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第22話「大軍勢とエロMOD先輩」

―――辺境【断崖のアルマート】まで120km地点アバンシア辺境遠征連隊A群。


『クソ。また嵐だ。一体、辺境の天気はどうなってんだ!?』


『オイ。さっき、天幕で聞いたんだが、司令官が部隊を無理に進軍させようとしてるらしい』


『はぁぁぁぁ!? 不可能だろ?! この嵐だぞ!?』


『それが司令官が雇ってる連中の進言らしい。最辺境近隣の天候が何かオカシイらしいんだが、今までのデータには無い動きでも行けると言われたとか』


『クソ……此処までに部隊がもう2割は削れてるんだぞ? 補給線も伸び切ってる。そこまでして遠征する意味なんてあるのか?』


『シッ、聞こえるぞ。シアーニア司令は噂じゃ、空飛ぶトカゲにやられた後、部隊が全滅した時に気が触れちまってるらしい。それで魔法に手を出したって専らの噂だ。反逆のガラークとやらに燃やされたせいだとか』


『辺境の蛮族勢力。ゼノ・アニマル共に負けた言い訳じゃねぇのか?』


『それは考え難い。竜に飛行戦力が襲われたとはいえ、それでも飛行戦力そのものを丸損するような敵じゃなかった。だが、大爆発したって話だ。あの空の要塞がだぞ?』


『……本当にいるのか? 反逆のガラークなんて……司令が蛮族共に負けた言い訳を誰もが信じてるだけなんじゃねぇか?』


『お前ら!! 先行偵察部隊が戻って来たぞ!!』


『何? それは本当か? で、どうだったんだ!? 敵の陣容は!? 数は!?』


『そ、それが他の部隊との連絡が取れないんだが、ヤバイ事になってるらしい』


『ヤバイって何だよ?』


『そ、それがだな……』


―――辺境【断崖のアルマート】まで53km地点アバンシア辺境遠征連隊B群。


『大佐殿。A群との連絡未だ取れません』


『右翼C群との連絡も取れていないか?』


『はい。この嵐で進軍の足並みが揃っていない可能性があります』


『(この天候は言い訳に使えるな……)』


『何か?』


『いや、何でも無い。それよりも先行偵察の結果は?』


『そ、それが……』


『どうした? 報告しろ』


『はい。俄かには信じられないような情報が幾つもあり……』


『何だ? 辺境の蛮族が粗末な罠でも仕掛けていたか?』


『い、いえ、進軍途中に車両燃料の不足でC群以外の機甲部隊が遅れているのはご存知かと思われますが、相手側が少数ではありますが、複数の装甲車両で緊密に辺境中に連携を取っている様子である事が報告されました』


『何? そこまで辺境では車両が多くなかったと記憶しているが?』


『そ、それが、大規模とは言えないのですが、複数の目撃情報があり、辺境の端から端まであちこちにコンテナを輸送、何やら詰めていたそうです』


『コンテナ? 中身は?』


『確認出来ていません。ですが、非常時に使う食料や医薬品ではないかと』


『……敵も既に我らの動きを掴んでいるわけか。いや、それ自体は構わん。だが、辺境商人達に“鼻薬”を利かせていたのでは無かったのか? 情報部からの報告ではかなりの数を取り込んだと聞いているが?』


『そ、それが辺境を仕切っている商会だけはまったく掌握されていないと』


『今更か!? では、我々の進軍情報は……』


『恐らく筒抜けではないかと』


『それで? 他に情報は? 今のは信じられないという程ではないように思えるが……』


『そ、それが先行偵察中の部隊の一部が中央A群の街道沿い進路上に巨大な壁が幾重にも折り重なった進路妨害用と思われる巨石群を発見したと』


『何? 巨石群?』


『は、はい。近付いて偵察した者達によると……ど、どうやら、壁には大量の文字が彫り込まれているようで……辺境特有の魔法言語ではないかと。魔法による物理的な土塁の代わりかもしれません……』


『ッ、まさか!? 要塞線か?!』


『はい。構造自体は単調で粗末なのですが、とにかく広い平原を横に横断するように何重にも立てられ、石材を輸送したような跡も無いそうです。恐らく、現地で魔法によって造成されたものではないかと』


