第21話「内政のターンとエロMOD先輩」
―――辺境街道沿い【死者の苦行場】亭。
『外交官殿。そろそろ出発です』
『ぅ……仮眠で4時間くらいかしら……ベルチャー少尉』
『申し訳ありません。ですが、車両燃料の殆どが此処最近蛮族勢力に買い占められて枯渇しており、買おうにも品が無いようなので……』
『六脚駄載獣【アムオート】……300kgまでの荷物を20時間運んでも疲れない灰色の暴走機関車……サイ系最速の猛獣……嘘偽りありまくりじゃない。3日で街道沿いを南下して90km行かないとか』
『買ったのが老齢だったのが原因です。食事の時間もあります。外交団の方々には申し訳ないが、今は一刻を争う事態ですので……こうして車両を捨てて動物で移動しているわけで』
『空飛ぶのは用意出来ないの? 確かここら辺は竜を使う部族がいたはずでしょう』
『それが今先程当たって来ましたが、ダメだそうです』
『理由は? 何かしらの交渉事で済ませられるなら手伝うわよ?』
『それが……竜の殆どが南下したがらないそうで』
『天変地異でも起きたの?』
『何でも数日前に中規模の地震が起きたのだとか。その前後から動植物に異常が起きているらしく。その対応で竜も飛ばしていないそうです』
『最初の予定だった水路は?』
『辺境の水路は巨大な水生猛獣や巨獣の住処。超大型のタンカーならまだしも、外交官殿を載せてこっそり向かうような小型船では途中でバクリ、でしょうね』
『……儘ならないわね』
『ええ、ですが、そんな中を兵達は進軍中です』
『―――本国め。衛星領域を潰す気? 本当に腹の立つ……』
『ですが、逆らえません。“ライフリンク・ポイント”が無くなれば、我らは死ぬしかないのですから』
『………フン。ご先祖様もどうしてこんな仕様にしたんだか』
『言っても始まりません。それに竜を使う部族【イシャンナ】族の長老から一つ情報がありました』
『情報?』
『古の星の華枯れし時、大地俄かに熾りて、魔なる法は咲き乱れん。竜は語る。祖は万物の長なり……世に災い蔓延りし時、星踏みの御方戻り……世の悪徳悉くを滅ぼさん』
『部族の伝承かしら? 大昔の古代人の事だから、何かロクなものしか残して無さそうという点で滅びます系の伝承は有り触れてるわね』
『それが竜だけではなく。多くの動物や動く植物が南部を恐れていると言うのです』
『恐れる? 植物ってアレでしょ? あの意志があるって言う。本国でも研究されてた』
『ええ、ですが、それだけではなく。力が強まっていると』
『力が強まる?』
『魔法使いの事はご存知ですね?』
『ええ、黴臭い連中よ。殆ど機械で出来るような事をわざわざ魔法でする必要は無いってのにしがみ付いちゃって』
『辛辣ですね』
『セントラルじゃ国家の興亡、初期や終焉時にはよく使われてるけれど、時代は重火器の質と量と数。兵隊の動員可能数よ。生産力も機械化でいいしね』
『御尤も……ですが、魔法使いが俄かに力を増しているとの事です。周辺一帯で』
『魔法の力が強くなる? 新しい技術や魔法が出て来たんじゃなくて?』
『ええ、理由は分かりません。ですが、村の老齢の者達は星踏みの方が戻って来たと。何かを感じ取っているようです』
『その星踏みってのは何なの?』
『伝承だそうです。我らの主神とは別系統でしょうが、神だとか……』
『神殿の連中の説法は結構よってのが私のスタンスね。大陸中央の【機械神群】を名乗ってるAI様も同じね。所詮は大昔の技術と叡智の産物よ』
『信仰心が無いとは聞きましたが、案外否定しますね』
