第15話「ハチミツとドローンとエロMOD先輩」
「ガラーク? ガラーク? 朝ですよ♪」
「ん、あ、おう……ミスティーク……ミスティーク?!」
ガバッと起きたら、ニィィィッとヤバイ七つの瞳を怪しく細めて光らせた能面が朝チュン状態で肌色タワワなムチムチ・エロ・ボデーでしな垂れ掛かり、全裸のこちらと同衾していた。
「うぁああああああああああああああああああ!!!?」
ガバッとようやくリアル寝台から起きる。
「はぁはぁはぁはぁ(*´Д`) わ、悪い夢……ミスティーきゅんの声を真似た邪神と一夜を共にとかマジで心筋梗塞で死にかねない……」
「あらあら? 良い夢は見れたかしら?」
「―――ッ(´;ω;`)」
思わず涙目になった。
背後からの声はどう考えてもあの妖艶な邪神=サンである。
「うふふ、精神状態が悪かったから、直しておきましたよ♪ 雇用主様♪」
それはお前のせいだろ!!とのツッコミすら出来ない。
「オレの第二のセカンドライフ的なものが一瞬で終了のお知らせにぃぃ……(/o\)」
思わず寝台の端っこで頭を抱えてプルプルするしかない。
「喜んで頂けて、とっても嬉しいですわぁ♪」
「ちっげーよ!!? く、人の話を聞かない邪神めぇぇ……;つД`)」
ニヤニヤする邪神を横目に自分の貞操が護られている事にホッと安堵しつつ、拠点内に飛び出していく。
すると、いつもの猫達が半数くらいにまで減っており、博士達が陣頭指揮を執って何やら無線機越しに部隊を動かしている最中だった。
「おぉ、英雄殿。目覚められましたな」
博士達のまとめ役であるメルタ博士がイソイソとこちらにやってきた。
「倒れたと聞いた時は心配しましたぞ。良かったですなぁ。あんなに若くてムチムチなエロ、ごほん。カワイイ女医兼ナースさんが応募してくれて」
「え?」
「あら、おじいちゃんたら、お上手ですわぁ~~それと今は看護師とか言うんですわよ~~」
「おお、そうなのか。それはそれは申し訳ない」
後ろから邪神の声。
「いやはや、傷付いていた猫達も全員神掛かった手際で治療し、あまり使い手のいない回復魔法も使えるとは……しかも、避難民の治療まで……まったく頭が上がりませんな」
「あらあら~~誉め過ぎですよぉ~~うふふ♪」
「な、なぁ? 博士……後ろのが何に見える?」
「よく質問の意図が分からんのだが、随分と美人な御人だ。うんうん」
ご老人がホクホク笑顔で完全篭絡されていた。
後ろを振り返ると左右非対称の七つの瞳の左端の一番上がキラキラオメメ……睫毛の付いた女児系アニメの女の子みたいな瞳になっていた。
だが、その光彩の中央は明らかにバトルものアニメにありがちな超複雑な象形がビカビカ光る魔眼的なものに見える。
少し見詰めていると一瞬だけ顔が年齢不詳の柔らかな豊満ボデーの絶世の美人女医さんに……バチーンと顔を両手で張った。
「あ、危なかった……う、一生真実が見えなくなるところだったぜ?! 幻覚ヤバ過ぎる!!」
「あらあら? 能力まで知られているなんて、益々興味が出て来ましたわ♪ ガラークさん」
「そう言えば、オレの名前までぇ……(/o\)」
「お主は本当に精神不安定じゃなぁ。あ、今は受け入れた避難民の治療に猫達とお嬢ちゃん達が出払っておるから、少しゆっくりしておけ。ミスティーク殿が気を揉んでいたぞ」
「あ、ああ」
博士がイソイソと他の博士と共に指示出しの為に地下へと戻っていく。
「まだ名乗っていませんでしたわね。わたくしの名は――――――ですわ。ああ、聞き取れませんわね。この次元の周波帯だと……ええと、それでは一番近い意味の発音で……この世界の言語だと……あ、オーバーデストロイヤーちゃんとでも呼んで下さいね? 雇用主のガラークさん」
「もういっそオレの頭を洗脳してくれぇ……;つД`) 何も見なかったし、聞かなかった事にしてぇ……」
「うふふ。恐怖と絶望に抗って希望を夢見る人々がいるから、この世は面白いんですのよ? ガラークさんはここで『ゆっくりしていってね!!』というところで」
「うわぁあああん(´;ω;`) この邪神、邪悪過ぎるぅぅぅぅぅ!!?」
「雇用主様の利益を最大限尊重致しますわ♪ あ、お代はもう頂いたので雇用主様が死ぬまでは女医さん兼ナースとして働かせて頂きます♪」
「何取られたのオレ!? 記憶とか心臓とか脳とか取られてない?!!((((゜Д゜))))」
「そんなの要りませんわよ。わたくしが欲しいのはいつでも人間が絶望して希望を持って、ドラマをやっているところを特等席で眺める事ですわぁ~」
良い笑顔だった。
「うぐぅ!? 幻覚系邪神めぇぇぇ……他の連中に手ぇ出したら、道連れにしてやるからなぁ(/o\)」
「ガクブルした足腰カワイイ♪ 絶望に抗う人類カワイイ♪ コレは永く愉しめそうですわね。では、わたくしはさっそく自室に引き籠らせて貰いますわね♪ お仕事の内容は博士達に承りましたから~~それでは~~ロイヤーちゃんとでも呼んでくださいましねぇ~♪」
ルンルンしている白衣だけ着込んだ邪神ロイヤーちゃんが何故かもう完成しているらしい自室に消えていく。
「げ、現実改変されてるぅ;つД`) あの部屋は普通に何もない未完成部屋だったはず……うごごご?! いつかぜ、絶対送り返してやるからなぁ!!( ゜Д゜)」
尻尾だけが嬉しそうにフリフリ揺れて扉がカチャンと閉まった。
「世界の危機……う、もうオレに出来る事は無い。アレは見なかった事にしよう……\(^o^)/」
今の自分ではほぼどうにもならないので全部忘れて取り合えず気を取り直すことにする。
「落ち着けオレ……恐竜ゾンビ=サンは倒した。医者は引き続き探すとして……軍事拠点とか。3000年前とか。まずはあっちの方だよね( ̄д ̄) うんうん」
こうしてフラフラしながら邪神の脅威によって更に滅びそうな世界に歩き出す事にしたのだった。
*
――――――セントラル【アバンシア共同体】本国中央大討議場小会議室。
『議長ッ、いらっしゃいますか!! 緊急事態です!?』
『何だ。騒がしい。軍の方からは―――』
『【アドンの庵】が壊滅したと大陸中央の観測部隊より報告です!!』
『なッ?! どういう事だ!! 詳しく報告しろ!!』
『そ、それが10時間程前に辺境の方で高エネルギー反応が出た事はご存知かと思いますが、それに関連して』
