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第11話「見知った天井とエロMOD」


『ガラーク。ガラーク。ふふ、お腹の子は貴方の子よ?』


『ミ、ミスティーきゅん!? まさか!?』


『うふふふふ♪』


『嬉しい。嬉しいんだが、嬉しいのはまったく嬉しいんだが……』


『?』


『旅立たないとイケナイんだ』


『ッ……そう、帰って来てね?』


『スマナイ……ほんっっっとぉおおおおおおおおおにスマナイ。うわぁあああああああああああああああああああああああん(´Д⊂ヽ!!?』


 だって、子供MODはマジで現実に帰って来れなくなるよって言われてたんだもん!!


 それもお父さんとかパパとか呼ばれるNPC扱いの子が死んだら、マジで廃人になった人間を山ほど見て来たんだもん!!


 新しい世界でもミスティーきゅんは不滅。


 まだ生まれていない子供は存在しないので殺した事にはならない。


 そういう話は……そういう話はマジで心に悪いとエロMODの弊害は人の心を削りまくりだったりするのだ!!!


「はぁぁ(=_=) あの子が生まれてたら、お父さんて呼んでくれたのか? でも、オレが人の親なんて絶対ロクな事にならないしな。悪いな……本当に悪い……30人くらい……マジで生まれてなかったから、いなかったからとプログラム的な話にして頭を抱えたオレを許してくれ……」


 別に殺してはいないのだが、生成されるはずの子供を生成しなかったのは避妊にあたるのだろうかと本気で悩んだ20代の夜。


「ハッ!?」


 何やら悪夢とも言い難いが幸せな夢とも言い難い地味に汗が流れる何かの残滓を振り切るように頭を左右に振る。


「んぅ?」


 辺りは暗かったがゆっくりと目を細めると―――周囲には多数の健康情報が!!


 なんて事は無かった。


 ゾンビ映画ではないのだ。


 まぁ、ゾンビにHPがあるというのもよく考えたらおかしな話に思えるのだが。


「此処は……地下遺跡か。AIドローン探す前にオレが探される番だな。つーか、上半身裸に近いのはマジでヤバイ。外套も吹っ飛んでるし、あの車両から出る時、デッドウェイトになるから重火器と拳銃捨てたんだよなぁ。はぁぁぁ( ̄д ̄)」