『そういうものでしょう? 信じべきものは自分で決めるわ。さ、お喋りしてる間に体も目覚めて来たみたい。何か食べるものは?』
『道中で水と乾物を……』
『干し肉と干し野菜……あの肉、一体何の肉なの? 本当に……後で人肉でした~は無しよ?』
『食人主義連中の領域は此処から少し離れています。襲われる事が無ければ、食べる機会は無いですよ』
『そう願いたいわね……反逆の英雄もおかしなヤツでなければいいけど』
『好き嫌いで交渉をしないで頂ければ、どうか……』
『分かってる……あの取憑かれたようなご老人が降伏勧告するよりはマシでしょう……結局、辺境出の将は壊れて使い捨てられる……怪しげな連中まで雇ってる姿を見たら、もうさすがにダメなのは分かったわ』
『………』
『それでも……それでもよ。相手が神だろうが機械だろうが古代人だろうが!! この【イシル・ガイン】は挫けない!!』
『期待しています。いえ、期待させて下さい。多くの同胞達の為にも……』
『出発よ!! 待ってなさい!! 筋肉馬鹿の英雄気取り野郎!! 私の話術で丸め込んでやるわ!!』
『(これで主席外交官の地位に一番近いというのだから、外交の世界は難しいものなんだな。本当に……本隊が2日遅れで出発、車両燃料と機甲戦力の到達よりも恐らく部隊の方が早い。伸び切った補給線を維持する為の戦力も勘案すると……今の速度での猶予は凡そ1日……間に合ってくれよ……)』
*
―――辺境【大渓谷】。
「さてと。お仕事お仕事……(T_T)」
イソイソと本日はアルマートより90km程離れた地点にやって来ていた。
荒野が広大な領域を占める辺境だが、ずっと平地ではなく。
あちこちには河や森も存在する。
最も緑豊かなのはどうやら辺境の中でも最辺境とよばれるような人の住まう限界ギリギリの未開地である山の周辺だ。
それは動植物がヤバイ危険な存在として同居人となる事を示してもいる。
過酷な環境が更に過酷になるのだから、事実上はほぼ廃村寸前の場所というところが辺境にはゴロゴロしていると見ていい。
「お、お初に目に掛かります。貴方がガラーク様で?」
巨大な渓谷の最中。
谷底にある村は正しく人間が住むには過酷過ぎるようだ。
昔は家族や家があったのだろう場所も今や廃屋や跡地ばかり……女子供と老人だけが取り残された場所らしく。
あちこちでは子供を隠すようにあばら家の奥に避難させ、土壁すらない風が友達だろう小屋の隙間からは幾らかの瞳がこちらを見つめていた。
渓谷の入り口。
まだ、商隊は立ち寄ると言う村の入り口の門は錆び付いた鉄扉であったが、半開きで閉まらず。
少しだけ僅かばかりの朽ち掛けた木材によって補強されていた。
「様は要らない。ご老人が此処の村長か?」
「い、いえ、村長だなんて……村の役職を得た人間はもう随分と昔に外に出て戻って来なかった。捨てられた者達の一部を取り纏めているだけで……」
「そうか。先日、略奪者達の大部隊がアルマートに攻め込もうとして撃破して来たばかりだ」
「ッ―――そ、そうですか……」
「此処の渓谷でしか採れない石の加工品を全身に身に付けてたヤツがいてな」
「―――どうか!! どうか平にご容赦を!?」
思わず老人がガクガク震えながら頭を地に付ける。
「いや、咎めに来たんじゃない。周辺の状況が知りたいんだ。誓って何かを裁きに来たんじゃないから、安心しろ。ご老人」
「ッ、ほ、本当ですか?」
「ああ」
取り合えず立たせるが枯れ木のような腕だった。
「倒した連中の情報を載せた石碑を街道沿いの撃破した地点に建立した。もし、誰かが来たければ、そこに拝みに来てもいい。それを伝えに来たんだ」
「え?」
「死んでまで貶される理由も無いだろう」