『関連だと? 技術部の報告では何かの計器の故障か間違いだろうとの話だっただろう。周辺領域に派遣していた“草”からは何も観測してないと聞いているぞ?』
『そ、それが最辺境領域からの商人の情報ではあの一帯の何処からでも見えるような光の柱が空に立ち昇っていたという話が複数確認されました』
『ッ、光の柱……荷電粒子砲の類か? ブラスター系の対空砲火だとでも?』
『そ、それが、光の柱の方角には……』
『まさか、断崖のアルマートに古代の対空防御兵装が有るのか?!』
『……【アドンの庵】との連絡が途絶えて10時間以上となります。更に派遣されるはずだった部隊の降下時間がその光の前後という事もあり……』
『ば、馬鹿な……まさか、衛星周回軌道を高速で動いている庵を狙われた? 地表からだと? だとしたら、あの場所にある防御兵装はまさか―――』
『【グランデス】……現在、我が軍主導で再開発中ではありますが、それと同等のものか。もしくはその現物が眠っている可能性があります』
『今まで使われた形跡が無い。だが、ソレが使われた? ロストしたスチューデント・スーツと武装には確か……』
『は、はい。ご息女の武装にはリビルドされたプラズマ・グレネードランチャーが……原理的にはアレの極大化版です。もしや、鹵獲されたものが技術的に利用され、修復されたのでは?』
『………最辺境と侮っていた私の責任だ。アルマートを本気にさせたという事か。防備を固められる前に辺境侵攻はやらざるを得ないか。ならば、陸路しかない、な……』
『議長、どうなさりますか?』
『……“草”からの報告が無いという事はあちらは隠蔽技術にも長けているという事だ。古代の遺産を恐らくは大量に隠し持っているに違いない』
『はい。自分もそう思います。我らに劣るとはいえ、楽園の最精鋭を墜としたのが辺境の英雄ならば、もはや断崖のアルマートは我らに近しい技術力と武装を備えていると考えるのが妥当でしょう』
『陸軍遠征は本国の負荷が著しく高い。衛星領域の幾つかに武装を融通し、多方面からの包囲作戦が現実的……しかし、衛星領域の戦力が動けば、周辺地域の諸勢力やセントラルの連中に隙を見せる事になる』
『実際、【破棄の楽園】を半壊させたとはいえ、未だ本国を墜としたわけではありません。しばらくは大人しいでしょうが、他勢力が併呑に動けば、こちらも牽制しなければなりません』
『議会は頷かんだろうな。本当に落としてくれるとは……彼程の男がまさか時代遅れの魔法に傾倒するとは思わなかったというのも本音だ』
『今更神秘に頼らねばならなくなった時点であの男はもはや時代遅れ。狂っているのは明らかです。次の査定の時には彼も軍のリストから消えているでしょう』
『そうであればいいが……』
『それよりも本国の部隊を動かすのは……とてもではありませんが、議会で承認が下りるとは……』
『ならば、やはり衛星領域の者達を向かわせるのが妥当か。スチューデント・スーツの量産は?』
『現在、20着からの増産を完了させております』
『本国の護りにソレらは当てよう。近日、次の増産が完了すると報告のあった10着と武装を衛星領域の部隊に配備する。各地から運用者を選定しておけ』
『了解致しました。議長』
『あの狂人はさぞかし笑いが止まらんだろうな……』
『彼をまだお使いになるつもりですか?』
『約束は約束だ。軍も厄介者を辺境に当てたいと考えている者は多い。衛星領域出の有能な指揮官……本国防衛の最前線では要らぬ人材という事だ』
『では、指揮は彼に?』
『ああ、内々に通達しておけ。約束は守ったとな』
『了解致しました。それにしてもアドンの庵を墜とすなど……セントラルの小国を墜とすのとは訳が違うというのに……これも辺境の英雄の力という事か』
『嘗てより、古代人達が勢力を起こす事は多かった。辺境の大英雄。反逆のガラークもまたその一人という事だろう』
『議長、今回の侵攻が失敗した場合、どうなされますか?』
『これ以上の犠牲は看過出来ん。その場合は辺境勢力の活用に重点を置いて、他の古代遺跡の発掘地点を割り出せ。時間はまだある』
『了解致しました。他遺跡の割り出しを進めます』
『辺境統合の夢は断たれた。だが、時間はある。時間はまだ……』
『議長……』
『断崖のアルマートの扱いをセントラル基準に再設定。リソースの確保として住民達への“ライフリンク・ポイント”の臨時徴収を行え』
『よろしいのですか?』
『今は非常時だ。破棄の楽園が主張していた地域への進軍は済んでいる』
『まさか、彼が本当に中枢の撃滅を成功させるとは思いませんでした』
『今の戦勝気分なら住民も財布を開くだろう。資源開発の為の初期投資だと説明しろ。資源をスチューデント・スーツの増産に割り振れ。武装よりも兵士の数を優先だ。各地への配備で戦力を刷新し、何れ再び挑もう』
『挑む……我々が? 辺境に?』
『心躍るだろう? セントラル最大の勢力となった我らにまだ挑める相手がいるなんて誰に想像出来た』
『……かもしれません』
『それと外交官を派遣する準備だ。アルマートに遺体と武装の公式な返還要請を。外貨準備の1割までを使ってもいい。チャンネルを繋いでおけ』
『初めての事例となりますね。恐らく、セントラルが引っ繰り返るような騒ぎになりますよ?』
『ちょっかいを出す勢力は放置しておけ。それで潰れるようなら、我らが間抜けだったという事だ』
『はッ、直ちに掛かります!!』
『(古代人の新勢力台頭……断崖のアルマート……対空兵装……アドンの庵の壊滅……仮にも連中は宙の勢力だ。このまま黙って見ている事はあるまい……さぁ、お前は乗り切れるのか? その大仰な名を辺境の……いや、大陸の歴史に刻めるか? 反逆のガラーク……)』
*
『ハチミチがッッッ!!?』
『無いんだよッッッ!!?』
『どうにかしておくれッッッ!!?』
デデドンッ。
魔法使い(どう見ても妖しくてケバイ魔女)の三人。
ビオネ・ガオネ・グアネのおばさんズの顔デカ圧力によって古代遺跡の真実に迫る冒険(番組は収録されませんでした)は中止になっていた。
ハチミツなんて何に使うんだよという顔になったのは間違いない。
曰く、魔法使いの秘薬、各種魔法の体系で多くの薬には基本的にハチミチが使われているらしい。
それも特定の草花や樹木が育っている場所のものが指定される事が多いのだとか。
