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エロMOD先輩と賢者の窯  作者: Anacletus
第二章 エロMOD先輩と炎の聖杯-I just came to eat with a cute girl...-
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第4話「やべー難民とエロMOD」


「ミスティーク」


「はーい。帰って来ましたよ~ガラークさぁん!!」


ブンブンと元気よく手を振ったのは相変わらず豚人形態がチラ付くミスティークであった。


現在、エルフ姿になったとはいえ、やっぱり自分の愛する最強エルフ美少女とは違う彼女がイソイソと明王号MarkⅡから降り立つとその背後からセントラルで活躍してくれていた外交官もやってくる。


「少しぶりね。ガラーク」


「ああ、イシル・ガイン外交官殿。食料と諸々の機材の買い付け、資金の調達滞りなく受け取った。此処での最初の契約は全て達成したと思ってくれていい」


ミスティークがちょっと膨れた様子で自分にもっと言う事があるだろうという顔になるが、取り合えず後でなと押さえて貰ってマニアクス・ニャァン本国では死んだ扱いになった彼女に頭を下げる。


「ちょっと、止めてよ。契約、でしょう?」


「ああ、だが、助かったのは事実だ」


「仲介しただけよ。外交官の肩書が無くなったから、殆ど個人的な伝手を使って苦労はした。けど、仕事の斡旋だけで実際にああまで稼いだのは貴方の実力でしょう?」


「言う程仕事しなかったけどな。まぁ、確かにドローンは楽勝だったが、略奪者相手のはちょっと疲れた。精神的に……」


「そう、なら少しは休んだら?」


「そうも行ってられない状況だ。此処、どう見える?」


「どうって?」


パチンと指を弾く。


すると、街の周囲が一瞬だけ元の“艦橋の下”に戻った。


「ッ―――話には聞いてたけど、本当に太古の時代の船が落ちて来たのね」


「ぶっちゃけ、助かってるのと困ってるのは半々だ」


「はは……呆れてモノも言えないわ。でも、貴方ならこの状況も上手く利用出来るんじゃない?」


肩を竦めるしかない。


「まぁ、その為に色々してるんだがな」


「なら、いいわ。それで契約は終了ということだけれど、お払い箱?」


「オレとしては引き続きが外交関連はアンタにして貰いたいと考えてる。ミスティークは本業が商売だ。政治の事はある程度分かるとはいえ、本業に注力させてやりたいと思っててな」


「ガ、ガラァアクシャァアアン!? そ、そんなに私の事をぉ~~~!!?」


その言葉に何か目をウルッとさせたミスティークである。


「ま、まぁ、私としてもそれは望むところというか。さすがに本国には戻れないし、個人的にも戻りたくない。受けるわ。その仕事」


「勿論、アンタにはちゃんと寝床、食事、給料は支払う。毎月の給料+出来高払いでいいか?」


「いいの? 私、高いわよ?」


「構わない。どの道、命を預ける外交に金勘定はしない。それはオレの仕事じゃないしな」


「はい!! 勿論です。ガラークさんのお財布の管理は私が、帳簿はスミヤナさんが付けますので」


胸を張るミスティークである。


「じゃ、これからもよろしくね? で、さっそくなんだけど、色々と情報を拾って来たわ。中に入って相談しましょう」


「ああ、おーい!! おまえら~~ドラゴンの方はよろしくなぁ~」


『にゃご~~♪』


護衛の猫達が東側の街道の終点の方へと明王号MarkⅡの上に載って消えていく。


「ドラゴン?」


「ああ、朝どうしてか大量に死体が落ちてたんだ。オレが大尉と一緒に駆除しにいこうと思ってたヤツが……この船の入り口の端にな」


「えぇ……それってアルマーニアでしょ? 何で死んでるの? というか、死体が沢山て……」


「オレじゃないぞ? 勝手に落ちて来たんだ。首が全部焼き切れてて新鮮だったから、今商隊と猫の総員で解体して、全部資源化出来るようにオレの明王号が陣頭指揮取ってる」


「陣頭指揮って……貴方ねぇ? 色々言いたい事あるけれど、それセントラルでも非常識だからね?」


思わず常識人ですという顔でのツッコミが入った。


猫の城内部に向かうとエーラがおり、本日は牧場での朝の乳絞りと動物達の壁内への放牧の世話が終わったので戻って来たとの事。


現在、ディノ化動物が多数襲来し、ディノ化した変異個体である特殊強化されたゾンビがあちこちにウヨウヨしているものの、街道沿いは毎日猫達が見る限りを掃除している為、増え続ける相手には対処出来ていた。


竜鱗や竜骨を使った鎧の成果ではあるだろう。


先日持って来た竜の遺骸から創り出したソレらで基本的な戦力の底上げがしっかりなされた結果である。


基本的にはテック系スーツの相互五感として運用され、外に出る任務の中で重要ではないものに就く猫達が使い回している。


その恩恵で戦闘に左程の能力を持たない者でも重火器や近接用武器も合わせて強化個体相手にも何とか対応出来ているというのが事実だ。


そんな猫達が破壊したゾンビは金属細胞製、その場で解体して溶鉱炉行きとなり、ディノ化動物達は増え続けてはいたが、増えた端から何とか狩り出し、金属加工されたような状態の細胞で新しい電子機器の材料となっている。


(う~ん。ディノ化RTAチャートくらい見とくんだったなぁ。やってる加工の内容がまるで分からんから、口出しもし難いし、自分で何か作る時に不便になりそうな気も……)


