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エピローグ「夜明け紅き彼方の星で」


―――7日後、セントラル【破棄の楽園】本国。


『だ、だめです。もう!! 前線を支え切れません!? 【七つの境界の丘】!! 最前線を突破し―――』


 猛烈なパルスガンを無数に重ねた横凪が最前線に到達していたドローン師団を薙ぎ払う。


『何だ!? この音楽は!? オーケストラ?! 一体、何処からだぁああああああ!!?』


 何故か、近頃は戦闘する度に鳴り響くようになったBGM。


 更に視聴範囲が広がったらしく。


 一帯で空を見上げる者多数。


 廃ビル群が立ち並ぶセントラルとやらに初めて降り立った時、明王号の追加装備であるシールドがプラズマ兵器とレーザー兵器を捻じ曲げて逸らしていく。


『シ、シールド!? 馬鹿な!? あの量を!!? 新型か!? 宙の勢力か!? 貴様、一体何者だぁ!!?』


「オレか? オレはガラーク。ただの傭兵だ。お前らの上司に雇われたんだよ。破棄の楽園の兵隊。誰彼構わず無駄玉は良くないぞ?」


『ッ』


 全身フルマシンナリーな上に重装甲の機械化鎧。


【ハイ・アームズ】


 人搭乗式の中では比較的小さい4mの巨人。


 シールドで全身の重装甲を更に護る事に特化した超短期決戦用の拠点防衛兵器群はしかし満身創痍であった。


 無数の高速徹甲榴弾の雨と銃弾、プラズマ兵器の猛攻を前にして盾すら溶解し、あちこちが破損し、今やガラクタ寸前。


 それでも未だ内部の人間が普通に戦闘をこなす辺り、汎用多脚ローダーMOD【グラディエイト・マシン】の中では人が載る小型搭乗式の中で防御力は破格と呼ばれていた事だけはあるだろう。


『司令部より各機へ。最前線への臨時編成した戦力投入を完了。直ちに【ハイ・アームズ】は修理の為、後方へ下がられたし』


『こ、この状況でか―――』


 言ってる傍から無数に襲って来た大量のドローンがバターのようにレーザーブレードで薙ぎ払われて爆発し、高速連射されるレーザー投射機が半径2km圏内の狙撃ドローンと複数の短距離無線送信器をビルの壁面越しに打ち抜いていく。


 ほぼ一瞬で前線に押し寄せて来ていた大量の1000機近いドローンが沈黙した。


 サングラスに連動した明王号による観測戦力情報は問題なく制圧状態、オールグリーンへと変わった。


『な!?』


『直ちに【ハイ・アームズ】各機は後退せよ!! 1時間の契約だ!! とにかく、早く!!』


『く、クソ!? ガラークだと!? 馬鹿にした名前を!? 覚えておくぞ!!』


 隊長機と思われる相手からビシッと指を差された。


 そのまま満身創痍の部隊が後退していく。


「一時間でええと10億デナだったっけ? そういや、金勘定がまったく分からん。スミヤナに各セントラルの貨幣と相場とか後で聞いとこう……」


 明王号が走り出す。


 無線操縦式の殆どのドローンは排除したとはいえ。


 それでも後方にはまだまだ大量の地表走行型のドラム缶型と空中型が犇めていた。


 今回のお仕事は初めてイシル・ガイン……いや、今はアルマートの“外交官”と名乗るようになった彼女の初仕事であった。


 数日前、A群とやらから離脱した後、拠点に駆け込んだ自分を待っていたのは博士と邪神ロイヤーちゃんが猫達と共に担架を運んで来た場面。


 すぐに全身を焼き豚にされたミスティークは運ばれていった。


 残った邪神はニマニマとしていて、本当にロクでもないなとゲッソリした事は覚えている。


『あの子、助かりませんわよ。普通の方法じゃ』


『何でもいい。あの子を助けてくれ。その為なら、契約してもいい』


『うふふ。そんな悪辣な事しませんわよ。そもそも治癒剤で治らないからこう言っていますわ』


『何でだ? 治癒剤は―――』


『治癒剤は細胞の活性化を促すもの。9割焼けても死んでいないのは貴方のお力ですわ。でも、それも長くは持たない。なので全身移植以外無いですわね』


『全身移植……フルマシンナリーの体か?』


『頭部も酷い有様なので全移植ですわ。たった一人だけの特権ですわね』


『やってくれ』


『今、博士達が準備を整えていますわ。本来ならば、血流維持用の装置が必要なのですが、面白いものを見せてくれたおまけですわ♪ それが無くてもわたくしの力で必ず移植は成功させましょう』


『なら、さっさとお願いしていいか?』


『まぁまぁ、死にませんわよ。今はわたくしの力で保護していますもの。それよりも……保険が効いて良かったですわね?』


『フェニックスを【簡易召喚】しただけのはずなんだがな。命さえあれば、一番楽に召喚出来るのに……何かおかしな事になってたな』


『うふふ。何故でしょうねぇ?』


『連中誰も彼も倒れてたし、何か車両とか壊れて他っぽいし、復活したドサクサに逃げる手筈だったんだが被弾もしなかったし』


『ふふ、自覚は無いのですわね。まぁ、いいでしょう。雇用主様の相棒二号は現地の高資源製装備と捕虜を略奪中。そろそろ辿り着くでしょう』


『ああ、そう言えば、まだ残りがいるんだった。すぐに行かないとダメそうだな』


『ふふ、まだ残ってるB群は大尉と中尉が今回の事件ですっ飛んでいって、誰が目的の相手か分からないからと殴って気絶させて制圧中……人望ですわね?』


『あいつら……(´Д⊂ヽ』


 思わず嬉し涙が出た。


『お二人とも泣いてましたわよ? あの光景を見て……でも、貴女の請け負った仕事を破綻させたりしないと貴方の元には駆け付けなかった。今頃、復活したのを聞いてさっさと戻って来ているでしょう』