そして、現在魔法使いの研究……要は秘薬開発で様々な薬効を抽出出来る草木のみならず、細菌やウィルスを培養中らしいのだが、ソレが一番育つ苗床……要はシャーレや培養器に使うのもハチミツを使った合成薬との事。
「いやぁ、わらしも好きですにゃ。ハチミツ」
“せんにゃ”の男、中尉。
白髪の青年が簡素な衣服と擦り切れたパッチワークだらけのデニム地のズボンとボロボロなシャツ一枚で車両の最中、ウンウン頷いていた。
先日、回収されたハイエナの男達から頂戴した車両は恐竜さんとのドンパチでスクラップになったが、ミスティークが船で注文してくれていたらしく。
ゾンビ関連のゴタゴタ中に届いた車両が猫の城にやって来た。
それでさっそくお仕事になったのである。
殆ど前と変わらない軍用車両に牽引される幌付きの台車が一台でそれなりの金額になっていたが、先日持って返った重火器が武装の量産には丁度良さそうな研究資材であり、辺境中に武器が売れそうだから問題無いらしい。
「それにしても医者が見つかって良かったですにゃ~」
中尉がウンウンと何か美人さんな女医(完全にロイヤーちゃんという名称になった)を思い浮かべているらしく。
のほほんとした笑みを浮かべる。
お前が思い浮かべてるのは幻覚で造られた邪神のアバターだけどなという言葉は呑み込んでおく。
「大尉からは『い、いぎだいにゃ~~あぁああぁあ、いがしぇるにゃぁ~~!!?』との事でしたが、他の者達に止められて、戦後処理中ですにゃ」
「ま、まぁ、あいつも疲れてるだろうし、ゆっくり現場指揮でもしてて貰おう」
実際、止にゃいでぇ~~と他の猫達が数十人乗って止められていた姿は完全に職務放棄したい管理職である。
車両を奔らせながら目的地を目指す。
先日の地下遺跡の近くだ。
丁度山が幾つか連なる地域の麓にはちょっとした森林が広がっていた。
殆どが低木で枯れ木な上に300m程だろう。
途中、ゾンビとなった恐竜サンの残骸跡地を見に行ったが、綺麗さっぱりほぼ全ての金属細胞塊が無くなっていた。
「それにしても私で良かったんですか? ガラークさん」
「ああ、魔法の事はそんな詳しくないからな。スミャーナに任せる」
「ス、スミャーナじゃありません!? スミヤナですぅ!!?」
思わずムギャーと攻撃するカワイイ生物が背後に載っていた。
「む、すみゃ、す、すみゃ~~~」
何とか言い直そうとした中尉であるが、出来ずにへにゃっとダメみたいですみたいな顔でこちらを見ていたので治らないらしい。
「ぅぅぅ……いつの間にか。町中で何か前から知っている人以外はスミャーナって呼ばれてる気が……」
「まぁ……頑張れ(^ω^)」
「うわぁああん!? 絶対、どうでもいいと思ってる顔ですよソレぇ~~!!?」
そんなこんな騒がしい車両で低木の山林の入り口までガヤガヤやっているとようやく辿り付いた。
外に出て中尉の偵察させている間に土を僅かに確認する。
『いいか~~地質学のポイントは基本的に名前を覚える事だ』
振り返る事もなく。
もう死んだ上官……軍曹の声を聴いた気がした。
「あの人から地形の見方を教えて貰ったっけ。元々地質学専攻の食えない助教授だったって……ホント、何でも教えて貰ってばっかだな。オレ」
言ってる傍から把握した地表には低木の枯れ木の他にも複数の獣の足跡。
しかし、地面の殆どが枯れ葉らしいものが無く。
単純に低木すらも慢性的な不健康な状態なのが見て分かった。
「こんなとこに本当に蜂なんているのか?」
「え? あ、ああ、ガラークさんは知らないんですよね。辺境の蟲ってほら大きいじゃないですか」
多少、引き攣った笑みでスミヤナがそう頬を掻く。
「ああ、そう言えば、この間の収穫は……地獄だったな。うん……いや、見てただけだけど」
「あはは……今年は皆さんのおかげで街の人達の活動が滞らなかったって、何処でも感謝されてましたよ?」
「まぁ、仕事だからな」
「えっとですね。この周辺は樹木の根が大きい資源なんです」
「根っこ?」
「はい。あの格安のお砂糖あるじゃないです。アレの原材料なんです。それで蜂もでっかくて、その根から蜜を取って地下の巣穴に溜め込むんですよ」
「へぇ~~どれくらいの大きさなんだ?」
「ん~~1mから3mくらいでしょうか? あ、女王蜂は7mくらいで、地下の広大な巣穴を掘る蟲でもあるのでシャベルみたいな腕が付いてるんですよ」
「ほうほう? 獰猛なの?」
「はい。実際、辺境の業者が毎年何人か死ぬので。でも、かなり儲かるので毎年新しい転職者が後を絶たないので困ってませんね」
「ふ~~ん。ちなみに気を付ける事は?」
「蜂を怒らせない事ですかね……追い掛けられると上空まで飛び上がって、破裂式の針を打ち込んで来るんです。それがまた太くて、半径2cmくらいあって、罅割れる石英の槍みたいな感じなんですけど、お尻から発射されると散弾みたいに鋭い破片になって襲って来て……」
「ちなみに当たると?」
「死にますよ(ケロリ)」
良い笑顔で即答であった。
恐らくは毒がたっぷりなのだろう。
「つまり、あんな感じ?」
『にゃぁ~~~わらしはただちょっとハチミツを手に取って舐めただけですにゃぁ~~~』
「はい。地表に漏出している蜜も外で働く蜂達の食事処なのでテリトリーに入って来た獲物は樹木の養分にする為に積極的に襲って………\(^o^)/」
顔が引き攣っていくスミヤナと共にすぐ傍の車両に飛び乗り。
そのまま出発。
「ちょ、置いてくにゃんて酷いですにゃぁああああ~~~」
どうせ追い付くだろと控えめ走行にしていたら、ダンッと前とほぼ同じ軍用車両の後ろの幌付き牽引車両の屋根に着地音。
「うぅぅぅ、わらし、悪くない、悪いのアイツラ」
「スミヤナ。悪いんだが、後ろに置いてある武装を窓開けて天井からあいつに渡してやってくれ」
「は、は~い……うぅぅぅ、お母さん。おばあちゃん。ひいばあちゃん。。先立つ不孝をお許しください(/o\)」
ブンッと天井の窓を開けて、上半身を屋根の上に出してスミヤナが銃器を投げた。
さっそくアサルトライフル形態になったキメラティック・アームドをガッチリキャッチした中尉である。
「ふぉおおおおおおおおおおおおお!!!! 体の気がすわりぇていきましゅにゃ~~~」
「ヘロヘロになるの早過ぎだろ」
魔法使いは便利なエネルギー源だ。そして、認証さえしてしまえば、当人がスチューデント・スーツを着込んでいなくても、それに近しい電力源を持っている限り、ソレを勝手に吸収する。
