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勇者暴走

魔王城にたどり着いた勇者一行は、魔王との戦いの末、魔王を討伐することに成功した。


 パーティーの目的は魔王討伐だが、()()()()は別にある。


 僕の目的・・・それは・・・・・・



*



 とうとう、私たち勇者パーティーは魔王を討伐することが出来ました。勇者様と魔王の一騎打ちになったときは、「魔王の卑怯者め」と思いましたが、勇者様が無事勝利しました。



 しかし、勇者様は魔王の亡骸(なきがら)を見つめたまま動きません。どうしたのでしょうか?


 ・・・まさか!勇者様は動かないのではなく、()()()()のではないでしょうか?


 私は、勇者様の安否を確認するため、声をかけることにしました。



 「勇者様?」


 「・・・・・・・」


 「勇者様?」


 「・・・・・・・」



 反応がない。まさか・・・



 「勇者様!」


 「!」


 勇者様が驚いた顔をして、こちら側を顔を向けました。どうやら、、意識はあるようです。



 「どうしたんですか・・・聖女様?」


 「あの・・・大丈夫ですか?」


 「大丈夫って・・・なにが?」


 「えーと、ずっと、魔王の方を見て動かないので」


 「ああ!ごめん。考え事ごとをしていてね」



 考え事ですか。今後のことでしょうか?


 魔王を倒した勇者様は、勇者様を召喚した王国そして私が所属する教会から見ても手に入れたい人材で す。そのことで考えているのでしょうか?


 魔族領に入る直前の町の宿屋で、王国そして教会から1通ずつ手紙が来ました。私は、手紙の内容は見ていませんが、私個人あてに教会から来た手紙の内容で、なんとなく想像がつきます。


 そのことで、勇者様は悩んでいるのかもしれません。


 しかし、ずっとここ(魔族領)にいるわけにもいけません。



 「・・・みんな、ケガはないか?」


 「俺は、大丈夫だ」


 「私も、大丈夫です」


 「聖女様と同じく」


 「・・・分かった。魔王を討伐したとはいえ、魔族は消えるわけじゃない。魔族領を抜けるまでの間に襲われる可能性がある。オリエル、僕のことは後でいいからみんなの回復をしてくれ」



 ・・・さすがです、勇者様。本来なら、すぐにでも魔王城を出たいところですが、他の魔族に襲われる可能性を考えるとは。


 私は勇者様に言われた通り、皆様に回復魔法をかけました。


 回復魔法ー直接的な攻撃力は持たない代わりに、癒すことに特化した魔法のことです。


 とりあえず、皆様はケガと言ってもかすり傷程度だったので、すぐに回復できました。


 次に、勇者様の回復をしようとして声をかけようとしたら、



 「勇者様、・・・なぜ・・・魔法の準備を」



 勇者様は魔法を発動しようとしていたのです。たまらず、私は何の魔法かを聞きました。



 「ああ、これはね『放送魔法』だよ」


 「放送魔法?」


 聞いたことがない魔法でした。勇者様曰く、世界中の人々に声と姿を伝える魔法だそうです。



 「その魔法で何をするつもりだ?」



 盗賊であるトウ様が勇者に聞きました。



 「何って決まっているじゃないか?魔王討伐のことだよ」



 勇者様は、魔王討伐を知らせるために、この魔王城から王国に直接向かうと時間がかかり、その分国民に不安を与えることになるため、早く知らせたいとのことでした。


 もちろん、それには賛成なのですが、何か嫌な予感がしました。私は、魔法の発動を止めるように言おうと思いましたが、



 「じゃあ、放送を始めるよ」



 時すでに遅しでした。



 「『皆さん、こんにちは。僕は異世界から召喚させた勇者アサハルです』」



 勇者様は、自身のことやパーティーのことなど、様々なことを喋っています。勇者様の存在自体は、あらかじめ王国や教会側が告知していたので、知らない人はいないと思いますが。



 「『・・・・・・というわけで、僕たち勇者パーティーは魔王を討伐しました』」



 どうやら、魔王を討伐したことを発表したようです。



 「『さて、これから皆様に伝えたいことがあります』」


 「伝えたいこと?私たちはそんなこと聞いていませんが」


 「事前に言うと、止められるから」


 勇者様は、恥ずかしそうにそう言った。


 それにしても、私たちが止めるということは、勇者パーティーに関することでしょうか?



 「『それでは発表します。・・・・・・』」


 「勇者様」


 「『・・・・・・僕いえ俺が、次の魔王になります』」


 え?私は、勇者様が言っていることの意味が分からなかった。



 次の魔王になる?勇者様が?



 「あの、・・・勇者様、・・・何を言ってるんですか?」


 「だーから、魔王になるって言ってるんだよ」



 勇者様は、まるで暴君のような態度で私に言い放ちました。



 「・・・アサハル」


 「勇者殿、気でも狂ったか!!」



 私の専属騎士であるクイックは怒りの声を上げましたが、私は驚きのあまり何とも言えませんでした。



 「気でも狂ったか?安心しろ。元から気は狂ってるわ!!」


 「アサハル、どうしてこんなことを!?」


 勇者様と唯一同姓であるトウ様は、怒りよりも先に困惑していいるようです。


*


 「アサハル、どうしてこんなことを!?」


 俺は、声を(あら)らげるしかなかった。アサハルは、時々意味がわからないことを分からないことを言うが、それは文化的な違いがあったからだ。アサハルがいた世界がどんな世界かは知らないが、この世界とは完全に違う世界ということは知っていた。なぜなら、魔王が存在しないからだ。


 この世界では、強い魔族が定期的に"魔王"と呼ばれ、人間領に攻撃を仕掛けてきた。魔王という概念が誕生したころは、魔族領周辺の国家が壊滅的な被害を受けつつも、魔王を倒すことが出来た。


 しかし、魔王は定期的に発生するので、その度に周辺の国々は被害を受ける。その結果、問題を放置する国々に対し、業を煮した周辺国家が国家間の会議で暴動を起こし大問題となった。


 そのことがきっかけで、勇者を召喚する魔法が発明された。


 そして、魔王が発生するたびに勇者が召喚され、魔王が討伐された。


 もちろん、これまでの勇者で『魔王になる』と宣言したものは俺が知る限りいない。


 だからこそ、俺はアサハルの宣言に驚いている。



*


 なんということだ。勇者殿が魔王になるだと!


 このようなことは、勇者の召喚が始まって以来、一度もないことだ。


 ・・・・・・こうなってしまった以上、勇者殿を倒すしか、方法がない。


 しかし、問題がある。それはトウだ。


 トウが、どちらの味方になるかということだ。


 もし、トウが勇者の方についた場合、聖女様を守りながら戦うことは難しい。


 幸いにも、聖女様が回復魔法を使用してケガを癒してくださったので、すぐに負けることはないと思うが。


 それでも、トウがどちら側につくかによって大きく勝敗は分かれるだろう。


 しかし次の瞬間、私たちは勇者と戦わざる負えないことを知った。



 「というわけで、君たちには死んで頂きます」


誤字等があれば誤字報告をしてくれると幸いです。

最終話「暴走の真実」は明日(2025/06/04)の18時頃に投稿する予定です。

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