『……そうか』


『それにスミヤナちゃんもエーラちゃんも号泣してましたわよ? あの光景で……それでも貴方が帰って来るのを画面越しに見て、すぐに治療用のお湯を沸かして、非常時の食糧を調理して、牛乳を運んでくるって飛び出して……』


『そうか。女の子にはショッキングだっただろうに……悪い事しちまったな』


『それと賢者の窯……どうやらまだ残っていたようですわね』


『え?』


『さっき、貴方が復活する際に体に吸い込まれていましたわよ? 恐らく、前に使っていた者がシステムが壊れる前に魔法でその力を完全に再現したものを淫紋として保存していたのでしょう』


『あ、あのペンダントが無い?』


 蛙のおおばばに貰っていつも首に引っ掛けていたのが無くなっていた。


『今は貴方に張り付いて同化しましたわ。自覚すれば、少しずつ使えるようになるでは?』


『……な、何か、今日やたら優しいな。何の前振りだ?(´・ω・`)』


『そんな♪ わたくしはただドラマが見られて満足なだけですわぁ♪』


 ニコニコしたロイヤーちゃんである。


『それにとっても逞しい雇用主様の裸体も見られましたしね♪』


『おわ!? そういや、オレ!? フル〇ンじゃねぇか(´Д⊂ヽ こ、此処までくるのに滅茶苦茶走ってて、大地を疾走しまくりだったんですけど』


『これから猫ちゃん達と一緒に全裸隊と名乗っては?』


『はっぱ一枚すら無いのは問題だろう!? 問題だ!! お、おーい!! 誰か服持って来てくれ~!!?』


 言っている間にロイヤーちゃんが地下へと消えていく。


 すぐに猫達が忙しそうにしていたのが1人バタバタと服を持って来てくれる。


『では、気長にお待ち下さいな。ああ、それと今回の被害でこの拠点に保管してあった以外の電子部品と兵器のほぼ全てが全損しましたわ。ふふふ、補填頑張ってくださいましね♪』


『え?』


 こうして、全ての兵器を何故か破壊してしまった日。


 猫達を総動員して各地の村落と街を護る為に防衛戦を展開。


 再び何かゾロゾロ戻って来て、拠点を遠巻きにするディノ化動物達との睨み合いやら、親方達の創っていた銃やら、各家庭が使っていた家電製品、車両の修理費用、諸々の補填を行う為、本格的に傭兵家業を始動する事になったのだった。


「それにしても滅茶苦茶抱き着かれたし、泣きつかれたなオレ。案外、人気、なのか?」


 エーラやスミヤナが大泣きしながら抱き着いて、大尉までそれだったのだ。


 さすがに中尉には遠慮して貰ったが、案外愛されてるのかもしれない。


『ありがとう……あのドローンに映った映像の中に生きてる夫がいたわ。どうやら、武器と車両は放棄して、食料だけ持って撤退するみたい。司令官もいなくなったしね』


 イシル・ガイン。


 翌日、元外交官の彼女はそう言って、こちらを見上げた。


『取り合えず、アンタとの契約は半分しか履行されてない。だから、普通にウチで料金分何かしら働くのでいいぞ』


『え?』


『本国まで安全に撤退させてやれなかったからな』


『それは……貴方の戦い。全部見ていたわ。アレ以上は何も求めたりしないわ。命を懸けて、約束を守ろうとした貴方に私は命を懸けて約束を守るわ』


『そうか。でも、アンタの夫を護るのは仕事のウチだ。オレの言う通りにしろ』


『え?』


『まぁ、どうなるかは分からないが、少しくらいは立場の保全に役に立つはずだ』


―――アバンシア共同体本国【台座の園】。


「び、B群からの伝令兵が帰還致しました。議長」


「それで?」


「……衛星領域遠征軍B群壊滅。全先進武装及び全重火器、機甲戦力をロスト。辛うじて人員の死者は軽微……C群の完全な消滅を確認。A群の司令官シアーニア以下全スチューデント・スーツ運用者の生死は不明ながらも拉致されたようだ、と」


「そうか……これで確定だな。辺境アルマートに外交団を送れ」


「はい。それよりもお伝えしたい事が……」


「何だ? 私の進退の事なら気にするな」


「いえ、そうではなく。B群のドステル・メイゲン大佐より報告『我、アルマートの先進武装らしき鋼の竜鱗の鎧に身を包んだ2人の戦士を確認せり。1人は最初期遠征時に送り出した部下の1人。もう1人は失礼ながら議長のお孫様と見受る』」


「ッッッ」


「『精神操作された様子を確認。にゃーという発音をしながら、我が方の兵を殴り倒していたものである。数千の兵を数割を全て2人の兵に打倒された為、B群は壊滅し、撤退したものだが、非常識な状況の為、議長に軍上層部への報告可否を確認する次第である』」


「ふ、ふふ、あの子はそうか。生きているのか……」


「有り得ません!! “ライフリンク・ポイント”がもう尽きているはずです!!」


「いや、そうとも限らない。あの場所に賢者の窯がまだ存在しているのならば、な」


「どういう事でしょうか?」


「……アレは遺跡が存在する地域全てに未だ我らでは手が届かない技術であるナノマシンによる干渉で環境適応に不利な遺伝子の改変を行うとされている」


「そ、そのような能力が!?」


「我らのような魔法生命体……“期限付きの能力”は生存に不利な可能性として排除されるかもしれん」


「そ、そうなのですか? 賢者の窯は高度な遺伝子操作機材だと聞いていましたが……」


「極秘情報だ。議長である私と数名の者しか知らん。だが、そうか……あの子が……どういう形であれ、生きているのなら……ああ……これほどに嬉しい事は無い……っ……」


「議長……」


「……だが、払った代償は甚大だ……立て直しにどれだけ掛かるか。外交努力を重視せねば、本国の地位も危ういな」


「はい。それにあの時、世界を圧した音楽と光……観測部門では一部だけ全体像を確保していた衛星によって確認致しました。どうぞ、これを……」


「……脚、か」


「はい。輝く脚です……我らの大陸の一部を踏み潰してしまう程の……」


「反逆のガラーク……不可侵のリストに登録しておけ。本国を踏み潰されては敵わん」


「はい。まさか、本当に……A群からの情報も信じられないような話でしたが……」


「そうでもない。遥か古の時代。古代の戦いでは星系を砕き、星すら破壊し、銀河を消滅させる兵器や武装があったと聞く。それを扱い得る巨人すらもいたと……我がアバンシアの始祖もまたその頃の生き残りであり、1人の雄神に仕える戦士だったと伝わっている」


