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第2話「辺境とエロMOD」


「ぶ、豚が焼き鳥食ってる……」


 廃墟と化した街を出て数時間後。


 そろそろ夕暮れ時という頃。


 遠方に案外あっさり見つかった街はリントラから20km程離れていた。


 周囲には河が東西を横切っており、その南に位置する街は知らない街並み。


 しかし、中世中東を思わせるような石製の建築は砂色ではあったが、脆いという感じはせず。


 ただ、石くれを乱雑に積んだ土塁のような壁がボロボロなのと馬車やラクダや馬といった基本的な家畜が存在するという事が分かったのが大きいだろう。


 思わず助手席に放られていた双眼鏡を覗けば、街内部では露店が存在し、数多くの多種類な獣人達が飲み食いしていた。


 屋台の串焼きは実に旨そうだが、生憎と獣人達が使う通貨はまったく車両にはなく、死体からの追剥ぎ内容にも無かった。


 だが、それ以外にも何か変な動物がやたらと周囲には多いというのが、かなり顔を引き攣らせる要因になった。


【ヒッボマー】


 日本名だと爆弾カバとでも言うべき動物。


 他の動物を捕食すると内部で急速腐敗させた際のガスを内臓器官で溜め込んで常温常圧で液化し、水辺で浮く際に利用する。


 勿論、銃撃すると半径5mが砲弾の弾痕みたいになる(83敗)。


【セーフ・スパイダー】


 集団行動する2mの“子蜘蛛”……親蜘蛛は怪獣。


 糸は強アルカリ性だが、肉食ではなく草食で人も襲わない。


 唯一の欠点は死んだ瞬間に周囲に体を動かしていた圧力で飛び出した糸が人体を2秒も掛からず溶断する化学物質マシマシなトラップである事(249敗)。


【ダーク・ラット】


 黒い鼠に見える動く真菌の塊。


 夜には視認性0。


 動く病原菌の塊とも言う。


 触れたらアウト、2日後には病死するか耐性が出来ている。


 死に様は悲惨で全身から血を吹き出しながら溶け、激痛でショック死する……耐性が付く確率は9%……つまり、致死率91%である(889敗)。


「ま、間違いない。緊張感が無くなってた頃に新しい刺激を求めて入れた即死系動物クリーチャーを追加する【マーダー・アニマルズ】と【マーダー・インセクツ】の代表格……ゲーム? ゲームなのか? コレが?」


 思わず渋い顔になる。


 死が永遠かもしれない現在、逃げられない死因を避けるには基本的には都市住まいが必須なのは間違いなかった。


 だが、人間をまるで見掛けない。


 見えるのは豚人、獣人の亜種が数種類、ゼノ系と呼ばれる創作種族系MODの獣人はケモの度合いが大きい上にかなり通常の獣人とは違う体質で獣に近い習性がある。


 明らかに人間がいないという時点でヤバイし、形は人間でも背中に明らかに人間ではない背負いモノをしたり、肉体そのものに要らぬ装飾染みた部位が大量にあったり、人間には無い器官を持つゼノ・アニマ・タイプは事実上の死刑宣告。


 可能な限り、敵対しないように動かないとならないし、関わり合う事も死に直結するのだ(1M敗)。


「ぅ……潜入してもダメか? いや、人間殺さなきゃって種族相手じゃ無謀か。やっぱり、水だけ川べりで速やかに取水して、とっとと離れて野営地の作成に移るのが無難か?」


 特に夜は死亡率が跳ね上がるので出来れば、夜になる前に車両を動かないようにして内部から目張りするなり男達のジャケットや衣服で車両内部が見えないように工夫する必要もある。


 視認させない。


 認識させないがサバイバルの基本である以上、今日は夕暮れ時という事もあるので今日は水を我慢して明日に日が昇り切ってからどうにかしようというのが丸い気がした。


 無用なリスクを取らないのが最序盤の動き方としては最強なのである。


「取り合えず、ジャケットでフロントガラスを内部から覆って……あいつらのズボン切り取っておいて良かったな……車両の運転席の隙間を布地で詰めて……」


 何とか車両を低木の傍に止めて、草を出来る限り集めて土も使って汚しながら偽装を施していく。


 見られても廃車に見えれば、安易に近付いて来ないだろうという算段である。


 街から近過ぎてもダメだが、遠過ぎても相手側の様子が分からなくて困る。


 上手く距離を取って監視出来る位置に付け、相手に音を察知されないように迂回して川の上流に向かい、明日は水汲みと蒸留から始めようと革ジャンを成型した際の端材と布地を解した糸を用意しておく。