『そんな規模の魔法使いがいるのか? どの系統だ? 極めた連中は正しく一個大隊規模の戦力にもなるが……要塞線を築くだと? 俄かには信じられん』


『はい。同意見です。それで中心には物資を集積した痕跡が遺されているそうです』


『マズイ……それは罠だ。シアーニア司令なら分かっていて、軍を突破させるかもしれん。怪しい魔法使い共の助言を聞いているとの話もある』


『まさか!? 相手の地雷や塹壕、魔法による防御障壁、罠があるかもしれないのにですか!?』


『それを突破出来る戦力だ……思っていたよりも敵の防備が硬い。我が方の進路上は?』


『は、はい。それがまったく荒野の進路上には何もなく。現地のゼノ・アニマル達が逃げ出した村落跡が幾つか残されており、先に情報が洩れていたのかもしれません。動物すら少ないようです』


『徹底抗戦の構えか。先に住民を逃がしたな……』


『相手は戦略的な思考が出来るとお考えですか?』


『通信の途絶と包囲の為に部隊を分けたせいで部隊間の連携が取れない状態では各個撃破、部隊の損耗率が急上昇する可能性がある』


『で、では?』


『一度進軍を停止せよ。部隊間の連携回復が急務だ。本国司令部には通信回復が成されない限り、敵防衛線の突破は困難と送信。再度の命令が下るまで現地指揮官の名で戦力温存を行う為、進軍を停止する旨を』


『わ、分かりました。直ちに!!』


『(これで時間は稼いだ。だが、C集団は本国が集めたならず者の集まり……連携など無視して、略奪の為に進軍を続けるはず……)』


『C群との連絡を急がせろ。恐らく中央A群が一番遅れているはずだ。連携が取れれば、それに越した事は無い』


『了解であります!!』


『(ここで連中が痛い目を見たと報告出来れば、本国も少しは慎重になるだろうが、あいつらを辺境が退けられるか? 後はシアーニア司令の出方次第だが……連絡の付かない日数が増えるのを祈るしかないか。ベルチャー少尉……もう時間は無いぞ)』


―――辺境【断崖のアルマート】まで21km地点アバンシア辺境遠征連隊C群。


『お頭ぁ!! 未だ天候が回復しやせん!! 偵察も出せてませんがどうしやすか?』


『構わん!! 高々、辺境の蛮族如きに装甲戦力が負けると思うか?! 進軍だ!! 全部隊前進!!』


『他の群との連絡が付いてませんが?』


『この移動司令部とて巨大なトレーラーと榴弾砲で固めた最新だ。負ける理由が無い。絶好の機会だ!! 先に好きなだけ戦利品が漁れる!! 号令を掛けろ!! このまま一気に仕掛けて―――』


『お頭ぁああああああああ!!? た、大変だぁああああああ!!?』


『中佐と呼べと言っているだろう!! 何だ!? どうした!? 蛮族共が攻めて来たのか?』


『違う!? 違うんだ!? 先行してた部隊から映像が!?』


『映像?』


『もう通信が切れちまった。だが、ヤバイ!? ヤバいぞ此処は!? オレは死にたくねぇ!? 死にたくねぇ!!?』


『オイ。コイツを黙らせろ。端末を』


『へい。おら、とっとと出てけ!! 死にたくねぇだろ? テメェは今から便所部隊だ。雑用にしてやる。クソの片付けでもしてろ。オラ!!』


『ひ、ひぃいぃぃぃ!? あ、ありがてぇ!? オレは前線には絶対行かないからなぁ!?』


『殺されてぇのか!?』


『ひっ、お、お頭!? アンタも考え直した方がいいぜ!? それを見たら、アンタだってきっと!?』


『撃ち殺せ』


『へい』


『や、止め―――』


『ふぅ……で? 蛮族如きが何をしでかしたんだ……端末の映像をディスプレイに』


『【こ、こちら機甲中隊第032……お、お頭、此処の連中は頭がオカシイ!! み、見てくれ……ライト、ライトだ!! そこらを照らせぇ!?】』


『何を怯えてやがるんだこいつら?』


『……死体?』


『な、何だ……こ、この数は!? 平原一体が肉に埋もれてやがる!?』


『【ひ、声がする!? 声が!? 音が!? 何かいる!? 何かいるぞ!? 履帯が潰してるのは本当に死体だけなのか!? オレは、オレは!?】』


『みっともねぇな。高々死体だろ? 何をこいつらは怯えてやがるんだ?』


『【目だ。目が見てる? し、死体? いや、死体じゃねぇ……ど、動物か? ど、動物……いや、辺境の動物はヤバイのしかいねってばあちゃんが、で、でも、進軍、進軍しねぇと】』


