第5話「辺境に降る星とエロMOD先輩」
―――大辺境【最果ての山脈】より東に212km地点山岳部。
『先行していた低高度偵察ドローンより映像来ます』
『ッ、おぉぉ……これが辺境……』
『我々の新たな故郷となる大地か』
『先行させている先遣隊が本隊の一次逗留地点となり得るポイントを送信して来ました。副氏族長……これだけの広さならば、船団を縦列から横列にする事も可能かと』
『広いな……』
『此処より、更に西の方角に強い魔力を感じます』
『プラネターズの勘か?』
『ええ、氏族長達は皆代替わりしたばかりで我らが支えねば、公表は族長連盟の合同発表でよろしいでしょう。新天地に到達した、と』
『面倒だな。そこまでするか? 誰かの功績は誰かの功績でいいだろうに』
『ゴルトの方々の直感的な物言いは内政時には控えて下さい。それで上手くゆくのは戦時と戦働き中だけですよ』
『ウテルスから異論は無い。族長達は内々に合意するだろう』
『………』
『グラマトンの? そちらは?』
『委細承知した。族長は既に構わぬとの事』
『よろしい。では、四氏族合同での公表で。各々方よろしいか?』
『異議無し』
『異議無し』
『異議無し』
『では、ウテルスより先遣艦隊の者達に通達。本隊【グラン・フォート】は一次停止。先遣艦隊は逗留地点に其々陣を張り、周辺を探索。端末に詳細を送る。動植物、地質、鉱物、水、病原菌類諸々の情報を集め終わるまでは探索チームを編成し、各氏族を1名ずつ配して奥地へ向かえ』
『異議無し』
『異議無し』
『異議無し』
『それにしても、山脈に囲まれ……いや、まるで閉ざされるような大地の先が広大な荒野とは……此処にまともな動植物はいるのか?』
『いるだろうよ。ゴルトの鼻は利くんでな。旨そうな匂いがする』
『魔力の事だけで言えば、中央よりも数倍以上の値を感じます。辺境は幸薄く魔力の虚無と呼ばれていたはず。何か異変が起きているのやも……』
『グラマトンは同意する。先日の辺境に立ち昇った二度にも渡る光の柱。アレは高次元干渉によるものであると結論していい』
『辺境のセントラルとやらの仕業かもしれんな。連中はそれなりの技術力だと聞く。我々には及ばずとも、一部ではスーツの増産が始まっているとの噂もある。我らウテルスの密偵からの話では今、動乱期を迎えているとか』
『動乱期? おうおう!! オレ達の出番かぁ?』
『ゴルトは血の気が多過ぎる。プラネターズは余計な争いは御免ですよ』
『グラマトンも同意する。我らは敗者……数を撃ち減らされた後だ。無用な争いで氏族の存続を危険に晒す行為は許容出来ない』
『つってもなぁ? 辺境ってのはアレだろ? 容赦無用、情け無用、略奪者の楽園で蛮族共の根城が沢山というのが中央での専らの話だが?』
『それは一部の行き来する商人達の吹聴する話だ。実際にはそういう側面もあると聞くが、同時に何とか全うに生きている者達もいると聞く』
『で、全氏族40万を食わせられるのか? その全うさとやらで?』
『食料消費量はゴルトが7割だ。そこを切り詰めている我々の意見は尊重するべきでは? 副氏族長殿……』
『ええい。皮肉は止めろ。此処で争うな。我らが何とか困難な局面で此処まで来れたのは各氏族が持てるものを出し合ったからだと忘れたわけではあるまい!!』
『……』
『……』
『グラマトンはウテルスに同意する』
『プラネターズはその魔力と6体系の魔法を。ゴルトはこの大船団を動かす為の運搬と護衛を。グラマトンはその身を以って尽きぬ軍団の殿……あの恐ろしき機械共への壁として。我らウテルスはこの身の鎧の全てを船として捧げた』
『『………』』
『我らが“衣服”等と言う屈辱を甘んじて受けているのはゴルトならば食料を、プラネターズなら魔力消費を、グラマトンならば、同胞を甘んじて眠らせ、減らしているのと同じだ』
『いや、お前のとこはオカシイ』
『ええ、衣服は着込んでもいいものだとそちらの氏族長は仰っていたような?』
『グラマトンは同意する。衣服を着込まないのは旧いシキタリを護る旧ウテルス派だけでは?』
