第10話「恐竜とエロMOD先輩」
―――セントラル【アバンシア共同体】本国中央大討議場小会議室。
『楽園の防御に一部混乱が生じている模様です』
『例の輸送機か?』
『はい。仕掛けさせた例の四派閥も何も出来ずに互いに争って自滅した様子……蛮族領の勢力は使い処が難しいですな』
『あの輸送機の中身は結局何だったのだ?』
『それが【ゼート】隊のほぼ本隊が全機投入された模様です』
『っ、連中の防御網に混乱が生じるはずだ。本国最精鋭が辺境に“消えた”か』
『はい……恐らくですが、向かった先は……』
『断崖のアルマート……反逆の英雄……まるで御伽噺だな』
『そうですね……まさか、主神の名を騙り、我らに盾突く者がいるとは……』
『“おやぁ? 議長殿”“顔色が悪いですぞ♪”』
『ッ、シアーニア君……良いのかね? 君の健康状況は聞いているよ』
『“ははは、本国の技術力で随分と持ち直しましたよ”』
『そうか。それは良かった……だが、政庁に怪しげな者達を受け入れているのは頂けないな。気を付けたまえ。それで今日も上申かね?』
『“ええ、辺境への再侵攻”……“考え直して頂けましたかな?”』
『悪いが君に預けた戦力は君の年収の数万倍の規模だ。本国は寛大だが、さすがにすぐというわけにはいかんな。何かしらの功績がいる。特に辺境出の君はな』
『“分かりました。では、今話題のゼートの無敵部隊が消えた楽園を墜として来ましょう”』
『情報が早いな。君に出来るのかね? 大隊規模……いや、飛行戦力も含めれば、旅団規模の戦力を失って戻って来た君に』
『“議長、貴方は真っ当だ。だが、一つ知らない事があるらしい”』
『知らない事?』
『“敗者の執念というのは存外馬鹿に出来ない”』
『………』
『“戦力は要りません。手勢30名程を投入する許可を頂ければ、あの図々しい二番煎じ共の中枢を叩き潰し、本国戦力で墜とせるようにしてみせましょう”』
『潜入作戦か。司令部強襲……いいだろう。ただし、本国部隊は貸せんな。装備は好きにしたまえ。あくまで一般用しか出せないが……』
『“ああ、そうですか。お孫様の事は大変痛ましい事件でしたしな。最新鋭、遥か太古の神々の装備を得ても世の中は儘ならないのものですし、仕方ありません”』
『き、貴様?! 議長になんて事を!?』
『“おっと失礼……議長殿は随分お孫様を可愛がっていたのでしたな。フルマシンナリーの手術まで受けさせて“延命した”というのに……まったく、世の中は儘なりませんな♪” では、失礼……』
『―――議長。ヤツをまだ生かすのですか? 危険です!!』
『まぁ、そう怒るな。どの道、彼は必要な人材だ。辺境に再侵攻を掛けるのは遠のいているが、いつかはやらねばならない事だ。あの子の事とは無関係にな』
『賢者の窯……我らが祖先の見つけた力の出所、ですか』
『あの力が現在の我らの礎となった。そして、今や足枷となっている』
『っ……時間は残されていないと?』
『技術開発部から連絡が来ている。残り4年だそうだ』
『………』
『彼の地に舞い戻りし、神の名を名乗る何者か。そして、彼の部隊を単騎で墜とす戦闘能力……調べねばなるまい。【アドンの庵】に連絡を取れ』
『あ、あの連中を頼るのですか? 危険です!! “宙”は信用できません!?』
『頼るのではない。利用するのだ。我らが主神の名を騙る者が本当にソレなのか。それとも単なる古代人や“宙の連中”なのか。判明させろ』
『……了解しました。すぐに連絡を……調査内容は……』
『辺境の大英雄【反逆のガラーク】の調査だ』
―――辺境、断崖のアルマート8:32分【猫の城】。
「ガラークさん。ガラークさん。起きてなのだわ……ちゅ」
「ん?」
何か額に温かいものを感じて目を覚ますと目の前が真っ暗だった。
「な、もご?」
起き上がろうとして、その柔らかいものに顔面が埋まる。
「ひゃふぁ!?」
その大きなもの……いや、でっかいものが引いていくと牛3、ヒト7な美少女エーラがデニム地のドレスで後ろに引いていくところだった。
「エーラか。今日の分の配達ご苦労様」
「はいなのだわ。ガラークさん♪」
ニコニコした彼女がタタタッとダプダプ胸元を言わせて柔らかさだけでプリン染みた様子を見せ付けながら部屋の外に出ていく。
此処最近、牛乳を届けてくれるようになったエーラによって、一部の猫達には食卓にミルクが並ぶようになった。
結果は上々だ。
話を聞くところによるとミスティークがキャラバンの人員を雇い入れて、今は牧場の方に住まわせているらしい。