『ブツブツ呟いてやがる。イカレちまったか?』


『【ああ、音が聞こえる。音が……履帯からガリガリって、ガリガリガリガリ……っっ、う、撃て!? 撃てぇえ!! どうせ通る道だ。吹っ飛ばせぇえ!!?】』


『馬鹿が……自分で帰る道を吹っ飛ばしやがった。これだから、学のねぇ兵隊は……』


『【はぁはぁはぁ、砲手!! 砲手!! 前方の死体は排除したか!? 排除したか!? 排除したかって聞いてんだ!? 答えろよ!?】』


『【ぁ、ぅ……ぁ】』


『?』


『【ちゅ(≧◇≦)】』


『【う、うわぁああああああ!? 何だ!? 何だ!? 何だ!?】』


『ネズミ?』


『辺境のネズミは調査じゃ“ネズミじゃねぇ”らしいが、マニアクス・ニャァンには問題ねぇ。触れたら少し体調が崩れる程度だ。病原菌の塊だが、消毒すりゃぁ問題無い』


『【こ、この?! クソ、ネズミ如きが!? オレ達を脅かしやがって!? 潰してやる。クソクソクソクソ!!? はは、潰したぞ!! 潰したぞ!!】』


『はは、潰してら。ま、ネズミに驚いただけってこった。確かにくっせぇ死体の中を進軍すんのは気が滅入るだろうが、そんなもんだろ? まったく、脅かしやが―――』


『いや、待て。映像を止めるな』


『へ?』


『【ちゅ(≧◇≦)】【ちゅ(´Д`)】【ちゅ(^◇^)】【ちゅ(*´▽`*)】』


『【こ、こいつら何処から入って!? な、何だ!? この揺れ!? オイ!? おまえら、どうした!? 何で道を外れてるんだぁ!?】』


『【【ちゅ( ̄▽ ̄)】【ちゅ(;^ω^)】せんしゃちゅ……にげ、ちゅ……こひふら、おへはひのからはからはえてきやが、アバアアアアアアアアアアアッッ【ちゅ( ^ω^ )】ちゅ(>_<)】ちゅ(^◇^)】ちゅ(=゜ω゜)ノ】』


『なッ―――ネズミ共が体から生え、いや、溢れ出してやがる!? ど、どうなって!!?』


『……へ、へへ……こいつぁ、やべぇ……そういう、事かよ……』


『お頭!? 何なんです!? あのネズミ共は!? 画面がもうネズミの黒いので埋まっちまってる!? 声がちゅっとしか聞こえなく……』


『あのネズミ……黒い鼠はなぁ。菌類だって話がある。菌類が鳴いてるんだ。分るか? 潰しちまったんだよ。それを!! 胞子をばら蒔いた……燃やさなきゃならねぇところをな』


『そ、そんな!? じゃ、じゃあ、あのネズミがいたら……』


『一匹で具合が悪くなるもんが体から無数に生えてみろ……どうなるかお前にも分かるだろ』


『ッ~~!!?』


『この陣を敷いた反逆のガラークってヤツは策士だ。あの死体は見せ掛けや脅し、兵の指揮統制を下げるだけのもんじゃねぇ。恐らく、群がって来るネズミ共の誘因、増殖用だ』


『じゃ、じゃあ、この平原を迂回して―――』


『死体だけじゃねぇ。周辺一帯が菌類の宝庫なんだ。湿度が高い密閉空間内に菌が増殖し易い環境……嵐のせいで湿度が下げられねぇ』


『そ、そんな!?』


『しかも、燃やそうにも燃料が足りねぇ……寄生先の細胞を喰らって増殖する……此処までの増殖速度、侵食率、環境を整えなきゃあり得ねぇはず……』


『【あば、あばぁ、もや、もやせ、もやせぇえええええええええ!!? フ、フルファイア!!?】』


『ひっ!? こ、こいつ!? 自分の体を魔法で!!?』


『ッ―――馬鹿な!? 燃えないだと!? どうなってやがる!? あの下から出て来た金属みてぇな光沢は何だ?! まさか、まさか!? 改造しやがったのか!? 賢者の窯で!!? は、はは、更に腐敗効果のおまけつきかぁ!?』


