2話
「ラキ―!!はやくー!!」
「ま、まってよアイナ!」
僕は今アイナと一緒に近くの森へと向かっていた。天気も非常に良く、明日も晴れるんだろうなと思えるほどの快晴だ。
今日のことが楽しみなのは間違いないのだが、アイナはどうやら僕以上に楽しみにしていたのか、いつもよりもテンションが高い。常に鼻歌を歌いながらかなり早いペースで歩くため、彼女に追いつくのに精一杯だ。
「もぉ遅いわよラキ」
「ふぅ......アイナが早いんだよ」
「普通よ普通。ほらいくわよ!」
「ちょ、まってってばぁ!」
そこから森に到着するまで小走りのような状態が続いた。普段からそんなに運動をすることがない僕にとってはかなりきつい。これが帰りもだったらと思うと乾いた笑みがこぼれ出そうになる。さ、さすがに帰りは今よりゆっくり......なはず。
「結構久しぶりに森に来たわね」
「たしかにそうかも」
「それじゃラキ!どっちが多く木の実を取れるか勝負よ!!」
「ちょ、ちょっと休憩させてほしいんだけど......」
「じゃあスタート!あっ、そうそう。負けた方は相手の言う事を一つ聞くっていうルールだから!!」
そう言い残してアイナは森の中へと消えていってしまう。
「......はぁ、僕も探しに行こ」
今ここで休憩していると絶対に取り返せなくなるほどの差が出来てしまいそうな気がした僕は、先ほどよりもゆっくりとした足取りで森の中へと入っていく。制限時間などは決められていないため、おそらく丁度いい頃合いにアイナが僕のことを見つけて終了と言った感じだろう。
「出来れば負けたくないなぁ。アイナが僕に命令するとかちょっと嫌な予感するし......よし、頑張ろう!」
そこから森の奥にはいかないようにしながら木の実を探す。アイナに負けたくないという思いもあるが、出来ればたくさんの木の実を持って帰っておばあちゃんに喜んでもらいたいという思いが強い。
「それに他の人にもおすそ分けできるかもしれないしね......お、みっけ!」
僕は食べれる木の実を見つけて、持ってきた籠の中に木の実を入れていく。
「よし、この調子で頑張るぞー!」
そう意気込み、木の実を集めていく。
「やば、結構奥まで来ちゃったなぁ」
木の実を集めることにかなり夢中になっていたせいか、以前森に来た時よりもつい奥の方まで足を踏み込んでしまった。おばあちゃんからあまり奥の方にはいかないよう言われていたのに、その言いつけを破ってしまった罪悪感と、もしかしたら魔獣に遭遇するのではないかという恐怖感が一気に込み上げてくる。
「さ、さすがに大丈夫......だよね......」
自分に言い聞かせるように、ぽそりと呟く。そこまで深いところまで来ているわけではないのに、何故だか妙な威圧感を感じるし、いつもよりも暗い雰囲気が漂っている。まるで別の森に迷い込んでしまったかのようだ。
「は、早く戻ろう......っ!?」
焦りと共に踵を返したその時、がさりと葉っぱの擦れる音が響き渡る。その音が耳に入った瞬間、背中に俗吏とした感覚が走る。
ま、まさか魔獣が......?
ごくりと生唾を飲み、恐る恐る後ろを振り返る。その振り返る僅か数秒の間、僕の頭の中は「もし魔獣だったらどうするか」「逃げ切ることは可能だろうか」と不安と、どういう行動を取るのが一番良いかという考えが凄まじい速度でぐるぐる、ぐるぐると回っていた。
「......何も......いない?」
しかし、そんな自分の思考とは裏腹に、視界の先には先ほどと同じような少しだけ怖い森の風景が広がっていた。
「び、びっくりしたぁ.....何かが落ちたりしたのかな?......でもとりあえず早くここを離れよう」
そう思い、再び来た道を帰ろうとするとがさりという音が再び響き渡る。何かがいる、直感的にそう理解した。
僕は先ほどとは違い、足を肩幅に開いていつでも相手の攻撃をよけれるような態勢を取る。自分は魔獣狩りはおろか喧嘩の一つもしたことのない貧弱な子供だが、相手の攻撃を避けることくらいなら出来る......はず。
「ふぅ......く、来るなら来い」
僕は大きく息を吐き、恐怖で震えている心を叩いて起こす。どくん、どくんといつもよりも心臓の鼓動がうるさい。僕はついさっきよりも大きな音を鳴らしながら生唾を飲む。
がさがさ、がさがさと葉っぱの擦れる音が大きくなる。そして──
「にゃあ」
「......白い......猫?」
草むらの中から出てきたのはこの場には似ても似つかない少し薄汚れた白い猫だった。




