表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
17/23

第16話「お人形遊びとエロMOD先輩」


―――朝、断崖のアルマート近辺、大河の畔。


「ぁ~~~酷い目にあったな。ここ数日」


 ゲッソリしつつ、朝から水浴びをしていた。


 断崖のアルマートの街区北部と穀倉地帯を繋ぐ大橋がの橋桁の傍での事だ。


 此処最近、荒野で蜂の死骸を滅茶苦茶片付けまくったのは記憶に新しい。


 元々、そんなに体が強い方ではないこちらは回復薬やおばさん達の創ってくれたガスマスクを装着しても中々に作業が堪えて、倒れはしなかったが、体調不良でギブアップ。


「結局、後は猫任せか。はぁぁぁ(。-∀-)」


 何故に外で水浴びをしているのかと言えば、単純だ。


 現在、毒沼の処理を行っている猫達を井戸付近で洗ったら汚染されるのが目に見えていた為、別の場所で洗う事になったのだが、洗い流せる場所が限られていたので河から水をポンプで組み上げて、ホースで河が氾濫しても届かないような場所で洗う事になったのである。


 そして、そんなポンプのホースが入れられている場所を確認するという作業に自分が当たっているからだ。


 他の連中のように作業していない者は井戸を使ってもいいのだが、作業中の者達の手前、何か一人だけ井戸では洗い難いので河で洗っているわけである。


「ふぅぅ~~( ´ー`)」


 しっかり洗って体を清めた後。


 肌着にゴワ付いた辺境特有のパッチワークだらけのジーパンを履いて、小さな手拭で体を拭き拭き、絞っていると……河の上流から何かが流れて来た。


「んん?」


 見ている合間にもソレがすい~~っと足元まで水の流れでやって来て思わず引き上げる。


「脚ぃいいいいいいいいいいいいいいいいいΣ(゜Д゜)」


 思わず叫んだのも無理はない。


 明らかに生足であった。


「ヒェッ(´Д`) 辺境コワイトコ。捨てとこ……」


 と思ったのだが、よく見て見ると滅茶苦茶肌色の脚の付け根には金属フレームが見えており、明らかに人工物であった。


「な、何だ。ロボ系の脚部パーツかよ!? 紛らわしい!!」


 思わず朝から叫んだのでげっそり。


 それにしても人間の……それも十代女性と見紛うようなものがある時点で精巧。


 こんなモデルは長い事ヘブンをやっていても見た事が無いのでMODのマシンナリー系統の追加ものだろうと取り合えず持って返って博士達に解析して貰う事にした。


―――1日後。


「ふぅ……昨日は酷い目にあったな。脚持って返ったら、ドン引きされて何処で殺して来たんですかぁ~~ってミスティークに揺さぶられて、説明しても何で持って来てるんですか?ってジト目で見られるという……」


 今日も体を洗い終えて着替えた時だった。


「んんん?( ,,`・ω・´)」


 また、流れて来るのが見えた。


 しかも、また水の流れのままにこちらの足元へ。


「もうヤダこの河。また脚部パーツとかぁ(/ω\)」


 思わず、拾わず流そうかと思ったのだが、先日の博士達が興奮した様子で『このマシンナリーのパーツは良いものだ!! もし、また拾ったら持って来てくれ』と言われていたので仕方なく拾い上げる。


「昨日は左足、今日は右足……脚が流れて来る河とか嫌だなぁ(T_T)」


 こうして、再び博士達に足を一本持って行く事になるのだった。


―――1日後。


「ねむ……(´Д`) 昨日は結局、また脚を持って行ったら、現場から戻って来た大尉に何処で殺して来たにゃーって喚かれて、また説明する事になったという……もう周囲全員に説明したから、これで誰も叫ばなくなるはず。いや、また流れて来る前提なのが嫌な話だな」


 今日も体を洗い終えて着替えたら、ほぼ同時刻という事なのか。


 再び何かが流れて来た。


「わ~い。もう脚部じゃ驚かないぞ~~(/・ω・)/」


 水の中からソレを引き上げてみる。


「ど、胴体だぁあああああああああああああ!!!?Σ(゜Д゜)」


―――1日後。


「教えはどうなってんだ!! 教えは!! 辺境の河にはモラルというものが無いのか?! うぅ、しかも明らかに全裸の美少女胴体を持って返った時の猫達の反応よ(´Д`) 遂に主が猟奇殺人鬼にぃいい!!? みたいな!! みたいな!!? あいつらぁ!!? 捕虜という自覚が近頃無さ過ぎでは?」