 水を入れた布地を熱しても容易には破けないというのはよくある話だ。


 出来る限り、有りモノで工夫するのがサバイバルの基本である。


(ふぅ……ジーンズから糸の生産を終了。後は針を適当な素材で作成……削りは低木で……ナイフ一本有ればイケる。水は最悪、蒸留設備が出来なくても鍋代わりの布で煮沸しよう……)


 本来は施設が在れば、死体を回収して肉は適当な自分の口にしない家畜の類のエサにしたり、骨は針を創るのに使うのだが、今現在は死体そのものが安全かどうかも判断が付かないので遠慮している。


 特殊な綱の結び方や布地の縫い方一つでサバイバルが楽になるというのはまったく今時のゲームだからこその不自由さだろう。


 大昔のゲームはリアルをまるで求めていないものが多かったらしいが、現代のゲームの多くは実現出来ないリアルを実現する為のものであり、実現したら愉しい事や自己を成長させる快感を覚えて貰う為のコンテンツだったりするのだ。


 今日は水を我慢して夜は車外に出ず。


 屋内で尿意だけ我慢しようという事になった。


 暮れていく世界に街の明かりが輝く。


 夜もそう遅く無ければ、まだ薄暗い明かりの下で飲む者は多いらしい。


 街の外側からでも大通りの喧騒は見えており、確認する限り、獣人達は普通の人間と左程違いもなさそうだった。


 *


 夜明けまでは安穏としていられるかと底冷えする荒野の寒さにジャケットを着込んだまま上に同じジャケットをブランケット代わりにしていたのだが、不意に目が覚めた。


 外の景色は見えないが手元にはしっかりと双眼鏡がある。


「何だ?」


 音のする方角は後方。


 少しだけ端材で隠していた後部の窓を開いて月明りが照らす荒野を双眼鏡で覗く。


 すると、高倍率の双眼鏡には明るい月の下で走る人影が見えた。


「……豚?」


『―――ピギィィィ!?! まだ死にたくないですぅ~~~!!?』


 聞こえて来るのは何処かで聞き覚えのある声だった。


 彼女の背後からは追走する何かが疾駆している。


「………よく考えたら、まだ到着してなかった可能性もあったのか」


 豚少女。


 そう、助けたのに思いっ切り銃撃してきた豚人の少女であった。


 彼女の背後のソレが月明りの下でようやく姿を露わにする。


 早過ぎて追えなかった姿が現れたのは恐らく速度を落としても大丈夫だと狩りの態勢に入ったからだ。


 野生の狩りでは相手を疲れさせて疲弊したところを叩くのが定石。


「通常生物カテゴリのバニラ最強様か……【モールド・サラマンド】」


 豚を襲うのは恐竜染みた図体の3m近い大きさのトカゲだ。


 竜というよりはトカゲ。


 トカゲだが、やたら加速性能の高い足腰に食い付く為の嘴はまるで機械の帷子染みて手足の装甲に使ったら良さげな造形をしていたりする。


 その頭部から尻尾に至るまで曲線で出来た赤黒い連続する装甲は鱗が変化した代物で酸化した鉱物を通常のタンパク質と共に食べて生成される。


 腐肉喰らいであり、鉱物を胃の内部で腐食、酸化させた後に血中に吸収、装甲に皮脂のように漏出させて固着、体を岩に擦り付けて少しずつ形成する。


「倒すのに手間が掛かる割に防具の材料として使っても拳銃弾しか防げないし、装甲も宇宙世紀系テックの装甲にまったく及ばないという地雷生物……」


 出来れば、無視して寝ていたい。


 だが、悲鳴は顕著だ。


 そろそろ息切れして来た豚人の少女の速度が落ちていく。


『まだぁ!! しね、死ねな、げうぅぅぅぅもぉぉぉぉぉむりぃぃぃぃぃ?!!』


 鳴きながら涎を撒き散らし、ハヒハヒしている少女が遂に速度が落ちた際の見落としで足元の石に躓いてこけた。


『うぅぅぅぅぅぅ、街までもーすこしなのにぃぃぃ』


 彼我の距離は30m。


 まぁ、拳銃ならまだ当る程度の距離だろう。


 相手はデカブツなので外す理由も無い。


 車両の扉を開けて、ちゃんと閉める。


 ついでに車両から離れて3連射。


 カンカンカンと無しの礫染みて当った拳銃の音に気付いてか。


 脚の止まったデカ・トカゲがこちらを向いた。


「オイ!! クズトカゲ!! お前の装甲のせいでオレは76敗だぞ!! もう少しまともな装甲は無いのか!? いい加減にしろ!! 強化MOD入れて数値が2倍になってすら、ライフル弾も防げない紙装甲野郎!!」


