1話
「こっち見てんじゃねえよラキ!!気持ち悪いんだよ!!」
太陽が雲に隠れたり、隙間から顔を覗かせたりする昼下がり。穏やかな村の一角では大人からしたら可愛げのある舌足らずな声、だがかなり棘の生えている罵声が響き渡っていた。
「ご、ごめん......」
僕は今、いつものように村の子供たちから罵声を浴びせられている。「気持ち悪い」「お前は人間じゃない」そんな言葉を投げつけられるのは日常茶飯事のためとうの昔になれている。
僕は申し訳なさを表情に滲ませ、僕の前に立ちふさがる3人の子供に頭を下げる。
「こらー!あんたたち何やってるのよ!!」
「げっ、アイナ!...別になんもしてねぇよ」
「絶対嘘よ!!また性懲りもなくラキのこといじめてたんでしょ!!」
「......ちっ!いくぞお前ら」
「ラキ大丈夫?乱暴されてない?」
「うん、大丈夫。いつもごめんねアイナ」
いじめっ子たちを追い払い、僕のことを守ってくれた茶髪の少女に表情を崩さないまま謝罪の言葉を伝える。
彼女の名前はアイナ。僕の唯一の友達であり、いつも僕のことを助けてくれるとても頼りがいのある女の子だ。
「別に。それとそういうときはありがとうって言うべきだと思うんだけど」
「.....ありがとう、アイナ」
「どういたしまして。でもそんな顔するんだったら自分でちゃんと言い返しなさいよね。まぁいいけど」
「それは......ごめん」
「もう、謝らないでよ!ほら行くわよラキ」
「あ、うん!」
僕は他の子達とは違う見た目をしている。そのせいでアイナ以外に友達と呼べる存在はいない。あの空に広がっている雲のような白髪、これだけでも十分奇異な見た目をしているというのに、僕の右目と左目の色はバラバラなのだ。
左目は村の人達と同じように黒色の瞳なのに、右目は何故か黄色く輝いている。
この普通の子供、人間とは異なる見た目をしているせいで村の子供たちはおろか、大人たちからも腫れ物のような扱いを受けている。そんな僕が今もこうして元気に楽しい日々を送れているのは紛れもなくアイナのおかげだろう。
彼女はこの村の村長の娘であり、彼女の明るい性格も混ざっていて村の人全員から愛されている。村の看板娘のような存在なのだ。そんな彼女が僕と仲良くしてくれているため、表向きにはあまりいじめられることがない。
それと僕が真っ当な生活が出来ている理由はもう一つある。
「ただいまラナおばあちゃん!!」
「はい、おかえりなさい。ああラキ、ちょいとこっちに来て手伝ってくれんかね?」
「うん、すぐ行く!!」
僕はトテトテとキッチンに立っているラナおばあちゃんの近くへと走っていく。
この人、ラナおばあちゃんのおかげで僕はこうして健康に過ごすことが出来ている。おそらくこの人は僕と血は繋がっていない。おばあちゃんからそう説明されたというわけではないが、直感的に理解できた。それでも僕のことを血の繋がっている家族のように扱ってくれるし、同等、いやそれ以上の愛を僕に注いでくれている。
「今日の夜ご飯は何作るの?」
「今日はシチューじゃよ」
「今日はシチューなんだ!やったー!」
「そうじゃよぉ、ラキの大好きなシチューじゃ。それじゃラキ、この野菜を切ってくれるかい?」
「わかった!」
僕はラナおばあちゃんの言われた通りにお手伝いを始める。自分の大好物が食べれることに僕の気分はとてもわくわくしていた。
そこから僕はおばあちゃんと一緒にシチューを作り、今日は何をしただとか、おばあちゃんの昔話を聞きながら食卓を囲んだ。
「そういえばラキは明日森に行くんだったね」
ご飯を食べ、片づけを終えた僕とおばあちゃんは椅子に座ってゆっくりとした時間を過ごす。
「うん!アイナと一緒に木の実を探しに行くんだ!」
「そりゃあいいことだ。でもあんまり深いところには入らないように。怖い怖い魔獣と出くわしてしまうからね」
「うん!気を付ける!」
「ラキはいい子だねぇ」
おばあちゃんは元気に返事をした僕の頭を優しく、ゆっくりと撫でる。おばあちゃんの手のひらから伝わってくる温もりがとても心地いい。
「それじゃあ今日はそろそろ寝ることにしよう。明日に備えて、ね?」
「うん!おやすみおばあちゃん!!」
僕は暖かい気持ちとワクワクした気持ちを胸に、ベッドへと向かう。今日もすごく楽しい一日だった。明日もきっと楽しいに違いない。
そう心を躍らせながら僕は段々と遠のいていく意識をすっと手放した。




