第13話「人材募集とエロMOD」
「せ、切実にヤバイ……内政のターンをマジでやらないとミスティーきゅんという伴侶がいながら、滅茶苦茶浮気になってしまう」
おばさん魔法使い3人衆(紫色のビオネ・黄色のガオネ・緑のグアネ)=サンからの無理難題……辺境に医療を届けましょうクエストの発生であった。
選択肢なんて出て来なかったが、恐らくは何か選択はしたに違いない。
ゲームのような、ゲームじゃないような不思議な世界。
MODは存在しているが、違和感が拭い切れない世界。
そこで初めてのお使いクエストである。
「落ち着けオレ。ひっひっふー(^◇^)」
何とか落ち着きながら1日後の今日。
さっそく、自分の持てる手札で医療問題の解決へと動き出す事にした。
自室で褐色の再生紙にスミで色々と情報を整理する。
「魔法使いが産まれない。医療が死ぬ。このパターンを覆すには魔法使いを増やす。もしくはまともな医療を辺境に持ち込む必要がある」
カキカキと危ないおばさん達三人のデフォルメ・キャラの言い分と現状を書き記してみる。
「オレが持ってる情報的にMOD以外を頼る場合はセントラルの勢力の協力が必須だが、これは今のところ不可能」
条件が合いそうな勢力がそもそも選定されていないので仕方ないだろう。
「つまり、MODだ。オレにはそれしか手札が無い。地下遺跡に潜って古代の医療設備を掘り起こそうにもネズミさんのパレードにヤバイ・ドローンの警備付き。あそこに医療物資はあっても設備は無さそうだし……すぐに成果を得るにはMOD情報一択で何か案を出すしかない」
ブツブツ呟きつつ、精神を安定させて思考する。
「賢者の窯は売り払われた後。医療に使えそうな技術は今のところマシンナリーしかない。だが、アレは通常の医療の範疇を大きく超えてる」
実際、マシンナリーにしても病気にはなるのだ。
「みんなマシンナリー化するのは現実的じゃない。医療MOD? いや、この際、どんなMODでもいいか。オレが使える医療リソース……考えろ。考えろオレ……」
そう、考えねばならない。
何故ならば。
「ミスティーきゅんを泣かせるわけにはいかない (。+・`ω・´)(キリッ)」
こうして嘗ての記憶を可能な限り思い出しながら、ザラザラとMODの名前と効果を書き出していく。
「………最終案に残ったのは移民系MOD、か」
移民系というのはニュアンスが実際には違うのだが、海外ではそう呼ばれていた日本の開発者のMODだ。
自勢力に存在しない種族や種族特有の能力や技術を増やす為に本来は特定の状況やストーリー進行などでしか加入しないはずの存在を生成して、通常の拠点勢力への加入者とは別に入れる事が出来るMODがあるのだ。
だが、そのMODには恐ろしい副作用がある事でも有名だった。
それを推しても医療を復活させるかどうかは悩ましいところだ。
「それに技能や技術、資質、諸々が能力が高いとそれに反比例して性格が死ぬ仕様なんだよなぁ……」
要は滅茶苦茶癖強人材になるのだ。
例えば、医者なのにサイコパスでソシオパスで放火魔で殺人鬼で食人鬼だったりする最高にヤバイ内科医とか。
例えば、軍人なのに優しくてかわくて滅茶苦茶大人しくて子供大好きなのに移民難民絶対殺す殺戮マシーン少年兵とか。
例えば、料理人なのに几帳面で完璧主義者で潔癖症で頑固者で多重人格者であらゆる毒に精通する狂科学者とか。
意味が分からんレベルの変な人材が大量に湧いて来る上に一度加入すると強制脱退させた場合に恨みで襲って来るのだ。