ディノ化した怪物達の多くの脳髄や脊椎は博士達の研究によって電子部品……いや、生体電子部品として形を変えて生まれ変わりつつあった。


現在猫の城及び地下工場、博士達の工房で造られ始めている機材の電子基板や中枢となる半導体材料、チップの代替品として降ろされているのだ。


そこらのセントラル製の全うに滅茶苦茶高い電子部品の性能を超えながらも安価に造れる機械の中枢として運用が開始されたのは大きい。


(事実上、ディノ系の金属細胞で電子機器の研究を省いた形になる、のか? 電子部品関連はとにかく広範囲のミクロ、ナノレベルの研究と素材研究が鍵になるせいで毎度有りモノで代用して、殆ど高難易度だとやらないからな……)


現在、多くの問題はあるものの、何とかアルマートを護りつつ、その護った分の働きで資源が入って来ているという状況。


その資源を部位毎に溶剤で溶かしたり、薬液に付けたり、電流で分解、プレスで圧縮みたいな、こちらには『何でそれで電子部品になるの?』というよく分からない工程を挟んで売り物や軍事物資の生産はされており、その売買に関しては外交官が一枚咬んでくれたおかげでマーケットに流通させた品が案外高く売れているらしい。


「さてと。まず状況の整理からね」


そこから数分程、セントラルの状況が纏めて簡潔に話された。


さすが、外交官になるだけはあり、彼女の説明は分かり易く簡潔だ。


「つまり、セントラルの複数の国家が動き出したものの、出鼻を挫かれて現在は黙考中と」


「そうね。結果としてアルマートの力を示す事になった破棄の楽園戦の情報が一早く出回るようにしたのもあって、何処もAI式ドローンの開発が終わってる事を掴んで俄かに研究を進める方を優先したみたいね」


「ウチの4機の事は?」


「一部の国はもう知っているかもしれないけれど、別に隠すつもりないわよね?」


「ああ」


「結果だけ言えば、まだ様子見。もし、隙を見せれば、盗みに来るか。様子を見に来るでしょう」


「分かった。一応、新しい格納場所造って気を付けさせておこう。他には?」


「辺境向けの奴隷売買してる連中で邦に属さない奴らをリストアップしといたわ。誰からも文句を付けられないワルってヤツ。4組織くらいあるけど」


「ああ、それは中尉の方に任せる。現地に置いてくるよう指示したのもその為だし、この程度の連中なら明王号MarkⅡも合わせて3日もあればいいな」


「三日って数万人レベルの組織よ?」


「中尉なら集まってるところを襲撃して回ればすぐだろ」


「非常識ねぇ……それでAI式のヤバイ・ドローン輸送車を4機も来させたの?」


「まぁな。すぐに連絡を取って始めよう。どうせ、連中新しい獲物が欲しくて、孤児や浮浪児を襲ったり誘拐したりだろ?」


「まぁ、そうね」


肩が竦められる。


「そっちの方は任せていい。それよりも大陸中央からのお客さんの話が気に為るな。新しい勢力が辺境に到達とか寝耳に水だ」


「そういうと思って伝手を探ってみたけど、どうやら最初にマキナーズって自称神を名乗る機械に敗れた中央領域のゼノ・アニマ・タイプの種族が4種族合同で東部から来てるみたいよ。他にも後続となる軍団が色々いるらしいけど、まだ良く分からないってのが調査した結果ね」


「すぐに来るその種族連中の名前は?」


すぐにリストが渡された。


「……(^ω^)」


「知ってるの? 生憎と中央の種族にはまるで疎くて分からないのはスマナイと思うけれど、セントラルの技術や知識は中央にはかなり劣ってるから、良かったら教えてくれない?」


思わず溜息が出た。


自分が入れてたエロMOD種族だった。


「ガラークさん? そんなにマズイ人達なんですか?」


「マズイなんてもんじゃないんだがな……つーか、そのマキナーズはかなりの戦力だな。こいつら相手に勝つのかよ……」


リストに特徴を書き込んでいく。


ついでに簡単なイラストも添えて置いた。


3分程で追えてテーブルの中央に出す。


「コレが四種族の特徴と姿……」


繁々とミスティークが紙を覗き込む。


「ふ~ん。案外奇抜な恰好なのね」


「あ、これ恰好とかじゃないんで(^◇^) もっとヤバイものだ」


「「?」」


首を傾げる2人である。


「人造種族の殆どは見目麗しくて歳は取っても外見が変わらない。あるいは単純に歳を取らない。もしくは劣化しても薬品投与で幾らでも再生、寿命調整が効くってのが相場でな」


「人造種族……ゼノ・アニマ・タイプはゼノ・アニマル種の始祖って話は聞いた事があるけれど」


「それは正しくない。簡単に言うとゼノ・アニマルの獣人系列が原初の存在で、その後にゼノ・アニマ・タイプの人造種族が創られた。マニアクス・ニャァンもその一つだが、人間としての生体を持ってるだけマシだ」


「え?」


「こいつら四種族はな。人間らしい生体が少ない上で優秀なアーキタイプ・テクスチャを使った【ゼノ・アニマ・フルコード】なんだよ」


種族ランダマイザ―MOD【ZENO.400】。


複数のゲーム内リソースで登録されている種族を参照し、ランダムな特性を持つ種族を複数作成保存し、多くの新しい種族を創生。


その種族と共にゲーム内で冒険したり、恋愛したり、イチャイチャしたり、エロ……い事をしたりするという極めて健全とは掛け離れた感じの大人気MODである。


ネット上では“ウチの子”ならぬ“ウチの種族”を自慢する人々が大量にいて、それを実際に自分で創って入れる者も大勢いた。


「ゼノ、フル? 少ない上で? 何か詳しそうね」


「連中の遺伝特性は優秀なものを集めると代謝効率が極端に高くなる。簡単に言えば、優秀過ぎて能力を恒常的に使ってるとすぐにエネルギーが枯渇して死ぬ」


「大喰らいって事?」


「ま、一部だけだが、そういう感じに何かしらの不自由があるのさ。他にも細胞の劣化や細胞の分裂限界が早過ぎて、薬品で細胞の寿命を延ばさないと死んだりな。だが、滅茶苦茶能力が優秀……そういう連中だな。基本的には……」