そこで取れ立ての牛乳を毎朝運んで来てくれるエーラは近頃は猫達に得意だという料理の仕方まで教え出しており、朝食の用意を一緒にしてくれているのをよく見かけるようになった。
有難い話である。
「起きるか……」
体を起こして、寝間着とは無縁な装備を外して近場の井戸に向かう。
そこでは昨日お楽しみだった猫の女性陣が男性陣に水をぶっ掛けてゴシゴシ洗って、まるで肝っ玉かーちゃんのようにさっさと服に着替えろと蹴り出している。
(ヒエラルキーが完全に女性陣優位なんだよなぁ……)
「にゃごごごご?!!」
現れて蹴り出された男性陣は情けない事この上ないし、何処かやつれてるし、男の悲哀を全身で体現しながら、傍に置いていた着替えを抱えてぴゅ~っと全裸ダッシュで室内に逃げ込んでいく。
「にゃにゃ?!」
「にゃーごにゃーご」
「なーう♪ なうなう!!」
いつの間にか背後を取られていた。
全裸猫による拉致だ。
ドンドン押し出されて井戸の傍まで来るとシュババババッと人間には有り得なさそうな精密早脱がせ技で衣服を剥ぎ取られ、そのまま四方八方から水をぶっ掛けられ、そのまま飛び掛かって来た猫女性陣達による全身と石鹸を使った“洗い”に入られてしまう。
「あのな? ソープじゃないんだぞ? 此処は……というか、男性陣が滅茶苦茶羨ましそうな顔でこちらを見てるんだが、お前ら自分のパートナーっぽい連中いるのにそれでいいのか?」
思わず素でツッコミを入れてしまう。
「にゃーごごごご♪」
「くーっくくくくにゃ♪」
問題有りませんが何か?と言われている気がした。
MODのせいとはいえ、マニアクス・ニャァンの女性陣は美男美女揃いだ。
白鳥の中に鶏が混じっているようなものである。
乳の大きさでは正しくエーラのような種族には勝てないが、見ている分には目の保養になる彼女達である。
そんな年頃の彼女達にソープごっこされようものならば、嬉しくないわけではないのだが、それよりも気に為るのは他の女性陣の視線である。
「あ~~はいはい。その辺にして洗い終わったらさっさと朝食取って下さいね?( ̄д ̄)」
ジト目でこちらを見やってそうツッコミを入れたのは二階の木戸から顔を出した人豚の少女ミスティークその人であった。
「そうにゃー!! ずるいにゃー!!」
その横には大尉が私もまぜろにゃーと全裸で現れている。
「っ~~~お、お料理出来たの……だ……わ」
更にその横にはモゴモゴと口ごもって思わず顔を両手で隠したエーラまでいた。
「そう言えば、今日人が来るので早めに切り上げて下さいね? ガラークさん」
ちょっと膨れたミスティークの声に人って何?という顔になった時だった。
ザパーッと彼女達が洗い終わりましたボスと言いたげに額の汗を拭い。
一仕事したぜと桶から水を雑に四方からぶっ掛けてくる。
その時、僅かに塀の向こうから声がして、裏門の鉄扉が開いた。
「きゃ……水飛沫? あ、裏手に井戸があるって言ってたけど、此処なのかな? すみませーん。今日から【猫の城】で会計する事にな―――」
振り返ると何処かで見たような蛙系亜人。
というにはスラリとし過ぎているし、老婆とはまったく似ても似つかないレベルの美少女が魔法使いルック(淫紋仕様)でこちらを見て固まっていた。
「な、な、何してるんですかぁあああああ!!?」
思わず両手で頬を覆って真っ赤になった彼女がアワアワしながら視線をあちこちにやりつつ、叫ぶ。
「服着て下さい!!?」
「あ、はい。どうも、すみません。う……本当はエーラとか、この子みたいな反応が正解だよなぁ?」
「そーにゃん?」
いつの間にか全裸で井戸傍までやってきた大尉が飛びついてきてスリスリし始めると他の女性陣達が「あぁあぁあああ!!!? また洗い直しだぁあああ!!?」と言わんばかりに再び攻め寄せて来る。
どうやら誰かの匂いが付いていると汚れている判定らしい。
「だぁかぁらぁ!? 服着て下さいぃいぃぃぃぃぃ!!?」
悲鳴が連続し、再び水洗機に入れられた皿みたいに女性陣の全裸スポンジ乱舞でフローラルな匂いにクラスチェンジさせられる騒がしい朝の出来事だった。
―――10分後。
「きょ、今日から此処にお世話になる事となりました。ス、スミヤナ・ウートと申します。うぅぅぅ、まさか、反逆の英雄さんが猫と朝から破廉恥な事をする色狂いの人だったなんて!! 見損ないました!!?」
ガーッとスミヤナが涙目で吠える。
