冒険者登録が取れない?じゃあ個人冒険者になるか!
「うーん、これではこちらとしてもお断りさせていただく他ないですね...」
受付の人が残念そうに呟く。でも俺は、またかとしか思わななかった。
ここは冒険者組合の受付室。俺は冒険者に志望し、そして今断られた。
俺は素直に建物を出る。こんなの慣れっこだ。この一週間で大小様々な組合に応募し、悉く落ちてきたのだから。
俺は、新米の冒険者だ。先月魔法学校を卒業し、先週冒険者免許を習得したばかりの、遠慮も謙遜も無い完璧な新米だ。
俺の名前はロールキ・オーシャ。立派な魔法使い(見習い)だ。得意魔法は、水魔法。水魔法だったら誰にも負けない自信が俺にはある。
ただ一つ問題がある。俺は、水以外の魔法が全く出来ないのだ。この事は魔法学校でも散々イジられてきた。さらに、先生からも呆れられた。それなのに卒業はできたのだから、そこは褒めてほしい。
建物を出たその足で、俺は図書館へ行った。この町で1つしかない、巨大で充実した図書館に。
館内に入った俺は真っ先に【魔法・魔術】の棚に行った。そして、一つの本に手を伸ばした。
〈この町の魔法学校・剣術学校・冒険者組合〉
俺はこの本をもう何回も手に取っていた。ほぼ全部同じ目的で。
慣れた手つきで開いた所は、ここの近くにある冒険者組合が地図でまとめられているページだ。
「えーとあと行ってないのは...」
そう呟き、俺は次に応募する組合を探し始めた。
「ううん、水魔法だけですか...」
受付の男性が困ったように言う。俺はデジャヴを感じっぱなしだが、こんな事でへこたれない。
「はい。水魔法なら誰にも負けません」
「ああ...ちなみに剣術などは?」
「まったくできません」
彼は、こうキッパリと答えた俺をどうやって断るかを考えているようだ。
「そうですね...実績はありますか?」
「いえ、まだありません」
[実績(名)]ーじっせき
実力によって得た功績。また、努力や挑戦の結果。
とくに冒険者の実績について言う場合は、依頼達成やダンジョン攻略、武芸大会による成績を指す。
新米の俺にそんなのは無い。もしあったら俺は一発で組合に入れてるはずだ。
「そうでしたら、うちとしてはどうにもできません。基本属性の火、草、水は全てある程度は出来るというのが最低条件なので。あ、この事はこの組合に限らず、全ての組合で共通の条件となっているはずです」
俺はがっくりと首を落とした。
「じゃあ俺は冒険者になれないのか...」
そんな俺を、受付が慰めるように言う。
「そんなことないですよ。あくまで組合に入るにはって事ですから」
「と言うと...?」
「個人で独立する冒険者だったら出来ると思います。組合と比べて知名度や信用は減ってしまいますが」
それだ!
「ありがとう教えてくれて」
自分の進む道が見えてきた俺は、意気揚々と建物を出た。