「それでゼノ・アニマ・フルコードとやらはどういう種族特徴なの?」


「昔の知り合いにいたんだ。じゃ一つずつ解説してくか」


四種族を次々に紹介していって数分後。


「【ウテルス】は女系種族で男がいない。周辺に浮いてる鎧は高次元から操ってる糸の無い操り人形みたいなもので身体能力は貧弱。鎧そのものが肉体の一部で再生する……」


読み込んだ外交官殿が何か理不尽なものを見たと言わんばかりにジト目になる。


「こいつらはヤバイ痴女だ。女しかいないから男に飢えてる。後、男を見ると見境なく襲う気質がデフォだ。あ、殺しに来る方じゃないぞ?」


「痴女ってそういう意味なのね……へぇ?」


何か外交官殿はジト目だった。


残念ながら、ウテルスと化したミスティーきゅん以外には手を出したりしていないので他は分からない。


「それと根本的に力が全て鎧に集約されてて、その美しさや禍々しさ強さそのものがあいつらの象徴だ」


「こっちのキレイな顔や体はまったく考慮されないって事?」


「ああ、あいつらの価値観だと顔や体を褒められてもまったく嬉しくないが、鎧を褒められると滅茶苦茶喜ぶぞ」


「何で知ってるんです? じとー(T_T)」


ジト目のミスティークから思わず視線を逸らす。


「ちなみに下半身や胸部が丸出しなのは単純に下着、肌着を付ける文化が無いからだが、一部のインテリは付ける。そのせいで下着を付ける派と着の身着のまま派による永遠の内部抗争が繰り広げられているという感じだ……」


「頭の痛い種族ね。で、この生身の肉体よりやたらデカイ鎧って強いの?」


「同じ場所に受けてもどんな最下級鎧だろうとプラズマ武装30発まで耐えるぞ? 鎧で長距離武装、小型移動車両、近接武装、諸々造ったりもする。まぁ、ぶっちゃけ衝撃には弱いから近接戦や打撃の応酬で殺されるヤツは多いけど」


「えぇ……?(=_=)」


思わず外交官殿もドン引きである。


プラズマ系武装は現在セントラルの最新火器であり、持っている勢力は少数。


更に造れるところは限られていて、それすら実際には生産量がまったく軍隊には行き渡らないような少数しか運用されていないのだ。


「あ、ちなみに種族的にカワイイとか綺麗とか、美麗みたいな特徴はあるんだが、肌、髪、目、毛の色、質感とかは完全にランダムなので時々ドギツイ感じの色合いのヤツがいる」


「わーお……トンデモじゃない」


思わず外交官殿の顔が渋くなる。


「ま、ぶっ倒す時は生身を狙えばいい。頭は頭だし、腹は腹だからな。超強いヤツは両手両足に腹部、背部みたいな広い部分を更に伸ばしたり、全身鎧に形態変化させて完全にヤバイ装甲機兵や乗り物化、完全変形するけど」


「それ倒せるの?」


「鎧は強いぞ。鎧はな」


「ああ、結局生身をどうにかしろって事?」


「ああ、ぶっちゃけ、鎧の強度と個人的に耐えられる攻撃次第で強さが激変する。マジで強い連中は空間歪めて攻撃弾いてくるし……」


「う~ん。次」


次の種族を思い出してゲッソリした。


「(´Д`)……【プラネターズ】。翼が見えるだろ。この翼の色合いでこいつらの強さの階梯が決まる」


「案外普通ね。翅の栄えた連中はセントラルにもまぁまぁいるし」


「明るくなるほどに強くて、色が暗くなる程弱い感じだな。後、そのセントラルの翅ある連中、絶対普通だからな? こっちは普通じゃない」


「普通じゃない? セントラルのヤツは【翼竜ドラゴン】系の種族なのよ? 空飛べるし」


そんなレベルでは無いので説明を続ける。


「こいつらの種族的な特徴はこの“翅”以外は無くてな。歳は取るし、肉体の色味や成長度合いは千差万別だが、殆ど人間と変わらん。問題はこいつらの体は体じゃない事だ」


「体が体じゃない?」


ミスティークが首を傾げる。


きっと、謎かけみたいに思ったのだろう。


「こいつらの肉体な。単なる疑似餌なんだよ」


「ギジエ?」


「ええと、肉体から生やしたエサみたいな形の部位で相手を釣るんだ。本体は翅だ」


「つまり、この体は単なる囮って事ですか? ガラークさん」


「ああ、ただ、普通に飯食って風呂入って眠れて子供も作れる。が、子供は翅状態で生まれて来るから“ヒエッ”てなるぞ。一度でも見たらな」


「へ、へぇ……」


「ちなみに子供の時は翅から人間がゆっくりと形成されて生えて来る。3歳くらいで胎児くらい。10歳くらいで完全に歳相応の体になるな」


「翅が本体とか。それって体を攻撃しても意味が無いのかしら?」


外交官殿に頷いておく。


「こいつらの精神活動に支障は出ない。ただし、肉体が無いと肉体でしか出来ない活動が不全になる。つまり、肉体が飯を食えないと肉体がやせ細るし、自分の一部が不健康になるのは誰でも嫌だろ?」