 実はトカゲというのは頭が良い。


 更に素のゲームでも強い。


 元々が人工種族ゼノ・アニマ系列の竜人【ハークライト】という人種の創造の為に創られた叩き台という設定だからだ。


 なので、どれだけ退化した種類でも人の挑発が分かる程度の知能はあるらしい。


 狙いを変えて、大声で叫んだこちらに突進してくる。


 普通に戦えば即死。


 ついでに今の自分はちゃんと水分無しのデバフを受けて、フラフラだ。


 だが、何百戦もした相手の事である。


 20mを詰め切られる前に出来る事は全て可能なものばかりだ。


 15m圏内。


「ッ」


 開いた瞳に5連射で脳髄付近まで相手の硬い瞳を粉砕しつつ破壊。


 片目を潰された瞬間に進路が曲がるトカゲであるが、軌道修正しようとする。


 そこで更に絶叫を上げた口の中に3連射。


 喉を銃弾で直撃されたトカゲが更に内部からの衝撃で揺らぎ、軌道修正したはずの図体を更にヨレさせる。


 そのまま進路がズレたトカゲが慢心の力を込めて跳躍し、こちらに突撃してくるが、周辺が見えていないトカゲは所詮トカゲである。


 こちらの姿しか目に入らない為、後方にある岩には気付いていなかった。


 相手の圧し潰し前に全速力で前に出る。


 僅差で相手が大岩に嘴で激突。


 口内を攻撃されて口を半開きにしていた相手は図体を大岩で下から圧し潰される格好になり、構造的に口を閉じて全身の筋肉を硬化させて食い縛る事が出来ず。


 拉げた胸元から内蔵を爆発させて、一部損壊。


 激痛に思わずのたうち回り、復讐の相手を見付けようと振り向こうとするが、あまりにも大きな図体故に痛む体を満足にUターンさせられず。


 何とか振り返った時にはチェックメイトである。


 本来ならば使える尻尾アタック(15敗)も強アルカリ性唾液散布(22敗)も使えない単なる大口を開いた死に掛けのトカゲの口内に腕を突っ込み。


 食い千切られる前に人間で言う蝶形骨。


 脳を支える部位の骨に向けて、そのまま銃を連射した。


 口を閉じる暇など与えない。


――――――?!!!!


 だが、全ての銃撃に言えるが、滅茶苦茶弾の曲がる物理エンジンがバグってそうな拳銃で行う関係で……やたらスタイリッシュなポーズを決めているようにしか見えないのが玉に傷だろう。


 もはや、銃がポーズを決める為の小道具にしか見えないのはかなり見ていて痛々しいに違いない。


『――――――』


 口を半開きにした豚人の少女が何やらペタンと座り込んでいた。


 瞠目した彼女の前でトカゲが崩れ落ちる。


 最序盤にバニラ最強の生物を狩るのは良く在るムーブに過ぎない。


 今回は水分摂取していなくてフラフラな上に弾道がやたら曲がるバグ銃で実演してみせたが、二度とやりたくは無かった。


(銃弾を前方に打つのに拳銃を持ったまま腕を胸に腕を付けて撃つとか。完全に両手でやったら腕をクロスさせて銃を持つアレな人じゃないですかヤダー……)