『【ちゅちゅちゅ~~\(^o^)/】』


『ひっ、あいつら、燃えてねぇ!? それに寄生されたヤツの顔がゾンビみてぇに溶けちまってる!? お頭ぁ!? 今からでも引き返し―――』


『【こちら第402機甲小隊!! 敵の攻撃を受けている!! そ、側面が爆破されたぁ!?】』


『【こちら第322機甲小隊!! カバだ!! カバだぁ!! 突撃して来る!? な、何で―――】』


『【明かりを消せぇええ!! オスが他のオスを制圧しに飛び込んで来るぞぉ!! 撃つなぁあああああああああああああああああああああああ―――】』


『お頭ぁ!? 前方が!? 爆炎に呑まれてます!!』


『クソ……手遅れ、か……反逆のガラーク。テメェ……悪魔だぜ?』


『お頭、早く逃げ―――』


『もう……おせぇよ……【ちゅ(=゜ω゜)ノ】』


『~~~~~~ッッッ!!?』


【こちらC群!! 敵の攻撃を受けている!! 敵の攻撃を受けている!! 直ちに援軍を!! 援軍を!! こちらC群!! あ、アレはまさか!? 移動司令部が!? 機能停止!!? そんな!? 馬鹿な!? マニアクス・ニャァンの機甲大隊が!? セントラル最高の機甲師団が、負け―――】


―――辺境【断崖のアルマート】5:22。


「う~~ん。やっぱ対策は天候を晴れ固定しておくに限るな。早く気付けばよかった……う、ネズミーがほぼ逃げ出し、繁殖しない部屋、街、最高!!」


 目覚めるとまだ早朝。


 朝日が少し昇った程度。


 しかし、カラリと晴れた周辺のおかげでネズミーは現在かなり減っているとの事。


 元々、周辺に河がある為、定期的に溜まり場なっていた街であるが、天候操作MODによる周辺天候を常に晴れ固定してからは数が格段に減っていた。


 食料加工の時に使った熱気と天候操作時にネズミーを一匹も見ていなかった事で思い付いた作戦だが、ここ数日で街はようやく安全に出歩けるようになっていた。


 コレにはネズミー・トラップを売りさばいていた工房もガッカリである。


 ディノハザード中なので他の湿気が増殖に関係無い動物達はそのままだが、基本即死トラップな動物でさえなければ、あまり問題にはなっていない。


 気を付けて街に侵入しないよう壁で囲っておけば、殆どの動物は無害である。


(安全性が増したアルマートに人が増えるのは辺境全体としては一長一短だが、有難くはあるんだよなぁ)


 各地から集団で安全な壁のあるアルマートに転居してくる人々は先日のリクルート活動以後、後を絶たなかった。


 幾つかの資源が出る場所以外は最初期のコンテナを送った後に拠点を捨てて此処に集まって来る者が大勢を占めていて、各地の放棄された拠点のコンテナは商会が辺境で活動する際に使う山小屋ならぬ物資備蓄場所として登録。


 商売網の強化に一役買っている。


 それはそれで辺境のあちこちが廃墟化するが、数が減った事で辺境集落は護り易くなった。


 残った少ない資源産出が見込めるような拠点はディノハザードが広まっても大丈夫なよう猫達を派遣して大量の資材で壁や集落の増築、補強を行う事となっていた。


「あふ。おはよう」


「にゃ~」


「おま●んこぉ~~♪」


「にゃご~~♪」


「ん? 今、何か陽気過ぎる変な声が……いや、気のせいか。さてと」


 早起きしたので猫達に現れる前い体を井戸で洗ってすぐに着替え、朝食前に街区の方を見て来る事にする。


 人が増えれば、治安が悪くなるのは世の理だ。


 元々、廃墟が多かったアルマートは現在、猫達と複数の業者の共同作業で次々に廃墟の改装と壁の拡張による街区の増設が急ピッチで進められ、肥大化した街並みは新しい新街区と言うべき場所を壁の端に生み出していた。


 新しい地区はピカピカの新品である。


 大量の建築資材が必要だったのだが、殆どの石材を猫達が強化された能力で一日中切り出したおかげで石切り場はほぼ奈落染みて大穴に為って来ており、露天掘りも相まって巨大クレーター化した箇所が幾つもある。


