植地に押し掛けて済まないとか言って、手伝いはいるかって話をしてました」


「そうか。じゃあ、応対してるおっさんの店主連中に後ろから農業区画の整備と種まきを手伝ってくれと言っといてくれって伝言を」


「分かりました」


「収穫した作物は6割相手に渡して、4割こちらで受け取ると言えば、相手も無駄に荒事にはしないだろ」


「あ、はい」


「ああ、それと連中の船への視察の受け入れが出来るか聞くのも忘れずにな。どうせ、あっちから言い出すだろうし……」


「な、何か怖いんですけど(・ω・)。どうして、あっちの人達の言う事が分かってるみたいな感じなんでしょうか?」


「ただの経験則だ( 一一) 後、エーラの出した献立に使った野菜やハーブの現物を全部相手に見せて食べられないものはあるか聞いてくれ」


「え? どうしてですか?」


「恐らく、ケチを付けるヤツがいる。が、食えないものがあるかどうか確認してからじゃ、ケチは付けられないからな」


「あ、は、はい。今すぐに!!?」


視線を感じて船の上空を見やる。


そこには世闇に隠れて低空を進む無音ドローンが一体。


ヒラヒラと手を振っておく。


すると、すぐに監視がバレたとばかりに逃げていった。


「やれやれ……あっちの方にもそろそろ行ってるだろうし」


荒野のそれも南極の極点へと直接出向けるような地域と言う事もあり、外は夜には寒いはずなのだが、ガラクシオを倒した前と後では圧倒的に外気温が違っていた。


20度前後の風は適温。


空には雲がポツリポツリとあるが、山脈は完全に積雪を溶かし、荒涼とした岩肌から吹き下ろす颪染みた風が涼風となっていた。


土埃の臭いがしないのはガラクシオ撃破後に肥えた土が水分を吸っているから埃が左程立たないからだが、冬の山から吹き下ろす風のような強風が弱められた結果、本来の荒漠とした最果ての景色は失われたと言っていい。


その中心にあるのはガラクシオ跡地の上に立つ門だ。


熱を発しているわけではないが、設定では高次元の存在と同じ波動を発するという事になっている代物で使い方によっては惑星を消し去れる力がある。


【バニシング・ゲート】


MODでは神を召喚する為の序盤に色々な状況下で見つけて、それをプレイヤーは活用してゲームを進める事もある“遺物”となる鳥居だ。


しかし、高次元から降りて来る神は何も良いものだけとは限らない。


神格召喚MOD【神威神楽】はシナリオMODの側面もあり、使える神格召喚が増える毎に対応するイベントが起きていく。


基本的にそんなに高難易度ではないのだが、根本的にインフレMODの一つであり、使える召喚神格が高威力なのもあって、宇宙テック系列の小規模な戦力相手くらいならば、軽く吹っ飛ばせる。


「う~ん(;・∀・) やっぱ、スミヤナに巫女役して貰うしかないか。ミスティークは商売人だし、エーラは料理人だしな」


そろそろ食料を求めてゴルト連中が寄って来るだろうと席を立つ。


駐機してある明王号から通信で作戦の開始を告げる事にしたのだった。



―――四氏族連合旗艦【グラン・フォート】艦橋裏会議室。


『アレか。件の公務員とやらは……』


『静穏性能は良いはずなんですが……あっさり、バレましたね』


『監視されているのはあちらも分かっているだろう。入植者の顔が引き攣ってはいるが、態度は悪くないと連絡が来ている』


“後方に布陣する艦隊の旗艦会議室では副氏族長達が品定めしていた”


『おいおい。ウチの部下が骨抜きかよ。せっかく、精鋭で固めてんのに飯の味にデレデレしやがって……はぁぁ~~後で味の感想でも聞くか』


『ゴルトの兵達にはあの量では物足りないだろうが、さすがに他の種族のものまでは食わないか』


『当たり前だろ。それで戦時中に幾ら問題になったと思ってんだよ』


『分かってるならいい。で? ゴルトはアレをどう見る』


“プラネターズの問いにゴルトの代表者たる男は目を細めて微笑む”


『……良い戦士だ。オレが直接やりあいてぇな。ま、潰れちまうだろうが……火器込みなら勝負は分からん』


『ほう? 副氏族長が言うならそうなのだろう。相手の武装はどうやら、あのドローン群だけらしい。勝てるな?』


『船8隻と載ってる部隊で釣り合いが取れるならな』


“その言葉に他の三者が僅かに驚いた様子になる”