「破廉恥とかよく知ってるな。さすが魔法雑貨店の娘。魔法他知識職で頼れそうだ。これから会計業務をよろしく頼む。他にも魔法関連でまともなものを頼む事になったら、色々と研究開発もして貰うかもしれないとは言っておく」
「え? た、頼れる? は、はい!! どうか、頼って下さい!! ひいばあちゃん仕込みですので!! 魔法の事なら何でもお任せです。えへへ」
その極めて流され易そうな10代後半の少女はほんわかし過ぎではなかろうかと思いつつも、これくらい素直な方が魔法使いには向いているのかもしれないとも思ったのは内緒だ。
その笑顔は何処かミスティーきゅんに似ていた。
「にゃっぐ、にゃっぐ、ごきゅー」
「うみゃ、うみゃぁー」
「……すみゃーな?」
「!!」
「すみゃーな!!」
「すみゃーな~~すみゃ~な~」
何故か名前の響きが良さそうで連呼し始める猫が出るとそれに釣られて他の猫達もスミヤナをスミャーナと呼び始めた。
「わ、わたしはスミャーナじゃなくて、スミヤナですぅ~~!!?」
猫達に好かれているのでこれならしっかりやれそうだとウンウン感心しつつ、話の間も食事を勧めていたので食べ終えたベーコンエッグの皿を台所に片付ける。
「それにしてもいつの間にオレの拠点は猫の城に……」
猫達に構われて騒がしいスミヤナを横目に溜息を吐く。
「ちょっと前からもう定着してますよ。ガラークさん」
ベーコンエッグを食べ終えて、パンを何故か爆食いしていたミスティークがそう何か荒んだ瞳でこちらを見ながら告げて来る。
「そ、そうだったのか。マジかよ……はぁ、もはや猫に乗っ取られてるな」
「ごしゅりんはねこのおー」
大尉が腹一杯と言いたげに腹部を摩り摩りしながら、べたーっと背後からしな垂れかかって頭の上に顎を載せて来る。
完全に図々しい猫ムーブが板に付いて来ていた。
「ほ~~随分と良い生活をしとるじゃないか。英雄殿」
「そうじゃな。まったく、マニアクス・ニャァン共をこれ程に従えて、更には服従させるとは……その精力と度量は大したもんじゃ」
「うむ。という事で借りてくぞい。ミスティーク殿」
「あ、はい。ちょっとお仕事させて来て下さい。この鼻の下の伸びた英雄さんを」
やはり、今日は当たりの厳しいミスティークなのだった。
*
三博士と呼ぶようになった楽園からの脱国者三人が来て数日。
本国の様子を電波で拾っていた彼らは内部に通信装置を隠していたらしく。
その内容から大まかに自分達の想像通りの結果として新型フルマシンナリーを赤子に入れる計画が凍結された事を知って、涙を流していたのが昨日の事。
本格的に手を付けた研究作業で何を最優先にするべきか。
どういう技術が必要かをヒアリングしたいとの事で三博士の地下研究室……昨日仕上がったばかりの場所に案内されていた。
「ここですじゃ」
土木工事、建築業務に関してかなりの速度で習得している猫達の仕事は確かだ。
土台はしっかりしており、それなりに広く。
大きな柱がちゃんと使われていて、拡充する為にあちこちに通路が掘られ、作業用の機材が整然と現場付近には並べられている。
そんな一角と扉で隔てられた研究室内部の壁際には大きな卓が幾つか置かれ、資料やセントラルからの輸入品らしい機械式の大型PC端末まで置かれていた。
どうやら電力はスチューデント・スーツの背部に装着された機関から取っているらしく。
スーツを入れた機械式の棚が配電盤そのものになっているようだった。
「さてと。研究開発の前にまずは一つ聞いていいかのう?」
三人の長男らしいメルタ博士が眼鏡をクイクイと調整しながら椅子に座ってこちらを振り返る。
「答えられる範囲ならな」
「貴殿は古代人なのか?」
「そういう感じだ」
「ふむふむ。続いて質問じゃが、お前さんの戦闘能力は明らかに常識から外れておる。それこそ太古の時代、神々の世界で星すら砕くと言われた者達が戦っていた頃の兵隊にも見える。兵隊だったか?」
「……まぁ、そんなもんだ」
「否定せんのか。ふむ……じゃあ、最後の質問じゃ」
「?」
「この地図に見覚えは?」
端末からホログラムが出て来た。
卓上に広がるのは―――。
「世界地図? よく持ち出せたな。これが今の世界か……」
そう、世界地図だった。
内心、此処最近で一番の情報だと思ったのも無理はない。
今まで周辺状況を知る為の地図が圧倒的に足りないのに即死し易い体になったせいでロクにマッピング出来なかったのだ。
猫達に一応は周辺5km圏内の様子は全て探らせていたが、何分複雑な事が出来ないのでふんわりした地図しか出来ていなかった。