「ま、まぁ、そうね?」


「こいつらにとって人間の体が全部耳や尻尾なんだよ。だから、結構気は使うな」


「ふ~~ん? 本当に博識ねアナタ……」


「ま、昔にな。こいつらは普通の人間みたいに思っていい。ただし、肉体は致命傷にならない事だけは覚えておいてくれ。翅はこっちも高次元に干渉する媒体でな。翅が大きいと干渉する出力が大きい」


「ほうほう?」


「翅を触ろうとすると激怒するから触るなよ? 攻撃手段は翅で干渉出来る物理事象全般だが、近距離じゃなければ、普通の生命体を死なせる程の出力を出すのは難しい」


「あんまり強くない?」


「こいつらの攻撃方法は本体の翅で強化した魔法+肉体による武装だ。その上、人間と違って余計な手間が無くて予備動作無し、詠唱無しで全力の攻撃魔法を放ってくる」


「えぇ……」


思わず全員ドン引きである。


「魔力を人間の数十倍から数百倍、下手すると数万倍持ってて、近距離で発動させる魔法だと翅の物理事象への干渉で威力が爆上がりして、同じ魔法唱えても数十倍以上は威力が違う。そんなのをただただ連発されて死なないと思うか?」


「あ、はい……(;´Д`)」


外交官殿もこちらの説明にゲッソリした様子となる。


「こっちの種族はどんな感じなんでしょうか?」


興味を引かれた様子のミスティークが指差したのは第三の種族。


「こいつらは【ゴルト】。女も男もデカイ。性器とか生殖器もデカイ。体力は人の数百倍、耐久度も数百倍、腕力、筋力も数百倍、殆どの身体関連の能力や資質だけは何もかもが数百倍だと思ってくれればいい」


「そんな連呼するくらいなんですか?」


「ああ、ただ生活で不便だから握力と腕力だけ基本人間並みに魔法で矯正してる。男は豪快、女は包容力満点、後声がデカいせいで喘ぎ声がやたら煩い。つーか、夜に鼓膜を破壊してくるのはえぬじー……マジで安眠妨害が酷いから防音必須だ(44敗)」


「へ、へぇ……近所迷惑そうですね」


ミスティークもちょっと引き気味になるのも無理はない。


ゴルトは基本的に“何でも食べられる種族”の筆頭であり、食人しても問題無いくらいの胃と遺伝特性を持っている。


人間は同じ人間を食うと最終的に病気になって死ぬわけだが、ゴルトにはそんな事が無く。


何なら恐らくMOD【食王】等の食事で能力やステータスが獲得出来る機能と一番相性が良い種族で食べれば食べるだけ強く慣れるだろう。


「容姿は男女共にガチムチで筋肉の化身だが、美男美女が大半だ。神話の中の英雄みたいな面の連中と戦女神みたいなのしかいない」


「倒せるの?」


外交官殿に頷いておく。


「倒せはするが、倒せはするだけだ。再生能力も数百倍、手足が切れても状態が良ければ固定してるだけでくっ付く。本来再生しないはずの部位も再生する」


「えぇ……?」


思わず顔が引き攣る。


「脳機能も耐久力極振りのせいで頭を完全に消し飛ばさないとほぼ死なない。連中の致命傷は頭が7割消された時だ。それ以外は何も致死的じゃないし、毒なんて致死量が数百万倍程度違う。何ならゾンビよりゾンビだ」


「頭の痛い連中ね……」


外交官殿が倒せないって事じゃないという顔になる。


「案外、気の良い奴らだが、基本的な性格の欠点として物事を深く考えず、全部直感だけで何とかしようとする」


「ノウキンて事かしら?」


「ああ。だから、搦め手に弱い……はずなんだが、肉体という何処かの誰かが与えた能力のせいで全部ノウキン突破してくる。装備次第で死なない兵隊化する」


「も、もういいわ」


「唯一の弱点は大飯喰らいで代謝が高過ぎてカロリーの消耗が激しい事だ」


「次お願い……」


思わず頭に手を当てた外交官殿である。


「【アルティメシエ・グラマトン】……真っ白い連中だ」


「白い?」


「体は全身アルビノで光彩、髪の毛にも一切黒い場所が無い人間だ。ゼノ・アニマ・フルコードでほぼ最強の種族だな」


「最強?」


「まず基本性能が何もかも違う。こいつらの体は生っ白い細身なんだがな。そもそもプラズマ兵装やレーザーをまったく受け付けない」


「う、受け付けない? 効かないって事?」


「いや原理的に受け付けない。こいつらの体は通常の物質じゃないんだ。血、肉、髪の毛の欠片まで普通の物質じゃないから、今まで紹介した連中とはそもそも肉体の能力の桁が違う」