「い、いえ、その、ですが、そんな……何故、そのような事を?」
「略奪者は、レイダーは湧いて出るのか? そこらへんの木や土から生えて来るのか?」
「………それは」
さすがに言いたい事は分かるらしい。
「奴らにも親がいれば、恋人や親しい連中だっていただろう。此処は荒野だ。誰もが清廉潔白には生きられない。だから、奪い奪われても生きていける。でも、誰かの為には慰めも必要だろう」
「……貴方様は……ご自分で倒された相手を気に掛けるのですか?」
「そうじゃない。オレはぶっ倒したレイダーだの略奪者だの動物の名前や過去に興味はない」
「ならば、何故?」
「それが生きてる連中に必要だからだ」
「……必要、でしょうか?」
「墓は作ってやれない。名前も彫ってやれない。だが、探せば、どんな体の傷があって、どんな体系かを記した碑の中にそれらしいのは見つかるかもしれない。何せ数万人分だ。確認するだけで何年掛かるか分からないが、ある程度分類して仕分けて立ててる」
「立ててる? 確かあの報は数日前の……」
「嘘だと思うなら街道沿いを見に来れば分る」
「………」
「辺境は厳しい土地だ。旨く育たない作物。食えば死ぬ植物、動物ばかり……ほんの少しの手違いで生きる術が丸ごと失われる。誰かから奪うのは摂理だろう。だが、奪われる時代はそろそろ変わるぞ」
「変わる、と? この生活が?」
「今、アルマートで食料の大増産を行ってる。人手が足りない。故郷を捨ててもいいし、故郷にいつか戻る事を決意して出稼ぎに来てもいい。あるいは此処みたいに新しい資源を掘って売ったりな」
「え? 資源?」
「略奪者に情けも慈悲も無い。だが、そいつが持ってた石は燃える石だ。大規模に掘り出せないから捨てられた埋蔵場所が幾つも周辺にはある。近辺に施設を立てて掘り出す許可が欲しい」
「きょ、許可!? そもそも掘れる、のですか?」
「ああ、セントラルの設備を真似て、今は色々と造ってる最中だ。何れ、この地からは鉱物も燃える石も産出される手筈だ。最初にこの地に住まう者達の特権だ。吹っ掛けなければ、適正に払おう」
「ッッッ」
「勿論、掘り出した際に鉱毒が出ないように出来る限り気を付けるし、もし望むならアルマートで良ければ、新規造成する宅地を無償で提供する」
「あ、あり―――」
「感謝はするな。取引に感謝をする馬鹿がいるか? それに此処を紹介したのはオレじゃない。死んだ略奪者……誰かの息子だ……オレが偶然知った理由はそれでしかない」
「……そう、ですか」
「取り合えず、今アルマートは余った食料が腐りそうで困ってるんだ。少し消費に協力してくれ。勿論、その分の迷惑料も払おう」
「え? 迷惑、え!? あ、あのッ」
「村の一番涼しい場所に安置させてくれるか?」
「は、はい!!? お、お前達!! 扉を開けい!!」
ご老人が叫ぶとすぐに人がワラワラと出て来て、案外いるなという感想が浮かんだが、誰も彼もが粗末な姿にあばら骨が浮いている。
もはや野人一歩手前のボロボロな衣服を着込んだガリガリの正しく日本風に言えば、地獄の餓鬼のような姿の者が大量だ。
コンテナを台車に積んでやって来た明王号が村の一番奥。
岩肌の平な場所にコンテナを設置する。
それを見た住民達は唖然としていた。
「ああ、そのコンテナは幅を取ってて邪魔だったんだ。そこに放置させて貰う。勝手に使えばいい。後、アルマートは人手が欲しいから治癒剤を増産しててな。1人1瓶飲んで一番健康そうな奴を出稼ぎに出すといい。その時はアルマートの役所に来て登録してくれ」
「―――」
もはや住人達は茫然自失の状態だが、ゴクリと唾は呑み込んだようだ。
