魔王討伐
異世界より召喚された勇者アサハル、聖女オリエル、盗賊トウ、騎士クイックの4人は、魔王討伐のために魔王がいる魔王城がある魔族領に侵入した。魔族領に侵入した4人は、魔族のことに詳しい盗賊トウの案内の元、魔王城に向かった。
ここは、魔王パステレンが住む魔王城であり、私たち勇者パーティーの最終目的地でもありました。
勇者パーティー・・・異世界より召喚された勇者”アサハル”様を中心としたパーティーのことであり、そのメンバーは私こと聖女"オリエル"、その騎士"クイック"、魔族の情報に詳しい盗賊"トウ"の4人で構成されています。
勇者アサハル様は、私たちとは異なる世界で生きていた"ニホンジン"と呼ばれる種族だようです。召喚した最初の頃は、戸惑いを隠せませんでしたが、少しづつこの世界に馴染んできたようです。
この世界ではこれまで、魔王が誕生した際に異世界より勇者を召喚し討伐を行いました。
そして、私たち勇者パーティーは今回の魔王城に侵入し、紆余曲折あって魔王と対峙することになりました。
私たち勇者パーティーは4人に対し、魔王はただ1人です。
しかし、魔王は長年実力主義の魔族を纏め上げてきた存在であり、その実力は今まで戦ってきた魔族とは一線を画すものでした。
それでも、私たち勇者パーティーがここまで来れたのは、一言で言うと武器のおかげです。
私たち勇者パーティーの武器は、この世界の女神であるヴァリアッテ様によって作られたものであり、対魔族つまり魔族に大きなダメージを与えることが出来るものとなっています。
そして、それは魔族である魔王に対しても同じことがいえる。ですが、魔王は魔族における実力主義の頂点における魔族でもあります。いままで倒してきた魔族と違い、大ダメージを食らうことはありませんでした。”勇者様”以外の攻撃を除いて
勇者様の攻撃は目に見える形でダメージを与えています。だからこそ、魔王は勇者の攻撃に警戒しています。
「くらえ!魔王」
「そうなんども同じ手を食らうか!」
魔王は、攻撃魔法による相殺もしくは防御魔法の展開で勇者の攻撃をいなしています。とはいっても、いつまでも魔法が使えるわけではありません。魔法を発動させる”マナ”は魔族であっても、その量は限られています。そして、魔王は魔法ではなく近接戦闘を得意としているため、近接武器である”聖剣”を使う勇者様との相性が悪いです。
そのため、魔王は遠距離から攻撃魔法をするしかないのですが、
「・・・ちぃ、マナ切れか」
どうやら、マナが切れたようです。こうなった以上、魔王は近接距離で勇者と戦うしかありません。しかも、勇者様は魔王城の戦いで魔法を使っていません。別に、勇者様は魔法が使えないわけではありません。魔法は専門家には劣りますが、平均的な冒険者よりは魔法を使うことが出来ます。
*
我は、勇者に傷をつけられた左腕を抑えながら考えた。勇者を何とかする方法を
しかし、勇者の武器は我と相性が悪すぎる。勇者を倒すのは今の状況では無理だろう。だからといって逃げることは出来ない。
なぜなら、魔族は実力主義だからだ。ただの魔族ならいざ知らず、我は魔王だ。勇者らに負けたと知られれば、他の魔族たちに命を狙われるのは間違いない。だからこそ、逃げることが出来ない。
我は確かに魔族の中でも一番の力を持っていると自負しているが、それは万全の状態で戦ってきたからだ。そのため、我は勝ち続けることが出来た。そして、魔族の頂点である魔王になることが出来た。
だからこそ、我は勝つ必要がある。魔王であり続けるために、生き続けるために、寿命を迎えるために
しかし、その方法が分からない。得意の近接戦闘も勇者の武器に気を付ける必要があるため、勇者に大きなダメージを与えることが出来ない。さらに、今は小さいダメージでも大きいダメージになりうる。
本来なら、気にも留めないダメージがだ。
しかも今、我の相手をしているのは勇者1人だけである。この魔王の間で戦い始めた時は、3人で戦っていたが、時間が経つにつれ1人ずつ減っていったのだ。もちろん、我が倒したわけではない。勇者がそう指示したのだ。