「桁……」


「他種族と子供は作れるんだがな。他の連中は人造種族として儀式とか、薬とか、食料みたいな分かり易い弱点があるんだが、コイツにはそんなのがまったくない」


「へ、へぇ……」


嫌な記憶が蘇る。


とあるMODで死なない兵隊が蛮族化して大量に押し寄せて来て、倒せないから制圧するしかない為、相手を地下に誘い込んで岩盤を爆破して埋めたのだ。


だが、その後ゲーム内時間で数年後にゾンビ染みて地中から這い出て来て再びの再戦になり、拠点が壊滅した事があった(1敗)。


「こいつらに関しては高次元干渉の能力を持ってるが、それは生態みたいなもので常時別次元の定理で肉体が保護されてる」


「別次元……セントラルの魔法とか科学でもそういうのは研究されてて、一部実用化されてるけど、生身でやるのね。中央の種族って……」


「まぁな。だから、地域が吹き飛ぶ爆発だろうが、太陽染みたプラズマだろうが、強力な法則干渉以外は何を受けてもまるで本人には影響がない」


「強過ぎないかしら?」


「そんな事言われてもな……ま、この四種族の中だとこいつらが最強だ。ただ、こいつらはそれだけで他の分かり易い能力が無い」


「分かり易い能力……突出した防御力だけで随分とヤバイと思うけれど」


「魔法も人間とは違う定理を使ってるせいで使えないし、知性は人並み。腕力も普通。変な物質で肉体を構成されてるが、傷付かない以外の能力らしいものはほぼ無い……」


「ほぼ、ねぇ……でも、それなら他の種族でも勝てるんじゃないかしら?」


「いいや、連中の最大の能力は傷付かない事じゃない」


「え?」


「……疲れない事、補給が必要ない事、食事も排泄もしようとしなければ、行う必要が無く、呼吸すら要らず、生物なら必要なある程度の重力や光を浴びて発生する肉体内部のホルモン分泌も要らない。無補給で生体活動が維持出来る」


「え……そ、それってつまり……」


「こいつらは死なない無補給で戦い続けられる兵隊として恐らく最上級だ。寿命はあるが、寿命自体が測定不能なくらい長い。持つ兵器や装備、武装、戦術、そういうもの次第で強さが決まる。だとしたら、勝てると思うか?」


「………武装以外の兵站が随分要らなそうね。ヤバイわね」


「そういう事だ。昔、戦った事があるが、最終的な対処方法は二つだ」


「二つ?」


「自分達が死ぬまで何処かに封印や放置。もしくは相手の手が届かないところまで逃げる」


「幾ら恨まれても死んでれば逃げ切れるって事?」


「そういう事だな。だから、仲良くしろよ? マジで」


「え、ええ」


「それとこいつらの出所は全部一緒だ」


「出所?」


「大昔の種族に【イグノア】ってのがいるんだが、そいつらのお手製品なんだよ。昔はそいつらがこいつらの主だった」


そういう設定のMODなのだ。


勿論、その種族も隠し種族としてMODに入っている。


「そ、それって……人造種族を作ったって言う古代種族の事?」


「大昔の話になる。もう滅んだ種族は色々いるだろうがな。他は絶滅したが、こいつらだけは今も能力が高過ぎてそのままなんだろ」


「……ホント、よく知ってるわね。古代人の事」


「という事で、今から仕事をしてくれると助かる。ちょっともう一回セントラルに行ってくれるか? 仕事に必要な資材や資金は好きに使っていい。現地で交渉出来る人間が必要だ。主に食料生産と物資の大量購入の為にな」


こちらの言葉に頷きが返される。


その様子は仕方ないなぁという顔だが、苦笑が浮いていた。


何故、こんな話をしたのかは分かってくれたらしい。


「いいわ。今の話を聞いた後じゃね。アルマートの為なんでしょ?」


「ああ、悪い。時間との勝負になる。内容はあっちに付くまでにまとめて今夜」


「う~~ん。残念、自室何処にするか決め損ねちゃった」


もはや呆れた様子の外交官殿が新しい仕事を快く引き受けてくれた事にホッと安堵しつつ、ミスティークの方を振り返る。


「で、問題は此処からだ。コイツらの話を聞いた上で聞くが、こんなヤバイ種族を難民に出来ると思うか? 普通の手段で」


「………とんでもない化け物が大陸中央には五万といるとは聞きますけど」


さすがにミスティークもそういうのは分かってくれるらしい。


「ミスティーク」


「何ですか? ガラークさん」


「此処が正念場だ。何処の勢力も化け物だらけだが、アルマートをセントラルに認めさせる事が出来れば、この間みたいな事は起こらなくなるはずだ」


「信じてますよ。ガラークさんが出来ると言うなら出来ると思いますし」


「取り合えず、出来る限り種と苗を集めてくれ。それと開拓団の出発を早める。明日には予定の場所に出発させてくれると助かる」


「え? 今からですか?」


「それが一番、穏便に済むはずだ」


「分かりました。すぐに用意しますね」


「帰って来て早々悪い。それとエーラの料理の技能とスミヤナの魔法が必要だ。2人にちょっと旅に出る準備を明日までにやらせといてくれるか?」


「2人を連れていくんですか?」


「ああ、急で済まないんだが、今領土主張してるとこに既成事実を立てとかないと滅茶苦茶面倒な事になりかねない」


「面倒な事って……」


「恐らく、アルマートが戦場になるか。大陸中央のゴタゴタに巻き込まれる可能性がある」


「わ、分かりました。今言ってた四種族の事、お任せしますね?」


その瞳にある信頼くらいには応えようと気合を入れる。


「……全面的にマズイ事になる前に先手を打つ。もしもとなれば、一応連中を全部辺境から追い出す事は出来るから心配はしなくていい」


そう言ってみるが、自分でもかなり難しいとは思えた。


それを知ってか知らずか。


「じゃあ、こっちはチャチャッとやっちゃいますね♪ ガラークさんの頼みとあってはこのミスティークも断るわけにはいきません。ふふ」


「……悪い。本当は休ませてやりたいところだが、恐らく時間が殆ど無い。あいつらと一緒に大きな土産は持って返って来るから、愉しみにしててくれ」


「分かりました。約束ですよ?」


「ああ」


拳を突き出されたので突き出し返してコツンとぶつけておく。


“これが未来に伝わる女神と英雄の新たなる恋の始まりであった”