(オレが最後にプレイしていたヘヴンのランダム生成した世界に似てる。この星は海洋が惑星の29%しかない。超規模パンゲア型大陸と内海と多少の外海だけで出来てるってのはそのままだが……オレの知ってる大陸と形が違う……)
どうにも過去の情報と一致しなかった。
「見覚えのあるような無いような感じだ」
「そうか。それに世界地図なんて概念が分かった時点で聞きたい事は全て聞けたな」
「で? その情報どうするんだ?」
「いや、貴殿が何者か知りたかっただけだ。では、本題に入ろう。欲しい技術の類だが、研究するにしても最初から分かっている技術に繋がる系統樹的な通過点が幾つもあってな。そこを車輪の再開発をしながら進めていくのが妥当なんじゃ」
「ああ、それは分かる。他の勢力が持ってる技術も在る程度の研究が進めば、理解出来るようになるんだろ?」
「ああ、その通り。今、我らが知って判明している技術ツリーがこれじゃ」
複数の技術が掛かれている図がホログラムに出た。
「……判明してる技術は多いが殆ど初期? 一部だけ穴埋め問題みたいに光ってるな……」
技術ツリーの名前が分かっている技術の殆どはこちらも聞いた事があるものばかりであった。
そして、その内のマシンナリー関連と電子関連、機械式の肉体置換、一部の免疫反応や薬学分野の一部の知識に明かりが灯っていた。
それはともかく埋まっていない技術が数千規模から数万規模であまりにも大きいというのは眩暈がする事に違いない。
何せ天井一杯にツリーが伸びていて尚、更にその上があるのだ。
「今、この辺境にある技術の数も入っておる。基礎的な土木建築や生活に必要な知識全般は蛮族レベルじゃがそれなり。武器製造技術は銃に必要な各種要素、部品、材料の大半は取得済み。高度な武装は不可能だが、そこは我らがいれば、すぐにでも技術的にはある程度のレベルにまで到達するじゃろう」
「確かに……」
「ま、技術があっても、材料と設備が無ければ、なーんも作れんのだがな」
「はっはっはっ、その通り」
「いや、まったく不甲斐ない」
「まぁ、普通だ。そういうのは揃ってからだな。必要なのは武器よりも立ち回りに使う品だ。武装よりも防具や装具。戦術の幅を広げる装備が欲しい」
「ほうほう?」
三博士が興味深そうにこちらの意見を聞く姿勢になった。
「取り合えず、戦闘中の機動速度の底上げ。徒歩での速度の向上、兵隊の隠蔽用、つまりカモフラージュ兵装、後は静穏性の高い武装とトラップ、兵站確保の為の車両技術、街の防衛用のタレット、早期警戒用レーダー、量産出来る高射砲、街の周囲を大規模に囲む壁を作る為に建築用の作業機械と自立型AI式建築ドローンが欲しいな」
「「「………」」」
「出来ないのか?」
「いや、殆どは出来るぞい。殆どは、だが」
「何が無理なんだ?」
「AI……嘗て、太古の時代には当たり前だったらしいが、今は宙の連中の独占技術なのだ」
「ソラ? 宇宙の連中か?」
「ソレも分かるのだな。英雄殿」
「ならば、覚えておいて欲しい。今、この大陸……いや、この“星”は宙からの侵略者による侵攻を受けている最中だ」
「―――」
博士達が端末を操作すると世界地図に二つの点が表示される。
「この蒼い点が我らのいる最辺境、断崖のアルマート。そして、此処がこの地域の人間がセントラルと呼んでいる中央領域の中心点、大体の領域を囲むぞ」
すぐにセントラルと呼ばれているらしい領域が線で囲まれたが、かなり狭い。
少なくとも200km四方も無いだろう。
「オイオイ。大陸の端の端じゃねぇか……」
「左様。我らのような者達は知っているがな。我らも“辺境の中枢”に居座っているだけの弱小勢力なのだよ」
「………」
最後に新たな点が本当の大陸中央地帯に黄金色で表示される。
周辺には大きな黒い丸く穴の開いたような塗り潰された領域や川らしいものが流れ込む巨大な山脈、人口的な路線らしきものが地図には複数書き込まれており、アルマートから一番近い海岸線沿いの地域には罰印が多数付けられて、何やら不穏な空気を醸し出している。
「再開発する方法は?」
「太古の遺跡から発掘したAI式ドローンの現物がいる。中身の解析に20日。エンジニアリングする為の技術開発に60日。だが、開発の本当の困難さは現物を作った後にある」
「現物を作った後?」
「現物を幾つも先進文明勢力は作って来た。だが、必ず近隣では滅んでいる」
「何故だ?」
「宙から破滅の使者が下りて来るからだ」
「破滅の使者?」
端末に地図ではなく。
新たな映像が映し出される。