『ええい!? うるさいうるさいうるさい!! とにかく!! 今は内輪揉めしている場合ではない!! 氏族長達はまだお若いのだ!! 安全な居留地を見付けて、早めに腰を落ち着けねば、再生も儘ならん。そして、ゴルトbに言う必要もなく食料が尽きる!!』
『『『………』』』
『一時的に逗留し、食料生産を開始する手筈は整えておいて欲しい。プラネターズ』
『承知した。いつでも農業の開始が出来るよう計らおう』
『ゴルトもまた大地を耕す為の耕作部隊の編制を』
『了解だ。ウテルスの』
『グラマトンには止まっている間は最大級の警戒を頼みたい』
『3割程を起こしてこよう』
『これより四氏族の辺境侵入を開始する。居留地を見付け、我らの邦を得るのだ』
『『『………』』』
『プラネターズの前氏族長の占星術通りならば、此処には我らにとっての“聖杯”が眠っている……それが何なのか。杯が炎で満たされた時、新たな時代が拓かれるとの言葉。その意味は? 全て分からん事だらけだ。しかし、此処まで来た以上、後戻りは出来ない』
『同意するぜ』
『同意しよう』
『同意は可能だ』
『これより辺境への入植を開始する。此処が我らの故郷足る場所にならんことを……』
*
―――大辺境東部。
「【ちゅ(^ω^)】」
「い、いる……(´Д⊂ヽ」
相変わらず荒野はネズミーの楽園らしかった。
山岳部近辺から更に東へと進んだ先。
水資源と鉱物資源が豊富な領域へと足を踏み入れて12時間。
東端まではまだ少し距離がある地点。
付近で一度明王号を止めて地質調査を行っていた。
カーゴに積んだセンサー類は極めて強力だ。
元々が宇宙テックな代物であり、岩石惑星や小惑星探査にも使われてる代物なのでさもありなんというところだろう。
横列で数十km程の距離を開けて広い荒野をローラー作戦で観測していたのだが、地下資源の層はどうやらここら辺でほぼ途切れているらしく。
アルマーニアと呼ばれる竜種が生息する山岳部が近辺という事もあり、国土はともかく利用地域は恐らく此処までだろうとスミヤナに看板を立てて貰っていた。
使い魔として明王号と魔力で繋がれた彼女は今や複数の機体を自分の手足のように扱って魔力で魔法を延伸する事が出来ていた。
些細な魔法ならば、鎖と化した使い魔の間と間に発現させる事も可能。
猛烈な勢いで横列の看板が一斉に大地から切り出されて高く掲げられていく。
「スミちゃん。スゴイのだわ♪」
「ああ、魔力が有り余ってても中々出来ないだろうな」
「いえ、そんな……元々、魔力が貴重な土地だったので……とにかく効率化出来るようにと教わったんです。環境のおかげですよ」
明王号内部。
ちょっとだけ、瞳を金色に輝かせた美少女の謙遜はしかし、広大な領域が立て看板で分断されている時点で否定される。
「これで領有の主張は完了だ。彫ってもらった文言は四種族にも分かる文字だ。後は近隣も動植物の植生を解析。貴重なものは保護、金属資源の分布のマッピング。ま、あの森周辺とは違ってほぼみょんちゃん頼りだな」
「あはは、その名前でいいんでしょうか? 本当に……」
思わずスミヤナが頬を掻く。
自分で言ったとはいえ。
それでも連れて来ていた全ての機体が今はエーラからすらみょんちゃん扱いされていた。
「別に構わん。というか、使い魔を6体同時操作の方が驚きだ。効率化してても情報を捌くのは骨だろ? ホント、魔法関連はスミヤナに頼り切りだな」
「い、いえ、どんどん頼って下さい。今まで魔法って辺境暮らしだとあんまり役に立たなかったので……それがこうして街の為に役立つのは嬉しいんです」
「スミちゃん。お料理も手伝ってくれてお嫁さんとしても花丸なのだわ♪」
「ごほ?! お、お嫁さんて!?」
「?」
2人の少女がアワアワするやら微笑むやらしている背後に癒されつつ、横合いから出した物理ボードと呼ばれるホログラムを使わないタッチ式のキーボードでいつもの如く得られた情報を纏めていく。
(ガラクシオの効果が思ってたよりも出てない? いや、魔力は十分にあるし、土中の成分も随分と肥えてる。問題は生物資源の大本が少ない事か? 気温が上がってるのに生物の活発さがあの山岳一帯程じゃないのは生物資源が少な過ぎて増殖に時間が掛かってるって事だな)