元々がオーパーツ染みたオーバーテック気味の武装なのであり、事実上のゲーム内のエンドコンテンツの入り口にある代物なのでかなり融通は利くのだ。
今回、重火器の方を博士達のおかげで内部のプログラムから何から弄れるようになったおかげで【仙術】に使われているMPの亜種のステータスである“気”を電力変換して使う事に成功した。
ゾンビを叩き潰した後に恐竜さんの細胞でちょっと加工した外付けのコンバーターを機関部に取り付けるだけの簡単なお仕事である。
単純にグリップ式のソレ自体が生体金属細胞で造られており、片手で機関部横のグリップを握りながら引き金を引くというスタイルで電力代わりに気をエネルギーとして吸収返還、そのままレーザーとして銃口から打ち出す方式となった。
げっそりした中尉が撃ちまくる後方の上空には次々にバカデカい蜂=サンの群れがブンブンしており、次々に至近弾で針の弾幕が追い掛けて来る。
「ひぇ……Σ(・ω・ノ)ノ!」
スミヤナが思わず車両内部に戻って来て、すぐに窓を閉める。
その間にも後方の地面が剣山染みた様子になっていく。
「ちなみにあいつらの弱点て分かるか?」
「弱点? ええと、ええと……あ、お砂糖の樹木が主食ですけど肉食も行けるので死体に毒を入れて放置しておくとかです。ちなみに駆除業者さんはレイダーとか略奪者とかの遺体引き取り業も兼任してて、蜂の駆除に毒薬付けにした死体を使ってるってお母さんが言ってました」
「……あのさぁ」
「?」
「それハチミツに毒が混じらない?」
「やだなぁ♪ ちゃんと、ハチミツは水で薄めて何回か蒸留しますよ~~。その毒用のフィルターもちゃんと使います♪ 悪徳業者だと蒸留回数ケチるらしいですけど、それが分かったらヒットマン雇われちゃうらしいですし」
「へ、へぇ……さ、さすが辺境。ワイルドだな」
どうやら死体が混ざるハチミツは普通らしい。
「ごしゅりぃん。もううてまひぇん(´ー`)」
中尉が完全にスーパー賢者タイムに突入した様子でヘロヘロしながら牽引車両から後方の扉を開けて内部に避難してくる。
「いや、頑張ってるのは認めるよ? 認めるけども……何匹減らした?」
「もうしわけにゃく~~~ゼロでひゅヽ(^o^)丿」
「デスヨネー(´・ω・`)」
ミラーを見れば、一目瞭然、ちょっと焦げた程度の蜂はまるで猛牛染みて更に怒っている様子であり、一匹も落ちていない。
というか、数がドンドン増えており、数百匹じゃ効かないだろう空を埋め尽くす大軍に変貌し始めていた。
どうやら貫通する程の出力が気では得られなかったらしい。
「はにゃぁあぁあぁ~~」
ペタッと後部座席に寝込み。
ちゃっかり、スミヤナの膝を枕にする周到な猫である。
女の子の声でもあるまいし、思わずジト目になるのも仕方ないだろう。
「はぁぁぁ(*´Д`) 蜂=サン強過ぎ問題か……ウチの猫より強いとか。駆除業者が死ぬのもさもありなん。煙で燻すとかどう?」
「焚火でもするんですか? 豪勢な話になりますし、樹木は砂糖資源なのでお勧めしません。蜂は枯らさずにチューチューしてますけど、人間は切って掘り起こして煮て絞るとかになっちゃうので」
「ああ、樹木もここら辺だと貴重品なのか。殆ど石か陶器製だもんな。生活用品」
「ええ、木製の備え付けじゃない家具は貴重品で女の子の憧れの品ですね。ぅぅぅ……それも、もう買えませんけど!! お母さぁあああん!!?」
魔法少女が滅茶苦茶涙目で瞳をウルウルさせていた。
「分かった!? 分かったから……あ~~仕方ない。あそこ行くかぁ!!」
車両を急加速させる。
「ど、何処に行くんですか!? 蜂は執念深いので地下に行ったって追い掛けて来ますよ!?」
「お、マジで~~(≧◇≦)!?? いい事聞いちゃったな!! じゃ、此処最近大尉が偵察して作ってた地図も貰って来たし、行っちゃいますか!!」
「何処に?」
パリーンとサイドミラーがバカデカ針によって貫かれた。
「みょーおーがいる場所さ( ̄▽ ̄)」
そういう事になった。
―――30分後。
ブォオオオオオオオオオオオオオオオオオ。
バキューン、バキューン。
ドカ、バリ、グシャ、ボカァアアアアアン。
みたいな擬音が響きそうな先日見付けた地下遺跡。
もとい、過去の地下商業モールの一角。
地表から大挙して押し寄せて来た巨大蜂VS不動明王の一戦は正しく天変地異でも上で起きてるんじゃないかというくらいの激しさで戦場が地表へと向かって移動していく様子であった。
「おお、やってるやってる。入り口があれば、執念深く入って来るなら、鉢合わせるよな。絶対……」
ちょっとだけ双眼鏡で遠くの通路から覗いたら、重火器と武器弾薬を消耗しながらも、次々に蜂を撃ち倒す汎用多脚自走防衛AIドローン【MYOU‐OU】が大軍を相手に一歩も引けを取らずに徐々に敵軍を単騎で駆逐し、押し返していた。
銃弾の音が途切れてもレーザーで対応しているらしく。
上からは肉が焼けるジュワァアアアッという音と共に大量の蜂の死骸がモール最下層へボドドドドッと雨のように降り墜ちて来ている。
「な、ななな、何ですかアレぇええ!?」
「しっ、声が大きい!!? アレ、音響センサもヤバイから、静かにな?」
「う、うぅぅぅ、いきなり車両が止められる地下施設に突っ込んで、そこから降りてシャッター閉めて、遺跡の部屋に入って隠れるとか言い出したら、遂に諦めたものかと」
「諦めねぇよ?! この程度じゃ!! 一番ヤバイ案件諦めたばっかだよオレ( ゜Д゜)」
「は、はぁ? そうですか。それは何だか聞いちゃいけないような気がするので聞きませんけど、それにしてもアレ……何なんです? 見た事無いですけど、機械ですよね?」
「ああ、ちょっとした機械だ。ちょっとしたな」
「アレでちょっとした、なんですか?」
「そりゃそうだろ。昔はアレが大量生産大量消費されてたしな」
「ひぅ!?(´Д`) 古代コワイ……」
「へにゃぁ~~~(*´▽`*)」
「お前はいつまで膝枕されてるつもりなんだ? 起きろ!!」
「ふにゃ?!! なーんか、調子が戻りませんにゃー」
首根っこを引っ掴んで美少女の膝枕を堪能していた中尉を起こす。
「お前も良い歳なんだから、ちょっとは働け。ガハッ?!!」
「え? 今何で吐血したみたいな仕草になったんですか!?」