 文句もそこそこに今日も体を洗い終えて着替え終わると。


「もう驚かない。槍でも腕でも持ってこいってんだ(´ー`)」


 引き上げてみると両腕だった。


「に、二本(T_T)……でも、何かご近所さんが持って返ってるところを見て、猫の城ヤバ過ぎザワザワってしてたから、今日は迅速に帰ろう……」


―――1日後。


「はいはい。どうせ、首だろ。首……驚きゃしないっしょ(>_<)」


 河からその脚に当たったパーツを引き上げてみる。


「ミ、ミスティイイイイイイきゅぅぅぅぅぅぅぅぅぅうぅぅぅぅんΣ(゜Д゜)」


 愛するNPCのハイライトの消えた瞳開けっ放しの生首だった。


―――現在。


「まさか、ミスティーきゅんの体だったなんて……何かどっかで見覚え有るなぁと思ってたら、そりゃ捨てたくなくなるわけだわ(ノД`)・゜・。」


 持って返った金髪碧眼エルフ美少女。


 パーフェクト・ミスティーク・ボディの頭を博士達に渡して1時間。


 どうして、ミスティーきゅんの体がフルマシンナリーっぽいアンドロイドな肉体に置換されているのか。


 謎は深まるばかりだが、今まで自分がゲームの度にミスティーきゅんの種族やボディを変えて来たのは間違いなく。


 ロボ系のボディーなんて作っただろうかと首を傾げる。


 一応、ロボ系種族もMODで入ってはいるのだが、今のところ出会っていない。


「はぁ、それにしても、エルフ・ボディなミスティーきゅん(デフォルト)の体が流れて来るとか。上流にミスティーきゅん・ボディ製造工場でもあるのか?( ̄д ̄)」


 それはそれでちょっと欲しいと思ったが、それよりもまずは博士達の解析結果を聞くのが先だろう。


 猫の城内部。


 近頃は回復薬(邪神製)が大量に取引されて、辺境全体で多くの命が助かっているとの事で毎日引き取り業者が詰め掛けているのだが、本日はその姿も無く。


 殆どの猫が発掘作業中なので残ってるのは最低限。


 仕事中なので誰も内部に見掛けなかった。


「……此処も大きくなったよなぁ(勝手に)(T_T)」


 此処最近、猫達の技能が戦闘でのレベル向上で爆上がりしたせいか。


 何でもかんでも猫による突貫工事で建てられまくりの猫の城近辺は城砦化が進みまくっており、街で一番高い鉄塔(恐竜サンの残骸製)が建ったり、街を囲む監視塔(ロボ頭部センサーマシマシ)が建ったり、中庭(壁外耕作地)が出来たりと完全に街は勢力的に設備が充実して来ている。


 事実上、軍事力が猫達基準な上に街の守備隊には街区の治安維持活動を任せ切りなので悪さをする者は無い。


 ついでに先日やって来た人々。


 3000年前の古代人の母子達が傍に住み込み。


 猫達の庇護の元、街の生産業に付いて食っていく事になり、街の住民は猫達の事があった後という事で人間を左程怖がらなくなっていて、ぶっちゃけ猫の方がヤバイし、問題無いやろと流れで受け入れを表明してくれていた。


(言語も殆ど昔と此処で変わってないらしいし、あの廃墟の謎がまた増えるという……)


 猫達がいる区画に住まわせるのならば、監督もされるだろうという勝手な憶測もあるだろう。


 裏ではミスティークが色々と街の上層部と調整しているらしいが、上層部(父とその取り巻き商人)なので自分を受け入れると決めた時に絞ったから問題無いとの事。


 こうして断崖のアルマートには現在、千人以上の嘗ての高度文明時代を知る人々がガッツリ住み着いて地元の商工業に革新を齎していた。


「全体的に飯が旨くなったのは有難くはある、か」


 全体的な技術力の底上げである。


 料理はその簡単な分野での底上げを一番実感出来る代物だった。


 やっぱり知識層は強いのだ。


 ついでに現地の人々が賢いのは知識のある人間を囲い込もうという努力をしているところにあり、どの道今のままでは衰滅していたのだからと老齢化していた商工業関連の従事者達の殆どは母子家庭ばっかりでほぼ男手が少年しかいないという事で強き女たる片親な母達を尊重し、自分の事業の後継者として育てる事にしたのだという。