『そこまでのものか?』


『相手の武装が悪りぃ……悪意を煮詰めてやがる』


『悪意?』


『オレ達とは相性が悪りぃって事だ。大戦の最前線で木偶人形共が使ってたスタイルと同じだな』


『ふむ? レーザー投射機ばかりだと思うが……』


『出力の問題だ。さっきスチューデント・スーツを見たぞ』


『ッ、何処だ?』


『荷下ろし場の付近で人を送り迎えしてやがるドローン付随のカーゴにチラッと映ってやがった』


『辺境と侮るなという事か。配備しているのを少しだけ見せてやる、と』


『この環境でどう充電してるかと思えば、スーツからの無制限補給だとは……』


“彼ら中央出の種族にとってもスチューデント・スーツは極めて優秀で高価な装備品であり、一般部隊には支給されない代物であった”


『厄介な……ゴルトの戦士を船で八隻分……とても許容出来んな』


『しかも、相手はカーゴ付きとはいえ、足回りを強化してるように見えるんだぜ? 高速機動しながらの遠距離戦になったら、クソだるいぞ?』


『ゴルトが言うなら、それは正しい。だが、レーザーなら我らを使えばいい』


『グラマトンの言う事は正しい。が、アレが相手の手にある』


“そこでゴルトの指摘に今までに言わずにいた三者が渋い顔……否、僅かに畏れを帯びた顔になっていた”


『“ゲート”か。プラネターズもあそこまで大きい実物は初めて見ますね。古の遺跡から出土していても殆どは半壊しているか壊れているものが大半。それもアレよりかなり小さい……』


『だが、呼べるものには制約が掛かっていたはずだ。ウテルス本国にはアレの小さなものが複数あったが、それでも一つで街一つを護り切り、数個師団を退けた……ソレがアレ程の大きさになるのならば、何が呼べるものか……』


『いっそ、古代の邪神でも呼ばれた方が戦い易いかもな』


“肩を竦めるゴルトの副氏族長に誰もがジト目になった……そういうのは自分の趣味でやれと言いたげだ……強敵でさえあれば、ゴルトは一族の運命を掛けても倒そうという意思表示であるが、それで他の種族がとばっちりというのは頂けないというのは彼らの共通認識だった”


―――数日後。


「ん~~ロープワークはやっぱ、そんな好きじゃないんだよなぁ。小綱は使い勝手いいけど、結ぶのが複雑なのはなぁ……」


昔取った杵柄というヤツで朝から色々と到着する入植者用の施設で細々とした雑用をしていた。


小さな綱で大振りの食材を縄に掛けて干したり、テント生活用に工房の親方に頼んでおいた飯盒、つまり火に掛けられる調理道具である箱型のメスティンをまだ家屋が無い独り身の居住区画より離れて作業する事の多い男達に朝から配ったり。


(これで野外での煮炊きは一応出来るが、装備も足りないし、しばらく氏族連中には入植者の護衛をしてて貰おう)