一緒に増殖してくれては困る即死トラップがウロウロしている荒野怖過ぎと思いつつもこれでようやく帰れると思った矢先。
「ん?」
上空を何かが駆け抜けていく。
「あ、アルマーニアなのだわ!! ちっちゃい?」
「あ~~竜の子供か。この間、怪異=サンが間引いたから、残ってるか怪しかったが、まだ残ってるみたいだな」
「でも、あの子、怪我をしてるみたいです」
内部で光学映像の解析データがお出しされ、鋼色の3m程の竜の脚が千切れ掛かっているのが見えていた。
「ん?」
そうして縄張り争いに負けたのだろうかと首を傾げていると遠方からエグゾースト。
排気音が近付いて来る。
「何か来たのだわ!!」
エーラの言う通り、東方から一台の車両……否、装甲車両というよりは弾丸染みた帷子のような外殻に覆われた物体が加速してくるのが見えた。
「おでましか……それもあの形態。随分と追い詰められてるな。連中」
「追い詰められてる?」
「ウテルスの話はしたよな? 鎧を着込んだ連中だ。あいつら、鎧を変形させて乗り物に出来るんだが、滅茶苦茶嫌がるんだよ。便利だけど自分の鎧は鎧の方がカッコイイという美学らしい」
「そ、そうなんですか? つまり、あれって……」
「ああ、ヤバイ難民様の御到着だ。スミヤナ馬鹿デカイ看板立てておいてくれ3mくらいの連中がちゃんと見られるくらいの高さで」
「は、はい。ちょっと大きく……造成!!」
スミヤナ指先をチョンと全天モニターの一部に付ける。
すると、そこから奔った小さな燐光が外にまでも漏れ出したかのように巨大な車両が突っ切る前に立て看板を大きくした。
しかし、止まる様子もなく。
「は?」
ゴッシャァと看板の柱に激突した装甲車が猛烈な速度で吹っ飛び。
そのまま周辺でゴロンゴロンと横倒しになって回りながらドカッと周囲にあった大岩にぶつかってフシュ~~っと湯気を上げて止まった。
「何で止まらないんだよ……(´・ω・`)」
「ぼーそーが好き? なんでしょうか?」
思わずスミヤナも首を傾げる状況である。
「仕方ねーなー( ̄д ̄) 救助に行くぞ。2人は中で待っててくれ」
「あ、はい。大丈夫ですか?」
「ま、殺しはしないし、殺されもしないさ(・ω・)ノ」
こうしてイソイソとスミヤナとエーラに外に出ちゃダメだぞと言い聞かせて装甲が拉げてシュルシュルと小さくなって12m程の輸送トラックみたいな形に戻った車両に近付いていく。
鎧は縮小と拡大が在る程度は自由自在なので内部の本体の保護に戻されたのだろう。
トラックの長方形のコンテナには大きな亀裂があり、そこに消えたようだ。
「お~~い。大丈夫か~~」
声を掛けてトラック内部に入ろうとした時、トラックの荷台がドカッと内部から弾け飛ぶ。
「う、ひでーめに会ったぜ。ったくよぉ。あん? 何だお前?」
「アンタら何処のもんだ? 此処はアルマートの領土だぞ?」
「はぁ? 何言ってるんだお前?」
ゴルト。
美男美女ならば英雄みたいに見えるが、顔付が悪いとデカイ蛮族みたいにしか見えない者達を久しぶりに見ていた。
2mから3m程の巨躯であり、筋肉の付き方は千差万別だが、基本は引き締まってる連中程に強いというのが相場だ。
その点で言うと中から出て来た迷彩柄の野戦服姿の男は30代半ばで柄の悪いチンピラ。
筋肉も肥大化し切っていて、そんなに強そうには見えなかった。
「いやぁ、アンタら、あの看板が見えなかったのか?」
「看板?」
「ほら、あれ!!」
指差すとデカイ石製の看板がある。
「ん~~? 何だ? あの文字……」
「ああ、読めないのか? アレはな。この先、アルマート所有の領土である。利用に際してはアルマートの役所に届けられたしと書かれてるんだが」
「は? こんな何もねぇところが領土だと? 馬鹿言うな!! 此処はただの辺境で荒野だろ!!」
チンピラっぽく凄まれる。
「アンタさぁ。もう少し役者出来ないのか? 目で中身読んでたろ? 読めるものを読めないとか抜かすなよ(`・ω・)」