「それにしても食糧事情が逼迫し始めてるらしいけど、そこは新しい産業で輸出入が活発になればって話らしいし……そろそろ畑増やすか。新しい作物見付けないとな……」


 何か、その母親達に此処最近の様子を見られて、年若い女の全身をバラバラにして持ち歩く変態という称号を授けられたようなのだが、仕方ないだろう。


 一応、マシンナリーを拾った旨は回覧板的なものを猫達に回して貰っていたが、それにしても河で変なものを拾わないように注意とか書かれてるらしい。


「英雄殿。解析結果が出ましたぞ」


 メルタ博士が地下の研究室からやってくる。


「それで何だったんだ? あの体?」


「ふむ。それがのう……アレはどうやら中身の無い人形のようじゃな」


「中身の無い?」


「うむ。基盤となる中核のコア・ユニットが無いので無線誘導で動かすのが関の山なんじゃが、かなり出来が良い。特に肉体の接合部の仕様や内部構造が今まで我らが研究していた過去の遺物、レムナントよりもな」


「つまり、超出来の良いラブド、ごほん。“お人形”なわけか?」


「うむ。河に漬かっていたいたのにまったく劣化している様子が無い上、動力源が無いのに接合は自動で自己修復機能まで備えておるようだ」


「ほうほう?」


「しかも、有機生命体の義肢としても使えるように血管や神経を接続する部位があってな。接続側の肉体を再生しながら、分子結合する部位で免疫反応を抑える働きもあり、事実上はぶった切られた部位に直付けして固定化しとけば、傷も治る優れものじゃな」


「一つ質問いいか?」


「何じゃ?」


「量産出来る?」


 メルタ博士が頭を掻いた。


「今のままでは不可能じゃ。何せ設備が何も無い。エンジニアリングには金の掛かる設備が欠かせんのじゃが、そういうのはセントラルの工業力があって成立するもんなんじゃ」


「だろうな。じゃあ、どこまでなら接続して直せる?」


 その言葉にメルタ博士が目を細めて考え込み。


「頭部中枢ユニットは脳髄を入れ込める状態じゃ。事実上は脳さえ無事なら、ワシらの手腕なら一定時間血流を維持出来る設備が在れば、脳の埋め込み、脊椎の移植までは行けるな。内部の容積からして、有機生命体を埋め込んで同化する仕様じゃ」


「同化する?」


「うむ。接続部を分子結合すると先程言ったが、無機物に有機物を取り込ませて融合する……要はキョーリューの細胞みたいなものに変質させる事が出来るようじゃ」


「分かった。もしもの時は肉体の予備としていつでも使ってくれ」


「良いのか?」


「ああ、使わずに死なせるもんでもないだろ。オレはこれから上流に行って、そいつの出所を探る事にする。ついでに血流維持用の設備もあれば、見付けて来よう」


「……お主に一つ訊きたい事があるのじゃが」


「何だ?」


 博士の眼鏡の下から少しだけ科学者の瞳が覗く。


「古代人だった女性達にも色々と情報を聞き込んでおるのは知っておるな?」


「ああ」


「その知見からしても、お主は異常だ。お主は一体、いつの時代の人間なのだ?」


「いつの時代の?」


「少なくとも3000年前もこの荒野は荒野のままであったと聞く。その頃は今よりも少し技術が進んでいて、冷凍睡眠ポットを作る程度の技術はあったと」


「なるほど、殆ど集団や組織以外は変わり映えしない荒野だったわけか」


「ああ、過去の遺跡に拠点が幾つも築かれていたらしい。彼女達もその一つに住まっていたようだが、時の戦乱で眠りに付いたのだとの話だ。セントラルも現代はその水準じゃが、このような義肢を作れる程ではない」


「………(・ω・)」


「だが、お主はコレを普通のように扱った。怖ろしい程の技術力でありながら、驚くに値しないという様子じゃ……」


「ま、散々この系統は見たからな」


「まさか、あの四基のドローン達を破壊して持ち帰って来るとは思わなんだが、それを使役する立場にあったとも聞いた。だが、アレは少なくとも我らの技術で測る限り、2万年以上前の代物だ。このマシンナリーもな」