「うぅぅぅ、ミスティーきゅんの命の危機だからと拠点の変な人材解雇した時に宇宙まで追って来るとは思わなかったんだよなぁ……」
結局、人材は別の勢力に預けて逃げるというのが最強の押し付け強制解雇ムーブになった。
必要な時は呼び戻す事も出来たのである意味で人材派遣でお金も美味しかった記憶しかない。
「でも、あれ……引用ソースがMOD勢力入るからなぁ……う、でも……ちゃんと使う為の方法がMOD入れるだけじゃなくて、必要な物品を作るって言う一手間があるおかげで試せるのは滅茶苦茶ありがたい……」
MODの効能を能動的に確かめられるのはかなり嬉しい話なのだ。
今までは入っていても適応されているのか。
使われているのか。
まったく分からなかったのだから、さもありなん。
「仕方ない……確か仕様的に必要な要件を書いて制作すれば、その必要技能や能力がある人材が来るはずだから……ああ、でも試したくねぇ……ヤバイ種族が多過ぎる!! 過去のオレ!!? MOD種族は厳選しような!!?」
言っても過去の事だから仕方ないのだが、思わず言わずにはいられない。
「特に戦闘狂種族や惑星滅ぼします系種族、人食い種族、そもそも生きてるだけで周辺がヤバイ事になる種族も結構……」
過去に刺激的なプレイを求めた自分を切実に殴りたい事実ばかりだった。
色々とヤバイ……クラッシュするような激ヤバ仕様すら入っている事もあったが、一応は停止している……はずだ。
幸運がある限り、きっと、たぶん大丈夫な……はずだ。
「あ、あんなのが最悪の性格で来たら、マジで終わる。辺境終わる。ど、どうかSSR、UR……いや、USRが出ますように……じ、人材ガチャ……うわぁあああああああああん(´;ω;`)」
思わず頭を抱える。
「嫌な記憶しかねぇ!? 勢力崩壊!! ミスティーきゅん死亡!!? いつの間にか勢力自体乗っ取られてるぅううううう!!? というかNTRはマジでやめろぉおおおおお!!? ミスティーきゅんに『だ、だって、貴方の〇んこ小さいから……』とか!? うごごごごごご(/o\)」
トラウマのオンパレードでゲッソリしながら、血を吐く思いで必要な物品制作に取り掛かるのだった。
―――【猫の城】ごしゅりんのへや(カワイイ・プレート付)まえ。
『な、なんかないてるにゃ……ごしゅりんが……』
『にゃぐなう!?』
『にゃごごごごご……』
『にゃぐなうな?』
『にゃんぐにゃんぐ』
『ふむ。ごしゅりんがオカシイのは何時ものことにゃのでは、と?』
『にゃーぐ!!』
『そうにゃ~たしかに~~いつもごしゅりんへんだからにゃー』
『にゃごうを!!?』
『むぅ。ですが、ごしゅりんのプライベートに口を出すのは憚られますニャ』
『そうらにゃ~~って、なんにゃおまえぇえええ!!?』
『にゃふ? わらしはごしゅりん第二の下僕。せんにゃの男』
『せ、せんにゃ(゜Д゜)とはい、いったい……にゃにもの!!?』
『大尉と貴方が名乗るのならば、わらしは中尉とでも名乗りますにゃ。にゃくくくくく』
『こ、こいつしろくてわかくて、しゃ、しゃべってるにゃぁ~~!!?』
『何を騒がしくしてるんですか? 大尉ちゃん?』
『みすてぃーくぅぅぅ。へんにゃのがいるにゃぁあ~~~!!?』
『将来のごしゅりんの奥方様。わらしは中尉ですにゃ。どうかお見知りおきを……』
『ッ、滅茶苦茶良い猫ちゃんじゃないですか!? 大尉ちゃん!! あんまり中尉さんを困らせちゃダメですからね♪』
『めちゃくちゃろーらくされてるにゃぁああああああああ!!!?;つД`)』
―――あああッ、人がマジ困ってんだからちょっと静かにしろお前らぁあああ!!?