 どう考えても古典中二病でも此処までない酷い絵面である。


 そのまま攻撃しなければ、まっすぐ銃弾が相手に届かないのだ。


 つまり、戦闘の度にカッコイイ・ポーズを決めたままに移動し、回避し、撃ち込まなければならない……限りなく悪夢である。


「はぁぁ……」


 相手が口を閉じるより先に腕を引き抜いてジャケットを脱いで捨てる。


 唾液が気化しているものが付着しているので着込んでいられないのだ。


 すぐに端材を撒いた手の部分も端材を解き捨てて、拳銃も投棄。


 さっさと河で腕を洗いたいところだったが、夜の河は危険がアブナイ・ロマンティックとは程遠い死地だ。


 なので片腕がダメになろうとも今日はもう帰還して、腕が溶け落ちない事を祈る事しか出来ないだろう。


「帰ろ……」


 何処にも帰れはしないが、寝床は一応あるだけマシだ。


 さすがの人間大嫌いの豚少女も二度も命を助けたら、銃撃したりしないだろう。


 いや、しないと思いたいものであった。


「あ、あのぉ……」


「え、銃撃するの!? また銃撃されるのオレ?!」


「いえいえいえいえ!!!? さ、錯乱してません!!? まさか、に、二度もお助け頂いた相手にそんな……あは、あはは……」


 ガクガクプルプルしながらも人豚の少女が恐々と近付いて来る。


「け、今朝は大変申し訳ありませんでした。人間にも良い人間がいるんですね」


「事情は知らないが、助けた相手をもう銃撃しないでくれ」


「うぅぅ、本当にごめんなさい」


 ペコリと頭が下げられる。


「オレはガラーク……君は?」


「あ、ガラ……そ、そうですよね。人間さんなんですよね」


「?」


「わ、わたくしはミスティークと申します」


「―――ッッッ?!!」


 思わず劇画チックに固まった。


 この滅茶苦茶普通にブサイクな人豚の少女がミスティークだと言うのならば、もはや自分に出来る事は煩悩退散を神に祈祷する事くらいである。


「有り触れた名前ですが、あの街では小さな商会を営む家の娘ですので人間さん……いえ、ガラークさんなら、わたくしの紹介があれば、名誉ゼノ・アニマルとして入れると思います」


「あ、有難いけど、いいの?」


「はい。決して悪い方でないのは戦いを見れば分かりましたから……」


「そ、そう?」


「はい。私から目標が外れるように誘導して倒して下さったお手前。とても、素晴らしいものです。見た限り、体の疑体マシンナリー化もしておられないようですし、名のある人間の戦士さんなんですよね?」


「え? いやぁ、そこらへんはちょっと……」


「ああぁ!? も、申し訳ありません!! こんな辺境にいるって事は何か人間種族の領域で色々あるんですよね? 過去を詮索しないのは辺境の流儀なのにスミマセン」


 シュンとした自称ミスティークにいやいや大丈夫大丈夫と笑顔を浮かべる。


 それが例え自分の知るミスティーきゅんでなかったとしても、融和的なNPCとの交流は基本的に全て行う必要がある。


 何処にフラグが隠されているのか分からない為、基本的には悪い印象を抱かせないように総当たりを行うのが当然なのである。


「じ、実は安全な水が欲しいんだ。でも、夜の河で危険で……それで辺境に居を構えたかったんだけど、中々難しくて」


「それはお辛かったでしょう。ですよね……こんな辺境で1人で暮らそうとしたら、大変ですよね。ただでさえ、ゼノ・アニマルの領域ですから」


「そう言えば、ここら辺の事は殆ど知らないんだ。情報があまり出回って無くて、色々教えてくれるか? ミスティークさん」


「いえ!? さんだなんて!? ミスティークとお呼び下さい!! 命の恩人です!! 友人のように接して下されば」


「ああ、いいの? じゃ、じゃあ、ミスティーク。取り合えず、このトカゲは置いといて車内の方に。夜に動くのは危険だから、明け方になったら、街に向かおう」


「あ、はい……」


 こうして案内した偽装済みの社内に退避。


 野生の獣が近寄って来ない内に明け方に街へと入場する事になったのだった。


 *


『守衛さん!! 只今戻りました!!』


『お、おぉ!? マイザス商会のお嬢さんじゃないか!? まさか、あの連中から逃げ延びたのかい?!!』


 車両を取り合えず近場に止めて、先に出て貰ったミスティークから事情説明をして貰う事になっていた。


 何やら話している内にこちらの社内に目を細めた守衛らしい男が仲間達を呼んだのだが、すぐに慌てた彼女が必死に説明を再開。


 最終的には溜息を吐いた守衛の50代くらいの三毛猫っぽいおっさんが付いて来て、車両の前で彼女が胸を張ってサムズアップしてくれた。


「アンタがお嬢さんを助けた人間か?」


「え、ええ、旅の途中で……」


「ああ、そうか。だが、絶対に街中で事件を起こすなよ? いいな?」


 ギロリと睨まれたものの。


(あ、猫ちゃんカワイイな。オスでもメスでもカワイイ動物は大歓迎なんだよな。現実だと動物に嫌われる性質だったし……)