 そうしなければ、暴発して危なかったからだ。


 あの巨体相手だと強化されてても重火器の威力で倒し切るには無理があり、超攻撃力のプラズマ・ボム以外だと攻撃を当てても破壊する方法があまり無かった。


 白兵戦は長引くとこちらがアブナイ為、足止めと体勢崩しに徹したのは間違っていない。


 しかし、結果として更なる窮地にという状態なのも間違いなく。


 腰のポーチから蚊取り線香ならぬ蟲獣避けのお香に魔法を混ぜ込んだワセリンを体に塗る。


 大量の即死系の蟲などに対する備えだ。


 魔法に詳しい人間が二人に増えたので魔法としてある【虫除け】【獣避け】を従来のそういったアイテムである軟膏に施して貰ったのだ。


「はぁぁ……これでしばらくはダイジョーブだな。ヨシ(^◇^)」


 この世界は遥か太古の時代の科学が魔法呼ばわりされている設定なので特定の遺伝子を持つ存在の嗅覚に訴え掛ける分子が創られているという事になるだろう。


 塗り終わった後。


 骨が折れてない事を確認。


 すぐにポーチのテーピングで手の関節部以外を巻いて固定する。


 掴む投げる以外の事が難しくなるが、素手で何かを殴るよりはいいだろう。


 最後にポーチから首から掛けるタイプの護石のネックレスを装着した。


 簡単な魔力による明かりを生み出す代物だ。


 10m先まで照らして120時間持つ優れものである。


 魔力を込めて最初に設定した分だけ消費して明かりにするのだ。


 込められる魔力は触媒や物質依存ではなく。


 魔力を固定化して放出する術の設定の制御能力に比例する。


 物質はおまけであり、術を固定化する、つまり情報を質量に保存する際の諸々の能力が重要なのだ。


 触媒の方は威力の増強や複雑な反応を引き出したりする時に必要なだけだったりするが、まぁ……設定は設定なので全部の魔法がソレに忠実かと言われると自信は無かった。


「ん?」


 瞳をちょっと細めると周辺は埋もれた通路が後ろで前にはどうやら崩落しつつも残っていた少し大きな空間が広がっているようだと気付いた。


 ちょっと、その空間の入り口に向かうと内部構造が吹き抜けの階層が数階続いているのが見える。


「地下の吹き抜け構造はヘブンだとボス系の出るサインなんだが、MODが複合してると追加が……どうなってんのかまったく分からん」


 取り合えず、蟲も獣もほぼ近寄って来ないだろうとゆっくり歩き出そうとして、何か動くものが足元にいるのを確認した。


「………ああ、そうか。お前ら真菌だもんな。蟲でも獣でもねぇよなぁ……何がヨシだよオレ\(^o^)/」


 つぶらな瞳の死がこちらを首を傾げながら見上げている。


 走るしか無かった。


 何故ならば、次々に真菌の塊。


 クロイ・ネズミ=サンが大量に集まって来るのが後方の吹き抜けのカーブした上階に見えたからだ。


「オレは死なないからなぁああああああああああああ!!?(ノД`)・゜・。」


 涙目逃走は仕方ない。


 肌に触れたら最終的に死亡なのだから。


 きっと、地上の大怪獣撃滅戦のせいで地下に避難しているのだろう。


 あいつらは案外脚が早く。


 簡単に人間を昇るので反射的に走ったのは正しい判断だ。


 こうして鼠っぽい動くキノコの仲間に追い立てられて、吹き抜けの階段を下りて下層に向かうしかなかったのである。


 *


―――地下王国大深度12km直下。


『くくくく、どうやら愚かな地上人を撃滅出来たようだな』


『我らがディノ様がいれば、地表など簡単に制圧出来よう』


『我ら地下王国挺身隊!!! 地表の支配の為、出兵致します!!』


『きゃ~~素敵~~地下王国万歳!! 万歳!!』


『お願い結婚して兵隊さ~ん!!』


『ぐははははは!! 地底帝国の奴らめ。我らが先んじて地表を制圧してくれるわ!! 人間共の表層施設は広大だが、我らの技術力に敵うものではない!!』


『国王よ!!? た、大変です!!?』


『何だ? どうした? 地表の人間共が攻めて来たか?』


『ち、違います!! ち、地表に上げたディノ様が、た、倒されましたぁあああああああああああああ!!?』


『な、何ぃいいいいいいいいいいいいいいいい?!!(  Д )゜ ゜』


『し、しかも、ディノ様の攻撃の余波によってか。我らの地下王国表層部に黒い鼠のようなものが大量に押し寄せて来ております!?』


『それがどうした!! 全て潰せばいいだろう!!』


『そ、それが出撃ポイントの第八立抗防衛に当たっていた第七師団及び地表制圧装備と偽装を済ませた機甲旅団総勢25師団からの応答がありません!!?』


『は? 故障だろう!! 通信は!?』


『そ、それが、呻き声しか聞こえず』


『呻き声、だと? 無線封鎖はもういい!! 映像をすぐに繋げ!!?』


『―――に、にげ、ね、ねずみ……じゃない。こ、こいつ、らは……せいぶ、へい……』


『ひ!? な、何だ!? 何だ!? あの体は!? あの顔は!!? あの黒い肌は?! ま、まさか、地表の連中が仕掛けて来たのか!? 地表制圧作戦がバ、バレていたとでも!?』


『わ、分かりません。で、ですが、ディノ様からの最後の地表の音声が送られて来ました!!』


『ま、回せ!!?』


『“ガラァアアアアアアアアアアアアアアアアク?!”』


『何だ!? 何の声だ!? この声は何と言っている!!?』


『システムによると名前と推測出来るようです。我らの言語で“ガラァク”と』


『ガラァク!?! ま、まさか!? まさかぁ!!? 嘘だ嘘だ嘘だ嘘だぁあああああああああああああああああ!!!?』


『どうしたのですか国王よ!!?』


『あ、アレが帰って来た!? アレが宙の果てより戻って来たのか!!? ダメだダメだダメだダメだ!? もう滅んだのでは無かったのか!? あの頃から一体どれだけの年月が経ったと思っている!?』


『こ、国王よ!? お気を確かに!?』


『地表制圧作戦で掘り抜いた上部構造を爆破せよ!! あらゆる外敵の侵入を許すな!! 全ての兵は捨て置け!! とにかく、坑道を爆破せよぉおおおおお!!?』


『な、何故です!? どうしてしまわれたのですか!!? 地表制圧は国王の長年の悲願であったはず!!?』


『や、ヤツが帰って来た!? ヤツが!? 地表の者達は忘れても我は忘れんぞ!!? ああ、我れが遥か若き頃!! 見たぞ!! 見たのだ!! 地表に出てな!! 大地を抉り、星を穿ち、銀河すら破壊する船団を砕く真なる絶望を!!』


『し、真なる絶望?』


『ダメだ!? アレには勝てぬ!? 勝てぬのだ!? まさか? まさか、黒き鼠も!? や、やつの―――』


『国王!!? その肩の黒いものは!?』


『ひぃいいいいいいいい!!? く、来るなぁ!? 来るなぁあああ!!? 我はまだ滅びたくない!? “星踏みの絶望”めぇええええええ!!?』


『ちゅ♪(≧◇≦)』


『あが?! が、ご、ぐ!!?』


『ひ、ひぎぃぃいぃぃ!!? こ、国王!!? 国王が!? 一瞬で肌が黒く干乾びて!!? く、くろいねずみ。はッ、い、いつの間にこんな数が!!? ま、まさか、これが地表の制圧兵器―――』