「そうか(・ω・)ノ ま、気にするな。世の中には知らなくて良い事もある」


「……ふ、それもそうか。お主のようなお人よしに人生の最後に拾われただけ、有難いと思っておこう。すぐに出るのか?」


 肩が竦められた。


 どうやら少し訊ねたい程度の事だったらしい。


「ああ、今回は此処最近出番が無かった工房の武器でも試そうかと思ってな」


「そう言えば、近頃お主は殆ど重火器を使わずに事件を解決していたな」


「工房で造って貰ったもんは基本的にドローンとか蜂さんとかに使う用じゃないんだよ」


「お主がわざわざ頼む上に今、発掘された重火器とは用途が違うと?」


「威力はほぼ関係が無い。武器ってのは用途別で使うもんだ。攻撃力別で扱うのは規模が大きいもんだけだな」


「まぁ、お主が言うのならば、そうなのだろう。向かうのはあの明王号でか?」


「ああ、今回はスミヤナはおばちゃん達と研究中で猫達は毒沼の掃除中、ミスティークは食料の商談中だから、オレ1人で行って来る」


「……本来、重要人物たるお主を一人で行かせるのはアレなんじゃがな」


「いいんだよ。オレが死んだら、適当なヤツが上をやればいいさ」


「……欲の無い事だ」


 心から苦笑されている気がした。


「じゃ、後は頼んだ」


 こうして、猫の城に新たに増設された内庭。


 四体のドローンの残骸を置いた畑の一角に創った隔離スペース横の持って来た明王号を駐機させておく場所からさっそく大河の上流へと出発。


 新たな冒険に出る事となったのだった。


 *


「あ、おはようなのだわ。ガラークさん♪」


 ポンヤリな性格の胸元のでっかい少女。


牛人(キャティ)】のエムシティーラ。


 愛称で皆からエーラと呼ばれる彼女がニコニコと御目覚め状態でこちらに微笑んでいた。


 明王号の中の事である。


「あの~~何でここに?」


 場所は街の大河の上流30kmくらいの場所での事。


 普段使わないサブシート部分は衝立のように保護カバーが壁の如く展開して保護しているのだが、どうやら中に入った人物が寝ている時もカバーが展開されるようだ。


「今日、ミルクを持ってきたら、あんまり人が居なくて、ガラークさんも見えなかったから、ウロウロしてたのだわ。そうしたら、コレが開いてて中に入ってるのかしら? って……入ったら……」


「出られなくなったと?」


「そ、そうなのだわ。ぅぅ、ごめんなさい」


「いや、いいけども……それで寝てたのか。大物だなコレは……」


「勿論よ? にぃさんもお前は将来大物になるぞっていつも言ってるのだわ♪」


「ははは……はぁぁ(*´Д`)」


 思わず溜息が零れる。


「しょうがない。ちょっと待っててくれ」


 荒野に出て衣服を脱いでスチューデント・スーツも脱ぐ。


 再び衣服を着込んでからエーラにスーツを差し出した。


「それを使ってくれ。此処は荒野だ。危ないからな」


「え? でも、それって……」


「いいから、何があるか分からない」


「っ……はいなのだわ♪ ありがとう。ガラークさん」


 良い笑顔だった。


「いや、取り合えずオレが戻って来るまでは中で待っててくれ。もしもの時はこの中で指示を出せば、コイツが勝手に動いてくれるから」


「そうなの?」


「ああ、中は明るくしとくから、危ない獣が近付いて来たりしたら、すぐに分る。スーツを着込んでる限りはコイツが止まる事も無いし、オレが傷付いて倒れてたりしたら、猫の城まで頼む」