 ちょっと、ほんわかしてしまった。


「ガラークさん。車両の方は商会の方に運んでもらう事になりましたので、歩きで実家の方に。先に知らせを送ったのでお食事は出来てるはずです」


「ありがとう。ミスティーク」


「?!」


 何か三毛猫守衛おっさんが物凄い顔になって、こちらをギロリと睨んでいたが、それはそれとして手を出したりはして来なかったので、そのまま車両を下りて歩きで街に入る。


 一応、裏道を使うという事で守衛のおっさんも一緒であった。


 何でも人間と一緒に裏道なんて使わせられないという事らしい。


「そう言えば、この街の名前は聞いてもいいのかな?」


「え? ええ、知らなかったんですね。だから、こんな場所まで……」


「?」


「あ、いえ、何でもありません。此処はアルマート。ゼノ・アニマルのコーデン辺境伯領の最果ての街です」


「コーデン……」


「あ、ああ、す、凄く実はコーデン人が嫌いだったとかでしょうか!? に、人間さんの領域ではかなりの悪名を馳せているはずなので!?」


「い、いや、ちょっと聞き覚えがあるなぁ、と」


 思わず愛想笑いになった。


 コーデンの名前は素のヘヴンには存在しない。


 これもまた導入していたMODの一つだ。


 種族創作系MOD【コード・クライシス】。


 その内容はアルマートという街で太古の遺跡の遺産より出土した遺伝子操作用技術を用いて、新たな種族を作成し、多数の遺伝子を集めて最強の種族や必要な生産職の種族を生み出し、自分だけの王国を造ってヘヴンを統一するというものである。


 そして、コーデンはその太古の遺跡がある地域の名前だったりする。


 数年前に導入してからはFPSとして遊び疲れた時に戦略シミュレーションとして遊ぶ事で心機一転するという使い方をしていた。


「そう言えば、此処ってどうして悪名高いんだっけ? 何かうろ覚えで」


「ぁ~~ご存知ないんですね。そのぉ……コーデンの傭兵は精強なので……大陸中央にまで進出していて、一時期はゼノ・アニマル領域を大きく広げた事で勇者なんて持て囃されてたんです」


「あ、そ、そうなんだ」


 ゼノ・アニマル領域って何だ?


 と思わなくもないが、推測すれば、種族的な領域というのは聞かずとも理解出来る……つまり、此処ではMOD種族達が大きな勢力になっているのだろう。


 本来はプレイヤーがそういう場所を作り出すものなのだが、此処では当人達が自前でそういう国造りをしているのかもしれない。


「それで聞いた事あったのかな。はは……」


「付きましたぞ。お嬢さん。おお、商会の方が出迎えてくれているようだ。これでもう安心ですな」


「いえいえいえ?! ガラークさんは命の恩人ですから、あんな剣や銃や鞭や斧で重武装させてたら、印象悪過ぎです!? ああもう?!! わたしが行ってきますね!! ガラークさん!!」


