思い出の場所へ……《終》
あかねと別れ、優里と付き合ってから2年が経ち、俺たちは二十歳になった。優里はひとつ下になるので俺の方が先に21になるが、早生まれの彼女は誕生日を迎えめでたく二十歳になったということだ。
「やっと二十歳だね。春斗とお酒飲むの楽しみだったんだぁ」
「もう付き合って2年かぁ。早かったな」
「ずっとこの幸せ続けばいいな~」
あれから俺たちの恋を邪魔するヤツらも現れず、順調だった。元カノのあかねとも良い飲み友達になり、三人で仲良く遊んだりしている。
しかし、俺も男なので正直かわいい子がいたらついつい目で追ってしまい、優里に怒られることもしばしば。だが、そんな毎日が本当に幸せだった。
「あ! また女の子見たでしょ?」
「いやいや、見てないって」
「絶対ウソ~」
「いてて」
プクっとふくれながら俺の頬をつねる彼女がかわいくてたまらない。だからたまにわざと女の子を探しているのは内緒だ。
「あんたたち、相変わらずアツアツですねぇ。私、帰ろうか?」
「いやいや、あかねさん。せっかく三人で遊んでるんすから」
仕事も順調でいざこざがあった芹香とも時間はかかったが仲良くできている。あれから俺を諦めて彼氏ができ、結婚を考えているのだとか。
「私は考えてるけど、春斗くんは優里ちゃんとの結婚考えてないの?」
「そりゃ、したいっすけど、まだまだ俺の稼ぎじゃ優里を養えそうもないですし、もっともっとしっかりしないと」
「私はすぐにでもしたいけどなぁ」
「まだ早いって」
結婚したがる優里と慎重な俺。そのことで喧嘩することも段々と増えていった。どんなに好きな人でもずっと一緒にいたら少なからずストレスは溜まるものだ。
「春斗ってさ、本当に私のこと好きで付き合ってるの
? 結婚する気あるの? 付き合う前みたいにまた私のこと待たせるつもり?」
「またその話かよ! 俺だって結婚する気はあるって言っただろ? 今すぐ結婚したって生活していけるのか? 結婚よりまずはお互い金貯めて同棲するって約束したろ?」
「だから、その同棲までが長いって言ってるの! 「するする」って全然しないじゃん。仮に春斗が貯金なくても私が貯めてるから問題ないって何回も言ってるよね?」
「男が彼女に頼れるか! 俺が優里を養いたいんだ!」
「はぁ……」
こんな感じで喧嘩と仲直りを繰り返してさらに2年後の俺が22で優里が21の冬、バイトを掛け持ちして俺の貯金も貯まったのでやっと同棲を開始することができた。ちなみに優里は焼肉屋、俺は焼肉屋とレストランのバイト、これは続けるつもりだ。
「やっと同棲か、長かった」
「頑張ってくれてありがとう」
「優里も頑張っただろ? 幸せになろうな」
「うん」
嬉しさからか、ニヤニヤが止まらない俺に対して優里が話しかけてきた。
「さっきからなにニヤニヤしてんの? もしかして変なこと考えてるんじゃないでしょうね? そういうのは結婚までお預けだからね」
「バカ、違うって」
「わかってると思うけど、女の子連れ込んだりしたらタダじゃおかないからね?」
「わ……わかってるよ」
「ちなみにあかねさんと二人もダメだよ? 私と三人でならいいけど」
「この家で他の女と二人になんてならないって」
「春斗はかわいい子にすぐ鼻の下伸ばすからなぁ」
「大丈夫だって」
同棲を開始して3ヶ月後、突然彼女が体調を崩してしまう。
「ねぇ、春斗……お腹痛い」
「病院行こう」
「仕事休めないから薬買ってきて?」
「ちゃんと病院行った方がいいって」
薬で治そうとする優里と病院に行かせたい俺。なぜこだわるのか? それには理由がある。大切な人を二度と失いたくないからだ。真希を不慮の事故で亡くしているので、優里まで病気で亡くすなんてそんな辛さはごめんだからだ。
「やだやだ、やだってば!」
「何かの病気だったらどうするんだ? 病院行くぞ!」
嫌がる彼女を引っ張って病院へ連れていったはいいがずっと不機嫌だった。
「春斗って強引だよね。嫌だって言ったのに」
「優里にもしものことがあったら嫌なんだ。真希を事故で亡くしてるから、優里までって思うと」
「私が死ぬわけないし~。春斗置いてきぼりにして先になんて逝きません」
やがて彼女が呼ばれて診察室に入り、症状を伝えると結果は信じられないものだった。
「ん! これはもしかして」
「え?」
「先生、優里は……優里は何かの大きな病気なんでしょうか?」
医師の言葉に不安でいっぱいだった俺たちを待っていたのは……
「病気どころかおめでたですよ。大きな産婦人科を紹介しますのでそちらへ」
なんと彼女は妊娠していたのだ。その瞬間、不安は吹き飛び俺たちは抱き合って喜んだ。「そういうのは結婚までお預け」なんて言っていたのに、彼女から「やっぱりお預けナシ」とそうなったあの日の夜を思い出す。
「ついにこの時がきたか」
「私、待ってた。やっとだね」
「結局、あの頃と同じだな。ごめん」
俺が謝ると彼女は静かに首を横に振る。
「確かに待ったけどあの頃とは違うよ? あの頃の春斗は弱かったけど、今はこの日のために頑張ってくれた、だから今の春斗は強いよ? 春斗……大好き」
「俺も優里が大好きだ! 結婚しよう」
「はい、よろしくお願いします」
病院を出て告白した公園でプロポーズ。この場所で彼女が襲われて俺が助けたり、とにかくいろんなことがあったが俺たちにとっては思い出の場所である。
「ねぇ、春斗……この子が産まれるの、来年の夏でしょ? この子が産まれたら春斗の思い出の場所連れてって?」
「あぁ、家族三人で行こう! もうひとつの思い出の場所へ……」
そしてさらに1年後の俺が23で彼女が22の夏、元気な女の子が産まれた。名前は夏香である。
約束通り俺の一番の思い出の場所である、例の夏祭りに家族三人で行ったのだが、敢えて辛い場所に行くことでさらに新しい人生へ進めると思ったからだ。
「ここが春斗の思い出の場所……」
「真希……この人が俺の大切な人だ」
「真希さん、はじめまして。お空から私たちのこと見守ってくださいね」
「愛してるよ、優里」
こうして俺たちは唇を重ね、その後無事に結婚。式にはみんな出席してくれて大盛り上がり。協力してくれた焼肉屋とレストランの店長や仕事仲間、あかねや芹香たちには感謝している。彼らを裏切らないよう、俺は命を賭けて優里と夏香を守っていく。その後、俺たちは家族三人で幸せに暮らしている。《終》