「治癒剤で健康になってから飲み食いしろよ? いきなり飯を腹に入れると死ぬからな。後、薄汚いボロ布でアルマートに来られると迷惑だ」
「あ、いえ、ですが、衣服が……」
「衣服は一緒に入れといたから、合うのを見付けて着込むといい。足りなかったら、出稼ぎする誰かに頼め」
「………御方。貴方は何故、此処に来たのですか?」
老人のギョロリとした瞳が何かを堪え切れなくなりそうな様子でこちらを凝視していた。
「最初から悪人なんてのはあまりいない。仕方ない理由。仕方ない原因。そういうのが普通だからだ。そして、そういうのが変わっていくとしたら、今を何とか生きてる連中が苦しくない事がまずは第一だろ?」
「苦しくない事……人生でそのような時間があった事はありませんな……」
何処か自嘲気味であった。
それはきっと村に生きる誰もが思う事だろう。
「まずはゆっくりと集落で物事を決める事だ。その内にアルマートの商隊が話を持ってくる」
「分かりました……その時は快くお話を聞かせて頂きましょう」
「ああ、それと未開域の大辺境で肥沃な土地が見つかったんだ。そこへの移住と開拓者も募ってる」
「開拓?」
「街道沿いを定期的に馬車や車両で繋ぐ話があってな。片道1週間、往復2週間で行き来出来る距離だ」
「そこへ送る者が必要なのですか?」
「ちょっと臭いがキツイかもしれないのと熱いのが我慢出来るなら、一度誰かを行かせてみるといい。移住するヤツがいなくて困ってるんだ。じゃあ、オレはこれで」
「お、お待ちを!? な、何かもてなしを!?」
「気持ちだけにしろ。人を持て成すのは余裕のあるヤツのする事だ。お前らが余裕だってオレを鼻で笑えるようになったら考えてやる。さっさと治癒剤を呑んで飯でも食え。じゃあな」
今日中に後20件。
行けるだろうかと考えながら現場を後にする。
あちこちに生息する生物でディノ化したのを明王号に駆除させながら街道沿いの集積地に向かう事にした。
―――爆速で20分後。
地下から引き揚げたコンテナに物資を満載したソレを辺境中に届ける車両があちこちに見える。
市場の近辺ではつまらなそうな顔の邪神ロイヤーちゃんが実質的な墓石に座って、ちょっと詰まらなそうに人差し指を上げ下げし、その度に土中から馬鹿デカイ幅数百m、高さ10m級の石碑が大量に周囲には地下から生えて増えていく。
その光景に最初は圧倒されていた猫達であったが今は魔法の類だと勘違いしてくれて、仕事に付いていた。
詳細な情報が書かれた石碑は“召喚”されているようだが、何の石材で出来ているものか。
取り合えず、邪神には退屈な仕事らしいと今度はご機嫌をどう取るか考えておく。
「ごしゅりぃ~ん」
「大尉。経過は?」
「じゅんちょーにゃ~~(*´▽`*)」
「オレはまた別のとこに行って来る。辺境中から2万人近いマンパワーを奪ったんだ。これくらいはしておかないとな」
「にゃ~~ごしゅりんおひとよしすぎぃ~~」
「今後のアルマートの拡大を見越した人材リクルート活動と言ってくれ」
「にゃふふふ……みすてぃーくがおこってたけど、ちょっとうれしそうだったにゃ♪」
「ま、まぁ、売る前のコンテナを使ったのはアレだと思うが、別にいいだろ。まだ予約とかあったわけじゃないし。食料もちゃんと猫の城に入って来る予算内でどうにかしてるし」
ニヤニヤ笑われた。
「先日の受け入れた奴隷だった連中の半数が帰郷。残りが故郷が消え失せてるから街で働く事にしたってのもあって、辺境の過疎化と廃墟化が進行してる」
「どーにかするにゃ?」