 結果、雨水対策の為に天候操作で指定日数分は晴れ上がるようにしていた。


 まぁ、日数指定がメンドイので100年とかにしておいた為、自分が生きている間は問題なく周辺の岩盤を採掘し続けられるだろう。


「~~~♪」


 気持ちの良い朝である。


 天候操作MODは弊害があると一部では言われていたが、未だ実感した事は無い為、しばらくは使い続けても問題ないだろう。


「あら、ガラークちゃん。朝早いねぇ。パン焼いたんだけど、ちょっと一つどう。ほら」


「お、おう。ありがとう。おばさん」


 パン屋のおばさんが投げたパンを思わずキャッチ。


 そのまま手を振って、そのままパンをムシャりながら街を歩く。


 此処最近、ディノハザードのせいで多くの野生動物のみならず。


 他の家畜や家禽、移動用や流通業者の使う乗りもの系の動物もメタルな外見に変貌していたが、そのおかげで道中も安全に行き来出来るらしい。


 家畜と家禽が食えなくなったのは痛いが、そこは輸入に頼る事となり、ミルクと毛皮、卵などの殺さなくても使える資源だけ使う事となった。


 更にそういう動物はまだ汚染されていない動物達から避けられ始めたらしく。


 そのおかげで移動用や流通用の動物は同じディノ化動物以外襲われなくなっているのだとか。


「大丈夫そうだな」


 街の外。


 四方の監視塔の方へと向かう。


 現在は猫もしくは守備隊の人員が常に夜は詰めているのだが、体を晒さずにモニターのある地表の一室で確認するだけなのである意味楽になったようで暇な当直として人気らしい。


 街に電気系の機材が流通するのは基本的には博士達のおかげだ。


(複数の弟子というか徒弟というか生徒というか。大量に若い連中に講義し始めたからな。三人とも……)


 興味のある人員をとにかく集めて研究開発の片手前に教え始めたらしく。


 かなり、その手の知識が豊富な人員が増えていた。


 そのおかげであちこちで電化ブームが起こっているという。


 電力需要を満たすのは今のところはスチューデント・スーツだ。


 元々が莫大な電力を溜め込んでおり、更にある程度の電力は無限湧き設定なので電池、電源扱いされているのである。


(まぁ、その収益も猫の城には入って来てて、文明レベルが上がった故の嬉しい誤算だな)


 今は格安にしており、その内に発電機を設置することになるだろう。


 エネルギー問題の解決の糸口は正しくスチューデント・スーツの背部ユニットの増産という形で始まる予定であり、スーツのエンジニアリング用の資材をセントラルの闇市場から調達してくれたミスティークが言うにはその内に施設毎届くらしい。


 塔の真上に昇って、街の四方を見渡すと遠方は薄暗い領域が展開されていた。


「嵐……そういや、天候を操作すると他が“配置換え”の影響で荒れるんだっけ……一応、気を付けないとな。集落近辺や街道沿いは天候指定しとかないと……」


 拠点が悪天候のせいで襲撃にあった際に落ちたりするのはよくある事だ(332敗)。


 雨も降らな過ぎると困るので調整は難しい。


 塔から降りて、監視中の守備隊のおっさんに頭を下げつつ、拠点に戻って来ると何かちょっと目の下にクマが出来てるスミヤナがいた。


 こちらを見付け、ビッと親指を立ててくる。


「ガ、ガラークさん。で、出来ましたよ!! 魔法が!!」


「あ、ああ、遂にか?」


「はい!! が、頑張りました。私……」


「本当にご苦労さん。ちょっと寝てろ。目の下が黒くなってる。後でちゃんと説明は聞くからまずは体調管理だ」


「あ、はい。あ……」


 思わず倒れそうになったスミヤナを支えて抱き上げる。


「ホント……感謝しかないな。ゆっくり寝てくれ」


 スミヤナをそのまま地下の仮眠室へと持って行って、寝台に寝かせて布団を掛けておく。


 その横ではニヤニヤしているおばさんが3人。


「それで目的の魔法、出来たのか?」


「ま、色々言うのは野暮だね。論より証拠だ。街の外で使ってみるといい」


「今回、希少資源を用いての【召喚術】の開発。中々に難航してねぇ。アンタが教えてくれた【獣】の名前を呼び出す方式は魔力よりも触媒が重視されるって話、色々呼び出してみたが、ちゃんとした式を作ったりしないとかなり難しかったよ」


「ま、天才肌のスミちゃんが呼び出した【獣】を制御する方式を自分で考えてちゃんと式に組み込んでくれて、あたし達は既存の呼び出す魔法の出力を上げただけだけど」


「それにしても【ガラクシオの標章】だっけ? この種、やたら触媒として優秀だねぇ。【召喚術】以外の魔法にも結構使えそうだよ」


「後で増やすから、増やしたら好きなだけ使えばいいさ」


「はい。これ。【召喚術】入りの巻物スクロールだよ。使う時は魔力を込めて、名前を呼ぶ前に命令を式に声で読み込ませるんだ。そうしないと召喚された獣は単純な周辺領域の警備みたいな素で記してある警備、防御行動をするからね」