男性のみならず、女性にも配布するものはある。


家庭で火を起こす事になれた女性陣にこちらも工房で作ってくれるように言っていたファイア・スターター、金属棒二つで火を起こす為の道具などを配ったのだ。


食料の量産体制が整うまでは個人消費出来る食材はあまり出回らない為、今のウチに竈付きの住居が出来るまで煮炊きの準備しておこうという話になっていた。


「こちらが食堂でしょうか?」


ロープで結んでいた肉の塊を横に外の方を向くとどうやら訪問者。


皮を剥がして血抜きと臓物抜きを終わらせ、血管から血液を絞り出し終わった肉を吊るしていると褐色のビキニ美女がやって来ていた。


気配は無かったのでかなりの実力者だろう。


別に気配とかいうものは存在しないが、人間の五感に掛かり難いのは明らかにそういう音を消す動きに長けたものだ。


20代後半くらいに見えるが、その実ウテルスと呼ばれるゼノ・アニマ・タイプは基本的に2タイプに分けられ、暗殺者向きと戦士向きでまったく性質が違ったりする。


そして、そのどちらも年齢が極めて分かり難い。


錫のような宝飾品は確か種族の中でも高位の役職に付く者の証だ。


ソレは族長の鎧の一部を分けた代物でもしもの時のお守りであり、状況を知らせるセンサー類でもあるのだ。


「ああ、此処は食堂だ。ウテルスの“お嬢さん”」


「まぁ、我らの事を知っているのですか?」


「ああ、よーく知ってる。で? 族長殿からの呼び出しか? それとも貴方自身の視察かな?」


「……良い」


「?」


「実に良い男ぶりだ」


相手が本性を露わにした。


ですますなんて口調はお飾りなのだろう。


ニィッと本来のウテルスっぽい笑みをその美女ではあるが“ちょっと妙齢”の相手が浮かべる。


「人の上に立つのは疲れるが、貴方のような油断ならない男なら、子供を儲けるに申し分ない。こういう役得があるから、私は副氏族長をしている」


今までの余所行きの笑顔が嘘のようにウテルスらしい男を物色する怖い笑み。


「オイオイ……生憎と趣味じゃないからお断りだ」


「益々欲しくなるな。いいだろう……」


ニィッと女がその黒ビキニの胸を張った。


「我が名は【バニア・セカナト】……四氏族連合の筆頭を自認している。他の連中は文句を言うだろうが、否定はすまい」


「お偉いさんか。それで? アンタがエライのは分かった。だが、オレは窓口じゃない。そして、此処の上でもない。ただの傭兵だ」


「傭兵?」


「ああ」


「名前は?」


「ガラーク」


「ッ……くくく、その名を名乗るのは愚か者か。あるいは宗教狂いの連中くらいかと思ったが親が付けるにしても困った話だな」


カラカラと女が……バニアとやらが笑う。


「で?」


「傭兵のガラーク。貴様が此処の最大戦力だ。潔く、アルマートとやらを我らの下に付かせるのならば、好待遇を約束しよう」


「ふむ。で、アンタらは逃げ切れたのか?」


「ッ―――そういうところにまで知恵は回して欲しくないが」


そこで僅かに女の額に汗が流れた。


「生憎と結婚詐欺には引っ掛からないヤツと同輩には言われてたな」


「いいだろう。話が出来るのは貴様だけだろう。付いて来るがいい。視察、なのだろう?」


「ああ、視察しに来いと誘いに来たのか。分かった。今、引継ぎをしたら、行く。3分待て」


「女を待たせるか。後が怖いぞ?」


「待たされた方が燃える女は山程知ってる。全員、神様よりも怖い連中だったな」


そう、まだ家族がいた頃はよく姉や母の癇癪を目にしていた。


普通に良い人達だったのだが、とんかく時間に煩くて、時間は護れと説教されたのも今になってみれば、良い思い出だろう。


全ては灰の中だが、色褪せない記憶と言うのは案外愉しい事よりも苦笑してしまうような印相的な出来事の方なのかもしれない。


「はは!! 早くしろ」


上機嫌になったバニアの前で周辺で作業していた一般調理職の人々にエーラとスミヤナへの言伝を頼んで、ビキニ姿のバニアに付いて行くと遠くにいた数名の護衛らしき者達。


ウテルス2、ゴルト1、グラマトン3という編成の完全武装の兵達が光学迷彩を解いてやって来た。


【シームレス・スーツ】


迷彩柄で基本的に防御力は耐弾性能と耐熱性能のみのデフォルトのヘブンにおいて使われる光学迷彩及び対弾性能に優れた装備だ。


どうやら狙撃銃は常に構えていたようだった。


「問題有りません。筆頭」


グラマトンの男が頭を下げる。


「問題なら有るとも。あの物騒な機械を下げさせてくれるか?」


「ああ、自動なんだよ。悪いな。おーい。警戒モード解いて周辺巡回と広域センサーに切り替えてくれ~~」


【了解】


「ッ」


護衛部隊の面々がそこでようやく数百m先からみょんちゃん達に照準されていた事を悟って、グラマトン以外の隊員は僅かに顔色が悪くなる。


「まぁ、此処に来るまで見るものは見た。今度はこちらを見て頂こう」


こうしてバニアに引き連れられて一緒に艦付近に付けていた昨日の夜に下された車両の一台、ウテルスの鎧で覆われた弾丸の如き例の装甲車の荷台へと載る。


すると、内部は最初こそ暗かったがすぐに内部の壁に張られたらしき宇宙テックの極薄で張るタイプの全天モニターが起動、周辺の様子を映し出し、すぐに車両が後方に向かっているのが見えた。