「っ」
さすがにちょっとゴルト接触1号君が怯む。
「とにかく、そういう事だから、アンタらが何処の誰かは知らないが、アルマートに申請に来てくれ。辺境は近頃人が少ないからな。アルマートの住人になるなら、いつでも歓迎するぞ」
「オ、オイ。ちょっと待て!!」
「?」
「あの看板はテメェらが立てたのか?」
「ああ、そうだが?」
「い、慰謝料だ!! 慰謝料ヨコセ!! あの看板のせいで機体がオシャカじゃねぇか!!?」
「慰謝料ってお前……オレは公務員で金なんか持ってないぞ? そもそも移動する為の車両や調査の機材と街に戻るまでの食糧しか積んでないんだが」
「ッ、とにかくだ!! オレら四氏族連合に盾突いたんだ!! 顔を貸してもらうぞ!!」
「ああ、分かった分かった。そんな怒鳴るなって……それで他に誰かいないのか? お前だけか?」
「他に3人いる……(こ、こいつ人間の癖に一切怯まねぇだと?!)」
「おお、そうか。じゃ、車両が修理出来るか見てやる。外に出てくれ。一応、応急修理可能な風には見えるからな。お~い。明王号~コイツを修理出来るか見てくれ~~」
「みょー何ッ―――」
そこでようやく黒髪のゴルトが遠方から近付いて来る明王号に気付いた。
「ッ」
「ああ、アレはウチの公用車でな。色々な事が出来る優れものだ」
【サーチを開始します。破損個所の特定及び整備応急修理可能かを判断……応急修理可能。車軸問題無し、ブレーキ問題無し。一部のオートバランサーとダンパーが破損していますが、溶接だけで一時的に使用可能】
「後はよろしく」
【了解】
「こ、こいつは……AIか?」
「あん? あんちゃん、AI付の車両を見た事ねぇのか? どこの田舎から来たんだ?」
「ッッ!!? 田舎じゃねぇ!? オレ達は大陸中央から来たんだ!!」
思わず顔を真っ赤にして怒るゴルトである。
「お、お~~い。大丈夫か? 何か問題か?」
「な、何でもねぇ!! 全員外に出てくれ!! 修理してくれるとよ!!」
「は? え、ええと、外にだな? 分かった」
ゴルト1号君の声で内部にいた全員が出て来る。
四種族が一人ずつという構成らしい。
褐色肌に赤錆色の髪の20代くらいに見えるウテルスは何やらメソメソしており、あちこちが凹んだ鎧を見てプルプルしていた。
やる気無さげなアルティメシエ・グラマトンの青年は白い髪をボリボリ掻きながら溜息一つ。
明王号を傍に見て、驚いた様子で固まり、翅が本体であるプラネターズは20代のナヨッとした男でアサルトライフルらしき重火器は持っていたが、ぶっちゃけ重そうに見えた。
「で、アンタら何処から来たんだ? 迷子か? 食料持ってるか? 持ってるならいいが、持ってないなら、此処から先は殆ど動物もいないし、食い物もない場合は引き返した方がいい。後、200km以上は街も無いしな」
「あ、どうも~~それで~~どういう状況で?」
プラネターズのナヨッとにーちゃんに看板を指し示す。
「あ、あぁ~~此処って何処かの邦の国土だったんですか?」
「そーだよ。アンタら知らないで来たのか? つい最近測量とか諸々が終わって、セントラルにもお伺いを立てて、やっと領土として認められたんだ。一応、周辺は此処までしか覆ってないが、人が少なくて手が足りてないだけで、東端の山脈端までアルマートが管理してる」
「え、えぇ……そ、そうだったんですか?」
ダラダラと冷や汗を掻いたナヨッと青年である。
内心はきっと。
『超やべぇええええええええええええΣ(・ω・ノ)ノ どうすんだよぉおおおおおおお!!?』くらいに思っているだろうが、さすがに顔には困惑しか出ていない。
「うぅぅぅぅ……」
「そっちのお嬢さんは何処か怪我でも? あ、一応薬はあるからいるか?」
ポーチから治癒剤を取り出して手渡す。
「え? え?」
「飲め飲め。それにしても立派な鎧がべこべこに……後で病院行った方がいいぞ」
「う、うぅぅぅ、こ、この人イイ人だぁああ!!? いだだぎまずぅ~~ごきゅ」
飲んだ途端にベコベコだった鎧がボゴンと膨れて元に戻る。