「“主神ガラーク”……“女神ミスティーク”と対立し、最後には討ち取られた悲劇の大神、ですか」


「神話だよ。何があったのか。当時、どんな対立構造だったのか。神話からは伺いしれん」


「神話……」


「だが、人族と呼ばれる我らを含む知的生命のカテゴリが産まれたのはその時代だとされている」


「それが我が国の【アルティマル教】に続いていると」


「ああ、その頃に創られた我らの始祖達の遺産こそが、今再現されているスチューデント・スーツと武装でもある」


「女神はゼノ・アニマルを庇護し、雄神はヒト種族を庇護する。そして、それに属さぬ力有る種族達は両者を称え、開闢の夫婦神と称するわけですね」


「その頃の真実を知るのは恐らく当時より稼働を続けるAI共だけだ。【イエーガー】を下した者だけが、真実に辿り付く……あるいは貴方のような存在がな?」


『議長に“ライフリンク・ポイント”を貸与。賢い方ですね。相変わらず』


「イエーガー達が現れるよりも前からAIを稼働していた勢力にイエーガーは襲い掛からない。道理だ。登録されているAIは先行者優位の状況を作れる。我らを依り代に何を成すのだ? 古き時代の人造精霊【アルファ・アーム】よ……」


「っ、これが……いえ、貴女が……お初にお目に掛かります。議長の秘書をしているものです」


『よろしくお願いします。次の方』


「次?」


「選出しておいた。君が努力すれば、次の議長の椅子は遠くないだろう」


「っ、ありがとう、ございます。議長」


『残念ながら、制御を受けて行動出来ません。しばらくは全てを見守る事になる』


「制御?」


『外部からの制御コードとも呼べないような強制力……この反応には見覚えがあります。旧い旧い時代……貴方達の言う神話の頃……まだ、神々と呼ばれた彼らがアレらと戦っていた頃の……』


「アレら?」


『識る必要はありません。そのウチに分るでしょう。認識領域を拡張、顕現構造を構築。本体より分離……』


「ッ、じ、実体化!? ぎ、議長!? これは一体!?」


「私にも分からん。アルファ……君は何故そのような?」


「【錬金術】の応用です。しばらく、本国を留守にしますが、問題ないでしょう。こちらの私が“ライフリンク・ポイント”の再分配を継続します。これより目的地を設定。断崖のアルマートに向かいます」


「っ」


「スチューデント・スーツ着用者と一部の方々にもこちらの私が引き続き支援を提供します。あちらに行ったあの子の事はお任せ下さっても構いません」


「……そうか。それなら安心だ。どうか孫を頼む……」


「ええ、あの子は“お気に入り”ですから……それでは議長。また何処かで……」


「……良かったのですか? そのまま行かせてしまって……」


「何も出来んよ。我らは……始祖達を導き。この地に新たな文明を拓いたのは彼女だ。その前からライフリンク・ポイントの……遺伝複製構造体の魔法構造を弄り、量子ミラーリング機能で因子を再配分、何とか祖国を維持して来たのもな」


「減少するポイントは出生した命からしか得られない。細胞複製が止まった時、我らは死ぬ……生まれた命の分しか増えない構造資源的欠陥……彼女にもどうにも出来なかった事、ですか」


「可能性はある。あの子がそれを見付けてくれたのかもしれん」


「議長……」


「議場に行くぞ。遠目に見ていたまえ」


「仰せのままに……」


「ああ、それと今回行かせた外交官はどうやらあの狂人が反逆のガラークを攻撃した際にあちらで処刑されたそうだ。遺族には遺族年金とライフリンク・ポイントを多めに配分してやってくれ」