―――大地崩落より1時間32分後。


「な、何とか逃げ切った。はぁはぁはぁ(*´Д`)」


 動く即死トラップがワラワラしてくるのを何とか閉まる扉を駆使して逃げ延びたのは出会いから1時間以上後の事であった。


 しかし、あまりにも長く逃げていたせいで実際自分が今どこにいるのかがほぼ分からないという有様。


 明かりはまだまだ持つだろうが、水は持っておらず。


 食料はポーチにある超高カロリーな危ない角砂糖が12個分。


 1日1個で十分なカロリーが取れるが、水が無ければ早晩干上がるだろう。


 ようやく一息吐いたのは吹き抜けの最下層付近、だと勘で推測する。


 ずっとグルグルと地下に向かう階段を下りながら周辺区画でネズミと鬼ごっこしてあまり現地から離れないように気を使っていたのだ。


 そうして下っていたら今や最下層かもしれないくらいに降りてしまった。


 ボス部屋が近いだろうかと汗を拭う。


 今いるのは何処かの一室だが、目ぼしい有用そうなアイテムが落ちている様子は全くなかった。


「マジで従来のヘブンなら、1個くらい有用なレア装備やアイテムくらい落ちてるもんだろ。ホントさぁ……」


 今までも街の方ではアイテム収集をチマチマ進めていたのだが、レア系素材やレア系アイテムの類はまったく見ていない。


 例外は正しく大尉達の部隊のみである。


 実質初手SSRとかURとかUSRとか。


 そんな確率の神引きだった事は間違いない。


 MOD系のアイテムの名前などは街で収拾出来る知識にちらほらとあったのだが、辺境にはそんな希少なものは流れて来ないと言わんばかりに手に入らなかったのだ。


 魔法のアイテムの類もそれは同じでスミヤナに聞いても、欲しいアイテムは知らなかったり、あるいは単純に辺境じゃ手に入らないとの話しか聞けなかった。


 従来のヘブンはそれなりにアイテムが手に入る仕様だったのだが、高難易度設定でアイテム数を絞っていたりしただろうかと首を傾げるしかない。


「そもそも、既存のヘブンのアイテムが何かやたら入手難易度が低い一般的なものしかないのも……何かMOD入れてたか? オーバーホールでそんなの……あ……」


 頭を捻った時に引っ掛かるものがあった。


 昔、一度使ってから完全に封印していた代物があった。


 嘗て、誰かの寝室であっただろう暗い廃墟で思わず顔が蒼褪める。


「ひ、品質厳選MOD【スーパーマーチャント】……や、やばい……適応されてるのか!? まさか!? あの血を吐く地獄のような地獄が―――」


 思わず崩れ落ちそうになったのもしょうがない話だと思う。


 対外的にアイテムのレア・ドロップ、入手難易度低下を唄っていたクソMOD【スーパーマーチャント】は開発者が経済のけの字も知らない存在だった事が全ての始まりとされる伝説のチートMODだ。


 その効果は“ドロップするアイテムの品質を上げ、入手難易度を下げる”と謳われていたが、それを入れた当初から自分のような元々がアイテムはデフレしてもいいプレイヤーはまったく気にしなかったが、インフレ系のプレイヤーは戦慄していたらしい事態が起こっていた。


(しかも、途中で外すとクラッシュするせいで開発者に殺害予告が出る始末だったし。まったく……アレで酷い目にあって、MOD選びは慎重になったんだった)


 アイテムの品質が強制的に最高位に上がる弊害に入手難易度が爆上がりするという状況になっていたのだ。


 いや、入手難易度が下がるはずなのにどうして上がるの?と首を傾げたプレイヤーは当時多かったに違いない。


 どういう事かと言えば、ヘブンのゲーム内のアイテム売買や社会基盤の経済は現実基準で内部処理がされていた。


 アイテムの品質が爆上がりすると作成難易度が上がる。


 しかし、基本的な値段はそこまで上がらない。


 これが普通のNPCも使うような生産が容易な一般的アイテムならば“高品質な低価格アイテム”が大量に捌けて庶民の生活の質は向上する。


 しかし、希少なアイテム程にアイテムの生産現場ではシビアな生産になってしまうのである。


 本来はある程度の品質でも出回るアイテムがそうはならない。


 つまりはSSRが出るまでガチャを回し続けるような歩留まりが続き、他は“廃棄品”“廃棄”の選択肢のどちらかで殆どまともなアイテムが出回らないのだ。


 簡単に言うと頑固一徹創業100年の老舗の職人が『こんな出来じゃウチの商品は名乗れねぇ!! 廃棄だ!!』とか言うのが一般的な世界という事になる。


 必ず最高のものが提供されるせいで生産数が激減。


 あまりにも供給量が少なくなるのだ。


 ちなみに古代のアイテムもその内部処理がされるせいで本来アイテムがあるべきはずの固定箇所にアイテムが無い事が多発した。


 基本的にアイテムを配置しておくのではなく。


 このゲームの基礎的な社会的需要の結果アイテムが配置されたという内部処理がしっかりされていたのである。


 そして、入手が容易になるのは“プレイヤーだけではない”のも問題だった。


 これが何を意味するのか?


 アイテム数は増えないが内部処理でアイテムの入手難易度が下がる。


 すると。


「NPCの手を超高速で渡り歩く高レアなアイテムの群れ……俗称【漂流宝(ライダー・トレジャー)】化してやがるとしたら、う……最序盤ストーリークリアに必要な重要アイテムをメイン・シナリオの終盤に行く宇宙まで取りに行った記憶が……(´Д`)」


 吐血しそうな目にあった事は間違いない。


 今思い出しても具合が悪くなるレベルの悪夢。


 もし、これで品質レアリティ最高の最強レア装備しか出なかったら、事実上アイテムを使うような敵、サプライ的なもので戦う相手は超絶強化。


「ッ―――オイ!? 洒落に為らない事に気付いちまった」


 そんな事あるわけない!!


 と、内心で念仏のように唱えながら、外をそっと見やると通路の奥に開けた場所が見えた。


「?」


 その先の闇世にグボーンと赤い単眼が光る。


 目をちょっと凝らしたら、情報が流れ込んで来た。


 品質:EX、射撃精度:EX、精密動作:EX、反射反応速度:EX。


 EXEXEXEXEXEX……全部ヘブンの最高品質の何かがガシャンガシャンと本来よりも極めて静かな音を立てて周辺の巡回モードでクルリと一回転し、赤外線センサーで辺りをサーチしていた。


 先日の四脚の着込む【ゴリアテ4】に似ているが違う。


 背部にサブアームを6本装備し、左右に大型9連装ガトリングガンを一挺ずつ装備し、近接格闘用の短距離汎用レーザーブレードであらゆるものを貫いて焼き切り、背部の腕には汎用連装グレネード・ランチャー、スモーク・ブラストが標準装備で敵の視界を遮り、時には毒殺し、正確無比な爆撃を行い、中遠距離用の高速弾を連射出来るサブマシンガンで全方位に銃弾をばら蒔き、中に人間が乗っていないので装甲が事実上自走砲の砲弾5発の直撃でしか抜けない。