「ふぁ!? な、治ったぁ~~~!!?」
「ん。良かったな。荒野は助け合いの精神だからな。あ、ちなみにさっき竜が手傷を負ってたんだが、アンタらの仕業か?」
「え? あ、ああ、食料にしようと」
思わずゴルトが答えてしまう。
『あ、馬鹿!?』みたいな顔になるナヨッとプラネターズである。
「困るよぉ~~ウチで資源管理してるんだ。この間、大きな個体を間引いたばっかでよぉ。竜とはいえ、絶滅したら困るし、ウチの大切な資源でもある。成長したのはまだしも小さいのはダメだ。今度から気を付けてくれ。竜は貴重なんだ」
「あ、あ~~すみませんすみません!!?」
思わず謝るプラネターズの顔は引き攣っていた。
「今、入植地をあちこちに構える為に街を立ててるんだ。ほら、此処」
予め用意していた紙の地図を取り出して見せる。
しっかり、折り畳んで使い込まれたように汚しも要れた品である。
そこには山岳部近辺と辺境一帯を囲んだ領域が全てある。
「これはここら辺の地図だけど、部外者には渡せないんだ。覚えてくれ。この地点が新しい街になる予定だ。そこから東部の端まで採掘拠点だの、採取拠点を立てる計画なんだよ」
「へ~~」
ぼ~っとしてるように見えて一番状況を正確に把握しているだろうグラマトンの青年が地図を触ろうとしたのでサッと引っ込める。
「いや、だから、ダメだって。これ備品な上に部外者に触らせたらダメなヤツなんだって」
「な、何してるんです!? あ、あはは~~スイマセンスイマセン!? ウチの者達が……」
苦労人なプラネターズの青年が頭を下げる。
全員、軍服姿とはいえ、完全に四種族混合の分隊。
かなり訓練されていると見た方がいいだろう。
【修理完了しました。走行可能距離100kmと推定】
「よし直ったな。アンタら、ちゃんと食料用意してアルマートに来な。入植地に役所はまだ無いんだ。この間、略奪者が大量に来て立て直してる最中なんだよ。何処も人手不足で応対してる暇がねぇ。何か利用したい土地や話があるなら、そっちに持ってってくれな」
「あ、はい~~」
「なぁ、アンタ……オレ達を見て、驚かないのか?」
「はぁ? 何で?」
「こんな馬鹿デカイ男や鎧着込んだ痴女や翅生えてるヤツや全身白いのだぜ?」
グラマトンの青年の言う事は最もだ。
「辺境じゃ変なのが一杯だぞ? 馬鹿デカイ蟲は何種類もいるし、おかしな恰好の略奪者やレイダー崩れは多数派だったし、ゼノ・アニマルだって諸々何種類いるか分かったもんじゃないし、アンタらが何処の種族かは知らないが、略奪者にはなってくれるなよ?」
「アンタが今から此処で略奪されないと」
「ちょ―――」
「ははは、馬鹿言うな。オレより弱いアンタらがどうやったら略奪出来るんだ?」
「「「「ッ」」」」
「いいか? 何処かの種族さん達。此処は辺境だ。辺境の更に奥の大辺境だ。120m近い竜がウロウロしてるし、馬鹿デカイ蜂が無数に飛んでるし、地下遺跡から街一つ分の大きさの恐竜だって出るし、ゾンビも大量だ」
「チッ……」
グラマトンが舌打ちする。
「アンタらが強いのは分かる。だが、強いだけの存在は此処では生きていけない。助け合いだよ。助け合い。食料の生産、資源の採掘採取、複雑な加工をして道具にしてくれる生産者、街を統治してくれる統治層……何が欠けても生きていけない」
「ほ、ほんっとぉぉぉにウチの者達が申し訳ない!? 失礼な事ばかり……」
ナヨッとプラネターズがペコペコし始める。
「まずは礼儀だな。アンタらに必要なのは」
「あたしもそう思う~~♪」
こちらに靡くウテルスである。
さすが強者には弱い痴女と名高いだけはある。
「あ、あははは……はぁ、どうしよう」
どうやら状況があまりにもヤバ過ぎて恐らく小隊長レベルでは現地対応し切れないのだろう。
「じゃ、オレはこれで……まだ大辺境には分かってない事も多い。気を付けてくれ。あ、それと食料が足りないんだったら、さっきの入植地で大規模な農地を開拓する予定なんだ。もし手伝ってくれるなら、分けてやるぞ。じゃあな」
こうしてイソイソと明王号に乗り込んで場を後にする。