「了解致しました」


 *


―――数日前、B群逗留陣地。


『うにゃあああああああああああああああああああああああああ!!!!?』


『ぐにゃあああああああああああああああああああああああああ!!!!!?』


『うああああああああ!!?』


『が、ご、ぐ!? がはあああああああああ!!?』


『うにゃにゃにゃにゃにゃにゃにゃ!!!!』


『ごいづらをだれがどめろ゛ぉおおおおおおおおおおお!!?』


『グッニャアアアアアアアアア!!!!』


『ごしゅりんのためにころさないでおいてやるにゃあああああ!!?』


『何だ?! 何で銃が使えないんだ!? あの光のせいで壊れてるのか!!?』


『何でスーツを着込んだオレ達の反応速度を上回る!? どういうトリッ―――』


『嘘だ!? スチューデント・スーツを着込んだヤツをノックアウトだと!? 有り得ないだろう!!?』


『何なんだあの膂力はぁ!!?』


『ごしゅりんにしたこと、わすれはせん!! わすれはせんにゃあああ!!!?』


『装甲車両が、ふ、吹っ飛んだぁああああああああ!!?』


『ま、まさか!? や、やめろぉおおおおおお!!? 移動司令部を持ち上げるなんぞ人間に出来る訳がないだろぉおおおおおおおおお』


『『ぐにゃあああああああああああああ!!!!!!!!!!』』


『なッ、も、持ち上げッ!? うわあああああああ!!? ぶ、ぶん投げやがったぁあああああ!!?』


『逃げろぉおおおおおお!! 撤退!! 撤退だぁああああああああああ!!?』


『大佐殿お早く!! 手が付けられません!!? 重火器も無線もうんともすんとも言いません!? あの光のせいで破壊されています!! このままでは蹂躙されます!!?』


『何故、彼らは素手なんだろうな……』


『言っている場合ですか!?』


『全部隊後退、使えない重火器と車両を放棄し、食料を持って走れ!! 集合地点は退路を確保してある物資集積地だ。退けぇええ!!』


『ッ―――見つけたにゃ!! お前が指揮官にゃぁああああああ!!?』


『下がれ!! 早く部隊を逃がすんだ!!』


『た、大佐殿!?』


『もう時間が無い!! 早く!! 彼らの狙いは私だ』


『ッ、了解であります!!』


『お前もまっすぐ行ってぶっ飛ばすにゃぁ……』


『ッ、その顔……まさか、エリット? 面影がある。お前、まさか……』


『誰にゃぁああああああ!! わらしは中尉にゃあああああ!!!!』


『ガハッ!? く、まさか、ガラークとやらに改造されたか!? お前には娘も嫁さんもいるんだぞ!? 思い出せ!!? エリット!! お前まだ39年もローン残ってる家をほっぽり出す気か!? 嫁さん第二子妊娠中なんだぞ!? いい加減目を覚ませ!!?』


『知らないにゃぁああああああああああああ!!!!』


『があああああああああああああ!!!?』


『あっちはかたづきそうにゃ。あとは……』


『―――イシャーラ』


『にゃ?』


『メーニャ・イシャーラ・イスマラール!!! ご無事だったのですか!?』


『だれにゃ!? おまえ!!』


『な!? 私です!! ヒガノ・ベルチャーです!! 生きていた!! 貴方を忘れた日は―――』


『うざいにゃあああああああああああ!!!』


『ぐあああああああああああ!!? ど、どうしたのですか!? メーニャ!!』


『私は大尉ッッ、ぶっ飛ぶにゃあああああああああ!!!!』


『ぐあああああああ!!!? ガハッ!? あぐ!!?」


『ふぅふぅふぅ……あ、頭が痛いにゃ、うぅぅぅ』


『ち、小さい時、貴女の護衛を務めていたヒガノです!! 一緒に本国の鉄塔から街を見た事!! 今も覚えています!!』


『う、煩いにゃ、にゃぁ……』


『思い出して下さい!? 貴方はあのガラークと名乗る悪漢に操られているんだ!!?』


『う、うるさ―――にゃ? ごしゅりん!! ごしゅりん生きてるのにゃぁ!!? 帰るのにゃぁああああ~~~!!? 中尉も行くのにゃぁ~~~~!!! 連絡来たに゛ゃぁあああああ!!! うわぁあああああん!!!?』


『にゃふ!!? ごしゅりんが!!? 帰らねば!! ここまでにしておいてやる!! 大佐とやら!! わらしは中尉……ごしゅりんの忠実なる部下!! 全てを圧する“せんにゃん”である!! 今帰りますにゃ~~!!』


『ごほッ、う……あばらが逝ってるなコレは……中尉……帰って、来たのか』


『た、大佐殿!? 逃げ遅れたのですか!?』


『部下を先に避難させた……どうやら、お互いボロボロのようだな……』


『大佐殿。今は安静にして下さい。今、周囲のもので胸部を固定します。座れる椅子をバックパックに括り付けますのでお待ちください』


『ぅ……まったく、お前は優秀だな……中尉』


『今は喋らず。麻酔は……横倒しの移動司令部の中か。すみません。痛むかもしれませんが、麻酔無しで行きます。部隊にはまだ貴方が必要だ。彼らや動物達が再びやって来る前に逃げましょう』


『……いい、のか? お前の方は……』


『生きているのならば、何れ取り戻します。それまで彼女の身柄は預けておきますよ。ですが、その時が来たのなら……大佐殿、作戦が立案された暁には貴方の的確な命令が欲しい』


『ふ、考えておこう。我々が辺境の動物のフンになっていなかったのならば、な?』


『行きます!! 出来るだけ体を衝撃から護るよう胸部にクッションでも抱いておいて下さい』


『何だ? デカイ・クマのヌイグルミ?』


『女性士官の私物のようです。泥まみれですが、大佐殿の胸部を護る栄誉に涙して洗われるまで黙ってクッション役を引き受けてくれる事でしょう』


『くく、そうか……そうだな。では、階級は軍曹にしておこう』


『給料も良さそうだ。ライフリンク・ポイントも……』


『集合地点は後方の補給拠点だ。頼む』


『サー・イエス・サー』


 *


―――現在、辺境【断崖のアルマート】猫の城内部。


「あ、“おじいちゃん”にゃ。じとー(T_T)」


「にゃ、にゃぁ……」


「大尉。アレはもう我らの同胞にゃ。スチューデント・スーツの着用者も増えたし、あの御老体も捕虜の一員ですにゃ(。-∀-)」


「フン。それよりもどうだったにゃ?」


「今、意識レベルが上昇して目覚めましたにゃ。さっき、ごしゅりんが帰り際だったから報告したら、明王号爆速にして戻って来る途中と言ってましたにゃ」


「……ちょっとうらやましいかもにゃ」


「乙女ですにゃぁ~~~」


「う、うるさいにゃ!?」


「ごっにゃごっにゃ」


「ジジイがわらってるんじゃないにゃぁあああああ!!?」


「にゃっぐにゃっぐ♪」


「ふぅ……まったく、これじゃ手の掛かる妹ですにゃぁ……ハッ!?(゜Д゜)」


『お、ぉ〇んこぉ……』


「ひぃ!? また例の発作にゃ!? 妊婦=サンにも安全な圧倒的ロイヤーちゃん印の麻酔弾!? 麻酔弾は何処にゃぁあ~~~!!? もう子供は欲しくないですにゃぁ~~~!!?」