 汎用多脚自走防衛AIドローン【MYOU‐OU】。


 正しく不動明王がモチーフになっているバケツ頭の単眼モノアイ重装甲野郎。


 普通のヘヴンなら中盤のメインシナリオに出て来る上半身人型の中ではほぼ最強の“モブ”となる重武装ドローンであった。


「ッッッ」


 思わず部屋内部に隠れる。


「だ、だめだぁ。クソゥ!? アイテム、サプライ!! ああ、そうだよな!! AIドローンは“商品”だよな!!? う……ぅぅうぅぅぅ(´;ω;`)」


 泣きっ面に蜂とはこの事だろう。


 今まで殆ど気にしていなかったが、やたら魔法の回復薬の効き目が良かったり、プラズマ・ボムの攻撃力が高い気はしていたのだ。


 だが、その理由が敵のステータス情報としてまともに脳裏に流れ込んで来て初めて判明する。


「マズ過ぎる。護る対象がいないから、恐らく【Dynamite Fever】使っても火力お化けを前にして半端な火力と速度しか出ない上、防御力もそこまで高くない。付近にはネズミ共までいやがる。しかも、全部EX!! 壊れ掛けとかみたいな初心者にも優しい調整で加減しろ馬鹿!?(ノД`)・゜・。」


 本来は中盤に倒せるようになると高性能なものが次にはモブとして襲って来るようになるというのがお決まりなのだ。


 だが、それですら品質はS止まりであり、その上のSS、SSS、ESという品質は1000時間中に1回あるかないかくらいのものだ。


 しかし、今回は単純に普通は壊れ掛け、EからS程度の品質のはずのパーツやプログラム、武器弾薬が全部最上級品質のEXで固められている。


「どっかのプレイヤーがやってたけども!? 確か全部EX部品や武器弾薬、プログラムで固めた重武装系ドローンは並みのMODボス瞬殺出来るんだぞ!!」


 動画では『ヤバ過ぎワロス笑えねぇ……』とか『総額12億? は? アレ一機創るのに12億!?』とか『品質ガチャで全部揃えるのに合計321時間? マジかよ……』とか『もはや、ボスを作る動画……』とか言われていた。


 そして、実際メインストーリーを5段階目の難易度でやるに際し、EXで固めた重武装ドローンを使った結果、中盤以降までほぼ無傷で行けたという実績がある。


 以降、ヘブンでは“護衛機”という概念が生まれて、序盤から部品ガチャ、品質EXを集めに集めて相棒となる重武装ドローンもしくはそれに類する存在を中盤までに生み出す事が初心者ムーブの定番の一つになったのだ。


 正しく『行け!! 〇〇!!』みたいなモンスターやロボやプログラムを戦わせるゲーム性が追加されたと言っていい。


「うぅぅ、恐らく逃げようとしたら、音響センサで一発……あいつ早くどっか行ってくれぇ……(´Д⊂ヽ」


 長年やっているので勝てる状況なら仕掛けても問題ないが完全に負けて死ぬと分かったら、一目散に逃げるのが鉄板ムーブである。


 どう考えても今の状況ではどうにもならなかった。


 その時、部屋の外からチュドドドドドッと連続した爆発が響いて来る。


 思わず少しだけ外を覗くとネズミに対して害虫駆除中らしい。


 だが、問題なのは相手の9連装ガトリングだ。


 単なる弾丸ではない。


 攻撃した場所が次々に小さな爆圧の連打によってネズミ達を爆殺していた。


「ッ、【MVT信管】かよ!?」


 近接信管の砲弾は遥か昔から使われていたというが、現代ではそれを銃弾内部に入れ込んで規格化、超低価格で軍は使っている。


 なのでVTにマイクロのMを付けてMVTと俗称される弾丸は真面目に即死兵器の筆頭であり、現実の戦争では今までの常識が崩壊し、弾丸は横を掠ったら死ぬという事実に置き換えた悪魔の発明である。


 壁で防ぐ、爆発する弾丸の30cm圏内にいない事が無傷の条件なのでぶっちゃけ無理ゲーと多くの兵士がこの弾頭の信管の餌食になっていった。


 それが凡そ80年前からの出来事であり、近頃のその安さと高性能化に磨きが掛かっており、ぶっちゃけあまりの弾丸の高性能化でもうそろそろ勝手に曲がって相手を狙い撃つ機能が追加されてもおかしくないと言われて久しい。


「!!?」


 建物が鳴動する程の攻撃。


 崩壊した瓦礫で自滅しねぇかなぁとちょっと覗き続けているとネズミをある程度間引いたら、再び通路の奥へと戻っていく。


 恐らくは弾薬の補給だろう。


 すぐには戻ってこないと踏んで相手のセンサの品質EX分を加味して、離れた距離を通常移動速度から計算し……2分程経ってから、こっそり広い空間に出た。


 すると、あちこちが爆圧で拉げ破壊されてはいるが、崩落の危険性の無さそうな吹き抜けの最下層。


 ネズミ達がほぼ掃討されて逃げ出した様子で一匹も見当たらず。


 ホッとしつつ、初心者救済として大抵の地下施設にある外への最下層からの逃げ道が無いかと見て回る事にした。


 どうやら吹き抜けの最下層はモール街だったらしい。


 まだ衣服が残っていたり、複数の店舗が外こそ煤けているが中は荒らされていないようなところがちらほらと有った。


 だが、最優先である緊急脱出用の通路やエレベーター、階段は見つからず。


 他の出入口は恐らく別セクターとしてさっきのようなドローンがウロウロしている可能性もあって、不用意には向かう事が出来ず。


 施設内部の地図を探しているとフードコートのような開けた場所の壁にそれっぽいものが少し崩落しつつも残存していた。


「あ~~何か見た事ある造りだなぁと思ったら、中盤に出て来る宇宙モール基準の建造物なのか。此処……」


 宇宙モールというのは俗称で実際には宙域廃棄拠点Eという宇宙にある廃墟型探索地点だ。


 本来は単なるアイテムの発掘やストーリー状のシーンに使われる宇宙の廃商店街のようなものである。


 拠点を構える者もいたし、内部を基地化する者もいた。


 凡そ300m四方、広大な地下施設に相応しい合計6階層の商業施設だ。


 内部にはマンションの居住区画もあり、一部の上級者プレイヤーは小惑星内部にモールを移設して動く機動要塞兼商業施設として宇宙商人ムーブで愉しんでいた者もいたと記憶していた。