『クイック、聖女様の周りを守ってくれ』
『トウ、援護の方に集中してくれ』
この指示のおかげで、我は立つことが出来ている。勇者の方は、我が奥の手を隠し持っていると考えているようだが、そんなものはない。そんなものがあったらとうに使ってるわ。とはいえ、ないわけではないが、・・・・・・仕方がない。この場で死ぬのも、逃げて死ぬのも、同じ死だ。
*
「はは・・・」
「はは?」
突然、僕が対峙している魔王が急に笑い出した。僕、朝春統治は魔王の様子の急変に戸惑いを隠せないでいた。
「勇者よ、これでケリを付けないか?」
魔王は、自身の右手を僕に向けてそう言った。おそらく一騎打ちのつもりだろう。
「それに乗るメリットが僕にはない」
魔王は、息をするので精いっぱいのようだ。このまま、時間をかければ確実に魔王を倒すことが出来るだろう。しかし、それがいつになるかはわからない。それに、僕個人としてはこれ以上時間をかけたくないが、この提案に容易に乗ることは出来ない。
「ふっ、確かにな。では、魔族の生態については知っているかな」
「・・・魔族の体がマナで出来ているってぐらいは」
「それを知っているのなら十分だ」
そして、魔王は語りだした。この一騎打ちに乗らない場合、自身の体を暴走させて、魔族領を壊滅させると。
「では、勝手に自滅してください」
聖女オリエルが魔王に言い放った。彼女は、旅の途中で魔族の被害にあっている人を何人も見たんだ。
そう言いたくなる気持ちもわかる。
「そうか、・・・ではそうすることにしよう」
「・・・!ちょっと待った!」
「!」
トウが突然、大声を上げたので驚いてしまった。
「魔王、質問いいか?」
「なんだ、盗賊よ」
「お前が死んだ場合、魔族領の魔族はどうする?」
「ほう・・・いい着眼点だな」
「質問には答えてもらうぞ」
「ああ・・・答えてやろう」
そして、魔王は話し始めた。自分が自爆した場合に人間領で起こりうる悲劇を。魔王が自爆した場合、魔族領の広大な土地が魔族が生きづらい土地になり、その結果魔族たちは勇者パーティーだけではなく人間に恨みを持つようになり、今以上に魔族との争いが悪化の一途をたどることを。
「・・・」
「アサハル」
「勇者様」
「勇者殿」
・・・僕たち、勇者パーティーの目的は魔王討伐だ。しかし、それは魔族の鎮静化のためだ。魔王の一騎打ちに乗らずとも、魔王を倒すことは可能だが、魔族の鎮静化にはつながらないだろう。むしろ、状況は悪化の一途をたどるだろう
「・・・仕方がない」
「それで、どうする?勇者よ?」
魔王は、僕の答えが分かっているのだろう。
「分かった。一騎打ちをしよう」
「ああ、感謝する」
魔王は、僕がそう言うと、腕を構えた。僕も、旅の相棒である聖剣"エクス"を構えなおした。
「おい、盗賊」
「なんだ?」
「合図をしろ」
「・・・アサハル」
僕は、トウに目で合図を送った。
「・・・分かった」
「すいません」
トウが、僕と魔王の真ん中から少し離れたところに立った。
「・・・・・・」
「・・・・・・」
トウは、ゆっくりと片手をあげた。もはや、僕と魔王に語り合うことはない。あとは、自分の力を発揮するだけだ。
トウが手を下げた。その瞬間、僕は魔王、魔王は僕の方に走り出した。
「パステレン!!」
「勇者!!」
僕たちは、一瞬ですれ違い、僕は魔王のいた場所に、魔王が僕が場所に止まった。僕たちは、同時に後ろを向いた。
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「見事だ」
そう言ったのは魔王だ。魔王はその瞬間、口から大量の血を吐いて、前向きに倒れた。
僕たち勇者パーティーは、ついに魔王パステレンを倒したのだ。
・・・・・・そう、パーティーの目的は魔王討伐だが、僕の目的は別にある。
誤字等があれば誤字報告をしてくれると幸いです。