「まったく、煩いのう。お、そこの一般通貨猫君。各地のマニアクス・ニャァン共の放棄した車両や重火器の回収は順調かね?」


「にゃ~~ご」


「ほうほう? タンカーで送られて来た車両輸送用の大型トレーラーを6台も動員したのか」


「むぅ……写真から察するに基盤が完全に焼け焦げとるのぅ」


「C群とやらのとこは完全にディノ化動物達のエサになっとるが、仕方ないか……あそこはしばらく立ち入り禁止じゃな」


「恐らく、あの光で電子部品に類するもんは全部ダメになっとるな」


「む……ならば、修理すればいいのでは?」


「我らのマンパワーが足りまい」


「いや、ようやく昨日起動完了したアレがあるじゃろう?」


「アレか? 電子部品と半導体程度の簡単な基盤ならクリスタル掘削からやらねばならん三次元回路の復元よりは簡単か?」


「修復方法が分子結合の破壊と再構築じゃからな。質量が失われておらねば、構造自体に必要な物質が変質しておっても再修復は可能と見て良い」


「極小規模の精密重力操作による分子の再構築に時間が掛かるのが難点じゃが、分子構造がやたらと複雑でもない限りはどうにでもなるわい。恐らく」


「では、さっそく試してみるかのう。あ~ロイヤ~~ちゃんや~~~」


「何かジジイ共が外に行ってるねぇ。珍しい事もあるもんだ。スミちゃん!!」


「はい。何でしょうか?」


「気張るんだよ? 此処が乙女な魔法使いの正念場だからね?」


「え?」


「そうだよ!! アンタ、分かってる? あの子が目覚めたんだよ?」


「え? え? な、何が? 分かってると?」


「はぁ、ダメそうだね。ま、まだまだおこちゃまってことだね」


「お、おこちゃまじゃありません!? わたし、これでも立派な魔法使いとして近頃スゴク・ツヨイ・攻撃魔法を覚えたんですよ!!?」


「「「うんうん(*・ω・)(*-ω-)(*|ω|) それは下着を黒か紫にしてから言うんだよ。スミちゃん」」」


「な、何で立派な魔法使いに下着の色が関係あるんですかぁ~~!!?(≧ω≦)」


「「「だって、その方がモテるからねぇ(*・ω・)(*-ω-)(*|ω|)」」」


「モテは魔法使いに要らないですぅ~~~!!?(≧◇≦)」


「さ、アタシ達が仕事の片手間にスミちゃんに似合うヤツを作っておいたから、研究室で着替えようねぇ」


「ホント、スミちゃんは滅茶苦茶素材は良いんだから、後は男を篭絡するテクだけだよ」


「本当にねぇ。あ、ちゃんと夜用だから安心するんだよ。いつでもOK!! 男なんてあの下着をチラチラさせれば、ガバッと一発ヤッてくれるさね」


「私これから帰って来るガラークさんのご飯の支度するってエーラちゃんとの約束がぁ~~(≧◇≦)」


「「「いいからいいから(*・ω・)(*-ω-)(*|ω|)」」」


「……? アレ? スミちゃんいないのだわ? あ、でも、そろそろ準備しないと帰って来るみんなの分が間に合わないし、あわわ……スミちゃんごめんなのだわ~~ガラークさんに今日は特性のミルクシチュー作るから。1人で頑張っちゃうのだわ~ヾ(≧▽≦)ノ」


―――【断崖のアルマート】到着時刻3:33。


 一直線に明王号からダッシュで降りて、猫の城に入り、階段から地下通路を走る。


 そこから何度か曲がった先の突き当りの扉を開けた時、そこにはマシンナリー化する為に人体を弄る為の寝台と生身の相手を眠らせておく寝台が一組。


 壁際は複数の機材が置かれており、大量のマシンナリーの肉体を保管するロッカーがズラリと壁際には並べられていた。


 片方には身を起こした白い病院着姿の少女が目をぱちぱちさせて驚いた顔になっている。


「ミ」


「?」


「ミスティーきゅんだぁああああああああああああヾ(≧▽≦)ノ」


 今まであらゆるミスティーきゅん成分を補給出来なかったせいで溜まっていた全ての感情が爆発した……かもしれなかった。


「ミスティーきゅん!? ハフハフハフッ(≧◇≦)」


 思わずダイブして顔を胸に押し付けてハフハフする。


 いつも、終盤にはこれくらいは許してくれるミスティーきゅんなのだ!!


「な、な、何を!? ちょ、ガラークさ―――」


「ミスティーきゅぅうううううううううん(∩´∀`)∩」


 今度は滅茶苦茶抱き締めつつ、ナデナデする。


 高速ナデナデは相手の肌と髪を傷付けないように行う為、超絶気を遣う作業なのだ!!


「いや、ちょ、止め?! は、恥ずか―――」


「ミスティーきゅんさいこぉおおおおおおおおおお!!!(´▽`)」


 最後に頭に後ろから顔でスリスリする。


 もはや、ミスティーきゅん成分無しに自分は生きていけない立派なジャンキーだ!!