こうして結局、人材募集をMOD機能でする事になったのだった。
*
人材募集MOD【ファイティング・リクルーターズ5】。
元々があちこちの違うゲームで造られていたMODのヘブン版である。
仕様はまったく違うらしいが、最初から5だった上に仕様は複雑だが、かなり膨大な数のMOD種族に対応しており、ほぼラスボス系種族みたいなのすら何故か人材としてやってくる事があるので多くのプレイヤーが序盤の優秀な人材欲しさに使っていたのだが、時折事故が起こった事でも有名になった。
(ホント、動画で滅茶苦茶笑ったの謝るわ。プレイ時間300時間以上のワールドが一瞬で崩壊して、強制ラスボス(前哨戦)とか……)
事故とはアレだ。
いきなり拠点が滅ぶのだ。
理由は単純。
人材が来た事で即時滅ぶのだ。
お前は何を言ってるんだ?という者は多いが、この理由が単純明快であり、何故かラスボスと同じ種族が周囲の惑星が崩壊するのも顧みず。
存在自体が害悪なのに人材として勝手に勢力に加わろうとして惑星が消滅するのである。
(マジで設定どうしてた? 禁止種族はキッチリ入れてたけど、禁止されてない種族もアレはアレで拠点崩壊させるプロだったという……ああ、途中から適応止めて封印したから覚えてねぇ!!)
こういった事があってから、募集禁止種族をしっかり入れられるパッチが登場。
Ver02になってプレイヤー達から引き気味で活用されるようになった。
結果として、強種族を最初期加入させたプレイヤーはホクホクプレイを愉しめたというのもちらほらと話には聞いていた。
そう……こういうのは時間が掛からないとその本当の良し悪しが分からないというのが実際のところだっただろう。
何故ならば、大抵の強種族が癖強人材になってしまったら、後から滅茶苦茶問題になる事例が多発したのだ。
そう、正しく自分もその被害者の1人であり、あまりにもあんまりなヘブンに絶望し、やり直した事は多かった。
「結局、上手く活用出来なかったんだよなぁ……唯一の当たり人材が……う……」
思わず倒れそうになった。
一番まともそうで実際、とある性癖以外はまとも過ぎて優秀過ぎた人材は少年兵だったのだが、尻を狙ってくるハンターだった。
今思い出しても貞操の危機である。
だが、能力値と適正や資質は最高に最高の当たりくじ。
戦闘能力と生存能力と種族特性と遺伝資質に有用な事しか書いてなかった。
「マジであのくらいの人材で致命的な性格じゃなければ……当たり、だよな?」
自分に言い聞かせながらダメな方の人材が来た場合の事を考えておく。
「MOD募集人材は借り出し機能で自分達の勢力と友好的な派閥や村落、国家に貸し出す事で人材派遣のマージンを受け取れる」
元々傭兵家業を始めたのもそのMODの仕様が分かってからだ。
「派遣された人材における被害が出ると請求書が送付される。派遣人材がもめごとを起こすと裁判は行わず返却」
最初は良かったのだ。
最初だけはかなり順調に拠点経営とかしてたのだ。
「その間も能力の成長は可能。貸し出したまま自勢力が瓦解すると関係がリセットされて、その勢力の人材として登録されるが、数日で放流して無登録になる」
しかし、最終的に遊びながら学習したのは“あ、ダメだコレ。ヤバイ”という事実に基づいての封印であった。
仕様をとにかく書き出したものを確認する。
(ダメそうなら、貸し出せる勢力に貸し出す方向で)
ちなみに貸し出した勢力が敵対してきた場合は即時人材が返還される仕様なのだがバグが存在しており、別勢力内部で即時敵対級の好感度の-補正が掛かるようなやらかしをすると即時返還されずにそのまま戦闘に突入する。
