番外編 猫耳カナンと甘い朝
番外編は二人の結婚後のイチャイチャをお送りします。
柔らかな朝の光が、カーテンの隙間から差し込んでいた。
セリーナは、まどろみの中で目を開ける。心地よい温もりがすぐそばにあり、安心感に包まれる。隣にはーー夫であるカナン。
セリーナが大好きな穏やかな寝顔。けれど、今朝はそこに違和感があった。
(……なんだろう、これ?)
視線をカナンに向けた瞬間、ふわふわとしたものが目に入る。
「……え?」
カナンの頭から、猫耳が生えていた。
(……えっ……えっ!?!?)
目の錯覚かと思い、何度も瞬きをするが、どう見てもそこにはふわふわの猫耳がぴょこんと存在している。カナンの髪色と同じ、深海色の三角の耳。
(そんな……!? まさか、こんなことが……)
まさかとは思いながら、さらに視線を下げる。恐る恐る布団をめくるとーー
ーーもふっ。
(尻尾まで生えてるぅぅ!?)
驚きのあまり、思わず声を上げそうになるが、隣のカナンはまだ穏やかに寝息を立てている。
(な、なんでこんなことに!? 私の影響? それともまたあの魔女の呪い!?)
頭を抱えながら混乱するが、次第に別の感情が芽生えてきた。
(……これって……もしかして、仕返しのチャンスでは!?)
セリーナは、思わずニヤリと笑う。
(いつも私ばっかりイタズラされてるんだから……たまには私がイタズラしても、いいわよね)
セリーナは、そっとカナンの猫耳に触れる。指先に伝わるのは、ふわふわでありながら、適度な弾力のある感触。
(な、なにこれ……気持ちいい……!)
つい夢中になって撫でていると、カナンの猫耳がピクリと動く。
(あっ……今、反応した!?)
さらに好奇心が湧いてきたセリーナは、そっと猫耳の先をくすぐるように撫でてみる。
「……っ、ん……」
カナンが、小さく息を漏らした。
(カナン……気持ちよさそう……!)
次第に楽しくなってきたセリーナは、次のターゲットを尻尾に定める。もふもふとした尻尾にそっと指を這わせるとーー
「……っ!!」
カナンの全身がびくっと震えた。
(すごい……! こんなに敏感だなんて!)
普段カナンにされていることを、そのまましているだけなのに、思いのほか彼の反応が良すぎる。
(これは……ちょっと楽しいかも)
思わず意地悪な気分になったセリーナは、さらに大胆に猫耳を口に含み、そっと甘噛みする。
「……っ、セリーナ……?」
(……!!)
不意に低く掠れた声が響いた瞬間、セリーナの動きが凍りついた。
(ま、まずい……!)
逃げようとしたが、時すでに遅し。
ガシッーーと、強い腕が彼女の腰を捕まえた。ゆっくりと目を開けたカナンの瞳は熱を帯び、危険な光を宿していた。
「……君、何してるの?」
「えっ、ちょっ、まっ——!!!」
「セリーナ……俺をこんなふうにした責任、とってもらうからね?」
そう囁かれた瞬間、全身が熱くなった。
◆
ーーと、いう夢を見た。
「にゃあああああっ!?」
セリーナは飛び起きた。
(な、なにあの夢……っ!!??)
全身が熱い。頭もぼうっとしていて、心臓が激しく跳ねている。
そしてーー
ぴょこんっ。
セリーナの猫耳と尻尾が、完全に出てしまっていた。しかも、猫耳はピンと立ち、尻尾はゆらゆらと揺れている。
完全に昂った感情が丸わかりの状態だった。
(うそ、ちょっと待って、これじゃまるでーー!!!)
「……ん?」
隣で寝ていたカナンが、眠たそうな声を上げた。
「セリーナ……どうした……? 」
「な、なんでもない……!!!」
慌てて誤魔化そうとしたその時ーーカナンの目がセリーナの耳と尻尾をロックオンする。
「……あれ?」
「……な、なによ……?」
すると、カナンの口元がふっと綻ぶ。
「ひょっとして……えっちな夢でも見てた?」
「ちっ、違うもん!!!」
セリーナは顔を真っ赤にして布団を引っかぶる。
「ふぅん?」
カナンは余裕の笑みを浮かべながら、布団の中に手を滑り込ませる。
「……セリーナの耳も尻尾も、すごく元気だけど?」
「ちょっ、それは……っ!!!」
言い訳しようとしたが、カナンの優しい指が耳を撫でる。
「そんな誘うような顔をしておいて、お預けなんて、セリーナは酷いな……」
「……っ!!?」
「俺をその気にさせた責任、とってね」
(えっ!? まさか……!?)
夢と同じ展開に、セリーナは慌てる。
「ちょ、カナン、まっーー」
ーーそのまま、白み始めた窓の外を目の端に捉えながら、セリーナとカナンは朝から甘い時間を過ごすのだった。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
本日もう一話投稿します。
次話『イチャイチャ見学チケット、使用申請です!』