「……ダメか。直通のエレベーターしか見当たらねぇ……地表が1階だった場合、巻き上げ機材が……恐らく、もう地表付近の施設もボロボロ……うん……エレベーターに乗ったまま落ちて即死はちょっと……」


 溜息一つ。


 とにかく、水を探そうとこの手の建物にありがちな内部浄水設備による水の供給口やペットボトルに入ったミネラルウォーターが無いかとフードコート内部の調理場にある棚や保管用冷蔵庫を漁る。


「……無い」


 思っていた以上にアイテムが無い事に絶望である。


「水も出ない。施設が壊れてる……まぁ、あれだけ地表で暴れればそうなるだろうけども……」


 仕方なくフードコートから移動しようとした時、壁と同化して埃で見えなかったらしい扉一つ、ギィッと音を立てた。


「?」


「―――ぅ、ぁ……」


 出て来た相手に高速でエルボーを喰らわせ、瞬時に喉の部分に腰裏のポーチから引き抜いたナイフで頸椎事串刺し。


 叫ばれる前に一瞬にして相手の首をねじり壊して立ち上がり、起き上がる前に踵で首に刺さったナイフを蹴り付け、首を弾き飛ばした。


「ぁ………―――」


「灰色の斑模様の肌、落ち窪んだ瞳、欠けた動体、動く屍、本当にゾンビです。ありがとうございました……マジかぁ……(/ω\)」


 思わず頭を抱える。


 さっき程の衝撃ではないが、ゾンビMODが生きている事が白日の元になった瞬間であった。


 世紀末サバイバルアドベンチャーゾンビMOD【ZOMBEID】。


 ゾンベイド、ゾンベと言われる事もあった大型オーバーホールMODの一つだ。


 主にミスティーきゅんとゾンビに追われながら、きゃっきゃっうふふとイチャイチャし、緊張感のある夜に愛し合う為に入れた実質マッチポンプの危機である。


 ぶっちゃけ、他のMODに比べたら、ゾンビそのものの脅威度は低く。


 低レベルでも対処出来る程度。


 ただし、その数は過去の旧時代の古代遺跡人類の全てという圧倒的な数襲い掛かってくるMODだ。


 強化型ゾンビはその限りではないが、そういう強化型は300体に1体いるかどうかであり、特殊能力の付与されたゾンビは10体の2体程度。


 更にどれだけ強化しても一般人なので高難易度でも強化ゾンビ以外はほぼ銃弾で倒せるだけの雑魚でしかなく。


 実際に脅威というよりは拠点防衛戦を愉しみたいヤツ向けの勢力追加MODに近い。


 他にも確かゾンビMODは入れているはずであったが、まずは゛易しい方”のゾンビで安心した。


「なむなむ(~o~)」


 手を合わせたのはよく見れば店舗の女性店員さんであった。


 どうやら、死体のままではいられなくなったらしい。


「ネズミ共に食われもせず。部屋の中にいたのね。アレ? て、事は……」


 そっと彼女が出て来た部屋を覗くと内部には箱が複数。


 しかも、未開封のようであった。


 バリバリと段ボール箱を開けると中には水のペットボトルが複数本入っていた。


「あ、ありがてぇ。ありがてぇ(´Д⊂ヽ」


 ちゃっかり七本確保して、動きに支障が無いようにポーチのフックロープにガッチリ引っ掛けて吊り下げておく。


 多少脚に当っているが、水無しで死ぬよりはマシだろう。


 他のものも漁ってみると店員が使っていたと思われるスーツが一着。


「灰色のスーツさん入りました~~(;・∀・)」


 上半身下半身ちゃんと揃っていたが、下半身のものはネズミが入らないように工夫したものを使っていたので上半身だけ貰って着替えておく。


「就職活動の時期が懐かしいな。あの頃、もう戦争で徴兵だったから、1度しか着なかったんだよなぁ(´-ω-`)」


 イソイソと他にも扉が無いか調べたら、カップラーメンの在庫が入った扉を隣の店舗に発見。


「わーい。フードコートの店舗が市販の業務用カップラーメンを使って飲食業してたという事実を初めて知ったぞー\(^o^)/」


 嵩張るのでもってはいかないが、一応はすぐに取り出して逃げられるように店舗の上に纏めて置いておく。


「角砂糖に飽きたら取りに来よう。水で戻せるしな」


 キリッと切り替えて、再び出口探索の旅に出る。


 ついでにナイフは握りっぱなしにしておく。


 いつの間にかゾンビものになってしまった探索である。


 こういう時の必須技能は反射的に動いて隠れると逃げる、回避する、防御する。


 とにかく、迅速に判断しなければ、助からない。


 パズルゲーになるホラーものは多いが、パズルよりも音ゲー並みの反射を要求して来る方が厄介だ。


 イソイソと進みながら、目ぼしい通路を確認していると一番最奥にやたら頑丈そうなシャッターの下りた店舗が見えた。


 しかし、大穴が開いていて破られている。


「こいつは……」


 外からではなく内側から破壊されているように見える。


 大きい穴なので逃げる時もスムーズに出来るだろうと慎重に内部をクリアリングしようとし―――さぁっと光によって壁と棚の中身が輝く。


「ッ、大当たりか……」


 重火器を売っている店だ。


 アメリカ製だけあって、ヘブンは基本的に大型店舗には重火器を売る場所が付随しているのがお約束なのである。