最終的に勢力か人材のどちらかが滅ぶまで戦う事になり、自勢力の人材が勝つと勢力の資産と戦利品がそのままごっそり入る。
更に更に人材のレベルが爆上がりし、ステータスや能力が急上昇、死なない限りは何か滅茶苦茶強キャラになって戻って来る事があった。
(よく状況をログで追ったら、うっかり拠点の主を事故で殺したり、拠点の主の機嫌を致命的に損ねたりして……とかだったっけ)
元々問題のある人材なのでそういう事は割とあったのだ。
(戦闘狂を貸し出すのは傭兵家業でホクホクだったけど、アレのせいで壊滅した勢力の話が露見、仕事が来なくなったんだよなぁ……)
一応、ミスティークに貸し出せそうな人材の派遣先で滅んでも大丈夫そうな相手は複数聞き出していた。
現在、辺境のアルマートと共同体を組んでいる各地の小さな村落以外にも勢力は存在しており、正しく略奪系の連中以外にも一応敵でも味方でもないが、ぶっちゃけ邪魔な勢力というのは案外あるらしい。
『ま、商売敵以上に滅茶苦茶悪辣な商人で権力的に潰せないとか。あちこちに伝手を持っててやたら権益を主張してくる権力者や勢力が存在する。という事ですぅ。マジであのゴミ連中早く消えないかなぁって思ってる老害は多いですかねぇ』
コワイ笑みを浮かべた商人の子ミスティークである。
「ミスティーク!! 恐ろしい子!!」
何とか気分を落ち着けて、ジッと自分の手を見る。
看板だ。
何処からどう見ても立て看板だ。
先が尖っていて、ハンマーで打ち込むヤツだ。
看板にはこう書かれている。
【お医者様募集中!! 人体実験不可、薬品実験不可、暴力事件即拘束、医療製薬技能持ち優遇、週休2日、基本日勤、非常時夜勤当直有、人付き合い不用、他勢力への医療派遣業務有、内科医希望、産休有、麻酔資格希望、乳幼児、幼児、小児医療可能者求む】
今まで様々な人材を募集して来たのだが、大量の募集要件の中でコレを外すと後から絶望したという事を考えて選んだ条件だ。
まず人体実験や薬品の投薬実験をさせてはいけない……普通に滅ぶ(4敗)。
暴力事件を起こしても研究職だからと放置してはいけない……拠点が広範囲攻撃用毒殺装備で永久汚染されてしまう(1敗)。
幾ら外科技能が高くても製薬技能が無いと最終的に医者は無力(9敗)。
休みが無いと労働の能率が極めて下がって医療速度低下で後方で処置しても助かりません(23敗)。
基本夜勤はマジで人材の能力が半減して『おっかしぃなぁ? こいつもっと優秀なはずなんだけどなぁ?』と首を傾げているとクリアしてからログを見て後悔するから止めろ(1敗)。
夜勤させられないせいで非常時に拠点が攻め滅ぼされそうな時に寝るんじゃねぇというか何で銃撃されても寝てるの?! 永遠の眠りに付いちゃうよ!?(2敗)。
キラキラした人付き合いをさせると医者はマジでコミュニケーション不全で鬱になった挙句にいつの間にか自殺してる……ヘブンの医者の精神は紙(3敗)。
金がねぇのに高い薬や薬の原材料を買って来た挙句に拠点の資金繰りが破綻して他勢力に攻め滅ぼされるって本末転倒だろ?(22敗)。
外科医の仕事は戦場ではほぼありません……回復薬頼みなので内科医がベストなのに外科医を揃えて医療体制は万全とか思ってた馬鹿もいたね(3敗)。
産休が無いから勢力止めますって出てった医者はSSR枠だった(4敗)。
正しい麻酔知識で投薬してくれる医者がないと激痛でショック死する患者しか戦場にはいないんだよ?(33敗)。
子供は医療の対象外ですって医者に言われて死んだウチの勢力の子供達ごめんよ(´;ω;`)(1敗)。
「うぉおおおおおおおおおおおおおおお!!!」
ハンマーを敗北した数だけ振り下ろしまくる。
涙が出ちゃう。
だって、傭兵だもの。