 手渡されたのは羊皮紙ならぬカバ皮紙で記述された魔法の巻物であった。


 爆発したカバは今まで使い道が無かったのだが、ディノ化したカバが爆発すると綺麗にディノ化部位だけが残るようになり、皮と骨は活用出来るようになっていた。


 他にもヤバイ・クモ=サンも何かディノ化した後に破裂した際飛び出す溶解糸が金属糸になって、生体金属の糸化加工された資源として現在、活用が始まっていた。


 これがディノ化生物資源の活用術。


 つまり、RTA走者御用達のチート術か~と思いながら見ていたのだが、やはり早期に強い資源が手に入るのはかなり生存率に直結すると言わざるを得ない。


「ちょっと試して来る。スミヤナには2日くらい休みをやろうと思うんだが、大丈夫か?」


「ふふ、その間に何か贈り物でもすればいいわよ」


「女の子はそういうの好きだからねぇ」


「うんうん。子宝でもいいのよ?」


「は、はは、魔法使い絶滅しないなら、その話はいいだろもう……はぁぁ(*´Д`)」


 イソイソと開発現場を後にする。


 地下で薬品や触媒の精錬、魔法に使う式の改良、魔力を用いた事象再現実験などなどを行う工房は近頃は3人で詰めても広過ぎるくらいに広くなっていたが、そこには魔法の叡智が詰まっている……正しく魔女の研究室と言った風情の実験器具部屋が隣接するようになっていた。


 自分が一から魔法関連の研究をするより早く成果が出たのはやはり勢力単位のバフ在りきとスミヤナのような極めて優秀な魔法使いおおかげだろう。


「お前の成果。見せて貰おう」


 街の外に出ると相変わらず、爆弾カバだの草食系クモだのがネズミーのいないのを良い事に我が世の春を謳歌していたが、明らかに数が増えている。


 車両が通る街道沿いに近付いては来ないのだが、それは毎日街道や地下モールに向かう猫達の車両からの気配を避けているからだ。


「さてと。正式詠唱は……ええと、昔はやたら短縮してたからなぁ……一度使えば、プレイヤー的にはスクロールみたいな媒体不用で同じ精度のものを覚えた扱いで繰り返し使えるが……う~~んと~~あ~~」


 頭をガリガリ掻くが出て来ない。


「くッ、記憶力は悪くないと思うんだが、殆ど使ってなかったせいで分からん。ナレーションさぁん。それっぽいの創れるかぁ!! 召喚対象はテイアだ」


 召喚魔法MOD【OLD/72】。


 古い時代の書物であるゴエティアに記された72柱のヤバイ怪物を召喚……する事は無いのだが、それに肖った名前のオーバーホールMODだ。


【召喚術】は元々ヘブンには無かった魔法であり、コレがほぼ一択の元祖、頂点のMODとして君臨し、これの出現以降、“僕の考えた最強の怪物”や“僕の考えた生物”をこのMODの召喚リストに追加する二次MODが爆発的に増加した。


 結果として本当に多種多様な召喚出来るモノが増えた。


 怪物のみならず。


 ゲーム中のあらゆる存在をほぼ完全に召喚出来る事から使い方が悪用されまくって、例えばゲーム終盤で倒すはずの本人は弱いが陰謀で相手を圧倒するタイプの敵を召喚してぶっ殺し、世界を平和にしたり、最序盤で護衛として終盤に出て来るような存在を召喚して使役したりとやりたい放題になった。


 結果として開発者により、召喚出来る存在のリストにはレベル制限が設けられ、一定レベルに到達しないと召喚出来ない存在が大量に増加し、【無法召喚】と呼ばれたVer001の頃と比べても適正な運用が始まり、以降はゲーム内の愉しい要素として多くのプレイヤーに愛された。


 “その時、不思議な事が起こった!!!”


「う、雑に物事をナレーションする時のテンプレ文じゃないですかヤダー(´Д`) 何でも不思議な事で解決しようとすんなって動画でツッコミしか入らなかったナレーション仕様のままだったのか」


【ANIME-ZEN】のナレーション機能の一部はゲーム内で一応呼び掛ける事でAIを活用する事が可能だ。


 最もそういう使い方をする時は大抵が知識不足でカッコイイ名前を付けられなかったり、カッコイイ口上が思い付かない時だ。


 要はナレーションに丸投げする時なので丸投げされたAIが【ナレーション】から【ナレーション?】みたいなキャラ的な扱いにゲームの内部処理ではなるらしく。


 このような事実からよく動画などでは実質倒せないラスボス。


【ナレーション=サン】として親しまれた。


 “おお、星踏みの怪物!! 我が声に続けて唱えよ!!”