「……まさか、これ全部……」


 思わず目を丸くする。


 棚一面の重火器。


 ウィンドウに入った大量の拳銃。


 背後の金属製の棚の奥には実包の箱が詰まれていた。


 普通の重火器のように見えるが、先程の事から察するに全部品質EX基準だと推定される。


 品質における全てのアイテムの基本的な能力への倍率は乗算関係だ。


 つまり、部品点数が多くなるアイテム程に品質で能力が上がっていく。


 摩耗や諸々の経年劣化なども加味されるのだが、それでも品質が高ければ、経年劣化も抑えられ、過酷な環境でも動作不良しなくなるのはかなり大きい。


「ウルトラ・ライト・マシンガン【D10T】5.56か……こっちはアサルトライフル【FFEハイパワー】……どっちも代わり映えしねぇなぁ……」


 と、言いつつも笑みが零れる。


 分隊ではよく使っていた現代の火器だ。


 此処100年以上、銃の進歩は素材や銃弾、機関部の強化に当てられ、殆ど形は100年以上前のものとディティールは変わらない。


 誰もが見れば、大体ソレがどんな銃か分かるだろう


 だが、中身は100年前とはまったく別物だ。


 フルポリマー製の銃が出て来たのが70年前の事であり、嘗ての鉄と鋼が主役の戦争は今ではライトでポップでカラフル、武器も命も軽いのが主軸だ。


 金属塗装技術の飛躍によって機関部をほぼポリマーにしても問題なくなり、液体炸薬の安全性と信頼性がパウダーバレットと呼ばれた旧時代の弾薬を駆逐した現在。


 ほぼライフル弾でなくても秒速2000mを記録する小銃弾は超高速だし、ぶっちゃけあまりにも銃本体が軽いのでそれならと弾すら軽くする為、鉛ではなくアルミを込めるようになった。


 VT信管を筆頭にした頭の良い銃弾、ジーニアス・バレットが此処最近の主軸となってもばら蒔く弾の大半は格安のアルミ合金であり、打ち込む際に機関部内の燃焼速度をシステム的に調整する事で弾速を複雑に制御し、“溶ける距離”を調整して撃てた。


(よく、古傷が抉れ過ぎだろなんて部隊の連中と笑ってたっけなぁ。結局、金属埋め込んで元に戻したって話……一傷20万だってげっそりしてたっけ……)


 まるで飛沫を上げる散弾のように相手に“吹き掛ける”事で命中率を高くし、貫通ではなく生身の人間を上から焼き切る事に特化する弾丸の多くは無力化には最適の代物だ。


 結果的に非人道的な装備と言われつつも、死亡率は下がったので戦場では更にドローンが大活躍する事となり、ソレを貫く為の重火器と武装を背負った兵隊とドローンが共同で作戦に辺るのが一般化して久しかった。


 殺傷力よりも制圧力。


 制圧力よりも国際的な人道倫理の目を気にした武装が流行るのはさすがに先進国だけだったが、弾丸が安上がりになって殺傷力よりも制圧力が格段に上がれば、今時は嬉しい国の方が多かったのだ。


 ドローンとミサイルによる吹っ飛ばし、吹っ飛ばされの施設破壊で後方を脆弱化させた後に航空支援の量で国境域で主力激突の勝敗が決まり、負けた方は国内での防衛戦で撃ち倒し、撃ち倒されの消耗戦を演じる。


 最終的にドローンより後ではあるものの……人間同士の撃ち合いも長期化した戦場ではよく起こっていた。


(基本的に戦場の勝敗よりもどちらが先に消耗し切るかの問題……兵隊は最後に消耗される消耗品として高付加価値にしても構わないってのが先進国は強いよなぁ)


 だから、両国のパワーが拮抗していると互いの軍事施設への攻撃が終わった段階で経済基盤となる地域への侵攻が本格化。


 揚陸成功地点から敵の物資生産能力を奪う“生産力収奪戦”に移行する。


 それでようやく機械ではなく生身同士の“戦争”が起こるのだ。


 どちらの国もギリギリ。


 乾坤一擲の生産力の破壊作戦が成功しない限り、消耗は国家を蝕み続ける。


 長引けば長引くだけ荒廃する国土を背にしての背水の陣。


(対ドローン用の過剰火力で人間が吹っ飛ばされ、吹っ飛ばしの戦場……)


 ハッとして首を横に振る。


 記憶の彼方に意識が跳びそうなのは良くない。


 とにかく使い慣れたアサルトライフルを担ぐ。


 7.62mmの弾丸を必要なだけ弾倉に詰め込んでボトルと一緒にポーチのフックに引っ掛けておく。


「弾倉7本……さ、さすがに重いな……チートMODありなら、動くのは支障ないだろうが、やっぱりバックパック探すか」


 キョロキョロしていると店の棚の一つに932式背嚢と刻印された品を見付ける。


 モスグリーンの代物だが、現役時代に使っていたヤツであった。


「つ、付いてる。これもEX……う~ん。あの頃は中古ばっかだったから、現役時代より良い装備だな。ホント、分からないもんだな。世の中……」


 こんなところで過去の自分が欲しかったものが手に入る。


 それはまったく儘ならない世の中そのものに違いない。


「水はバックパックに格納。もしもの時のクッション役。お、レーションまであるぞ? これは上の方だったな。ロープは左右に常備。ナイフは腰。寝袋だけ無いのか。ま、いいか……寝ないしな。こんなとこで」