「……ガラークさん。何か別人みたいだったのだわ♪」
「じとー(T_T)」
「何故ジト目に?」
「ガラークさんて、詐欺師の才能、ありますよね」
「えぇ? めっちゃ、頑張ったのにぃ……(´Д`)」
ジト目なスミヤナである。
「本当の事を言っても、肝心な事は言わないとか。嘘じゃないけど、相手に誤解させる手管とか。それとアルマーティア……アルマーニアとか倒せるのはガラークさんだけですからね( ̄д ̄)」
「そーゆーこともある(;・∀・)」
「そーゆーことでしかないですよぅ。はぁ~~それにしても竜に手傷を負わせるとか。あの人達強そうでしたね(*´Д`)」
「ああ、あいつらは恐らく先遣隊の分隊だ。ぶっちゃけ、末端の末端の末端だ。種族のエリートになると相手するのが面倒過ぎる。此処は穏便に済ませて欲しいところだな」
「でも、そういう人達を全部追い返せるって言ってませんでしたっけ?( 一一)」
「可能だけど、可能なだけなんだよなぁ……とにかくお仕事は終了だ。後は帰って開拓団に合流して、色々準備しないと……」
「来ますかね? 平和的に……」
「ま、いきなり榴弾砲を撃ち込んで来なきゃそれでいい」
「お料理頑張るのだわ~~(・ω・)ノ」
「連中が来たら料理で持て成してやってくれ」
「はーい(>_<)」
「ん? 何か倒れてるな。あの竜……」
「食べるのだわ?(・ω・)ノ」
「いや、何処で誰が見てるか分からない。竜を保護して治癒剤ぶっかけとこう。野生動物だしな。勝手に治ったら、どっか行くだろ」
「そう言えば、竜のお肉余ってるんでしたっけ?」
「ああ、ミスティークが干しても余るから街の連中に食わせてるんだよなぁ。開拓団も込み込みで……ホント、確かに厳しい環境で開拓するから渡りに船な食材だったけどさぁ。大丈夫か?」
「物凄く今更な気がしますぅ……御婆様がそう言えば、今日は竜肉だよぉって骨までスープにしたり、赤いデザートまで食べさせてくれましたけど(・ω・`)」
「あ、あれ美味しかったのだわ~~三匹分取れたキショー部位だって~いつも頑張ってるからってミスティークちゃんとスミちゃんと一緒にどうっておおばば様が此処に来る前の夜に食べさせてくれたの~ヾ(≧▽≦)ノ」
「お、おぅ(・ω・)(ジッと瞳を細めて、二人の少女に竜のヤバイ・チート永続効果が付いてるのを確認した傭兵の顔)」
「ちなみに光とか吐いた?」
「「?」」
「いや、何でもない」
こうして新しい隣人達とのファースト・コンタクトを果たす事に成功したのだった。
*
―――大辺境東端【四氏族連合】艦隊本陣。
“今、正に四つの種族は自分達の計画がいきなり暗礁に乗り上げた事を報告されていた”
「つ、つまりだ。我々が到着するよりも先に辺境を領土併合して、周辺に認めさせたそのアルマートとやらが近隣の管理を担っていて、それを知らずに我らは領地に不法侵入した形になっている、と」
“褐色の肌の女。水着のような黒ビキニに複数の錫のような色合いの宝飾品を付けたウテルスの副氏族長【バニア・セカナト】が艦橋で頭を抱えていた”
「どうする? 戦争いっとくか? オレらはいつでもいいぞ?」
“3mの巨漢。上半身裸体に氏族の象徴たる拳の痕を入れ込んだ宝冠を一つと野戦服のズボンだけの男ゴルトの副氏族長【ザイ】が笑顔で肩を竦める”
「ノウキンか? ゴルトの頭には筋肉以外は詰まっていないのか?」
“思わず、そう突っ込んだ頭の痛そうな顔の優男……エルフや天使かという美貌の美青年プラネターズの副氏族長【オズ・グレム】が溜息を吐いた”
「グラマトンの強襲部隊はいつでも出せる。その相手とやらが我らを超える戦力を持っていなければ勝てるだろう。が、その前に視察が必要だ」
“全てが白い30代くらいの白い軍服らしきものを着込む男グラマトンの副氏族長【ゼム】が干し肉を齧りながら、報告書を眺める”
“誰もが分かっていた。想定外だ、とは”
“しかし、誰もがこうも思っていた”
“所詮、辺境の勢力……力で捻じ伏せられないのか?とも”