「はいはい」


 “我、悠久の使者なり。我、虚空の訪れなり”


「われ、ゆーきゅーのししゃなり。われ、こくうのおとずれなり」


 もはや、此処からダラダラと長い詠唱が確定した気がしたので適当に続ける。


 実際、ナレーションに魔法の詠唱造らせたら、一番長い詠唱で12時間を記録し、もはや世界記録認定してもいいよねという動画があったくらいだ。


 “我が星踏みの名において命ずる”


「わが、ほしふみのなにおいてめいずる」


 “我が意は此処に。我が覇は此処に”


「わがいはここに。わがははここに」


 “開闢の使者。今来たりて、世を拓く者の下僕とならん”


「かいびゃくのししゃ。いまきたりて、よをひらくもののげぼくとならん。何かもう疲れて来たな」


 “汝、大地に根差したる太祖の子”


「なんじ、だいちにねざしたるたいそのこ」


 “ウルトラ・ユーマ【惑星胚子(テイア)】”


「うるとら・ゆーま。ていあ。まだ続くのか。なげー」


 “我が地に来たりて、疾く守護の任に就くものなり”


「わがちにきたりて、とくしゅごのにんにつくものなり。よしコンプリート!! お疲れ~」


 ボフンッと街道沿いの虚空に……何も現れなかった。


「うん?」


 よ~く周辺を見るが爆弾カバがオス同士で激突して起爆して激音が響いたり、それに巻き込まれたクモさんが死体を晒して周辺の地面にヤバイ金属糸を大量にぶちまけているいつもの光景しか見えていない。


「………失敗か? あ~でも、ウルトラ・ユーマは【惑星胚子(テイア)】だけ、種子や元々のガラクシオの資質や登場時のステータス、倒された際の状態に左右されるから、何か滅茶苦茶な変異で見えなくなってるとか。なのかもしれないし……う~~ん」


 周囲をじ~~っと目を細めて眺めるが、健康状態の良さそうなディノ化動物達しか見当たらなかったので首を傾げるしかない。


「ま、まぁ……別にいいか。初めての召喚だし……つーか、最下級UUは個体数は幾らでも増やせるしな。またスクロール作って貰お」


 魔法関連の媒体の多くは品質によって召喚精度やら何やらが向上する。


 品質EXしか出て来ないとはいえ。


 それでもラング毎に媒体の加点対象となる上限値はあったはずなので、更に高ランクの召喚媒体を作って貰えば、安定して大量の召喚術を使う事が出来るようになるはずであった。


「今度はほぼ定型のウルトラ・ユーマにするか。それとも安定を取って不死性の一次付与が可能な低レベルリスト常連ド安定媒質格安の【フェニックス】=サンを呼ぶか。悩むな」


 こうして結局姿を表さなかった召喚した獣の事は放っておいて、スミヤナを労う為の贈り物かパーティーでも開こうとイソイソ猫の城に戻る事としたのだった。


 *


――――――辺境【断崖のアルマート】まで1km地点。


『少尉。どうするの……もう動物はいないのよ?』


『後ろに下がって。この数の動物程度ならば、問題なく対処可能です』


『その重火器―――スーツ専用の?!』


『【メルトT2】……プラズマ・ショットガンです。散弾ですが、便りになりますよ。今まで近辺を掃除していた時しか使っていませんでしたから、見せる機会はありませんでしたね』


『気を付けて。こう見えても大学では生物学を専攻していたの。あの【ヒッボマー】も【セーフ・スパイダー】も何かおかしいわ。肌の色合いが金属質だなんて見た事無い』


『関係ありません。下がって!! 行きます!! ファイア!!』


『―――ス、スゴイ……あの動物達を一瞬で』


『近距離じゃなければ、爆発しても大した事はありませんよ。それよりもようやくです』


『おや? あんちゃん。猫の人達かい?』


『え?』


『へ?』


『あ~~ご苦労さんご苦労さん。うんうん。城まで載せてってやるよ。いや~~アンタ達のおかげで道も安全になってなぁ。さっきも駆除してくれてたんだろう? 荷馬車載ってけ。今は牧草しか積んでねぇから』