「せ、責任重大ね!! わ、分かったわ!! この子と御留守番頑張るわね!!」


 頭を思わず撫でてしまうくらいに良い子であった。


 こうして、さっそく30km上流で見付けた遺跡に挑む事とする。


 それは川沿いの小山に開いた小さな洞穴。


 いや、ボロボロになった入り口を晒すシェルターのように見えた。


 崩れ落ちた跡はかなり新しく。


 恐らくは直近に崩れたのだろう事が分る。


 河がすぐ傍で水に浸食された入り口は内部から河へと水が流れ込んでおり、明らかに水の流れが出来ていた。


「さ、行きますかね」


 革袋から武装を取り出す。


 金属製の腕に嵌める帷子染みたガントレットとブーツだ。


 肘までを覆うソレ。


 膝まであるソレ。


 近接格闘武装二組はメタリックな色合いを全て艶消し塗装で黒くして汚して貰っている。


 視認性を極力下げつつ、手足を保護する武装。


 これ自体は殆ど昔から使っていたものの再現版である。


 ドローンや攻撃したら腕が溶ける蜂さんみたいな相手には意味の無い代物だ。


「試し撃ちしようとして滅茶苦茶時間が経ったな。ホント……此処最近働き過ぎだオレ」


 MODで追加された“オーバーメタル”のような希少な金属資源は他にもある。


 そして、最初期に確保した猫達が持っていた武装の大半は運用が不可能なものは全てガントレットやブーツとして使う事にしたのである。


 これらの武装の威力や能力を確保するのは近接モーション追加MOD【Fight Style SV】はその名前の通りに様々なモーションを追加する事で格ゲー的なバトルアクションを可能とする。


 元々、持久力が無いが、武器の扱いも今一だった自分が唯一安定して高難易度の敵と戦えるのがこの近接武装だったのだ。


 勿論、生身ではすぐに使いものにならなくなる為、手甲、脚甲は必要だ。


 単なる黒いブーツにちょっとしたギミックを盛り込んだガントレットは事実上玩具以上ではない。


 ついでに言えば、空間そのものが死の圏域と化すような手合い……つまり、メンタル・イエーガーのような相手には精神防護が可能な装備が無ければ、無力という代物である。


「で、どんなお宝があるのかな?(・ω・)」


 ワクワクしながら入り口を潜る。


 これでもレンジャーをしていた経験があるので罠の感知はお手の物。


 まったく罠の気配が無い内部に入り込むと電灯がまだ生きていた。


 入ってすぐ、調理室らしい部屋があり、通路を進んでいくとすぐにトイレやリビングに行き付いたのだが、全て水浸しであった。


 だが、内部に目ぼしいようなアイテムは落ちておらず。


 しかし、まだ使えそうな家具は乾かせば普通に使えるだろうと後で猫達に回収を頼む事として、水の流れに沿って奥に向かう。


 かなり小さなシェルターのようだったが、それでもおかしな水量が流れているので何処かに河と繋がった崩落個所があるはずだ。


 スタスタ室内を歩きながら通路の奥へ奥へと向かう。


 すると、ようやくこのシェルターが普通とは少し構造が違う事に気付いた。


「これシェルターか? いや、一番必要な居住区を奥に創るって感じじゃない。むしろ、シェルターはおまけ? 何か待機所みたいな……」


 軍の施設だと人員格納する施設はかなり奥まった場所や地下に造られている事が多いのだが、それとは真逆にマンション染みた早さで生活空間が出て来たのだから、奥にあるのはそれよりも重要な場所という事になる。


 それに全て開きっ放しの通路の先。


 暗闇が広がっていた。


 何か広い空間のようだったが、暗いのですぐに出て左右の壁際を調べるとビンゴ。


 大きな配電盤が見つかったので内部のブレーカーのハンドルを挙げてみる。


 すると、ブゥンと周囲で音が響き。


 通電したのか。


 ポツ、ポツと明かりが少しずつ天井から開き始め、最後には大きな電灯がバツリと付いた。


「ッ―――」


 広大な地下空間は透明度の高い水で水没していた。


 しかし、その大きな空間の中央。


 鎮座している設備が明かりの中で露わになる。


「ミスティーきゅん……」


 それは大量のミスティーきゅんの体と思われる全裸の肉体……頭部以外の全てが完璧に揃えられた代物だった。


 内部が見える透明なポットがズラリと揃えられて円筒形状に並べられており、頭部は無いがマシンナリーの肉体は無傷のままに安置され、一番高い場所にあるポットが開かれていた。