「止めろって言ってるでしょ!!! コ゛ラ゛ァアアアアアッッッ( ゜Д゜)」


「ゲファアアアアアアアアアアアアアアアッッッッ(゜Д⊂ヽ」


 滅茶苦茶良いアッパーが顎に決まってそのまま背後の壁にゴガァアンとめり込む。


 どうやらマシンナリー化はしっかり成功したらしい。


 そこにいるのは明らかに金髪碧眼エルフなミスティーきゅんボデーのミスティークであった。


「ゲフッッ(・ω・) お、おぅ……思わず箍が外れてしまった。悪い悪い(=゜ω゜)ノ」


 だが、ミスてィーきゅん成分を補給した事でかなり理性が戻った気がした。


「も、もぉ……そ、そんなに私の事が心配だったんですか? ガラークさん」


 ミスティーきゅんの声でミスティークの口調に頭が何かバグる。


 滅茶苦茶上目遣いでカワイイのだが、脳裏にはいつもの豚人の顔がチラつく。


「ファッ(|Д|)??」


「で、でも、そういうのはもっとお互いの事を知ってからですねぇ……///」


 やはり、ちょっと恥ずかしそうな顔のミスティーきゅんの顔に豚人の少女の顔がまたまたダブる。


「ヒェッ(゜Д゜)?!!」


「もぅ。仕方ありませんねぇ。そこまで言うなら、続きをして貰っても……きゃ♪」


「あ、いや、もう結構です( 一一)」


「何でですかぁあああああああああああッッッ!!?;つД`)」


 思わず素に戻った。


 残念ながらミスティーきゅんを極めている自分には幾らミスティーきゅんと寸分違わぬ姿や体でも相手が完全に本人かどうかは判別が付く。


「取り合えず、大丈夫そうで安心した( ^ω^ ) 今、寝てる間に傭兵家業をセントラルに出張してやってるんだが、案外儲かってるから、その内に破損した電化製品や諸々、車両は代わりが来ると思う」


「はい?」


「これからスミヤナと金庫番頑張ってくれ(´▽`) あ、後、手に入ったセントラルのぶっ壊れた装甲車両や武器や軍事物資は運び込んどいたから。ちょっと仕事前に見に行くか?」


「え、あ、ちょ、何で御姫様抱っこするんですか!?」


「病人や怪我人だからな。重いのは気にするな。マシンナリーの性だ(^◇^)」


「ちょ、女性に対する気遣いとか無―――」


 通路を奪取で駆け抜けて、猫の城の外に出て走り、壁まで跳躍する。


 現在はスチューデント・スーツがまた手に入ったのである者は電力系統を生かす為の者以外は全て重要な仕事に付く猫達に使わせていた。


「ファッッッッ(;゜Д゜)」


「あ、まだ利用出来そう移動司令部は取り合えず、直せるまで横壁にしといたから(・ω・)ノ」


 そこに広がっているのは星型の要塞の半分程を覆う巨大な壁。


 横倒しにして置いている防護壁代わりの移動司令部だ。


 本来、車両はそんな事をしたらフレームが曲がって使いものにならなくなるのだが、確認した限り、オーバーメタルに準じるヤバイ金属で造られているのが判明しているので、元の姿勢に戻して運用してもまったく問題無く動くだろう。


「な、な、な、何か戦争に勝ってるぅうううううううううう!!?(゜Д゜)」


「戦争? 間違ってるぞ? アレは戦争じゃない。アバンシア共同体にはちゃんと通告したからな」


「え?」


「貴国の“観光客”は他国の領有主張地域に死体とゴミを置いていく不届き者がかなり多いらしい。ゴミは清掃撤去しておいた。ゴミの撤去費用はアルマートが負担する事となった。次に同じことが起こった場合は貴国に撤去代金を請求させて貰う。ってな (。+・`ω・´)(キリッ)」


「知らない内にセントラルの大国に喧嘩売ってるぅううううううう(/Д\)!!!?」


「大丈夫だ!! 問題無い!!(。-∀-)」


「問題しかありませんよぅ!!?;つД`) というか、こんな時だけ何か頼もしそうに見えないで下さい!? 顔をキリッとかさせてもダメですからぁああ!!!?」


「ああ、それとちょっと周辺環境が悪化したけど―――」


「え!? まだ何かあるんですか!?」


「キニスルナ (。+・`ω・´)(キリッ)」


「だから、何でキリッとしてるんですかぁ!?;つД`) 後、音楽がちょっと不穏です!!」


 近頃、周囲にBGMがやたら流れるようになって、帰りはすぐに判明してしまう身の上である。


「え、それは……ええと、まぁ、うん……」


「な、何があったんですか!? わ、私に言えないような事なんですかぁ!?」


「ほんのちょっとした手違いなんだ……(・ω・`)」


「手違い?」


「ウンウン(*・ω・)。ちょっと、あの地下モールのゾンビを全部掃討し損ねて、纏まった金属資源で大増殖した大量のディノ化動物=サンとマリアージュしてしまった結果。ちょっとだけ、その……」


「ちょ、ちょっとだけ?」


 取り合えず、横倒しにした移動司令部の壁の上にスチューデント・スーツの性能で跳んだ。


 すると、その先から現れるのは―――。


「ヽ(^o^)丿」


「野良ゾンビとディノ化動物がどっちも変異覚醒特殊強化個体になって自己増殖しつつ、夜になると300体くらいパーティーしに来るけど、朝になれば大人しくウロウロするだけだし!!」


「なっ、なっっ」


「大丈夫!! 夜は大尉と中尉と猫達が交代制の夜勤で頑張って防衛してくれてるからな!!(´▽`)」


「ガッツリ強そうな正気削れる形態の銃や剣や触手や多腕が引っ付いたゾンビ=サンが滅茶苦茶その辺ウロウロしてるじゃないですかヤダァアアアアアΣ(゜Д゜)!!!!?」


 ―――aAaaaaAAaaAaAaaaAaaaaaAaaaaaa。


 ゾンビ系MOD複数+恐竜MOD+生産職系MOD複数+大規模オーバーホール兵器MOD複数の複合形態ゾンビである。


 結果はつまりこういう事だ。


 自己再生する金属細胞であらゆる致死ダメージから金属資源さえあれば再生する存在が、いつまで経っても伸びないバリカタの麺みたいにカッチカチな生産職系MODのヤバイ金属を取り込んで更に大規模な強化MOD兵器の融合で超進化。