「お、おぅ。ちょっと、思うところがあってな……」
スミヤナを前に口元を拭う。
ぶっちゃけ、此処に来る前の仕事はいつ解雇されてもおかしくない非正規雇用の土建業最底辺であり、そろそろ会社が潰れそうだから、休職中は失業手当でのんびりしようと思っていた人である。
「それでどういたしましょうかにゃ~?」
「重火器の販売店がある。地表の出入口のシャッターは閉めてあるから、別の場所から入った蜂さんなわけだが、それの開け閉めが可能なら、その間は車両は無事なわけだ」
「ほうほう?」
「詰め込めるだけ弾薬と重火器を積んでくれ。位置はさっき通って来たところだ。ホント、先日からもう一度此処に来てマッピングしてた大尉くらいは働いた方がいいぞ?」
「そ、そのこころは?」
「お前を見てる他の猫共の瞳が『コイツ、だめにゃね……(`・ω・´)』みたいなもんになってたぞ。主に今日」
「きょう!!?」
「いや、十分に働いてはいるんだぞ? でも、ほら、お前……あの大尉と比べられてるから。管理職なのに何で大尉より働いてないの? って感じなんだろ」
「しょんにゃぁぁぁぁ(ノД`)・゜・。」
「優秀な上司を持つ管理職の悲哀を是非噛み締めてくれ」
「大尉優秀過ぎ問題にゃぁぁ~~~~(´Д`)」
走っていく中尉がうわ~んと重火器を集めに後方の部屋の外に消えていく。
「さてと、オレもやるかぁ」
「あ、あのぉ? 何をでしょうか?」
「ん? ああ、元々、あのドローンは別の勢力か野生動物でも大量にぶつけて処理しようと思ってたんだよ」
「あ、ああ、それでこんな逃げ場の無い地下に……」
「今回は非常に強くて数も多くてかなり的として優秀な蜂=サンが時間と弾薬を溶かしてくれてるから、この合間にあのドローンの根城に向かう」
「そのぉ……私は?」
「勿論、付いて来てくれ。というか、此処ゾンビ出るから」
店舗の裏側。
この大騒動で起き出したらしい後ろの壁の一部が開いて、店舗のバックヤードから溢れた1体をサプレッサー付きのガバメントで打ち抜く。
恐らく、地表まで出ていった相手である。
戻って来るまで聞こえてもいないだろう。
先日、大量にかっぱらって来た重火器の一部だが、基本的にサプレッサーは音よりもマズルフラッシュのような光を押さえる装備だ。。
「ひ!?」
思わず振り返った彼女が撃ち倒されたゾンビを背後に硬直し、背後から数体が出て来るのに涙目でこちらの背後に隠れる。
「さ、お仕事開始だ」
こうして拳銃片手に普通のゾンビの弱さをシミジミとありがたく思いながら前に明王がやって来た通路に二人で向かうのだった。
―――7分後。
「ス、スゴ……広ッ、デカッ、箱が一杯!!?」
スミヤナが驚くのも無理はない。
ドローンが護っているのだろう場所は明らかに店舗毎に配送する前の品を詰めたコンテナがギッチリ積まれた倉庫であった。
コンテナの殆どは埃すら被っていない。
何せ倉庫が頑丈過ぎて一切外部からの影響を受けていないのだ。
僅かにコンテナには錆びが浮いているところもあるが、殆どのコンテナはその程度の経年劣化であり、恐らくは内部のモノの方がダメになっている事だろう。
(このコンテナ……商売系MOD【マーチャント・シップ】のヤツか)
大きな銀色の丸型に四方から伸びた腕にお札と金貨と銃と小さなカプセルが夫々に握らされているという象形はMOD商品特有のコンテナ配送の時によく見掛けた代物だ。
MOD最大の特徴は空飛ぶSF船や宇宙の小惑星を改装し、その力で各地を渡り歩くものであり、商売をやりながら世界中のNPCと協力関係を結んで大勢力を築き上げ、来る破滅(中盤から終盤の勢力)と戦う組織力と軍隊を作り上げるというものだ。
勿論、商品の企画立案から研究開発、資材の加工、加工の為の工場建設まで幅広くやる事が多くて一部の人間にはゲームですらリアル仕事と同じ事をやらされるのかとか言われるくらいにリアル準拠らしかったが、基本的に難しい業務はNPCに丸投げ出来るので有料だったのにかなりの人気を博していた。
「行くぞ~~開けるのは後だぁ~~」
「は、は~~い」
スミヤナをすぐ横に呼び戻して、そのまま一緒に奥に走る。
すると、やはり有ったと顔がニンマリした。
「コレ、なんです?」
スミヤナが小首を傾げる。
目の前にあるのは大きなポット型のドローン整備設備。
「ああ、あの明王=サンのメンテナンス・ポットだ」
すぐ傍のパネルを開いてメニューを確認。
すると、ディスプレイからホログラムが立ち上がり、リンクされた機体の現状と必要な資材の自動収集セット機能が稼働している事が分かった。
ポットには確かに後方に複数の小さな輸送ドローンがウロチョロしており、必要なメンテ資材を倉庫内から集めて来る様子が見て取れる。
四角い箱型なのだが、複数機が集まる事で大きなコンテナの移動やコンテナの開封、他にも様々な多機能な雑用性能がある代物だ。
「は~い。認証機能は無いですね~~過去の管理者サンは随分と労働にうんざりした方だったみたいですね~~~うんうん、そうだよね~~認証機能を多重ロックに使うクソ仕様なんて仕事じゃやってられないよねぇ~~クソ長パスワードなんて管理用の機材に書き込んじゃうよねぇ~~( ^ω^ )」
パネルに何か刃物で刻まれていたらしきコードを入力。
管理者権限で必要な変更を加えまくっていく。
「在庫は……マジかよ。消耗品の弾丸以外は12ダースもあるの? 全品質EXの明王が12ダース? 事実上、この時点で中盤勢力と殴り合えるとか……」
「あの~~ガラークさん」
「ん? 何だ?」
「い、入り口の方から何かガシャンガシャンて音が……」
「おう。すぐに隠れるぞ」
「は、はい」
必要な操作を全て終えて、そのまま大量のコンテナの裏に隠れる。
すると、倉庫内に車輪も使わずに戻って来たボロボロの明王がすぐにポットに接続し、装甲のロックを解除、ボロボロの外装が全て取り払われると内部構造の負荷が掛かって耐久が一定摩耗した部品が小さなメンテ用サブアームが大量に出て来て外されたり、補修されて、交換されたりして、機体の冷却と排熱、ジェネレーターの充電が始まる。
平行してフレームが完治すると装甲が再び接続されるが、こちらの変更によって大幅に装甲が増設され、足回りの四脚に更に2脚分が追加。
ポットが変形して、下方が垂直に折れ曲がり、その地表部分から胴体部分後方に乗り込み用の大型カーゴが接続される。