此処で聞えて来る嘘ナレーションである。


「いや、それはない(・ω・)(キッパリ)」


「?」


こうして、脳裏に思い出される嘗ての記憶を振り払うように再びタイタニック・ガラクシオの跡地へと向かう事が決定したのだった。



―――2日後。


再び訪れたガラクシオの大地は前に来た時は様変わりして、動植物溢れる大森林地帯へと変貌を遂げていた。


山脈の麓。


大樹の如きガラクシオの残骸は腐食済みだが、それを覆うように緑が広がり、草花が咲き乱れ、気温も20度程と温暖で恐らく魔力も大量に溢れているに違いない。


集まって来ていた動物の多くは普通のサバンナとかにいそうな種類ばかりでMODの即死動物さんはほぼ見掛けなかったのだが……。


「【ちゅ(≧◇≦)/(あ、人間さんだ。こんにわーという顔)】」


「―――((((;゜Д゜))))」


何処にでもいる【ダーク・ラット】……黒い即死トラップ・ネズミーだけはまったく悪びれもせず自分を歓迎し、うろちょろと数匹を森林地帯で見掛けて震えるしかなかった。


天気をMOD能力で晴れ固定しても大量の草木と樹木がある場所では湿気を除湿し切れず、あまり意味が無い。


菌類であるヤバイ・ネズミー=サンは基本的に胞子で増えるので木陰や樹木の根に寄生してやり過ごすはずだからである。


「ガラークさん。あれ!! あれ!! 首が長いのだわ!!」


「あ、ガラークさん!! あっちは【エレベタル】ですよ!!」


ヘブンの通常の動物の多くは危険生物ではあるが、基本的に人間に近付いて来ないし、よっぽどにお腹が空いていなければ、襲って来る事も無い。


特に猫系の動物なんてやたら序盤には襲って来ないし、何なら蟲の方が凶暴だったりするのだが、MOD系の動物はそうではない。


なので、それでどうサバイバルするかが最序盤の難関だったりする。


「【エレベタル】か……う~ん、魔法生物多くね?」


ヘブンには普通の動物と魔法生物と明らかにヤバイ動物の3区分がある。


普通の動物は猫とか犬とか虎とかライオンとかクマとか。


そういう現実の動物達である。


ヤバイ動物は固有の何かおかしな能力を持つ動物であり、アルマートに到着した時に倒したデカイ・トカゲ=サンとかがソレに当たる。


そして、最後にあまり見かけないはずのものが魔法生物だ。


基本的には天然物と養殖ものがいるのだが、天然物は自然発生したり、人口的に魔法で創られた後に逃げ出して野生化したもの。


養殖ものと呼ばれるのは完全に人造の第一世代を差す。


【エレベタル】はそんな魔法生物の一種だ。


―――♪


フヨフヨと浮かんでいる精霊みたいな薄い発光体なのだが、色合いが吸っている魔力で違う。


その実際の実体はガスを発生させる微生物で魔力が金属元素を含む遺伝子を持つ滅茶苦茶軽い微生物に働き掛けて、金属粉で炎の色が変わるように魔力のエネルギーが金属に反応して色が変わる代物である。


基本は微生物なので無害なのだが、体内に取り入れると金属中毒になるので基本はあまり近付かないようにするのが無難だ。


そんなのが大量に空には浮かんでいたのである。


(ホント、辺境には変なのが一杯だな……(。-∀-))


普通のキリンが何か樹木をモシャッている様子は明らかに不自然だし、普通のライオンっぽい四足獣が複数種類狩りもせずにウロウロしているのも不自然だ。


ハイエナとライオンとチーターと良く知らない恐らく現実の獣なのだろう草食動物達と互いに縄張り争いをするでもなく生存闘争するでもなく……マジでのんびりウロウロしているのだ。