大型のビルが横倒しになりながら、抉れて吹き飛んだ内部から大量の人間が這い出すと銃撃で倒れ伏していく。
炎の塊が街の一角を焦土と化し、蒼白い稲妻が雷撃で街の一角を覆い尽くす。
だが、全てのドローンが大型のはずだが見えない。
恐らくは不可視化する光学迷彩機能を積んでいるのだ。
「………【イエーガー】クラスか。【ジュール・イエーガー】【ボルト・イエーガー】……ビルを抉ったのは【グラビトロ・イエーガー】だな?」
「ッ、知っておるのだな。正しく、名前なんて我らは知らなんだが、其々が炎のドローン、雷のドローン、重力のドローンと呼ばれておる」
「降って来るのだよ。宙の連中もどうやら手を焼いているらしいが、撃退は出来ている。だが、我らのような地表勢力の殆どはコレらに対して完全に対策出来ない。宇宙からの空挺降下。更に施設の完全破壊を目的にして他は目もくれない。周辺領域の全ての生体反応を消滅させるまで止まらない悪魔の機械達だ」
重々しく男達が溜息を吐いた。
きっと、楽園でも同じような事があったのだろう。
「更にこれらを統括する精神干渉個体が確認されておる。撃退するとソレが出て来て、精神を破壊する波動を発し、殆どの勢力は何も出来ずに蹂躙されて消去されて来たのだ。しかも、我らの技術ではどんな攻撃かも分からん。ただただ死んでいくだけでな」
「それは【メンタル・イエーガー】だな」
「勝てるか? 英雄殿」
「勝てぬのならば、お勧めせんぞ?」
そういう事かと内心で溜息一つ。
「……作って欲しいものがある。ソレがあれば、まぁ勝てる」
「ほう? 今の我々に創れるものかね?」
三博士の興味深そうな顔に肩を竦めた。
「オレはアレを何万、何億と生産して使う立場に有ったんだ。ま、宇宙でドンパチしてた頃の話だがな」
「「「―――」」」
完全に度肝を抜かれて放心した老人達が顔を蒼白にして目を剥いていた。
「勝ち方は知ってる。というか、負ける方が難しい。装備さえあれば、オレ1人でアレを20ダースは破壊出来るぞ?」
そう汎用ドローンMOD【FANG】は超重物量戦と呼ばれるドローン軍団や大艦隊を率いて戦う宙では中々の戦績を残した良MODだ。
開発者の備考欄に『名前はカッコイイ響きにしたのでツッコミ無用』とあった。
生産コストと使用質量、大量の工場を揃えれば、殆ど全自動で戦力を増やしてくれるファクトリー系MODと併用して多くは運用された。
各種のサーバーで大規模PVP対抗戦が実施されていた頃は億と言わず兆、兆と言わず京単位の艦隊とドローンを用いて総力戦が行われ、各種MOD制限もされてはいたが、大規模戦闘の盛り上がりは世界中でファンがいる大型イベントとして同時視聴数3億を超えた事もある大人気コンテンツだったのだ。
「まぁ、任せておけ。先に遺跡発掘の方か。近隣に無いかミスティークに聞いてくるから……まずは必要な装備を揃えよう」
博士達が顔を見合わせる。
そういう事になったのだった。
*
「オレ達【ファントム・レイダーズ】はこれより近頃クソ生意気な事を言い出した商人共に鉄槌を下す!! 黙って金を寄越せばいいものを!! 最果ての辺境の街に逃げ込んでトンズラだと!! 馬鹿にしやがって!! 行くぞ野郎共!!」
『ぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお』
鬨の声が上がる。
次々に車両に跨った男達が出発する直前。
「にゃ♪」
カチリ、と。
グリップのボタンを愉しそうに押すマニアクス・ニャァンが一人。
大尉が仕掛けていた複数の爆薬が一斉に起爆。
荒野の一角にある大きな岩山の風化した渓谷の内部。
左右の崖が爆破で崩落しながら相手を生き埋めにしていく。
その埃が断崖から少し離れた荒野に隠れているこちらにも吹き抜けて来た。
「小規模とはいえ、40人単位の野党がワラワラいるのは治安悪いな」
「にゃ~♪」
爆破出来てご満悦な大尉である。
本日、午後4時30分。
太古の遺跡調査隊もとい大尉との二人旅に出発して8時間後。
博士達が指定した領域に向かう途中、目も良い大尉が複数の車両を確認し、即座に車両を止めて隠蔽。
爆薬を片手に蛮族の拠点らしき場所に潜入。
丁度良さそうな破壊可能な拠点だったので彼らが集会という名の飲み会を開いている間に車両と拠点を囲み崩落させられる位置に爆薬を設置。
100g程の“魔法の爆薬”……トリプル・ユーにおいて追加されるアイテム。
【ブラックホーク・ダウン】を遠巻きに起爆したのである。
