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そもそも知識がない?じゃあ勉強するか!

 俺の方針は決まったものの、まず何から手をつけたらいいのか分からないという状況に嵌ってしまった。

 個人冒険者のやり方は?仕事の集め方は?副業は可能なのか?そもそも冒険者の仕事内容とは? 分からない事だらけだ。そうか、俺はよく知らないものに憧れてたんだな。

「こういう時は...」

 俺の足は自然と、とある場所へと向かっていった。何回もお世話になってきた、図書館へ。


「〈冒険者の全て〉だと?なんてピッタリなんだ!」

 俺のニーズにブッ刺さる本を見つけた俺は、棚からそれを引っ張り出し、静かに読み始めた。

 本の内容をざっくりまとめると、こんな感じになった。

・「冒険者」には約300年の歴史がある。ただ、初期の頃は単なる便利屋、またはボディーガードとしての存在だった。

・今で言う冒険者とは、剣術や魔法、『能力』を使用して、モンスターから市民を守ったり、一般人には難しい依頼(クエスト)を行う人や集団である。

・副業は可。むしろ冒険者を副業としている人もいる。

・冒険者に依頼する方法は様々である。直接依頼を言いに行く、掲示板などの依頼募集を使う、などだ。そこはとことん自由だ。国が冒険者に依頼する事もある。

・冒険者の収入はまちまちである。依頼完了の報酬、大会などの賞金、国からの給付金(微々たる物。これがあるから冒険者は公務員である)などだ。


 なるほど。

 つまり、組合未登録者の冒険者にもある程度優しい仕組みなのか。でも、冒険者になったからと言って、毎日のおまんまが保証されるわけではないと...

 かつての夢だった冒険者の現実を知った俺は、すごすごとノートを買って帰った。


 家に帰った俺は、ノートの表紙にどでかく【計画】と書いた。何の計画かって、俺が冒険者になりその後どうなるかだ。

 ひとまず俺は1ページ目の一番上に「冒険者免許獲得」と書き、それに赤丸を付けた。これはもう達成してるから。そしてその下に「副業決定」と書いた。

 これからまず何をするかって、優先順位が一番高いのは副業をどうするかだ。というか、最初はこっちが本収入になるだろう絶対。冒険者なんて知名度イコール収入なんだから。

 ノートを閉じた俺は知り合いに電話をし、何かいい仕事はないかと聞いた。この知り合いはそういう仕事をしているのだ。働きたい人と働かせたい人の仲介役を。

 すると、「町掃除はどうだ」と言われた。

「町掃除?なんだそれ」

「その名の通りだよ。街を掃除するだけ。壁の落書き落としたり、落ちてるゴミ拾ったり」

 それって仕事か?慈善事業じゃないのか?

「それ...お金はどこから来るんだ?」

 そこが疑問に思ったが、その返答は驚くものだった。

「国」

 よしやるぞ。何が何でもやるぞ。なんて素晴らしい。安定して金がもらえるじゃないか。最高だ。絶対したい。 俺は意気揚々と答えた。

「やらせてください」

「オッケー」

 彼は軽ーい返事をした。

「申請とかの諸々手続きは全部こっちがやるからね」

「ありがとうございます!」

 彼は神だ。天使だ。仏だ。救世主だ。

「んじゃ、銀行口座の番号教えて」

 ...ん?もしかしてこれって詐欺か?

 俺の勘ぐりで会話は一瞬沈黙したが、それに気付いた彼がすぐに言い直した。

「給料の振込先教えて」

 いや意味が変わんないじゃん。もういいわ、単刀直入に言うわ。

「これって詐欺ですか?」

 警戒する俺に、彼は笑いながら答えた。

「違うよ!だったらじゃあ、振込先の手続きは君がやったら?」

 めんどくせえ。

「よろしくお願いします」

 やあやって、諸々の相談は終わった。


「んじゃ、明日からヨロシクね。君の仕事ぶりはしっかり国から見られるみたいだし」

「わかりました。ありがとうございました」

 電話が切れた。そしてその時俺は、大きな達成感だけで満ち満ちていた。

 仕事が!決まった!これで最悪冒険者になれなくても...食って...いける...

 その可能性を少しでも考慮してしまった自分に嫌気が差したが、まあいい、前には明るい未来が広がっていることは確実なのだ。

 とりあえず、飯を食おう。朝から何も食べてないじゃないか。

 そう思って財布を逆さにしてみたら、銀硬貨が1枚。

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