「不用意な発言は慎め。グラマトン。貴様らに適当と言われる我らウテルスでもあの“大戦”を忘れてはいない。なのに、最も数を減らされた貴様らが真っ先に忘れたのか? 我らは我らの奢りに敗れたのだと今更に言う必要もあるまい」
「そうは言うがなぁ……強そうな男にAI式の車両一両だろ?」
「やれやれ。ゴルトはあの戦で学ばなかったか? 相手を侮った結果がこのザマなのだぞ? 我らは今や運命共同体だ。何処が欠けても生存出来ない事は承知のはずだ」
「グラマトンはその意見を肯定する。だが、実際問題として足踏みしている暇は無い。全ての物資の枯渇は目前に迫っている。我らはともかく、他種族が持たない」
「……仕方ありません。此処は艦砲外交で。我らの何処が滅んでも困る以上、ある程度の自制を利かせつつ、乗っ取る方策で行きましょう」
「乗っ取れるのか? ウテルス」
「ゴルトには無理だろう。頭を使うのは我らの役目。貴方は部下が暴発して、相手側に不用意に仕掛けたりしないようしっかり統制して貰いたい」
「はいはい。信用されてねぇな」
「プラネターズの総意として、されてると思っていたのならば、逆に驚きだと言うべきですかね。貴方達の不用意さで出た犠牲に付いて追及してない時点で察して欲しい。プラネターズはウテルスの意見に同意する。しかし、具体的には?」
「艦隊で入植地とやらまで押し掛けよう。そして、威容を見せ付け、合法的に我らへ譲歩させる。あちらも我ら同胞40万を前にしては戦争という手段は露程も考えられないはず」
「グラマトンは同意する。ただし、押し掛ける前に敵情視察……相手側の情報が必要だ」
「ゴルトも同意しとくぜ」
「艦隊の行動限界も近い以上、不用意に距離を詰めても詰められなくても困る。まずは100km以上近づけて、入植地を視察。視察後にあちらをこちらに招いては?」
「プラネターズはグラマトンの意見に賛同する。まずは様子見、様子見の後、相手側の出方を見る……時間は無いが、慎重さを欠く事も許されない以上、それが最良と判断します」
「分かった分かった。好きにしてくれ。ゴルトはその意見に賛同する。敵が出て来たらぶっ飛ばすのはオレらの役目だ。それまでは黙ってるさ」
「では、先程の案を採用します。本隊は先遣艦隊の後方に布陣。20km程後ろに付けましょう。先遣艦隊は情報収集を。出来るだけ相手を畏怖させるようギリギリまで近付いて、お世話になりに来たと相手の言葉に乗りましょう」
「異議無し」
「異議無し」
「異議無し」
「では、迅速に陣を畳んで明日の朝には出発する。各部隊は各地の資源情報の収集を行う者以外は艦隊に合流。別動隊になれる部隊を複数用意しておくように」
*
―――数日後、衛星軌道上【アドンの庵】残骸宙域。
“大辺境において一つの邂逅が生じようとしていた時、蒼い輝きが明滅した宇宙に一隻程、小さな艦艇が到着していた”
『お前らぁ!! 今日から此処が稼ぎ場だぁ!! あの帝国の船が消えたって話は聞いてるなぁ!!』
“120km級小型突撃艇【レミング】は涙滴方の船体を持つ宇賊、もしくは宇族と呼ばれる者達御用達の襤褸船だ”
『お頭ぁ!! 本当に帝国の最新鋭がこんなとこに落ちてるんすかぁ? クッソ、【ベースワールド】から離れてる上に【テールワールド】の主要宇宙港すら何年掛かるか分からねぇ位置ですよ?』
『くくくく、オレの情報網に間違いはね……帝国の辺境艦隊の一部がこの宙域で消息不明だ。しかも、“門”を搭載してたって話だ』
『門ってまさか!? 【バニシング・ゲート】っすか!? あ、あんなあぶねーもんを積んで、こんなド辺境のヴォイドも近い場所に艦隊が何の用なんですか?』
『知らん!! だが、転移事故の可能性がある。その場合、一部でも回収出来れば、裏市場で大儲けだ!!』
『おぉ、夢がありますね!!』
『お宝かぁ……ゲートを見付けたらどうしやすか? 一銀河丸ごと消えた事もあるって代物でしょ?』
『それは知らん。そんなもんをお前が市場まで持ってくつもりか? 死ぬぞ?』
『そ、そうっすよね……お、解析結果出ましたよ~~どうやら此処には人型の知性体が案外いるみたいっすね~~儲け儲け~~♪』