 今時の兵士は市街戦しかしない。


 いや、出来ないというのが現実だ。


 ドローン師団による重武装化と人道の二文字で格安の戦力を最強の電子戦で守りつつ、AI駆動で相手を駆逐するのが今時なのである。


 しかし、ここに来て一番の大物であるマシンガンが問題だった。


「嵩張り過ぎる……持って行くって言っても銃弾の量も馬鹿にならないし、取り回しが……むぅ(´-ω-`)」


 本体は滅茶苦茶軽いのだが、弾丸は重いし、ケースレス弾のような軽い銃弾は信頼性が低い。


 ゾンビのような咄嗟の反応が必要な相手にはショットガンが良いのだが、あの化け物ドローンを倒すにはマシンガン並みの火力が必要だ。


 手榴弾の類は相手の迎撃システムが優秀過ぎて直撃はほぼ不可能。


 機動力もある相手が突撃して来た時に逃げられないと死が見える。


「せめて、もう一人要ればなぁ……(´|ω|`)」


「にゃー」


「そうそう。にゃーにゃー言いながらも安心唖然確実なスナイパーとか安心爆撃実績少女とかが必要なのだ( ̄д ̄)」


「それもつにゃー」


「い、今なら心の友認定してもいいぞ?(´Д⊂ヽ」


 思わず涙が出そうになった。


「ここにゃのとも(≧▽≦)/」


 どうやら追って来てくれたらしい。


「ご苦労様だ。正直助かった。上からの道は戻れるか?」


「もちろんにゃ。ごしゅりんのどれーですかにゃー♪」


「奴隷にしたつもりは1mmも無いが、まぁ……とにかく脱出だ!! 得物は見つけたが、閉鎖空間じゃ分が悪過ぎる!!!」


 という事であの不動明王が戻ってこない内だとばかりにバックパックから水を捨てて拳銃と小銃をありったけ詰めて背負う。


「お、重い……ま、まぁ、逃げるだけだから後は……」


 フルポリマー製と言っても金属塗装分は重量が上がる。


 仕様によっては一部特殊な弾丸を使う為に金属部品も使う事がある。


 拳銃12丁、ライフル、マシンガン合計6丁なんて昔のメタルが主流だった事なら絶対持てない数だろう。


 後でちゃんと装備を整えて来ようと二人で出来るだけ銃器をバックパックに詰め込んで走り出した。


 基本的に地下での戦闘は避けるのが一番だ。


 ネズミ=サンさえいなければ、順路逆走でどうにでもなる。


 最下層をすぐに抜けて上の階段をえっほえっほと昇っていくと4分程で6階分を昇り切った。


 どうやら、ネズミーとの死闘はあまりにも過酷だったらしい。


 こんなに短い距離だったっけと思わず内心思ってしまうくらいあっさり最上階付近に到達し、大尉がこっちこっちと指差した方にはネズミ達が最初に押し寄せて来た通路の奥。


 上に抜ける梯子が思いっ切り存在していた。


「は、はは……はぁぁ(´Д`) やはり、最大の敵はネズミーか」


 と言っている傍から、下からちゅーという小さな声が聞こえて来る。


 恐らく、追い払われたネズミ達が戻って来たのだろう。


 即死させられない内に逃げようと梯子を昇って外に出る。


 すると、真夜中の月明りにキラキラと輝く小山がすぐ近くに見えた。


「わ~山♪( ̄▽ ̄)」


「やにゃー♪」


 バタンと辛うじてまだ崩落していない地面にある扉を閉めて梯子のある地下を封鎖する。


「恐竜君の残骸……活用しないとな……」


「かつよーにゃー♪」


「通信機持ってるか?」


「はいにゃー」


 至れり尽くせりである。


「あーテステス。博士の誰かいるかー」


 呼び掛けるとすぐに応答があった。


 博士達が使っていた通信網はまだ生き残っている古代の衛星回線を使っているらしくて、周波数さえ分かっていれば、使い放題らしい。


 暗号化は一応されているというが、使った形跡は分かるので何れ本国の通信は拾えなくなるだろうとの話であった。


『ガラァアアアアアアクシャァアアアアアン!!?(´Д⊂ヽ 何でどうして定時連絡出ないんですかぁああああああ!!? ずっと待ってたんですよぉおお!!?』


 いきなり聞こえてくるのは豚人の少女の声であった。


「悪い。ちょっと馬鹿デカイ獲物に空まで吹き飛ばされて、地面に落ちたら地下迷宮で動く即死トラップの群れに追い掛けられ、動く死体とくんずほぐれつしつつ、最後に神っぽい機械に襲われそうになって、滅茶苦茶大量の良さそうな重火器を仕入れてたんだ」


『意味が分かりません!!?(>_<)』


「ああ、オレも分からない。だが、取り合えず、街一つ分くらいの鉱脈とかマイザス商会で開発しないか?」


『あ、それは利益次第ですぅ(^ω^)』


 素に戻ってキッチリ商人の顔になった少女が見えるようであった。


「ん?」


 いつものやり取りをしている時だ。


 ピロリンと脳裏にポップアップ音のようなものが聞こえた。


『―――勢力撃滅ポイントが一定数に達しました。勢力撃破報酬が配布されます。以下の内容からお選び下さい。1.資源採掘効率540%。2.品質EXトリプルバレル・ガンマバースト・ストリーク・キャノン。3.勢力Luck.Lv.C-』