地面にガッチリ埋め込んだ立て金属製の看板が効果を発揮するまで半日。
「( ´Д`)=3」
後は野となれ山となれ。
イソイソとアルマートの新しい壁の入り口から退避する事にした。
―――3時間後。
人材募集系MODにおける最大の利点は不確定要素を減らす事にある。
要は人材がまともならば、冒険は楽になる。
という類の事実が、波乱万丈になる程度の要素に摩り替るのを防ぐ。
波乱万丈が即死の高難易度だとヘブンは本当に容赦がない。
結果として、優秀さとその対価としての変な資質や適性が悪魔合体したオカシな人材がやって来て、全てを薙ぎ払ってしまうのも良くある話。
なので、それを調整して面白くするのがMODの役目なのだが、優秀さと変なのをブーストして、適正も新しいものを追加してという感じに増やしに増やしたリソースの集大成みたいなMODの多くはソレを制御出来ず激烈にヤバイ人材が爆誕する。
「医療だからなぁ……マジで生死に直結するからまともなのが来てくれればいいが……」
一応、足元では博士達に恐竜君の残骸で医療器具の開発優先度を上げて貰っており、優先度はスーツ、医療器具、車両、武器の順となっていた。
医療器具と言っても大したものではない。
生きた金属細胞サンを人体に埋め込んだり、四肢の代わりにしたり、筋肉の代わりにしたりする外傷の治療用資材として運用出来ないか聞いただけだ。
元々人体に置換するマシンナリーに使うのならば、働けない人間や外傷で健康を損なったまま生きている人間を格安でどうにかしようというだけの事である。
それよりもまずは人体を護る装備が必要という事で今は【スチューデント・スーツ】を研究して先に猫達が安心して使える服の制作に取り掛かっている。
「ま、後はのんびり、ミスティークの報告でも―――」
「ガ、ガガ、ガラークシャァアアアアン!!?」
自室で博士達のレポートを読んでいた時だった。
バーンと扉を弾け飛ぶような勢いで開き入って来たのは正しくミスティークその人である。
「どうしたんだ? そんな慌てて? またどっかの勢力が攻めて来たのか?」
「そ、それがぁ!? あちこちから何か人が大量に押し寄せて来てるんですぅ!!? その後ろから更に恐らくゾンビみたいなのがぁ!!?」
「は? 人? ゾンビ? マジかよ……」
とにかく慌てている少女に引っ張られるようにして街の壁外がよく見えるコンクリの監視塔(コワイ単眼バケツ頭が複数付いたオブジェ)の上に周辺の手すりがあっても怖い外を回って昇る階段で駆け上がっていく。
当の天辺の物見櫓には猫が一人詰めていたが当人も唖然としていた。
「これは……人?」
確かに人だ。
しかも、何やら慌てているように外壁付近まで押し寄せて来ていた。
その姿はまるで……そう、まるで過去の古代人みたいなインナースーツ姿だが、殆どがボロボロな様子で女子供が傷付いた様子で扉の前で開けて開けてと必死に叩いていた。
その背後から更に人の気配がしたので持って来た双眼鏡を覗く。
すると、滅茶苦茶大量のズルズルと脚を引きずる更にボロボロな人々がおり、その瞳は赤く光っている。
「―――赤く光るのは変異ゾンビだけのはず。は? あれ全部変異か?」
思わず唖然とする以外無い。
「とにかく、どうしますか!? ゾ、ゾンビの事は帰って来た時に聞いてましたし、用意はしてました!! 昔から一定数見掛けますけど、あ、あんな数はさすがに?! そ、それにあの人達を受け入れたら、後から感染が広がるかもしれません?!」
ゾンビは割りと辺境でもポピュラーな存在との事で年に数回くらいは駆除しているとの話を聞いていた。
「……検疫用の施設が無い。猫達に集まって来てる難民を壁外で護衛させつつ見張らせよう。オレがあのゾンビ共を倒して来る」