『“収穫”したら、“動物園”に売りに行くぞお前らぁ!! 良い酒!! 女!! 飯!! 銃!! 船!! 何でも買ってやる!! 働けよぉ!!』
『ウェエエエエエエエエエエエエエエエエイ(≧◇≦)/』
“その時、辺境セントラルと呼ばれる地域の一国家において急ピッチで進められていた兵器開発の最終試験が実施されていた”
“宇宙では危ない生物や船に目を付けられたくない場合はステルス・モードが基本であり、多くの船が自分の位置を隠す”
“そして、その到着した船もまた同じように本体を隠し、その名も無き辺境惑星に狙いを定めていたが、誰もそれを地表に識る者はただ1人をおいてなかった”
『議長。【グランデス】の試射準備完了しました』
“アバンシア共同体……先日、辺境地域に軍を派遣し、手酷くやられたと噂のセントラル最大派閥たる者達の立ち入り禁止区域の一角にソレは姿を露わにする”
『よしたまえ。もう勇退した身だ。今は与党の顧問だよ』
『いえ、我々の研究を拾って下さった御恩は忘れません。お孫様の事は大変心苦しく思っていたところで……我らの力が至らぬばかりに……』
『顔を上げなさい。君達は最善を尽くした。ならば、胸を張って我が国をこれからも護る為の力を開発していって欲しい』
“地下から伸びる巨大な砲口は遥か天に向いていた”
『議長……はい。それでは遮光グラスを。対空防御兵装【グランデス】……これが在れば、【アドンの庵】のような宙の勢力にも対抗出来ましょう』
『連中の使う拠点を確実に撃ち抜けるはずです。射程は大気圏外から月まで届く事を確約致します』
『うむ。初めてくれたまえ』
『目標は破壊されたとされる【アドンの庵】のあった宙域です。何かしらの残骸が爆発した場合、光がかなり観測されるかもしれません』
『驚かれぬよう先に言っておきます。では、試射試験を開始します!! カウント10から開始!! 10、9、8―――』
“船の下方の外殻が開き……その内部からは次々に“収穫”用のドローンを積んだ揚陸挺がミサイル弾頭のように地表へと切っ先を向けていた”
『船長!! 収穫用の揚陸挺発進準備完了ですぜ!!』
『ヨシッ!!(≧◇≦) この星の全てを奪い尽くせぇええええええ!!!』
『了解!! 揚陸挺全機発艦!! まず第一次収穫で300万程頂きましょうぜ。へへへ』
“閃光が奔る……辺境の地表より放たれた対空防御兵装【グランデス】は太古の古代兵器の一つであり、プラズマ兵装としては【拠点防衛用星間照準武装】という扱いであり、光速の60%程の速度でプラズマを遠距離まで飛ばして大型艇の機関部を打ち抜く為に運用されていた代物だ”
『お、おぉぉぉおおおお!!? せ、成功だぁああああああ』
『うお!? ま、眩し?! こ、この光量……もしかしたら、アドンの庵の残骸にまだ動くジェネレーターがあったのかもしれません』
『あの爆発も衛星の残骸のせいか。だが、強力なのは分かった。試射場の周囲はほぼ被害を受けていないな。熱量の収束とやらは上手くいったようだ』
『はい。議長……これでこの星のほぼどんな飛行戦力も撃ち落とせるでしょう。連射出来ないのは困りものですが、そこはおいおい。それよりも大型の飛行戦力に対して絶対的なアドバンテージを得た事の方が大きいかと』
『うむ……よくやってくれた。む?』
『どうかされましたか?』
『流れ星……だな。あの爆発で衛星軌道上の残骸が落下しているようだ』
『ッ、た、確かに……すぐに軌道計算を行わせます!! 残骸が得られれば、新たな技術を取得出来るかもしれません』
『すぐに取り掛かってくれたまえ』
『畏まりました!!』
“不幸だったのはその船の外部装甲が開いていた事であった”
“地表から吹き伸びた光は揚陸挺の発射と同時に発射地点から内部構造の先にある動力炉に直撃、敢無く爆散したのだ”
“そう……もう帰る場所もなく命令を遂行するドローンを載せた揚陸挺だけが流星となって、大陸の一部地域に降り注いだのである”
“爆発の影響で軌道が逸れ墜落する大量の船体が向かうのは大辺境……正しく運命の車輪は回り始めていたのだった”