米軍からヘリが消えていく切っ掛けとなった旧時代の事件を皮肉ったソレで全てを岩の下に埋めたのだ。
爆薬は基本的には黒く。
黒色火薬を用いて製造されるが、魔法在りきのヘブンでは黒色火薬にちょっと魔力と粘土を練り込んで山盛り甘い普通に市販されている超強力な甘味料(超高分子塊)を更にブチ込み、分子構造を破壊した時に開放されるエネルギーを爆増させた代物である。
「ホント、何で市販されてるんだろうな。あの【バーニング・シュガー】って……」
デフォのヘブンにある砂糖は大陸全土に出回るポピュラーな品だが、激甘、クソ甘、ゲロ甘の称号を欲しいままにする危ない代物だ。
一袋燃やすと一瞬で大木が灰になるレベルの燃料にもなる。
ソレを混ぜ込んだ魔法の爆薬は機材か魔法で起爆しなければ、ほぼ単なる黒い粘土だが、1g辺りTNT2kg換算の威力を誇り、魔法MOD入りヘブンの基本的火力が高くなる原因となった。
(劣った魔法が科学を墜とす。正しくジャイアントキリングって事なんだろうな。あの肖ってる名前も……)
何せ、起爆が魔法でも出来るので適当な手榴弾にペタペタ張って相手に投げ込んで爆破し、飛び散ったものを更に魔法で起爆するという二段階攻撃で大抵の敵は10m四方が即死する爆発威力圏内。
他にも矢などの先に付けて、魔法で遠隔起爆する戦術では単なる矢だと思ったら、単なる超低速榴弾砲染みたものだったでござるとドローン部隊が全滅するのだ。
「ま、火力不足な旧時代の武器や兵器に雑塗りして打ち込むとかが使い道な時点でなぁ……」
「いくー」
「ああ、行こう。どうせ、連中ロクな物資なんて持ってないだろうしな」
こうして荒野の勢力を一つ壊滅させて、イソイソと車両で現場を後にする。
悪党に構っている暇は無い。
辺境とはいえど、殆どの古代遺跡は盗掘済みという事らしいので残っている遺跡を探すのは手間なのだという。
実際には現在の人間が立ち入れないような過酷な環境の領域にはまだまだ遺跡があるらしいが、レベル1相当の実力では入ったらどうせ即死である。
基本的には火力おばけの大尉に任せるのが丸いだろう。
小規模なものかどうかは判断が付くし、小規模ならば、自分1人でもどうにかなる。
だが、大抵の古代遺跡は大きいし、中々に広い。
(近接くらいしか取り柄の無いオレじゃ、火力が足りない事も多いしな)
変形する重火器であるキメラティック・アームドは弾切れであるが、電源はスーツから取っているのでレーザー兵器及び、短距離用のテーザーガンとしてならば、バリバリ使える。
プラズマボムも小さな特殊な鉱石を使う弾丸が必要なのだが、それはまだ在庫が在り、数百発は撃てるとの事。
基本的には大尉に遺跡攻略をして貰い。
荷物番をする係になる事が決まっていた。
「なうなうな~~♪」
爆発でご機嫌な彼女は普通に黙っていれば、横顔の端麗なCG染みた人形的顔立ちの理知的少女に見える。
のだが、歓び勇んで重火器と爆発をこよなく愛する様子やら感情豊かに仲間達を指導しつつも笑っている様子を見ると年頃らしいとも思える。
「なぅ?」
助手席でこちらを見やる大尉は笑顔だが、何処か悪戯っぽい上目遣い。
「お前が味方で良かったよ。大尉」
本来の名前なんて知らないが、きっとこの少女にも父や母はいただろう。
だが、ヘブンは人間ドラマよろしく。
あらゆるNPCが生成されては死ぬ非情な世界だ。
不死系MODもあれば、NPCを無条件に超絶防御力で護るMODも存在する。
しかし、入れてはいても適応はしていない。
嘗てはミスティーきゅんや多くのNPCを不死化して余計な護る手間を省いていたのだが、それは大切にしているのかと自問自答した時に自分の手で出来る限り護る事が本当の意味での護るではないのか、と。
(単なるプレイヤーの、いや……オレの意地なんだろうな……)
きっと馬鹿馬鹿しいのだろう結論に至った。
死なない人間を大切に出来なくなったら、悲しいというだけの話だ。
ヘブンはゲームなのだから、愉しめばいいのかもしれない。
しかし、人生を掛けて遊んでいる以上……単なるゲームとして飽きたくは無かった……NPC達からしたら、迷惑極まりないだろう。
だが、結局は大切なものが減ってしまったら、人生は愉しくなど無いのだ。
自分からソレを減らす必要も無い。
その傲慢さこそ自分がヘブンに掛ける情熱なのだとしたら……『お前もやっぱり狂人か?』と知り合い達に苦笑して言われていたのも今なら納得だろう。
『だから、お前は苦行みたいな高難易度を何度も何度もやるのか』