『(お、お知り合いですか?)』


『(違うわよ!? ゼノ・アニマルに知り合いなんてちょっとしかいないし、こんな辺鄙な場所に住んでないわよ!!)』


『ははは、今はまた城がデカくなったからなぁ。アンタらも何かと物入りだろう。ほら、これ。アンタらが集めるって言ってた糸』


『『(糸?)』』


『溶けるのは最初だけで固まったら回収して欲しいって言ってたあの蜘蛛達の糸。何かソレで造るんだろ?』


『(こ、此処は話を合わせましょう。反逆のガラークが捕虜にしたマニアクス・ニャァンを精神制御で使役しているとの話は聞いています。恐らくは間違われているのでしょう)』


『(コクリ(。-∀-))』


『それにしても猫の城のおかげで街も随分と大きくなった。ホント一瞬だったな。最初はそりゃ胡散臭いヤツだと思ってたけど、ミスティークちゃんが言う通り……アンタらの主人はこの地に大きな変化を齎す御人だったな』


『………』


『………』


『この辺境の果ての街でまさか長生き出来る連中が増えるとは思ってなかった。ウチのじーさんもアンタんとこのあの別嬪のお医者様の魔法使いが創った治癒剤で持ち直してな。他にも赤子や病気の子もだ』


『(滅茶苦茶勘違いされてますね。外交官殿)』


『(情報収集よ。取り合えず頷いておきましょう)』


『アンタらの主人が来てから食料も医薬品も大幅に増えた。人もだ。オレの知り合いには辺境の村落に暮らす親戚が結構いたが、生きてるか死んでるかも分からんかったのがひょっこり顔見せて此処に住む事にしたとか言い出して驚いたよ』


『(どうやら、反逆のガラークは内政の手腕は優れた人物のようですね)』


『(この短期間で食料と医療を改善したって言うのが本当ならね)』


『アンタらの主人が今にも無くなっちまいそうな集落に食料と治癒剤を配ってくれたおかげでどれだけの連中が救われた事か』


『『(………(T_T))』』


『この街を狙ってた馬鹿共に蹂躙されていれば、アルマートも略奪者連中のもんだっただろう。だが、そうはならなかった。その略奪者を大量に出した村落にすらアンタらの主は支援してくれた』


『『(………)』』


『古代人の連中も奴隷にされてた連中もみんなアンタらの主のおかげで何とか今も生きてる。人間は怖いもんだとずっと親から言われて育って、オレもそう思ってた。でも、人間にもゼノ・アニマルにも悪いヤツはいる。今はそう思うよ』


『『………』』


『セントラルのマニアクス・ニャァンだったアンタらがあの人に付き従ってるのも色々事情はあるんだろうさ』


『(精神制御はかなり強力なようですね)』


『(もしかしたら、人格を変えられているのかもしれないわね)』


『(そんな事が可能なのですか?)』


『(ええ、一部の魔法や進んだ科学なら、ね?)』


『だが、あの人じゃなかったら、きっとアンタらもこんな風に街で身を立てて、誰かと一緒に笑い合ってたりはしなかったんじゃねぇかな』


『『………』』


『悪りぃな。そんな事言われるまでもねぇか。ここでええのか? まだ壁の外だが、まいいか。まだ仕事もあるんだろうしな。荷物は後で一括して工房に卸しとくから。じゃあな』


『『((__))』』


『行儀正しいなぁ。相変わらず。ははは……』


『(要塞……ね)』


『(ええ、情報ではアルマートはボロボロの外壁があるだけの場所のはず。ですが、これは……3m近いコンクリート製の壁に複数の突出部が星型になっている)』


『(星型の要塞……出っ張ってる内部は破壊されても良いように食料生産用の田畑。しかも、破壊されても内部に直接入れないよう壁が二重になってるわ)』


『(……この資源量、石材しか取れないはずの場所を此処まで要塞化したのか)』


『(石材をコンクリートで固めてるわね。殺し間を作る為ね? 銃眼が複数あるみたい)』


『(コレでは砲爆撃で攻めるしかない……その後に破壊箇所から危険な突入となれば、スーツを着た部隊で制圧する以外は……被害が大き過ぎる……)』


『(どうやら筋肉野郎ではないみたいね。反逆のガラークとやらは……)』


『(外交官殿。どうか、侮りませんよう……)』


『(ええ、行くわよ。少尉)』


『(はい。必ず、お守り致します)』

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