 怒った様子のミスティークがツカツカ歩いて行って、小規模な店舗前に集まっていた物騒な集団に何やらクワーッと雷を墜とした。


 すると、すぐに多種類なアニマル達が驚いた様子になり、すぐに得物を罰が悪そうな顔で後ろに引っ込める。


「スミマセン。助けられたって言ってるのにああなんだから……はぁぁ……」


「こちらこそ申し訳ない。色々と無理をさせてしまっているような……」


「そんな事ありませんよ!! 食事はもう出来ているそうなので店舗裏の方で取ってから、今後の事をお話しましょう」


「え、ええ」


『(。|∀|)……』


 ゾウ型、パンサー型、シマウマ型。


 此処はアフリカかというレベルでゼノ・アニマ・タイプの種族が大量だ。


 種族MODは数が多いので大型以外の一種族導入型のものは覚えていないものが多い……何せ数百種類以上入っているのだ。


 ただ、強力な種族に関しては仲間にするか、逃げるかという事になるので基本的に覚えているのだが、印象的ではないモブ系種族は名前すら実際には曖昧だ。


 石造りの店舗裏にある共同住み込み用のスペース。


 食卓には既に大量の食品が並べられていた。


 ハムとベーコンをカリカリに焼いたものに卵を幾つも使った目玉焼き。


 大きな葉野菜を千切ったものに油と酢と塩を掛けたらしいサラダ。


 主食は焼き立てで白パンだ。


 根菜類と豆類を煮込んだスープまで付いていて、水が大量に入った水差しが横に置かれていて、コップはガラス製という豪華さであった。


「取り合えず、ドンドン食べて下さい!! 後、裏手にお湯を沸かしてたらいに入れてあるので体を洗うのにどうぞ」


「本当に何から何まで」


「い、いえ、昨日の償いだと思って頂ければ……それに二度助けられた恩は忘れません。ウチは“義理堅い”で商売してるので……」


「ああ、そういう……」


 種族や性格には特性というものが存在する。


 要はステータス向上効果がある能力扱いなのだ。


 ヘヴンには“義理堅い”の性格特性はないが、MODには存在する。


【ステータス・プラス@】


 このMODは実際のゲームプレイ時にも有用だが、チート的な側面も存在するエロMODでもある。


 要はキャラクターに特定の特性を付与出来るのだ。


 戦闘面でならば、忍耐強いとか、神経過敏とか、完璧主義者とか。


 ステータスを上げたり下げたりしながら、特性によって様々な恩恵と業を背負う事になるのである。


 何故、これがエロMOD扱いなのかと言えば、淫〇とか、ビッ〇とか、S〇X狂とか、〇〇癖のような性格や適性、特性を付与出来るのである。


 これによって滅茶苦茶性的に最強のミスティーきゅんと熱い一晩を過ごした中年は干乾びたので一部機能以外封印したりしていたのだが、今になって思えば若い内にもっと楽しんでおくべきだったかもしれないと思わなくもない。


「い、頂きます。んむっ、う、旨い。んぐんぐんぐ、はぁ~~~(´▽`)」


 思わず人心地付いて思わず口に食料を詰め込んでいた。


「それは良かったです。うふふ」


 “義理堅い”の性格特性は確か……と思い出そうとした時だった。


 バァンッと勝手口の扉が開かれた。


 そこには鬼の形相をした人豚のピンク色の肌のおっさんが1人。


 灰色の仕立てのよさそうなスーツを着込んで殴り込みに来た様子でその両手には斧が二本も握られていた。


「ミスティィィィィィィィィク!!? 大丈夫かぁ!? お父さんが助けに来たぞぉ!?」


「(。-∀-)……はぁ、行ってきます。ガラークさんはどうぞお食事を続けて下さい。今、ちょっと行ってきますね」


 こうして娘に呆れられた父がズルズルと裏手に引っ張られ、連れられていくと何やら大声が響き。


『ひぅぅぅぅう((((;゜Д゜))))』と情けないおっさんの声もまた聞こえて来た。


 その合間にも店の従業員らしき男達が何か罰の悪そうな顔になっていながらもしっかり凶器は握り締めた様子でこちらをジト目で睨んでいた。


「……お嬢さんをどうやって懐柔したのか知らないが、それを食ったらすぐに出ていくんだぞ。人間」


「そうだ。お嬢さんを助けてくれた事には感謝してるが、此処はお前ら人間のいる場所じゃねぇんだ。いいな?」


「ああ、お嬢さんに手を出して見ろ。すぐにでも叩き切ってやるからな?」


 心配せずとも必要物資と重要な事柄を聞いて、ある程度の生活の目途が出来たら出ていくつもりなので、そこは問題無かった。


 それまで街を追い出されなければの話だが……。


「(´・ω・`)ふぅ。父には言い聞かせて来たのでもう二度とガラークさんの前には姿を現さないでしょう」


「え? あ、一応はお礼を……」


「いえ、ああ見えて父って案外強いのでさすがに危険な事はさせられません。とにかく、ウチでガラークさんの住居は確保します。それとお仕事はやはり“ハンター”や“傭兵”でしょうか?」


「え? あ、うん。そういうのはやってたかな……」


「辺境なのでハンターは食いっぱぐれない仕事なのですが、何分ここら辺の獣は強いので……いえ、ガラークさんなら大丈夫でしょうけど、一応……」


「あ、ああ、急ぐ旅でもないし、状況を把握したり、路銀を溜めたり、しばらくこの界隈で世話になりたいんだけど、いいかな? ミスティーク」


「はい!! 勿論です!! 好きなだけ頼って下さい!! ガラークさん(*´▽`*)」


「う……」


 笑顔が眩しい。


 仮にもミスティークの名を名乗るのは伊達と酔狂ではないのだろう。


 錯乱してさえいなければ、聖人クラスに良い人なのが逆にちょっと心に来る。


 人間、優しくされると絆されるものである。


 まぁ、好みではないのだが、良い友人としてならば付き合っていけそうだった。

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