「まずは労働力の確保からだ。人は安定した生活が可能なら、その内に増える。まだまだ食料や諸々の生産職も少ないからな」
「あんてーだいいちにゃ?」
「ああ、畑も拡大しなきゃだし、あのガラクシオの残骸もかなりの生産力がある土地になるから、さっさと抑えておきたい」
「ないせーせいこーにゃ~♪」
「ウチの金庫番の出番はまだちょっと先だ。ま、さすがに扱う金額と領収書の数が増え過ぎたら、更に何人か増やそう」
こうして着実に辺境の衰亡に向かう状況をちょっとずつ改善していく事にするのだった。
そもそもどうして辺境中にコンテナと食料を配っているのかと言えば、2日前にミスティークが慌ててやって来た事に端を発する。
ミスティーク曰く。
『こ、このままだと出来た食料が腐っちゃいます!!』
つまり、保管庫が足りないらしい。
街の食糧貯蔵庫は魔法使いと機械の併用で常に冷やしていたそうなのだが、倉庫に入り切らない臨時収穫作物は商業網に乗せるには賞味期限がすぐに来てしまう。
だが、生産職が限られている街ではもう目一杯食料加工に人手を回してしまっており、事実上加工する余裕が無い。
という事だったので何とか出来ないかと話を持ち込んで来たらしい。
『なら、加工はオレがしよう』
『へ?』
『魔法は使えるんだ。下手だけどな。先日、ちょっと魔法が無制限に使えるようになったから、適当に干すぞ?』
『え? え? 魔法が無制限? いや、確かに何か魔法スゴク強く使えるようになった気はしますけど、無制限てまたまた御冗談……じゃ、なさそうですぅ(´・ω・`)』
『他の加工は日持ちしないだろうし、瓶詰めにするにもガラス工房の作業量じゃ今の生産量をいきなり増やすのは無理だろうしな。適当な木箱を集めてくれ。先日掘り出したコンテナあるだろ? アレ使おう』
『あ、あれですか?』
『腐らせるよりも良い消費方法がある』
『お、おぉ、その心は?』
『世の中、買うのに一番苦労するのは何だと思う?』
『……お店とか国でしょうか?』
『商人らしいな。正解はオレの中だと人の心だ』
という事があったのである。
こうして、ちょっとミスティークには悪いが、金になるコンテナを売る前だったのでソレを使って辺境中のギリギリな集落に食料と邪神が創りまくって値崩れし始めていた薬を大量に詰め込み。
アルマート内政に必要な人材を集める為のエサとして活用したのである。
誰かに大事にされないと人は誰かを大事にしようと思わない生き物だ。
そして、大事にされなくても仕方ない相手が大事にされると自分も大事にされているような気分になるものだ。
(まぁ、基本的に勢力ってのは安心や安全の為に入るものだからな……)
それが実際にはどういう状況であろうとも人々の歓心を買うのは内政ターンでは非情に難しい事であり、最初から状況がマイナス状態の相手に恩を売るという意味ではかなり良い方法だろう。
まぁ、その為に大量の食糧を干そうとちょっと天候も操作したりした。
滅茶苦茶カラリとした天気が続く最中。
簡易の瞬間的な魔力消費で使えるスナップ及びインスタントを無制限に薄く広い領域で連続使用。
空気を熱して陽炎を生み出す程の熱気で一気に食材から水分を脱水した。
元々、高難易度で狙撃相手に使っていた視認性と弾の軌道を変える範囲系の防御魔法の類を真似たものだ。
先日、狙撃された時に使用したのと同じものである。
その大本となるのは魔法MOD【アーカーシャ】(超規模攻撃魔法収録版)だ。
特にプレイヤーに“赤の法”と俗称された見栄えが派手な代物を使えるようになる、簡単に自作出来るという機能を持つ代物である。
その極意はほぼ威力が存在しない事にある。