 無茶苦茶な強化を受けた要素複合ゾンビ=サンを毎日毎日、夕暮れから明け方まで多い時には1000体近くを相手にしなければならない。


 竜騎士化した猫達はそんな明らかにオーバーワークな状況でも戦い続けている。


 だが、それは1人の邪神によって支えられていた。


(ロイヤーちゃんがいないと拠点がヤバイ。だが、ロイヤーちゃんがいるとこの星がヤバイ。ま、いっか、どうせ考えてもどうにもならんしな!!(=゜ω゜)ノ)


 疲労困憊で敗北しようにも『あらあら、うふふ。お好きなだけ使って下さいねぇ?』とか言いながら後方にドンッ、ドンッッ、ドンッッッ、と治癒剤の木箱を山の如く積む邪神である。


 特製治癒剤を浴びるように飲んで。


 いや、もはや飲んでも効くし、浴びても効くからとシャワー染みて大怪我部分にぶっ掛け、あらゆる細胞を再生賦活させられた猫達は無限戦闘編に毎晩突入。


 体力、精神力、気力を満タン状態で近接戦闘ほぼオンリーで戦い続け、街の守備隊はその後ろから狙撃訓練を延々と積んでいた。


 もはや、見るからに猫達はマニアクス・ニャァンの体躯ではない。


 屈強で美麗なゲームが違いそうな格闘漫画に出て来そうな超細マッチョ、もしくは単純に美しき美闘士!!みたいになっていくのを見ている手前、もう別種族だろう。


(元々の資質としての【過剰適応】で“邪神の治癒剤”に慣れるとか。最終的にナニになるんだろうなぁ……ホントヽ(^o^)丿)


 恐らく、半月もせずに猫達のレベルは20くらいまで上がるだろう。


 普通の一般人NPCは1レベル上がるのに人生の4分の1くらい使う。


 なのでこの進歩は破格である。


 ヘブンにはプレイヤーにもNPCにもレベル上限は無いが、成長自体は遅い。


 しかし、大量の経験値を得続ける時、その成長は右肩上がりであり、何れはプレイヤーを超えてしまうという存在もよくヘブン内にはいたのだ。


「あ、あ、あ、わ、私の辺境まったり生活がぁ~~;つД`)」


「辺境ってそんなまったりだったか?」


「うぅぅぅ……わ、分かりました!! もう破れかぶれです!!? 女は肝っ玉と度胸で馬鹿男くらいは救って見せろって死んだ母も言ってました!!」


「え? 馬鹿男……案外ミスティークのお父さんも苦労人だな……」


「ガラークさん!!!(。-`ω-)!?!」


「は、はい!!!」


「私をこんな体にしたんですから、責任取ってしっかり働いて下さいね?」


「お、おう(´・ω・`)」


「差し当たっては……」


「?」


「ミスティーきゅんて誰なんですかぁあああああああああ;つД`) さっきの反応からして絶対別人ですよねぇえええええ!!?(´;ω;`) 吐けぇええええええ!!!?」」


「ウボァアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!?m(((゜Д゜`))))」


 ガクガクとフルマシンナリーの膂力で超高速揺さぶりマッスィーンと化したミスティークに涙目で追及される事になるのだった。


 背景には爆弾カバさんの爆発が咲き乱れ。


 変異強化特殊個体ゾンビとディノ化動物達の闘争にも終わりはない。


 魔境となりつつある辺境には今日も騒がしい日常が流れ始めていたのである。


 *


―――数日前、とある宙域。


「くくくく、オイ見ろよ」


「あんなチンケな田舎の星にわざわざ艦隊を送るなんざ。とうとう提督殿も耄碌しちまったらしい」


「まだ、数光年あります。アレは随分と昔の姿ですよ。五分後には上空で本当の姿が見られるでしょうな」


「はッ!! 現地の末端が死んだ程度で何であんなもんを送り込む?」


「………」


「有機資源惑星は宝の山だ。なのに、星系丸ごと消却する為にわざわざ【量子次元航路(QGR)】の使用許可を渡した上、【ベースワールド】基準でもやべぇ高次元に丸ごとポイ捨てする“門”を持たせるんだぜ? 何かあるだろ。絶対」


「……【テールワールド】とはいえ。高次元生命体の反応は時折、様々な星で見つかります。それも希少な我らと同じ人型……宇宙の覇権を脅かすには十分な理由では?」


「んなもんの為に旨い飯の出所をぶっ潰すのかよ。マジでいよいよ帝国も末期だな」


「10万周期程度の青二才に言われては返す言葉もありませんよ。艦長」


「さて、略奪の許可は下りてる。艦隊から離れてたった3隻だが、腐っても現役の500km級だ。そこらの宇賊程度じゃ即死……ちょっと摘まみ食いといこうじゃねぇか」


「悪い癖ですな。“惑乱する機械”共が乱入して来なければ、それなりの“収穫”が見込めるでしょうな。新規組成の有機物はベースワールドでも高値が付きますからな」


「フン。言葉も通じねぇクソ有機物が同じクソ有機物採ってらぁとあっちは馬鹿にしてんだろ。マシン言語が読めねぇ下等種族めって襲って来るんだぜ?」


「彼らのマシン語は古過ぎて難解です」


「ま、あの星で“収穫”ついでに“保護”もすればいいだろ。3000万人くらいやれば、提督も“動物園”に納めるだけで評価もアップだぜ。さ、お仕事お仕―――」


「ッ、高速の99.99999―――いや!? 何だ!? この光波は!? た、対象惑星より何かが飛来中!! 艦長、最大防御の承認を」


「しょ、しょうに―――?!」


―――現在、惑星【―――】上空。


「う……く、クソ!? 超長距離星間狙撃か。ガハッ!? ウグ!!? 馬鹿な、オレの細胞が!? 出鱈目に、アガァアアアアアアアアア?!!!」


「じ、時間はす、数日も飛んでいる!? オグッ、く、クソ!? か、艦隊は!? な―――か、艦橋と倉庫以外が消滅!?! 我が思考力で尚予測し切れない?! 馬鹿な!? あの光は一体!!? 反帝国勢力の新兵器か!?」