 よく見れば、ポットの端が真上の一部天井が崩落したのに巻き込まれた様子なのが見える。


「頭無しだけが残ってるって事か。頭部損傷が激しい場合は一人だけになりそうだな」


 幾ら愛する相手の姿をしていると言っても、今はアイテム扱いである。


 大量の義肢義足。


 高精度で高性能なマシンナリーが手に入ったと思えば、それで十分な成果だろう。


 他にも何かないかと確認しようとした時。


 水の流れの原因を見付けた。


 地下格納庫の一角に罅割れた部分があり、そこから浸水しているようだ。


 施設の管理システムが無いかと辺りを見回すと入って来た出入口の反対側にコンソールを発見。


 すぐにそこまで行って電源が入っているのを確認。


 宇宙テック基準のコンソールはまったく汚れた様子もなく。


 すぐに起動してメニューを開示。


「あるある。宇宙船基準か。施設補修項目……壁面補修と排水……行けるか?」


 自動修復機能をオンに設定すると。


 すぐに壁面そのものが僅かに蠢いて、出て来た3Dマップ内の破損個所が見る見る修復。


 現実でも同じように壁が一人手に補修されて水の流れが止まった。


 それと同時に排水が開始された様子でキュゴォオオオオオオッという音と共に水が施設の排水溝が何処かに開いた様子で物凄い勢いで水位を下げていく。


「やっぱコレ、宇宙規格の船体を流用してる……システムの詳しい形式はこの端末からじゃ見られないのか……まぁ、いいか。とにかくハッチも修復して、管理者権限をオレに変更っと」


 ポチポチ簡単操作設定にしておいて良かったと思いつつ、操作しているといきなりウィーウィーと親の声より聞き慣れたエマージェンシーコールが響く。


 まぁ、親の声も顔も知らないのだが。


 よく宇宙船で聞いていた音色だ。


「ッ」


【施設付近に敵対的生命体を感知。施設付近に敵対的生命体を感知。管理者は直ちに駆除に向かって下さい】


 壁面の一部がボボボンと封印を解かれた様子のガンロッカーを露出させてパカリと開く。


「あ~はいはい( ̄д ̄) お約束ですよね。あのMODのせいで武器が希少な歴史設定なんだろうなぁ……漂流してる品質EXお宝いつかウチにも来るんだろうか……」


 管理者自身が持ってる武装でどうにかするしかないだろう。


 近くにこの施設の設備と連動出来るHMDの類が無いかを確認すると、ガンロッカー内部に情報機器1と表示があったの通路を渡って内部を確認。


 すると、サングラスが一つ置いてあった。


「あ、バイザー型のヤツだ。自分で取らない限り、外れないやーつ( ̄▽ ̄)」


 サングラスを装着するとすぐにシステムとのリンク完了との表示。


 そのまま施設のメインサーバーらしきものにアクセスすると今は非常時だからと必要な情報だけが羅列されたが、武装が存在しない以外はほぼ施設は一部損壊しただけで機能の殆どは生きているらしく。