ゲームの中だけの付き合いとはいえ、それでも数少ない知り合いはそう呆れた様子でいた事を思い出す。
「んぅ~~?」
首を傾げる横顔の頭を撫でておく。
「何でもない。ミスティークと博士達が割り出した遺跡がある確率の高い領域は人の往来が殆ど無い地域だ。つまり、辺境の中でも誰もいかない世界……何があるか分からない。絶対油断するなよ?」
「おぅけぇい!!」
ビッと親指が立てられた。
ニヤリと笑みが大尉の顔に浮かぶ。
「じゃあ、飛ばすぞ? 時間は有限だからな」
荒野の猛獣達を突っ切るようにして車両の速度を上げる。
積んでいる物資と食料は4週間分。
燃料は2往復600km分。
こうして小旅行は―――始まり。
唐突に終わった。
40m近い上空へといきなり放り出された。
咄嗟に車両内部で大尉の首根っこを掴んで車両のドアを開き蹴飛ばすように上空に逃げる。
「―――ランダム配置、ランダム生成……ああ、あのMODはまだ適応されてたのか」
落下するより前に唱える。
「イッツ・パァアアアアアティイイイイタァアアアアアアアアイム!!!」
いきなりクライマックスであった。
大尉は何があったのかまるで理解していないが、自分達の車両を“尻尾を振って打ち上げた存在”に目を丸くして度肝を抜かれている。
ゆっくりと“地表が”形を取った。
無数の瓦礫と砂塵が落ち始め、粉塵が舞い上がって全体像を隠していく。
―――oooooooooooooooooooooooonnnnnnn。
大気が鳴動する。
「そういや、此処の領域の名前が“見知らぬ鳴動”だったな。クソが」
大尉を抱き締めながら、再び迫りくる壁……いや、“50mの尻尾”に蹴りを叩き付けて、落下速度を減速しながら後ろに下がるようにして着地した。
「なんにゃ……あ、あれ……」
「【ディノドリヲン】……全長500mの恐竜だ」
「にゃーりゅー?」
「ああ、街くらいあるデカさの怪物だな」
「ッ―――」
尻尾がユラッと上空で揺らぎながら、ゴッと真下に叩き付けられる。
落下速の載った尻尾の直撃は砲弾の直撃の数十倍の破壊力である。
「!!!」
その爆風の余波を自分の拳を真正面の空気に叩き付けて相殺しながらも押し負け―――最後にはそよ風程度まで減衰させる。
「プラズマボムで狙う場所がある。だが、遠距離からじゃないとダメだ。此処からあの巨体の4倍まで下がれ。オレが戦ってる間に頭の宝石を狙え。キラキラしてる。夜になると見え難いが赤外線で熱い場所がソレだ」
「にゃ!!」
瞬時に得物を抱えて走った大尉が猛烈な速度で砂埃を上げて消えていく。
「男の子は大きい恐竜が好きってのが相場なんだが、大き過ぎだよな。お前」
恐竜追加MOD【ディノマゲドン】。
だが、実際の恐竜は3割程度でしかなく。
200種類近い追加エネミーの殆どは創作恐竜型生物兵器だ。
500mの巨体を維持する事なんて普通の生物には不可能。
恐竜という事になっているが、サブ・ストーリーの追加MODでもあり、遺伝子改良された恐竜のような生物兵器こそが【ディノドリヲン】の正体だ。
これらの太古の科学者達が生み出した恐竜型生物兵器をプレイヤーが倒して行って、最終的には自分で創ったり、あるいは単純に資源化してリソース化する事が可能なMODなのである。
ガワは恐竜だが、中身は巨大なスライム状の金属原子を遺伝子に持つ細胞で形成されており、殆どの生物兵器がナノテク的な極小規模の事象で相手を殺すのに対し、このMODの恐竜は質量、加速度で殺すマクロ規模の事象を多用する。
ちゃんとそれっぽい設定もあり、巨大なスライム状の物体の殆どが形状記憶合金のような細胞で構成されていて、恐竜の形を維持し、自身が動く事で発生する熱量と電圧で変形しているのだ。
巨大質量を動かすのではなく変形。
元々の設定された形に変化しているのである。
要は巨大な自立して動く形状記憶合金製の模型みたいなものだ。
生物としての代謝は殆どなく。
質量自体の熱量と電圧が下がれば、動けなくなって活動を停止する。
―――oooooooooooooooooooooooonnnnnnn。
ガワ、姿は本当によく出来ている。
実際の恐竜は詳しく調べれば調べる程にナーフされてガッカリ性能にガッカリな姿になる事がよくあるらしいが、この巨大恐竜型生物兵器は本当に誰もが想像するような恐竜の姿をしている。
ただ、暗灰色の創り込まれたテクスチャの肌や造型はそれっぽいのだが、額に宝石っぽい熱量供給機関の中枢が埋まってたり、肛門や性器が無く。