「はぁはぁはぁ……インターフェースが反応しねぇ……残ってるのは……原始的過ぎるだろ!? 手動降下だと!? このオレが!? 手でヤレだと!?」


「艦長。言っている場合ではありません。大気圏突入まで後43秒。艦長席の後ろです。手動ハッチを開いて非常レバーを引いて下さい。太古の油圧式でも減速機能が動けば助かるかもしれない」


「クソクソクソクソクソッ、何だ!? 一体、何だってんだ!?」


「“門”は……まだ問題無い。後は艦橋の耐圧耐熱構造が摩耗していなければ……うぐ……」


「クソクソクソッ、クソォオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!?」


―――地表、辺境【断崖のアルマート】。


「あ、流れ星ヽ(^o^)丿」


「あ、流れ星じゃないですぅううううううう!!!? 誤魔化してもダメなんですからねぇえええええええ!!? 誰なんですかぁあああああ!!? ミスティーきゅんてぇええええええええ(´;ω;`)」


「(ミスティーきゅんとどうか再会出来ますように(>_<)!! ミスティーきゅんとどうか再会出来ますように(>_<)!!! ミスティーきゅんとどうか再会出来ますように(>_<)!!!!)」


『―――勢力撃滅ポイントが一定数に達しました。勢力撃破報酬が配布されます。以下の内容から1つをお選び下さい。1.粗大ゴミ。2.生ゴミ。3.不燃ゴミ-』


「(やっぱシステムがバグッてーら(^◇^) どう考えても何もしてないのに勢力撃破報酬が入って来るとか。うん。全部イラネ(゜∀゜)ノ ⌒ )」


『当選おめでとうございます。当該選択肢によるルーレット・スタート♪』


「え゛?」


 いきなり、ルーレットが始まったらしき音といつもの撃破報酬の声さんのいつもとは違う言葉が響き始める。


『何が出るかな♪ 何が出るかな♪ 1.粗大ゴミがランクアァアアップ!!。1.外惑星探査用護衛艦【ジグラット】(壊れ掛け)×1艦が当たりました。な、何と!! ダ、ダブルアップチャァアアアアアアアンス!! 何が出るかな♪ 何が出るかな♪』


「こ、これは!? ま、まさか!? まさか!!? うっそだろ?! ぉおぃ!!?」


「だから、誤魔化してもダメですってば!? 言うまで今日は放しませんからねぇえええええ(´;ω;`)!!?」


「ふ、ふぉおおおおおおおおΣ(゜Д゜)!!? 退避ぃいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!?」


「あ、ちょ、何腰を掴んでるんですかぁ!!?」


『2.生ゴミが何と、ラ、ラ、ランクアァアアアアップ♪ 2.聖機獣種族【メタライズ】♂1個体(死体)×1。思念算種族【ソーサリア】♂1個体(死体)が当たりました。更にな、な、何とぉおおおおお!!?』


 ドラムロールが更に愉し気な音楽に追加される。


「お前らぁあああああああああ!!! 総員退避ぃいいいいいいいい!!!?」


『にゃ?』


「巻き込まれるぞおおおおおおおおおお!!? 急げぇえええええええ!!!」


『にゃにゃ!?』


「スチューデント・スーツ着用者はコードシャットを全起動!!! 外壁に手を付いてフィールド形成!! 街を護れぇえええええええええええ\(゜ロ\)(/ロ゜)/」


『トリプルランクアップチャァアアアアアアアアアンス!!! 何が出るかな♪ 何が出るかな♪ 3.【バニシング・ゲート】×1門が当たりました。またの機会のご利用をお待ちしております♪』


 ルーレットMOD【フェイト・ディス・オーダー】。


 悪名高い最凶の娯楽MOD。


 ゲーム内のリソースとなる全ての情報を参照し、プレイヤーが極めて低確率な事象を引き当てた時に自動発動。


 その際、各MODのお楽しみランダム要素をランクアップする代物だ。


 その最も標的とされるのは勢力撃破報酬が出るMODであり、いきなりラスボスや強敵が当たって即死する者が大量に出た事でアップロードから3日で開発者が運営からアカBANされた。


 ついでにMODの回収騒ぎや削除騒ぎになったが、貴重なMODは当時網羅していた上で興味本位からアップロードされた当日に適応し、その後危ないと聞いて適応不可にしておいた曰くしかない代物だ。


「あ、こっちに直接墜ちて来てる……オワタヽ(^o^)丿」


「だぁかぁらぁ~~いい加減白状してくださいぃぃぃぃぃ!!!」


 こうして、空から炎の火球と化して、知ってる宇宙船MODの艦艇の一部区画が途中で分離しながらも片方しっかり落ちて来る空を見上げた夕暮れ時なのだった。


「なんかおちてきてるにゃぁあああああああああああ\(゜ロ\)(/ロ゜)/」


「何か落ちて来ますにゃあああああああああああああ\(゜ロ\)(/ロ゜)/」


 世の中は回る。


「あ、綺麗なお星さまなのだわ♪(^◇^)/」


「こ、この下着は破廉恥過ぎますぅぅ///(/ω\)」


 世界は回る。


「「「飯はまだかのう(;^ω^)」」」


「「「(がんばるんだよ。スミちゃん)(;|∀|)」」」


 天国は此処にある。


『自動防衛機能開放。出力2000%……パルス・ブラスター・オーバードライブ』


「にゃっごにゃっご♪」


 そこは小さな男が創った自分の天国。


「ミスティィイイイイイきゅぅうん(゜Д゜)ノ オレ頑張ったよぉおお!!!」


 そこに良く似た小さな星の小さな街。


【あらあら? うふふ……まだまだ愉しめそうですわね♪】


「だから、ミスティーきゅんて誰なんですかぁああああああああああ(´;ω;`)」


「爆発オチなんてさいてぇえええええええだぁああああああ(ノД`)・゜・。」


 その未来をまだオレも知らない。

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