「何だコレ……自然の掟は?」


よ~く走る明王号の中から観察してみると動物達は互いを喰らい合う事も傷付ける事も無く。


だら~~っと森林地帯で寝そべっており、何やら周囲に時折、あむあむと何かを噛むような仕草をしていたのだが、そこで気付いた。


「こ、こいつら実態が無くね?(゜д゜)」


「「え?」」


エーラとスミヤナ。


「「!?」」


2人の少女がじ~~~っと動物達を見て、何やらあむあむと虚空を齧るような、食べるような仕草をしている動物達の体が透けている事に気付いた。


「ゆーれいさんなのだわ?」


「辺境は動物が少なくて、今は殆どが巨大化したものしかいないのですが、もしかして此処の動物達は……移動してきたのではなくて、魔力で蘇っているのでは?」


嘗ての辺境では魔力が薄くなり続けていた。


しかし、今は魔力が沢山ある。


そして、この世界では魂魄というのは科学的に解明されている代物だ。


要は生物が踏み込む少し違う次元にある自分の一部という設定になっている。


質量があるのは勿論、次元の違う領域に格納された己の一部分であるという理屈なので自身を復活、再生する事すら魔法や超技術の類なら可能だ。


「蘇ってると言うよりは死んでるのも気付いてないのかもな。魔力食って実体化してるから、闘争本能も無いし、腹も空かないと」


「ちょっと残念かも……お肉取れるかと思ってたのだわ」


「そうですね。貴重なタンパク源にならないのは残念です」


「(こーいうとこだけ、美少女というより辺境育ちなんだよなぁ。ミスティークもこの子達も)(*´Д`)」


動物さんに触れなくて残念ではなく。


動物さんが狩れなくて残念というのが辺境流なのだろう。


「近付いてきたな。今からあのデカイ山脈付近に魔法で色々と看板を立てて貰う。スミヤナ」


「はい。ガラークさんの注文通りに魔法は組んであるので大丈夫ですよ」


「エーラはオレと一緒に食料になりそうなものを片っ端から集めてくれ」


「はいなのだわ」


背後のシートは二人座れるようにサブシートが展開され、二人が並んで座っている。


振り返るとあせあせと2人が持って来た荷物を後ろから取り出している最中だった。


「色々、食料に関して詳しいってのはおばさん連中にも聞いてる。食える動植物は大尉が一応確認してるが、基本的にはエーラに一任する。一緒に水辺の調査とかもするぞ」


「は~い♪」


「今回は護衛に【MYOU-OU】を6機連れて来た。便利使い出来るから基本的には護衛されてる間は指示に従ってくれ。ヤバイ猛獣は諸々お前らが知ってる知識を教えれば、ちゃんとそれを考慮に入れてもくれる」


「賢いのだわ!!」


「賢いですね……それくらい使い魔を賢く出来れば、かなり便利かもしれません」


「(そういや、魔法の使い魔関連のMODは確か……入ってたな)」


明王号の中で近付いて来る仕事現場を遠くに見ながら、脳裏の情報を漁る。


「スミヤナ」


「何ですか? ガラークさん」


「連れて来てる【MYOU-OU】は使い魔に出来るぞ」


「へ?」


「大昔の機械はな。殆どが魔力でリンクすれば、電波と同じように接続可能だ。生物同士は色々と面倒な手順が必要だが、機械はそうじゃない。基本的には所有者になって、魔力で繋がったと認識させるとそのモードが立ち上がって、使い魔……この場合は魔力で操縦出来たり、設定を弄れるようになる」


「えぇぇ!!? 全然聞いた事ないですけど?!!Σ(・ω・ノ)ノ」


「大昔の仕様だ。そろそろ付くから、試してみるといい」


「あ、はい。はぁ……(;・∀・) ホント、ガラークさんは古代の人なんですね」


「まぁ、色々あるんだ」


何やら関心されてしまった。


「でも、いいんですか? あのミョーオーって貴重なんじゃ」


「アルマートの為に発掘したんだ。今、アルマートの為に働く相手に渡すのは普通だろ?」


「あ、ありがとうごじます。着いたら試してみますね( ^ω^ )」


蛙系とはいえ、その殆どの部分が美少女成分で瞳くらいしか蛙っぽい部分を見た事の無いスミヤナである。


ちょっとキラキラした目で見られると恥しい。


「むぅ~~ガラークさん。鼻の下が伸びてるのだわ!!」


「あ、はい(´Д`) 気を付けます」


「よろしい!! のだわ♪」


エーラがクスクスしてウンウンと頷く。


思わず反省する。


基本底辺おじさんにコンプライアンスは厳しいのだ。


「到着ですね。じゃあ、さっそく」


「ああ」


「行動開始なのだわ~~♪」


名号が停止すると同時に三人で降りて、6機の機械な不動明王に囲まれて遅れて到着する予定の入植者達の為の下準備を開始するのだった。



「これとこれとこれとこれとこれと―――」


3時間。


49種類。


それがエーラの実力であった。


ウルトラ・ユーマ。


その中でも大地に根差した存在であるタイタニック・ガラクシオが撃破と同時に大地に還元する膨大な魔力と大量の有機物はそれだけで不毛の大地を森林地帯に変え、惑星を余すところなく緑化する程の力を持っている。


同時にソレは大量の生物資源や植物資源の類……つまり、動植物の賦活を意味しており、その中心地を農業国とすれば、大陸の全国家の腹を満たして余りあり、魔力を用いて魔法の開発に注力すれば、星を砕く力を短期間で得られるだろう。