 相手の危険生物の位置や情報が丸分かりとなった。


「水の中じゃないですかヤダー(´・ω・`)」


 相手が水中生物というだけでゲッソリである。


 ついでに言うと水中生物と水中戦をするのは馬鹿のする事だ。


「危険生物を丘に上げる手段は無いか?」


 インターフェースが生きているようなので訊ねてみると管理AIからの回答で施設の電源から電力を水中に流せば出て来るかもという推論機構による提案。


「はいはい。ガチンコ漁ね。良い子は真似しちゃダメなヤツ。実行( ̄▽ ̄)」


 提案を許可。


 瞬間、ボッと施設外カメラからの映像。


 ちょっとっ煤けていたがすぐに水飛沫で現れて、クリアになった映像が映し出される。


 川底から巨大な何かが地表へとジャンプして、川魚よろしく地表へとビターンと叩き付けられた。


 すぐに施設内部から扉の先に走る。


 山の傍の川べりにソレがいた。


 13mはあるだろうか。


「さ、天然記念物サンショウウオだぁああああああああああΣ(゜Д゜)」


 天然記念物というか。


 絶滅危惧種というか。


 ヌッとした顔がギョロリとこちらを見やると……バカデカ・サンショウ・ウオ=サンが猛烈な勢いでこちらに走り出した。


 大口を開けながら、だ。


「怪獣映画かよぉ!!?」


『危ないのだわ!!』


 外部スピーカーの声と同時に猛烈な赤い極短波レーザーの群れがサンショウウオに襲い掛かる。


 だが―――。


「き、効いてねぇ!? こいつ?! 特殊個体か!? 即死系アニマルを追加するヤツにはいなかったから、完全に現地生物? あの蟲共と同じか!?」


『機械さん!! ガラークさんを助けて!!』


 走りながら並走してくれた明王号のカーゴユニットの上にサブアームで引っ張り上げて貰う。


「はぁはぁ、走るのはやっぱダメだな……」


『大丈夫? ガラークさん』


「あ、ああ、助かった。ありがとうな」


 サンショウ・ウオ=サンはレーザーで今も焼かれ続けていたが、肌に当たったレーザーが散乱したように全身のヌメヌメの中を行き渡り、ちょっと赤くなった程度であった。


 恐らくエネルギー自体を体表で散乱させる機能と溜め込む類の内臓があるのだ。


「攻撃を止めさせてくれ!!」


『は、はいなのだわ!!』


 すぐにレーザー照射が止んだが突進してくる巨体はまるで走る速度が落ちない。


 1分以上走っても全然余裕という様子であった。


「激おこだな(T_T) つーか、アレもまたこいつの適応対象外……ヌメヌメしたら威力が落ちるどころか取り込まれるじゃないですかもぉ~~;つД`)」


 結局、装着しただけのコスプレ状態である。


 大の大人が愉しむ為ではなくて、実戦武器で徒手空拳。


 手足を護る為の装甲を身に付けている姿は痛々しい以外の言葉にならない。


「要はヌメヌメを取ればいいわけか」


 まだ、MODが適応されていればという前提でちょっと必要な儀式をしてみる。


「あーしたてんきになーあれ」


 そう少し声を張った途端。


 ドッと天候が―――天気が押し寄せて来る。


 天候操作MOD【ウェザーリポート・モーメント】。


 日本語化された中では一番大きな環境オーバーホールMODだ。


 ヘブン世界の気象情報をとにかく自在に操作する為の代物でチートMODの一種なのだが、使うプレイヤーにとって最善の気象を提供する事をモットーにして調整されており、本人が調整しなくても戦闘中の敵に対して絶大なデバフとなる天気を押し付けたり、作業中ならば、作業に適した環境、農業中ならば農業に適した天気などという形でゲーム性を損なう事なく自然に有利にしてくれる代物だ。


(ま、そのあまりの快適性からヘブンで自由に自活する連中のバカンス用の天候変更MODとして大いに活用されて、戦闘で使うのはあんまりいなかったけど)


 何せ中盤からは宇宙が舞台になる事が多かったヘブンでは外部環境程度でどうにかなる存在は後半になればなるほどに多くなく。


 ぶっちゃけ、品質の低い部品で出来た重火器の動作不良率が上がるとか。


 環境対応出来ない可哀そうな装備しかない兵隊の消耗を早めるくらいのものでしなかったのである。


 環境操作を限界まで指示出しで駆使すると天変地異が起こせるらしいが、銃の打ち合いがしたい勢からしたらそこまで要らないし、作業中毒連中は快適なら別に他はどうでもいい。


 という事でチートMODを正しくそう使ったプレイヤーは少なかっただろう。


(ま、起動コードや天候設定詳細を口にするだけでどうにかなるだけマシだな。もしもとなれば、このMODで自給自足する気満々だったし……)


 今までの湿潤な川べりからジュワァッと灼熱の太陽によって水分が蒸発していく。


 ソレが不自然にも雲すら形成せずに何処かに散り去っていく。


 急激な熱量の上昇、体外湿度の急速な低下に猛烈な脱水が働き始め、凡そ12秒で湿度が0になったのを確認。


 そのまま走っていた巨大サンショウウオの動きが鈍くなっていく。


 そうして、それから更に40秒程で相手の動きが止まった。


 猛烈な暑さの最中、河に戻ろうと動き出そうとして、次々にレーザーがその体を焼いていく。


 それに初めてジッタンバッタンと跳ね回り始めたのを確認し、急加速させた明王号のカーゴを跳ね上げる動作を実行したのと同時に跳んで相手の上を取る。


「反撃の時間だ!! It's party time……」


 右拳を真上から打ち下ろすように相手の頭部にぶつける。


―――uooooooooooon!!!?


 何処か不思議な響きを残して相手が潰れた頭部のままに体を跳ね上げた。


 だが、跳ね上げられた大質量に対して再び宙を舞いながら踵落としを同じ個所に叩き込む。


 相手の跳躍力とこちらの威力が同時に相手の頭部を苛み。


 遂にこちらの踵と全身が相手の体を突き抜けた。


「天然記念物は記録の中で寝てろ!!」


 巨大な頭蓋から顎下までを突き抜けた。


 墜ちて来るに回し蹴りで横に吹き飛ばし、巨体による圧し潰しを回避。


「良さそうだな。だが、結局試し撃ちは出来なかったと……はぁぁ(・ω・`)」


 倒れ伏す怪獣山椒魚を横目に手足に違和感がない事を確認して、親方の腕は確かだなと今日のお仕事を完了する事にした。


 雨は降らないが湿度が戻り始めた周辺は反動のように少し冷えていくのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