ちゃんと創りモノっぽい上に両手両足や打撃や攻撃に使う部分が凶悪な形状。
装甲染みたものに覆われていたりするのでなんちゃって恐竜感が良い味を出していると子供心を擽る仕様である。
ユラリと首長竜染みた首がこちらを向いて、尻尾の上を走行していた不届き者に向けて方向転換が始まった。
たった、それだけの動作で大量の爆圧が吹き抜けて来る。
拳を真正面に連打してソレを相殺している合間にも案外早く振り返り切った恐竜さんの瞳……本物にしか見えないが、しっかりセンサー類だけは機械な瞳の収縮を確認する。
「完全にロックオンされたな。前はどうやって倒したっけ? 宝石破壊ですぐに行動不能になるとはいえ、この巨体に対して白兵戦は無謀だよなぁ……」
言ってる間にも少し高く持ち上げられた巨大な片脚が振り下ろされる。
爆風で殺す気だろう。
砲弾数十発どころか数百発分の爆圧が周辺をクレーターと化していく。
だが、その最中にも衝撃を受け流すのではなく。
敢えて全身で受けて舞い上がる事で上空に距離を稼ぐ。
「デカ過ぎ。射角的にもう少し頭を下げて貰えませんかね?」
空気を蹴り飛ばして回転しながらサマーソルトキックで相手の頭部狙い。
だが、少し首を横に逸らされ、猛烈な打撃が横殴りの首振りで直撃。
地面に一直線に叩き付けられる寸前に相手の肌に打ち込んでいたアンカーワイヤーが伸び切ったのを良い事に振り子運動に運動エネルギーを変換。
相手の真正面を通って、反対側の首元へと着地。
巻き付いた形になるワイヤーを嫌がってか。
猛烈な地団太で大地が爆発し、クレーターが更に沈み込んでいく。。
「暴れるな!? 粉塵で狙いが付けられないだろ!?」
首元に拳を打ち込む。
その掌の中には護身用として持っていた【ブラックホーク・ダウン】100g。
「無理やり起爆出来る威力が確か銃弾400発分の威力だっけ? まぁ、いい。全力だ!!」
満身の力を込めて拳を爆薬そのものに叩き付ける。
美少女を護る為に戦うのならば、片腕一本吹き飛ぶ程度許容しておく。
現在の状況はそれくらいに逼迫していた。
猛烈な閃光。
恐らく、爆薬の威力を呑み込んで渾身の右ストレートが炸裂。
光の柱染みた斜めに貫通した威力の槍の最中。
もう片腕が動かない事を確認しながら、相手が思わず横倒しになったのが見えた。
「今だ!!」
右上半身の衣服が全て消し飛んでいた。
格好良さが足りなかったらしい。
だが、きっと素で戦ったら、こんなものだろう。
声は聞こえていないだろう。
だが、武器のスコープでは確認出来るし、こういう時に大尉が外さないのは分かっていた。
遥か彼方から猛烈な速度で奔る光の弾が弓なりの弾道で飛来し、横倒しになった首の先の頭部の宝石周辺に直撃した。
猛烈な熱量による蒸発、融解。
そのせいで一気に恐竜そのものの姿を維持出来ずに何もかもが溶けていく。
制御中枢が破壊されれば、こんなものだろう。
受け身も取れずに地表に激突。
一瞬意識が跳び掛けるが、何とか腰のポーチから小瓶を取り出して回復薬を口に飲み込む。
瞬間的に肉体が再生したのは分かったのだが、装備や衣服が元に戻るわけでもないのが困りものだ。
このまま黒い鼠に接触されたら、ジ・エンドなのは間違いなく。
起き上がろうとするが、HPや肉体構造はともかく体力がごっそり失われたせいか。
何とか立ち上がるのが精一杯。
宵闇に爆走してくる土埃が見えたのも束の間。
何とかなったかと手を振ろうとしたら、地面が一瞬で罅割れ―――遥か地表が遠ざかっていく。
その時、確かに叫びを聞いた気がした。
「ガラーク!!!」
あまりにも巨大な図体が埋まるようにして地表にいたのだ。
埋まるほどの地下が無ければ、山になっていたはずである。
だが、実際に車両は兵站な荒野の上を走っていた。
つまり……この旅の目的地からして大当たりを引いたという事だ。
それが恐ろしく広大な地下構造であるという事以外、何も問題は無いだろう。
ヘブンにおける死亡率の4割を占めるのは危ない生物でも日常的な即死トラップでもない。
遺跡における探検時の事なのだと今更に思い出しながら、意識はブラックアウトしたのだった。
いつか見た大昔の映画の叫びが脳裏に響く。
『ブラックホークダウン!! ブラックホークダウン!!』
ヘリというカッコイイ乗り物が戦場で絶滅した理由は正しく格下と侮った世界に寄越したカモが打ち倒されたからだ。
自分もまたカモだろうかと考えながら、ミスティーきゅんの顔だけがフッと脳裏に浮かんで……消えたのだった。