「それにしてもよく考えたな。ウテルスの鎧で装甲を作り、プラネターズの魔力と魔法で駆動、船員は屈強なゴルト、盾は死なないグラマトン……で? 何で負けた?」


「……まるで何もかもを見て来たようじゃないか。ガラークとやら」


「見なくても分かるだろ? 敗走してる軍の特徴は何だと思う?」


「ご教授願おう」


「形振り構えなくなった“上官殿”だよ」


肩を竦めておく。


「ッ……ふっ、ふふ……まったく、無様を晒したのは自分自身か。なるほど、納得した」


周囲の連中はまだ若いのか。


かなりピキッと来たらしいが、さすが筆頭と自認するだけはあるだろう。


腸が煮えくり返る様子でもなく。


何処か弱々しい笑みが苦笑に混じる。


「さて、貴様のような話の分かる漢相手に何を話したものか」


「オレはアルマートの外交官殿と懇意にしている。意味が分かるなら、そのまま1人語りしてもいい。勿論、他の連中に咎められてもいいならな?」


「嬉しい事を言ってくれる。だが、それよりも先にせねばならない事がある」


「?」


「スーツの背部パーツを外してくれ」


「仕方ないな。いいだろう」


「重火器は没収だ。後でちゃんと返す」


「約束だぞ? 手に入らないんだ。早々」


背部のパーツを衣服の下から曝け出し、兵達に取って貰う。


これでスーツはもう単なる破れ難くて壊れ難いスーツというだけだ。


ついでに背中に背負っていたキメラテック・アームド。


現在はアサルトライフル形態を没収される。


「最後にちょっと意識を落として貰おう。氏族長達へのルートは見られたくない」


「殺されたら困るんだがな」


「我が誇りに掛けてソレは誰が何を言おうと阻止する事は約束しよう」


「……いいだろう」


と言った先から首筋にバチッと来て意識が暗転したのだった。



『バニア様。本当のこの男を氏族長の方々に会わせるおつもりですか?』


『恐らく、この男以外にはあの機械共しか脅威は無いと思いますが』


『間抜け……お前達は近くで何を見ていた』


『え?』


『この男は何一つ油断していない』


『油断していない? この状況で?』


『ッ』


『ひ!? 矢!? 矢だって!? どこから?!』


『装甲の隙間からのようです。あ、何か括り付けられてますね』


『読んでみろ』


『ええと……ごしゅ・りん・ころ・したら……みなご・ろし・にする……』


『矢文とはな。古風じゃないか。気に入った。良い仲間がいるな』


『この矢……合金製ですね。ん~~コレ、オーバーメタルですよ?!』


『ははは、一発で家が建つな。剛毅な脅しだ。分かったか? ひよっこ共』


『は、はい』


『スーツを着用していても貫通する矢だ。頭や翅に当たって爆発したらグラマトン以外は即死だな。当たり所が良ければ、ゴルトは生き残るかもしれん』


『……ご慧眼畏れ入ります』


『それにしても呑気な寝顔……本当に分かってるのかしら?』


『信頼はしていない。だが、仲間を信用している。それだけだろう』


『それにしても人間、ですよね?』


『ああ、ゼノ・アニマ・タイプでもゼノ・アニマルでもない。ただの人間だ。珍しい……それがガラークを名乗るとは……』


『副氏族長……この男、一体何者なのでしょう?』


『さて、天の使いか。地獄の使者か。それは蓋を開けねば分からないさ。だが』


『?』


『あの威容を見せ付けて尚、敗走したと言い切る経験、この色香を前にしても鼻の下一つ伸ばさない胆力……うん。やはり、欲しいな』


『氏族長方に不潔って言われますよ? また』


『我が子らが何人いるか知っているだろうに……』


『恋多きで他氏族全てと混血の子を身籠った事があるのは副氏族長だけです』


『ふふ、4人目の子は今丁度13で成人だ。我が恋が果たせずとも、あの子くらいの器量よしなら靡くか?』


『思ってたより、何か熱入ってません?』


『コイツはこちらの鎧の“糸”の出所を見ていた』


『ッ―――』


『どこからどう見ても人間なのにな。こいつは我らの殺し方を知っていた。この大陸で血脈の弱点を識る辺境の人間傭兵……面白いな♪』


“こうして傭兵は1人、拉致同然に艦隊の旗艦へと連れて行かれるのだった”


“その背後をスーツと折り畳んだオーバーシャット、ボウガン一つを携えて追う影は車両の速度を超えて遠方から並走し、『ごしゅりんはまったくもぅ』とブツブツ言いながら主の心配をしていたのである”

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