「ぇぇぇぇ?!」
カーゴと言っても人2人分の席がある完全密閉型で更にジェネレーターが乗っている代物だ。
湾曲した卵を横にしたような外殻内部には様々な宇宙テック基準の操縦席と生命維持装置が積み込まれており、フルレンジ、フルスクリーン対応。
更に卵型の外殻の上に複数の追加装甲が被せられ、装甲の隙間を移動する複数の重火器。
白い長方形のスモール・レーザー掃射機が6台設置され、機体後方はほぼ乗り物と化した。
実際には小さな宇宙船と言ってもいいだろう。
「な、なん、なんですかぁ。アレぇ……?」
推進機が無くドローンの自走式なので速度はそんなに出ないが、地表を移動するならば、ほぼ問題なく動けるはずだ。
サイドブーストと呼ばれる左右に小型の電気駆動式のラムジェット推進機関も搭載したので対空や一時の空への加速は可能な範囲。
最終的に明王は蜘蛛型の巨大な鋼の機獣のようなものへと変貌を遂げていた。
両腕、腹部、頸部、関節部を覆う追加装甲は最重量級の防御力重視。
背部のサブアームの武装は全てレーザー照射機に切り替え。
レーザーブレードは短距離用に出力を増加。
燃費の悪いパルスライフルは近距離に近付かれた際の散弾のような近距離広範囲攻撃仕様で2門を肩に装備させ、そのパラボラアンテナを複数束ねて一本の棒にしたような大きさからしてほぼ砲塔みたいなものだろう。
全ての工作が終了すると、ドシュゥゥゥッと白い煙を吐きながら後方の新しい胴体部の座席が横合いからハッチが開閉。
「あ、あのぅ? ガラークさん。何か、トンデモナイものの入り口が開いたんですけど」
「おう。ちょっと蜂サンの大軍相手に試験走行するか?」
「シケン・ソウコウ?」
「あ、ちなみにコイツにはさっき、短距離跳躍用のサイドブーストを取り付けてある。500m20秒までは上昇出来る仕様だ」
「あ、はい。もういいですぅ……ま、魔法使い止めようかなぁ……」
「いや、つーか、魔法使い滅茶苦茶今回頑張ってるからな? というか、マジで有難い事しか無かったし、感謝してる」
「え?」
「だって、ほら。ネズミーが全部道中駆除されたし!!」
「あ、ああ、そう言えば……途中、大量のネズミさんがいましたもんね。私のネズミを燃やす結界魔術で炭になってましたけど」
「オレ人間だから、アレヤバイ、即死」
思わず片言になりそうなくらいのヤバさである。
「あれ? もしかして、私を此処まで同行させたのって……」
「ネズミーと追いかけっこはもう嫌なんだ。マジで死ぬから!!」
「うわ~~ん。完全にネズミ対策だぁああああ!!?」
だが、そうしないと本当にうっかりで死に掛ねないので偉大なる功績だろう。
「まぁまぁ、今日は特等席でゆっくりしてってくれ」
スミヤナを早速一番後ろのサブシートまで連れてって押し込んで自分はメインシートに座って、ハッチを手動で閉じる。
「う……襲って来なかったし、本当にガラークさんのものになっちゃったんですね。この機械」
「まぁ、商品だからな。初期登録が販売前の管理者になってたから、近場のスーツを購入者設定して、最初期登録し直しただけだ」
「スーツ。あ、そう言えば、ガラークさんの服の下に猫ちゃん達が時々着込んでるヤツが……」
「ああ、これにもマジで感謝しかない……ほぼ定量とはいえ、電力無限に溜め込んで無限に供給出来るからな。っと、フィックス機構の動作完了」
機体の各所で二人乗りのカーゴを追加した際の重量バランスの調整や細かい機材の位置などがAI式の調整で微細変更が完了した。
ガチュンッと追加装甲が引き締まるようにして隙間を可能な限り埋めて、火器移動用の接続部位が動く時以外は装甲を閉じる動作がパカパカ追加確認され、問題無しと判断される。
「よし!! じゃ、恐らく倒し切れてない蜂サンの駆除に出発だ!!」
今まで薄暗かった卵型の壁面が全て外界を360度映し出す全天モニター化する。
正面ウィンドウが開くと名称指定確認があった。
「じゃ、適当に明王号でいいか」
「あの~~~何かブゥゥゥゥンて聞こえません?」
外部のセンサーが音を拾っていた。
「さすがに倒し切れずに撤退したから、追って来たのか」
次々に開きっ放しの扉の先から蜂達が雪崩れ込んで、巨大な倉庫内の上空に展開し。
「明王号発進。ムーブムーブ。コンテナに当てるなよ?」
グボオオンとバケツ頭のメインカメラが光った、ような気がした。
猛烈な加速で急発進した機影がさっそく壁走りだとばかりに壁をマグネット式で張り付きながら装甲し、天井に到達、次々に全てのレーザー火器による迎撃を開始する。
「うぇええええ?!! き、きぼぢわどぅいよぅ?!!」
完全に三半規管をやられた様子で髪の毛を逆さまにしながらシートの自動ベルト機能で固定化されつつ、スミヤナが口元が抑える。
「その内、慣れる」
「なれまふぇんよぉ?!! うっ」
次々に襲い来る針を機動で回避しながら、レーザーによって頭部、胴体、尻尾を正確無比に撃ち抜いていくレーザー掃射で倉庫内が掃討され、更に地表に垂直にクルンと胴体を引っ繰り返して着地した明王号が更にやって来る敵を通路内で駆除しながら吹き抜け部分の縦穴に出た。
すると、そこには5m級の更にデカイ蜂サンが複数体いる。
「あ、あれ!? 女王の近衛蜂ですよぉ!? え!? 女王出撃してるの!!?」
と、彼女が驚いているとドガァアアッとモールの一角にある中層階の壁が吹き飛んだ。
その内部からヌッと姿を露わにしたのは他の蜂と違って巨大な人型の腕を持つ何か……まるでオケラのような腕と凶悪な面構えの蛇みたいに上半身を伸ばして帷子染みた滑る放射性物質っぽい色彩のメタルな多重装甲で顔を隠し、こちらを見やるソレは明らかに女王の風格であった。
「えぇえええええ!!? 女王蜂!!? アレ!? もしかして、この場所が新しい巣に選定されちゃった!?」
言ってる傍から大量のレーザーとレーザーブレードが乱舞し、次々に蜂達の針を回避しながら敵精鋭を焼き切っていく。
それにギュジャァアアアアアアアアアッみたいな叫びを挙げた蜂の女王というよりはオケラと蜂と人型の融合個体みたいなソレが大量の液体を口から噴射。
咄嗟に上空に逃げるよう指示出しすると少し機体の装甲に飛沫が掛かったようだったが、シュウッと煙を上げた。
明らかに色々腐食させそうな液体だ。
「あ、ま、まだこんなに沢山……」