だが、今必要なのは間違いなく食料であった。


辺境においても肥沃度が増し始めた此処最近。


大量の食糧は常に量産され続けている。


しかし、幾ら肥沃でも病気にもなれば、連作障害にもなる。


ヘブンはそういった生産部分がかなり現実の物理演算やミクロ、ナノレベルでの事象を模倣していたし、此処が現実だろうとゲームだろうと必要なのはまず衣食住。


それを得る為には生産物が育つ土壌を見極め、自然から得られる恵みを細かく理解して、最適化した栽培や採集を行う必要があった。


「どうだ?」


「スゴイのだわ!! 此処、とっても食べられるものが多くて……ちょっと食べるのが難しいものも一杯あるけど、ごはんに困らなそうなのだわ♪」


エーラの持っている籠にはどっさりと野草やら華やら木の根っこや葉っぱやら野菜のようなものが大量に詰められていた。


元々、荒野で商売をしていたエーラの一族は何よりも食料の調達に重きを置いて商売していたらしく……その知識は彼女の兄曰く母以外では恐らく一番の物知りだろうとの事。


それもまた食料に乏しい荒野で何でも食べられるように餓死しなくて良いようにと授けられたものだとの話でちょっとシンミリしたりもした。


「えへへ~~」


そんな彼女が今は血色も良くホクホク顔で沢山の食材に囲まれているというのは両親も草場の陰で涙しているだろう。


「今日はそれで料理を頼む。ここら辺の植生とか採れるものの把握は出来てるか?」


「うん!! 後ろを付いて来てる機械さんに覚えて貰って……とっても便利で助かったのだわ。ありがとう。ガラークさん」


「あ、ああ、今日の料理は期待してる。出来れば、此処で造れる料理をある程度叩き台にして、取れる食材が枯渇しないように適切に採取して管理したいんだ」


「だから、おにぃちゃんとお話ししてたの?」


「ああ、前々からエーラの創る料理はかなり美味しかったし、種類も豊富だったから、聞いてみたら詳しいって話をお兄さんから聞いてな」


そう言うとちょっとだけ何処か懐かしそうな瞳が空に向けられる。


「お母さんが教えてくれたの……食べられるものが増えれば、生き残れるからって……」


「………」


「今度は私が此処に来る人達に教えたいのだわ……お母さんが教えてくれた事……」


こちらを向いた少女の瞳は真っ直ぐだった。


「頼む」


「っ、はい♪」


笑顔で頷く少女に合わせてでっかい部分がたゆんと揺れた。


思わず目を奪われていると。


『ガラークさぁ~~ん』


「呼んでるな。そろそろ合流しよう」


「うん!!」


スミヤナがいる巨大な数km単位の複数の金属製大地付近。


合計6か所の箱の残骸周囲とガラクシオの跡地、山岳部周囲から随分と広大な敷地が猛烈な勢いで囲い込まれるようにして複数の看板が連なっていた。


近辺の石を切り出して地面にぶっ刺しつつ、魔力で掘削、文字を彫り込むという作業である。


大森林と化しつつある周囲には一応、森が広がるのを見越して複数の3m程に高くした看板が囲い込んでおり、30km四方は確実に囲い込めたはずだ。


スミヤナは数時間、ずっと使い魔化した明王様の上に載って、周辺から幾らでも溢れて来る尽きぬ魔力で囲い込みを行ってくれていた。


「ガラークさぁん!! こっちこっち~~」


合流するとさすがに疲れた様子で明王号の背中からスルンと降りて汗を拭う。


「悪いな。1人だけで走らせて」


「いえいえ、ガラークさん言った通り、この子達の機能が凄過ぎて看板立て続ける事以外やる事ありませんでしたし」


「そうか? それなら良かった」


「それにしてもこの子達、地中の金属や水源、山の鉱脈まで何でも分かっちゃうなんてスゴ過ぎでは?」


「そういう機能なんだ。本当は敵を見付ける為のものなんだけどな」


「ああ、それで毎回、危険と思われる因子を確認せずとか報告が……」


「取り合えず、街と周囲の畑、産物が採れる森、鉱脈なる山岳、畑になる高原と平野、回れるだけ回らないとならない。どのくらいイケた?」


「ええと、お願い!! みょんちゃん達」


【ホロの投影開始】


「みょんちゃん?」


「あ、はい。何か名前があった方がいいかなって。呼び易いので」


「まぁ、自分の使い魔だ。好きにしたらいいさ。随分と囲い込んだな」


広大な大辺境地域は無人にして何処の勢力も領土主張をしていない。


だが、東端付近まで400km近い広大な領域が広がっており、現在地は中央部分。


入植地をガラクシオ跡地の山岳を中心として築く関係上、最重要拠点は確保した形である。


「極点方面はまだいいが、東部方面は出来る限り延伸したい。今日は最低限の線引きが終わった後だ。アルマーニアの生息域に食べ終えたら出発する」


「分かりました。魔力を溜め込んでおきますね」


「ああ、さすが魔法使い。魔力があれば、何でも出来そうだな」


ちょっと照れた様子のスミヤナが嬉しそうながらも謙遜して頭の帽子を押さえた。


「そ、そんな事無いですよ。結局、みょんちゃん達に頼り切っ切りですし」


「ご苦労様。今日はもうゆっくりしてくれ。暗くなる前に野外で食事を済ませて、後は明王号の中でゆっくり眠ろう。トイレだけは悪いと思うがアレは仕様でな。我慢してくれ」


「う……そ、それだけはとっても不満です!!」


顔を赤くして吠える少女の言葉は最もだ。


明王号のカーゴは基本的に宇宙船仕様だ。


後ろにサブシートを広げて2人載せられるようにしているが、排泄に関してだけは二人とも恥ずかしさで移動中もプルプルしていた。


まぁ、アレである。


座席がそのまま便座になって吸い込んでくれるのだ。


臭いも音も強力に吸収してくれる優れものである。


溜めた糞尿は現在はそのまま廃棄の形にしてあるが、実際にやろうと思えば、尿は濾過して水として再び活用出来るし、便も乾燥させて燃やして僅かながらも燃料のように扱う事も出来る。


「ま、慣れだ。取り合えず、今日は早めにエーラの料理をごちそうになろう」


「うぅぅ……い、いつか、あんなの使わなくてもよくしますぅ……」


乙女心は重症らしい。


だが、仕様は仕様だし、荒野で1人で排泄させて死なせるわけにもいかない。


荒野は基本無常なのだ。


「【ちゅヾ(≧▽≦)ノ】」


そう、自分に飛びついてこようとする動く即死トラップ・ネズミーを回し蹴りで優しく吹き飛ばすくらいには気が抜けない。


潰したら飛び散るし、増えるし、靴底から湧いてきかねないのだ。


2人は触れても体調を崩すだけで済むがこちらは黒死病も真っ青のデッドエンドなのだから。


「夜になるとネズミが見え難くて怖い。悪いな。テントを張ってとも考えたんだが、明王号のカーゴが一番安全なんだ」


「ぅぅ、分かってますぅ……もう、そういう排泄しなくてもいい体にする魔法とか作っちゃった方が早いのかなぁ……」


こうして人体の神秘に挑む魔法使いがまた1人生まれたのだった。

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