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再会?

 あれからさらに数日後、尚久はあの一件があり当然クビ。さらに優里への接近禁止命令が出され、三年の懲役が確定した。店には平和が戻り、俺は優里と急接近してデートも増えていった。

 そんな中、尚久がクビになったことで代わりに女の子が一人入ってきたのだが俺は目を疑った。




「ヤッホー」


「芹香さん!?」




 なんと、高校時代の先輩である神原芹香が新しく入ってきたのである。




「春斗くん、誰ですか?」


「俺の高校時代の先輩、神原芹香さん」


「はじめまして。神原芹香です」


「あんた良かったねぇ、ハーレムじゃん」




 優里とあかねから嫉妬のような冷ややかな目で見られ焦った俺は弁解するが、二人は無視して仕事に戻る。この時はまだ芹香がこれからの歯車を狂わせるなど誰も思わなかった。




「来ちゃった」


「何してんすか」


「なかなかバイト見つかんなくってぇ~、やっと見つけたのがここってワケ」


「そうすか」




 昔のように親しげに話しかけているのが気に入らないのか、優里とあかねが不満そうに芹香に言う。




「芹香ちゃんだっけ? 高校時代は先輩でも、ここでは春斗くんが先輩なんだから敬語使ってよね」


「そうですよ、そうですよ。常識なさすぎです! 今は昔と違うんですからね」


「二人とも落ち着いて……俺は別に気にしてないからさ」


「相変わらず女の子に甘いんだから」


「私以外の女の子にはあまり甘くしないでくださいよぉ」


「ほらほらみんな、忙しくなるから働いてくれよぉ~」




 店長の一言で俺たちは仕事を開始した。




「芹香ちゃん、わからないことあったら俺か春斗に聞きな」


「はい」




 芹香は必死に仕事を覚えてみるみるできるようになっていった。即戦力になり、ハッキリ言って尚久以上に仕事ができるので俺を含めてみんな彼女を信頼しきっている。

 そんなある日、俺は仕事で大きなミスをやらかしてしまう。タンの残りが少なくなったので10kg発注するはずが間違えて100kg発注したり、洗い物をしていると手を滑らせ宴会用の大皿を思い切り割ってしまった。

 さらにバタバタしていたため、山盛りセットと間違えて山盛りセットをオーダーしたテーブルに盛り盛り贅沢セットを持っていき、お客さんが食べ始めてから気づくという大失敗。




「春斗何やってんだよ! あれ盛り盛り贅沢セットだろうが」


「あ! 新しい宴会用の大皿買ってこい」


「バカ野郎! タン10kgっつっただろうが! どうすんだ? これ! お前が金出せよ?」




 大きな失敗続きに温厚な店長も流石に俺を怒鳴る。小さい失敗は多々あったが、ここまで大きな失敗は初めてだった。




「あんた何やってんのよ……」


「あかねさん、すみません」


「女の子に囲まれて浮かれてんじゃないの?」


「違いますよ」


「あ~あ、春斗くんやっちゃった」


「あかねさん、芹香さん、店長もそんなに春斗くん責めないでくださいよ。忙しい中で必死なんですから!」




 三人に責められる中、優里だけは庇ってくれたがいつもは丸く収まるも、店長の顔は険しいまま。




「優里ちゃん、そうは言っても今日のミスはちょっとひどいよ? 春斗、どうしちまったんだ?」


「だからそんなに責めないでくださいってば」


「事が事だけに今回は許せねぇわ。しかもお前、今日予約の20卓お客さん、明日と勘違いして他のお客さん入れただろ? あの五人が明日の20卓だぞ?」


「し……しまったぁ」




 必死に謝って関係ない優里まで頭を下げてくれたので、初めてというのもあり何とか許してもらえたが、流石にショックを隠しきれなかった。ヘコみながら帰宅し、ベッドに入ったと同時にボソッと独り言を呟いて知らないうちに眠っていたが、信じられない人物との再会? を果たす。




「ははは……俺、とうとうやっちまったな」


「春斗」


「ん? もう朝か?」


「春斗ってば」


「何だよ。もう少し寝かせ……真希!?」


「久しぶりだね」


「なんで真希がここに?」




 俺はなぜか死んだはずの真希と再会していた。こんなことはあり得ないが、目の前にいるのは間違いなく真希なので訳がわからなくなっていた。




「真希、ワケわからんけど聞いてくれ。俺、仕事でやらかしちまってさ」




 どうしようもなかった俺はすべてを真希に話した。彼女は何も言わず俺を抱きしめて頭を撫でてくれているがゆっくり口を開いた。




「春斗らしくないぞ! そんな時もあるよ」


「バカ、慰めになってねぇっての」


「春斗なら大丈夫だから頑張って? それと、二度とここには来ないで」


「なんでそんなこと言うんだよ! 俺たち愛し合ってたんじゃねぇのかよ! 俺も……俺もそっちに連れてってくれよ」


「ダメ! 来ないで! 帰って!」


「私のことなんて忘れて、他の子と幸せになってね。バイバイ……春斗」




 俺は真希に突き飛ばされて湖の中に落ちてしまった。目を覚ますと優里が目の前にいる。




「春斗くん! しっかりして! 春斗くん」


「真希? 真希?」


「良かったぁ」




 優里は目を覚ました俺を見て泣き叫んでいる。どうやら丸1日連絡が取れなかったようで心配で来てくれたらしい。俺がやらかした失敗もすべて片付いて平和が戻っていた。




「夢だったのか」


「魘されてましたよ? よっぽど辛かったんですね……」


「俺、丸1日寝てたの? 優里ちゃんずぶ濡れじゃないか」


「はい、あなたは私を守ってくれた。だから今度は私があなたを守る番です」


「ありがとう、優里ちゃん」


「春斗くんのそばにいられるなら、どんなことだって」




 ボソッと呟くように言ったので俺には全く聞こえなかった。気持ちが落ち着くまで優里に抱きしめられた俺は奇妙な再会? を果たし、元気を取り戻せたので翌日から元気に仕事に戻った。

 そんな俺を見ていたのか、雨はすっかりやんでおり眩しい太陽が輝いていて、まるで真希が笑って応援してくれているようだった。

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