地表にすぐ着地するとすぐに大量の蜂達がお出迎えし、地下からオケラのような腕で大穴からドカッと飛び出した女王蜂がそのまま上空へと飛び上がる。
下半身がボムッと膨らむと蜂っぽいが、膨らむ前は蛇のような感じだったので肉体の可変機能まで付いているという事だろう。
(ホント、物理演算効いてるはずなのに飛んでるって事はこいつら重力干渉資源のグラビティ・オニキス含んでるな……)
ヘブンはSFなので基本的に半重力装置みたいなのがしっかり存在する。
ついでに1Gを生み出せる機械もある。
その資源となっているのは重力干渉の媒体となるグラビティ・オニキスと呼ばれる超重元素資源だ。
これらを含んでいると明らかに飛べないものが飛んでいるという状況に説明が付くようになる。
「殲滅だ。明王号」
開けた場所に出た事で全てのレーザー照射機が照準。
地表を爆走しながら、猛烈な光の雨を上空に打ち出していく。
近付いて来るものは砲塔染みたパルスガン……いや、カノンと言うべきだろうか。
大量の電磁波、極短波の強力な放射で一瞬で焼き蜂になっていく。
次々に墜ちていく蜂達が猛烈な対空砲火にも関わらず突撃し、地表に当たった瞬間、ボカァアンッと大きく破裂した。
その際に跳んだ飛沫が今度は地表の草を溶かしていく。
「こっちも腐食するのかよ!?」
蜘蛛型の車輪走行な明王号であるが、車輪がダメになったら速度はガタ落ちになってしまう。
次々に自爆突撃を繰り返す蜂達の猛攻はゆっくりとだが、確実に減っていた。
だが―――。
「ガラークさぁん!!? あれぇ!!? あれぇ!!?」
ガクブルしながら、血の気が引いたスミヤナが指差す方角を見やる。
複数の女王蜂と大量の蜂達が雲霞の如く攻め寄せて来ていた。
「オイオイ。マジかよ……」
さすがに車両型に換装した明王号1機ではまず倒すのに連続戦闘で数日は掛かる数であった。
「どうする? いや、仕方ないな……」
此処で蜂の死骸で遺跡が埋まると今後の勢力運営に支障が出るのは間違いない。
「後は適当にやっててくれ。コイツに基本戦闘は任せて、後は指示出しすれば、その通りにしてくれるから」
「え、あ、や、ちょ―――ガラァクサアアアアアン」
ハッチを手動開閉して、そのまま座席から外に跳ぶ。
そして、ハッチは自動でボシュリと閉まった。
基本的なスチューデント・スーツの性能があれば、レベル1だろうが多少の動きくらいはプレイヤーにはお茶の子さいさいである。
即座に着地して立ち上がる。
「はぁぁ(*´Д`)」
『あらあら? お困りかしら?』
「困ってません( ゜Д゜)!! 困ってないから話し掛けて来るな!! というか、見てるのかよ!!?」
脳裏に邪神の声が響く。
『しょうがありませんわねぇ……うふふ。あ、回復薬100ダース出来ましたわよ~~え? 治癒剤? 何でもいいですわ。あらあら? 猫ちゃん達、わたくしに昼食を? 良い子でちゅね~~お~よちよち』
「人んちの猫を篭絡するなぁあああああ(ノД`)・゜・。」
通信というか念話っぽいものが切れる。
早く帰らないと拠点が邪神に占拠されてしまう。
「クソォ……範囲外アクセスや未定義動作込々で造ってたからなぁ……機能自体動くかどうか。ああ、もうどうにでもなーれ(・ω・)ノ」
切り札を切ろうとした時だった。
「うん?」
何か上空に違和感を感じて見上げると遥か上空から何か流れ星が4つ。
綺麗に此処に向かって落ちて来る。
『ふぉっふぉっふぉ、AI使うと落ちて来るんじゃよ』
『うむ。その通り』
『では、よろしく』
という脳内三博士の良い笑みがフラッシュバックする。
「何も準備出来てねぇえええええええええ!!?」
もし、自分が眼鏡キャラだったならパリーンと衝撃で割れているだろう。
【イエーガー】
正しく、何か高度なAI使うと落ちて来ると噂のヤツ。
それが滅茶苦茶高速で落ちて来た。
迅速か!!
と、突っ込みを入れる前に落着。
滅茶苦茶な数の蜂サンが上空からの襲撃者を見付けて、地表にマッハ30近い速度で衝突した時の大気の唸りと爆発に怯む事なく突撃していく。
途中、明王号が妙に大人しくなったのは恐らく様子を見ようとスミヤナが言ったからだろう。
きっと『((((;゜Д゜))))』状態で“何か降って来たぁあああっ!!?”てリアクションをしているに違いない。
『何か降って来たぁあああああああああ!!?((((;゜Д゜))))』
これは近場にいたら、危ないですねと明王号に手を振るとすぐに近くに来て、そのまま駆け抜け様に回収してくれた。
「スミヤナ!! このまま地下の方へ!!」
『は、はい~~』
外部スピーカーからの声ですぐに明王号のサブアームに掴まれながら再びモール内の大穴に飛び込んでいくと。
地表での恐ろしい激音が滅茶苦茶飛び込んで来る。
一応、明王号のオプションで配置型のカメラ付きのセンサーを置いていたので小さな丸型のソレが地表を全天光学カメラで映し出すとすぐに映像を整理。
下りて来た最下層の一角でホログラムが映し出される。
「やっぱり、魔法使い止めようかなぁ……(。´・ω・)」
「頑張れ~~~蜂=サン(/・ω・)/ 負けるなイエーガ~(>_<)」
正しく怪獣大決戦が始まってしまっていた。
荒野の最中。
蜂の巨群VS四体のイエーガーによる大攻防戦である。
ドローンとはいえ、それでも3mから7m程度とソレらは大型であり、普通の生物相手ならば無双出来る代物だ。
巨大な熱量を全身から放射し、頭頂部の砲塔から打ち出す四脚型イエーガーによって蜂達が焼き殺されているかと思えば、巨大な放電現象を起こす突起を複数持った寸胴型なイエーガーが雷撃を玉状にして巨大な個体を薙ぎ払い、感電させて身動きを封じていく。
だが、イエーガーもまた大量の突撃してくる死体となった蜂さんの液体が蒸発した領域内部で猛烈な融解機能が発揮されたらしく。
「とけてーら(`・ω・)」
ドロドロと表面装甲が溶けていた。
電撃の束で攻撃し、結界染みた雷撃の檻が防御している間にも蜂達は仲間の死体を積み上げて檻の中に自分達の同胞を自殺志願者染みて投げ込みまくる。
正しく蜂スーサイダー的突撃風景。
そこに重力障壁や圧し潰しを行う見えない力の歪んだ攻撃を行っている浮遊する星型イエーガーがいれば、その歪みを突破する上空からの針の連射が次々にボロボロの装甲に突き刺さった。