「ガラークさんが!?」
細々とした侵入しようとしてくる奴らは完成した壁と塔の櫓からの狙撃で対応してくれ。先日持って来た重火器は守備隊に配り終えてるよな? 研究開発用のデータは取ったから、もう渡ってると思ってたが?」
「は、はい!! 守備隊の人達に渡してありますぅ!!」
「よろしい。魔法使いのおばさん連中に仲間達を集めて貰って、回復薬を急増して貰ってくれ。それとゾンビの事だが、ゾンビ化の予防薬は確かあるんだよな?」
「び、備蓄分で500人分くらいなら!!」
「護衛する猫達に配ってくれ。怪しいやつがいたら、即時飲ませるでいい。感染しても初期症状で人を襲い出した時に投与すれば治るってなら問題ない」
「ガ、ガラークさん? 何だか慣れてません?」
「ナレテ・ナイヨ(´;ω;`)」
何で涙目なんですかぁ!?というミスティークと別れて地表に戻って扉を開き、猫達に指示を伝えさせて、全方位からやってくる人間とゾンビを区別させ、壁外での護衛と予防と制圧を押し付けつつ、最も母集団が多そうな群れのいる南東に歩き出す事にした。
次々に押し寄せて来るのはボロボロな暗褐色のインナースーツの少年少女達と母親ばかりのように見受けられた。
スーツ自体は経年劣化でほぼ使いものにならないようだ。
必死に逃げている様子でこちらを見ても反対方向に向かうのを見るとサッと避けて振り向きもしない。
「それでいい」
恐らく、数は3000体規模。
櫓からの報告ではあちこちで200体前後がインナースーツの集団を追い掛けてやってくるという事であった。
「大尉」
「ハイにゃー」
「櫓の上からプラズマボムで敵集団のど真ん中、押し寄せて来る大きな集団を出来る限り多く捉えられる地点を焼き払え」
「りょーかいにゃー」
「押し寄せて来るのは守備隊の重火器で応戦、減らして護衛対象のスーツの連中はこっちの部隊に護らせろ」
「わかったにゃー」
「わらしはどう致しましょうか?」
「は? お前誰?」
思わず振り返ると何か白い10代後半くらいの青少年。
とにかく白くて滅茶苦茶長い髪、白い光彩をしたナヨナヨした青年というよりは少年のようにも見える男が一人。
何故か、ナイスガイな笑みを浮かべている。
「中尉を名乗っておりますにゃ。“せんにゃ”です」
「せん……あいつか!? あれ? 若返ってる!?」
「はい。肉体は全盛期ですにゃ」
【仙術】に目覚めた細マッチョなイケオジだったはずだが、どうやら肉体が賦活して若返っているらしい。
「戦闘可能時間を報告」
「20分。20分が限界ですにゃ」
「分かった。お前にあの前方集団の次に多い集団を任せる。北東方面だ。相手集団の中央で戦闘行動開始から10分後に撤退開始」
「ギリギリまで戦わなくてもよいので?」
「撤退したら、壁の外で護衛中の連中から回復薬を貰え。飲んで体力を回復しつつ、再出撃するまで待機。条件は護った連中がゾンビ化し始めた時だ」
「了解致しましたにゃー」
「逃げてる連中の発症が始まる頃には重火器の弾が撃ち尽くされてるはずだ。そうしたら、突撃して戦線を他の連中と連携して維持しろ」
現場の猫達には基本的に連携連携また連携というくらいに連携訓練をさせたのである程度のカバーは期待出来るだろう。
「おかしな個体にはお前以外は最低2人ずつ当たれ。後ろの連中の御守をしてる奴らは戦力に数えるな」
「は!! 的確なご指示ありがとうございますにゃー」
「行け!!」
2人が背後から消えたのを確認して溜息一つ。
「久しぶりのゾンビ駆除。ま、まぁ、ゆるくやりますかね……」
昼時も過ぎてそろそろおやつ時。
日が落ち始めた世界に新たな顔が引き攣りそうな予感が背筋に汗を浮かべていた。