簡単に言えば、ダメージ設定が無く。
魔法の外装とも言えるコード部分にダメージが設定されておらず。
派手な攻撃を打ち合う事でゲーム内の戦闘を盛り上げる事だけに特化されたゲーム動画御用達MODとも呼ばれていた。
殆どの運動エネルギーや熱エネルギー、光エネルギーは派手さ以外は単なる熱風みたいな威力のものが全てであり、相手を攻撃しているオレ・カッコイイを限界まで突き詰めた末に開発者が決断した仕様らしい。
このMODが広く知れ渡ったのは恐ろしく魔法の表現処理が派手なのに滅茶苦茶軽い事に起因する。
つまり、処理が全て見た目重視で国産のAAAアニメ映画タイトル張りに凝っているのにヘブンを実行するマシンが唸り声を上げない(切実)なのだ。
これでクラッシュしたり、バグッたりしないのはさすがネットの海にいる野良のスーパーハッカ―か何かと言われていた開発者の賜物であろう。
(オレも最終局面で盛り上げ用によく使ってたなぁ……)
このような派手な魔法を実行する映像を撮り、実際のダメージはチートコードで出して相手を倒すという動画が量産されたのも今は懐かしい思い出だ。
結果として愉しくゲームをしている層からすると派手な事をしたい時に使うMODというイメージが定着したが、実際に使うとダメージが無いせいで相手の攻撃が止まらずに恰好が付けられないみたいな事が多発し、最終的にはちょっとだけダメージと相手を拘束するような設定を入れるのが良いと気付く者が多くいた。
(スナップ、インスタントは魔法使いの嗜みって言われてたっけ)
結果、俗称されるMOD機能を使った自作の簡易魔法はこれが大本。
個々人が開発したソレらは二次MODとしてデータの構成だけでやり取りされ、数多くの便利使い出来る軽くて簡単に使えて、余計な動作や詠唱も無しな魔法が流通した。
例にすれば、“普通のうどん”しかなかった世界に“素うどん”が誕生したような車輪の再発明が成されたわけである。
魔法技能を使うならマッチやライター、ジッポ程度のスキルとして小道具的に多用されたのだ。
元々、ヘブンには最弱の魔法ですら人を殺せる威力しか無かった。
そこに生活で活用出来るアーカーシャ由来の簡易魔法は広く浸透したのである。
(魔力もほぼ無限になったしな。周辺の魔力が無くならない限りだが……)
こうしてソレを用いて周辺領域の熱量を底上げ。
野菜をガリッガリに細らせてギュウギュウに治癒剤と一緒に込めたコンテナがあちこちに発送される運びになったのだ。
「ふぁぁぁ、眠いですわ~~たいくつ~~」
邪神がもはやその豊満な肢体を石碑の上で寝そべらせる姿は犯罪。
他の連中にはスゴイ医者兼ナース兼魔法使いに見えているだろう。
が、こちらからすれば、そろそろ人類滅ぼそうとかなぁとか言い出しかねない危険生物にしか見えない。
「……内政が退屈とか。邪神は戦略ストラテジーで大ポカやらかして滅亡するな」
「あらあら、酷い言われようですわぁ♪」
横になりながら妖艶な笑みの邪神がこちらに目を細める。
七つの瞳の一つが何か煌々と光っていた。
「オイ……今、何してる?」
「石碑の召喚ですわぁ~~♪」
「嘘吐けぇええええええええ( ゜Д゜) オレ知ってるぞ!? 右の下から2番目は確か制御だろ!? 何制御してるか吐け!? 吐くんだ!?」
「あらあら♪ 何を制御しているんでしょうねぇ?」
「う……(´Д`) また、ロクでもない事になりそうな気がする……」
「さてはて、どうでしょうか? うふふふふ……」
何をやってるか知らないが、切に自分に関係ないところでやって欲しいと思うしか無かったのだった。