「ああ、そうか。蜂は正しく天敵なのか。数、質量、突撃志向に融解能力と飛行に使ってる重力干渉物質で重力防御系の能力にも綻びが……ほうほう?( ^ω^ )」
だが、3体のイエーガーがボロボロになりながらも護っていた最後のイエーガー……見えなくなっていたものが姿を露わにしていく。
まるで脳みそだ。
人の脳みそにガワを被せたような形のソレは3m程の巨体をそのまま身動きさせることも無くジッとしていた。
融解能力のある血液が大気に混ざる事で透明化を維持出来なくなったのだ。
そうして、メンタル・イエーガーが姿を露わにした時、戦場が一変する。
ほぼ3体のイエーガーと相打ち状態で一面蜂の死骸だらけ、残っているのは少数(数百体)の精鋭蜂と女王だけという状態になりつつあったのだが、3体が機能停止したと思われる途端、包囲網を狭めていた蜂達が女王も含めて一斉に地表に墜落。
次々に藻掻きながら生命活動を停止していく。
「やっぱ、メンタル・イエーガーが近距離戦は最強か」
「メンタル・イエーガー……こ、これ一体何を……う、何か外から魔力っぽい波動が……あの脳みたいな形のヤツ。他の3体みたいに機械なの?」
「アレは精神干渉システムなんだ。有機物使ってるから、中身は他のイエーガーと違って脆くてな」
「そ、そうなんですか? と、言うか。詳しいですね。ガラークさん」
「昔、色々使ってたヤツの一つだからな。というか、攻撃力は無いが、相手が生物なら絶対負けないレベルの能力なんだよ」
「へ、へぇ……」
「何せ空間の歪みを情報として読み込んだり、出力する解析機能があってな。そのデータを電磁波に乗っけて相手の精神活動中の細胞構造や精神構造を空間の歪みとして認知して破壊……って分るか?」
「分かりませんし、分ったら何か嫌だなぁ……」
「ええと、攻撃された!!という情報を相手の心や脳に直接叩き込む感じなんだ」
「い、意味がよく……」
「要は同じ系統の防御技術が無いと絶対に防げない能力って事だ」
「な、なるほど」
「ついでに言うとこのスチューデント・スーツがそれに当る」
「おぉ!! つ、つまり?」
「普通に負ける!!」
負けるんかい!!?、と。
思わずスミヤナの腕がビスッと頭部に直撃する。
「ダメじゃないですか!?」
「いやぁ~~だって~~頭部防護用の装備まだ無いんだもん(^ω^)」
「無いんだもんじゃありませんよぅ!? ど、どうするんですかぁ!? 蜂が全滅しちゃったらアレが!?」
「ああ、それは問題無い。何故ならば」
「な、何故ならば?」
「あいつの能力が致死的になるのは凡そ100m圏内。どんなに品質EXだろうが、あいつの使う極短波の特殊な波動、電波の原理的な減衰距離だから広がらない」
メンタル・イエーガーが壊れたイエーガー達の周囲でウネウネと触手を地面の下から伸ばし始め、再起動と自己修復用のシステムを立ち上げていた。
「更に150m離れたら事実上は具合が悪くなる程度。1km以上離れたら殆ど能力が届かない上、システム的な部分は装甲が厚いと放熱やら何やらのせいでオーバーヒートするから、紙装甲……」
「つまり?!」
「あ、終わった」
ビスビスビスビスビスッと最後に残ったメンタル・イエーガーの装甲に穴が開いて破壊されていく。
遥か遠方からズダダダダァンと音が響いて来た。
「1kmは余裕なのか。さすが【仙術】……身体能力だけはめちゃ高いな。後、倒し方教えてないのに咄嗟にソレが出来るのはやっぱり認知能力や精神機能を拡張するからだよなぁ」
そういうステータスがかなり高くなるおかげでNPCが目覚める場合、倒し難くなるのは過去にも見ていた事であった。
「あ、中尉さんだ」
カメラ映像がズームすると中尉がかなり遠くから狙撃用の対物ライフル【7DTD】を打ち込んでいた。
グリップ付きの白銀の全容はかなり美しい代物だ。
18.2mmというトンデモサイズだが、炸薬がパウダー・バレットから液体炸薬へと世界中で変更された頃に出来た規格で事実上地平線付近まで飛ぶ事から現代では良く狙撃ドローンが使っていた。
現代ではジーニアス・バレットであるMVT信管と併用され、その射程距離は事実上ドローンの性能に比例して5kmから8kmとされるが、人間が使っても強いのは間違いない一品である。
ちょっと重いのが玉に傷だが、機関部が特別製で炸薬の反動を半分以上殺せる衝撃吸収機能とフルポリマー製の重火器の重量が極めて軽い事から連射出来るのが良いと競技目的で軍の狙撃大会ではよく使われていた。
良い笑顔のむさ苦しい陸自のおっさん達に並んで自分みたいなナヨナヨ・ボーイもやっていたが、システム側の調整が整っていても中々に難しいのだ。
「中尉さん!! 滅茶苦茶カッコイイですよ~~♪」
「良かったな。中尉。出番あって……(。-∀-)」
炎を噴き上げて、脳髄型ドローンはドローン焼きになっていくのを見届けると気持ち悪さが消えていった。
遠方でガッツポーズしている中尉がニャッホーと勝利の雄叫びを上げている。
「これで此処の物資を使いたい放題だな」
「あの……ガラークさん?」
「ん?」
「物資を使うには此処に回収用の作業場が必要なんですけど……アレ、どうするんですか?」
縦穴の最下層はミッチリと蜂の死骸や焼かれた遺体や灰、溶けた肉体がプール染みて大量に集まり、もはや毒の肉沼状態と化していた。
「ド、ドローンにやって貰えば……(^ω^)」
「そのドローンて、あの死骸に埋まった向こう側の通路ですよね?」
「はい。滅茶苦茶頑張って猫達も動員してやります……(ノД`)・゜・」
こうして毒沼と化したモールでの昼夜無き作業が開始される事になるのだった。
『―――勢力撃滅ポイントが一定数に達しました。勢力撃破報酬が配布されます。以下の内容から1つお選び下さい。1.研究開発効率300%。2.品質EXクワドラル・バスター・レーザーカノン。3.勢力Look.Lv.B-』
片付け終わるまでどれだけ掛かるか。
「ラックじゃなくてルック値かよ。何という引っ掛け。ホント……どうしてわざわざ普通に撃ったら自滅する武装が出るんだ( 一一) 1一択だろ。まったくさぁ……見た目が後から良く為ったら少女漫画の画風になるバグ仕様もう元に戻ってたか?」
「どうかしたんですか? ガラークさん」
「……何でもない。世の中はおかしな事だらけだと思っただけさ(^ω^)」
まだ、誰にもこの先の未来は分らないに違いなかった。