 声が聞こえる。


 ナレーションMODの時と同じだ。


 今度は女性の声だが、よく聞き覚えがあるものだった。


 何故なら。


「ミ、ミスティーきゅん……うぅぅ、某有名女性声優=サンのサンプリングだから、こういう事もあるよな。でも、いや、マジで……今は……」


「にゃ? たいへんにゃ!? ごしゅりんがマジナキしてるにゃー!!?」


『ええぇえ!? り、利益配分は9:1でいいですから!? 泣かないで下さい!!?』


「ちっげぇよ!? 後、ボッタクリ過ぎだろ?! 今、感動中だから、ちょっと静かにして!? あ、報酬は3でお願いね(´;ω;`)」


『3てなんですか!? 報酬って!!?』


「もはや、涙も引っ込むリアルよ……(|ー|~)」


『だ、大丈夫なんですか!? ガラァアクシャァアアン!!?』


 そんなこんな事がありながらも何とか地下からの脱出に成功するのだった。


 そう言えば、勢力追加MODには報酬システムがあるものが多い事をすっかり失念していたのは間違いない。


 勢力……つまり、今は恐らく【猫の城】の主として登録され、【断崖のアルマート】の1人になっているのだろう自分は立派に誰かの仲間だったらしい。


 勢力増加MOD【オールドワン・ケイオス】。


 恐らく、同系統のMOD中で最強の敵が出て来る超大型オーバーホールMOD。


 世界中にファンが多くぶっちぎりで常に上位3位圏内に入るダウンロード数を誇る代物であり、“とりあえず入れとけ”候補ナンバー1だ。


 戦略ストラテジー要素をゲーム内に導入し、自分が動いている間にも自勢力や他勢力の動きが大きくなり、シナリオの進行がプレイヤー依存ではなくなる時間制限、更に勢力撃破報酬の他にも色々な恩恵も与えてくれるMODであり、導入すると様々な状況に対して勢力の増大と減少に直結する選択肢が出て来るようになる。


 そして、何よりも魅力的なのは勢力撃破報酬は基本的に多大な労力か時間の掛かる成果を一瞬で得られる事だ。


 品質EX武装の報酬はそれだけで拠点一つが吹っ飛ぶ威力なのが最低ライン。


 効率上昇系は勢力自体の分野毎の能力をとにかく伸ばしてくれる。


 そして、勢力系の能力の多くは加算減算方式ではなく。


 能力上昇の計算式が乗算だ。


 得に大きいのは同じ能力の上昇を選んでもソレ自体が乗算の数値の一つとして計算される為、倍率が高ければ、指数関数的に能力が上がっていく。


 つまり、100%と100%の高倍率バフ上昇があったら200%ではない。100×100で1万である。


 同一能力で乗算されて一番嬉しいのは確率を優位に傾ける代物だ。


 つまり、幸運、Luckである。


 レベルなのに数字ではなくCやAのような表記なのはランダムにするとあまりにも能力が上がり過ぎるので一応の制限が付いているということになる。


 勢力Luck.Lv.C-はパーセンテージで言えば、凡そ100%。


 他の報酬に比べて魅力的に見えないが、“あらゆる確率”が自分達に優位に傾くのはどう考えても一芸特化よりも汎用性が高い。


 ついでに言うと同じ報酬が再び出た時に同じ倍率で受け取ったとしても、それ自体が乗算関係のバフとして計算されるので常に幸運状態が強化される事となる。


 そして、そもそもの話、インフレしていく能力の殆どが高難易度になればなるほどにあまり意味が無くなっていく事から、幾らインフレさせても良いというのがゲーム公式のお達しであり、その公式が制限を掛けたステータス、能力値が弱いわけがないのである。


(どうせ、山なんていつか掘り尽くすし、国一つ吹っ飛ばす武装なんぞマジで世界の破滅まっしぐらだろ……つーか、宇宙規模戦闘だと小銃みたいなもんだし)


 騒がしい闇の中。


 月明りを見上げるとまた何処かの馬鹿が月面で核を撃っていた。


(それにしてもいつ撃破したんだオレ? いや? アレか? 最初山に埋めた連中……他の勢力の部隊も何度か潰してたし、ようやく初めての報酬に届いたって事か? 生き埋めだから、死ぬのに時間が掛かったかもしれないし。それにしては報酬が一国レベルを潰したような豪華さだけど、ま……いいか。バグも多かったしな。アレ)


 重火器マシマシのバックパックを担いで帰還する事とする。


 AIは逃げない。


 いつまででも地下でネズミ達を狩り続けているはずだ。


「あ……車両の物資……(´Д`)」


 大量の荷物を積み込んだ車両はお釈迦になっている事をすっかり忘れていたが、後で回収するまで原生動物達に荒らされない保証はない。


 諦めなくていい物資を更に担ぐ事になるのは明らかに今の自分にはオーバーワークに違いなかった。


 現実逃避するにはミスティーきゅんとの思い出を反芻するに限る。


 超重いバックパックに大量の物資をぶら下げて、ヨタヨタ歩きながら、【オールドワン・ケイオス】で宇宙遊泳プレイに勤しんだのを懐かしむのだった。


 翌日、筋肉が死んだ昼下がりから3日は動けなくなったとしても後悔は無かった。


 NPCと宇宙プレイするならば、オールドワン・ケイオスが一番!!


 このMODは貴方とNPCの愛を育みます!!


 何故かって?


 それはこのMODで追加される最強種族は最強繁殖力を持つ最強エロ星人だからさHAHAHAHAというのが開発者の同梱されたメモに書かれた一言目なのだから、自分だってそれくらいにはっちゃけてもいいだろう。


 結果として豚人の少女から寝てる間中、股間がもっこりした好き者として看病なのに『きゃ~~♪ 何もっこりしてるんですか!!? バシバシ!!』と、何故か嬉しそうに叩かれたとしても……やはり、後悔は無かったのである。


 エロ星人のミスティーきゅんもやっぱり魅力的だったのだから。


 エロMODに限界は無いのである。

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