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ループ四回目。いい加減「愛してる」と言われながら王子に殺される運命から逃げるため、ウキウキで婚約破棄したつもり、だった。  作者: 丸山華永


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9/9

繰り返す先にあったもの

最終話です。

※わりとグロテスクな場面があります。

だが記憶がある自分とは違い、ローザンナには記憶が無かった。

だから"守ってね"の意味とは、こういうことかと思った。

彼女にまた、あんな辛い思いをさせたくはない。自分が矢面に立って彼女を守る。そう決意した。


そしてまず、ローザンナに全てを話した。

これから起こる全てのこと。結婚し子供が産まれると、その子が聖女であったこと。目の前でその子が殺されてしまったことも……。

最初こそ信じていなかったローザンナだったが、未来を言い当てたことにより、徐々に信じるようになっていった。


ただ一つの計算外。

それは"記憶を保持する者"が他にも居たこと。

しかもそれが、一番厄介な敵だった。



──だから戦争を回避できず、再び二人は捕虜になってしまった。

そして彼は、出産前のローザンナのお腹を切り裂き……無理矢理子供を引き摺り下ろした。拘束されているティアルトは、それを隣で一部始終見せられていた。



「駄目だ、聖女の輝きは未完成だ」


まだ小さな胎児の体は、粉々に砕かれた。

瀕死のローザンナは、最期の力を振り絞ってティアルトに囁く。


「次は、私が、死ぬ。こんな姿…………させたく、ない」


彼女は自分が死ぬと、巻き戻ることを知っている。

だからこそ、こうも願った。


「だから、あなたは私を……殺して」



そしてローザンナは息絶え、また時間が巻き戻った。


どうしてヴィアンノも一緒に巻き戻るのかはわからない。だけど聖女の心臓に触れ、聖女の力に干渉し巻き込まれたのだろう。

確かにあの胸を貫いた時──産まれたばかりの子供の中に、青く光る何かを見たのだ。




だけど三度目の人生が始まると、ローザンナと結婚しない選択をした。もし同じように子供を身籠ったとして、守ることが出来なければ──またあの子が殺される。そんな姿を見せたくなかった。


だけど未練がないわけではない。

だからわざと王命として、遠い国に嫁がせるように仕向けた。ヴィアンノと戦うために、全てを忘れようとしたのだ。


だけどあの日──ローザンナが身籠るはずの日が過ぎると、また時間は巻き戻る。

だけど、それでいいと思った。


他の人と結婚したローザンナは、自分との結婚よりも幸せそうにしていたのだから。



「家を空ける時は必ずプレゼントを置いていってくれるの。恥ずかしいぐらいの愛の言葉と一緒にね」

不思議とあの日が近くなると、ローザンナはティアルトの近くに居た。

嬉しそうに夫のことを語る彼女の顔は、ティアルトが見たことがないぐらい幸せそうな顔だった。


自分よりも幸せにしてくれる相手だったら……だったら身を引いて、永遠に彼女の幸せを見守って行こう。そう決めたのだ。



ただその間にもヴィアンノは、徐々に力を付けてきた。

ティアルトが策を練っても、ヴィアンノはその上を行く。そしてついに、()()()が来る前に──地図から『ドストラム王国』という名前が消えた。

ティアルトが死ぬ前に見た光景。それは沢山の仲間の屍が積み上がった光景だった。



「バカね。あなたは永遠にこの時を生きることになるわよ」


何十回そんな人生を繰り返すと、またあの娘が目の前に現れた。



「それでいい……ローズが幸せだったら、それでいい」


どうせまた時間は巻き戻る。

死んだ人も全て、元通りだ。


だけどそれが──辛くないわけじゃない。



彼女は呆れたように、ため息をつく。

「やっぱりあなた一人だけだと無理だったのね」


彼女はティアルトの手を取ると、暗闇を駆けていく。

その先にあったのは──横たわるローザンナの姿だった。



「次からは二人で頑張ってね。私は早く、あなた達に会いたいんだから」


彼女はローザンナの首に、ペンダントを着けた。

するとペンダントは光を放ち、暗闇を青い光で染めていく。


そしてまた時間の巻き戻りが始まる。

その最中にティアルトは、ある映像が頭の中に飛びこんできた。


無事に子供が産まれたことに喜ぶ二人に、聖女誕生を祝福をする国民の姿。

その産まれた青い髪の女の子は、日に日に大きくなっていく。

やがて一人の男の子が現れ……その子が成長すると、また一人、幼い男の子が現れた。女の子は幸せそうに、二人の世話をしている。


──そしてそれを眺める、ローザンナとティアルト。

見守るローザンナは幸せそうに微笑み、ティアルトは片時も離れず、隣でそれを見守る。



その光景は、紛れもなく"もしも"の世界。

そしてティアルトが一番望んだ未来の光景。


──この未来に行きたい。

そう強く思ったのだ。



そしてまた、時間が巻き戻った。

次こそは、あの未来に行きたい。


だからローザンナと再び結婚する道を選んだ。

彼女を幸せにしよう。そう決意した。


だけどやはりヴィアンノは、それを許さない。

また"聖女誕生"の可能性があると知ると、全力で手に入れようとした。

ローザンナの命は"聖女の体"が作られるまで持てば用済みだ。だから捕まれば瀕死状態であっても──苦しみながら生かされる可能性があった。



何度も彼女に話そうか。そう考えた。

だけど、そうすると……彼女は自分から死を選んでしまうかも知れない。

だったら何も知らない方がいい。

だけど失敗し、あんな子供の姿は見せたくない。



その結果、三度も自分の手で殺すことになってしまった。

記憶があることに気付きながら、三度も彼女を殺すことになってしまったのだ。





その後ローザンナとティアルトは、簡素な式を挙げてひっそりと結婚した。

結婚の事は極秘にされ、子供の誕生──百年ぶりの聖女誕生と共に公表されることになった。

聖女が産まれる神託があったから結婚も隠していたと、そう言うことになった。


そしてローザンナへの反感は、聖女誕生により帳消しとなった。

あの悪女の振る舞いは、子供をハンベリル王国やヴィアンノから守るため、わざと追放され雲隠れする振る舞いだったと、そう言うことになった。

戦争の首謀者だったヴィアンノが亡くなり、ティアルトが全力を尽くしたこともあり、ハンベリルとの戦争も避けることができた。



──そして子供が誕生し、四年が過ぎた。

子供はフィリーゼと名付けられ、すくすくと大きく育った。誰に似たのか利発で、頭が随分と良い。

それに聖女の力は本当なのだろう、彼女には未来を言い当てる力があった。


そしてますます、あの日現れた子供に似ていく。




「ねぇお母様、そろそろ弟が来ると思うんだけど」

「えっ……!」


また彼女の突拍子も無い話が始まったが、恐らくこの当たり前と言った口振りだと、その通りの未来になるのだろう。

確かに懐妊かな?と思う兆候はあったのだ。



「でもお父様が嫉妬するから注意して欲しいのよね。ほら自分の子供でも男じゃない?そう言えば知ってる?お父様はね……」


「フィリーゼ」


後ろから現れたティアルトは、ひょいとフィリーゼを抱き上げる。



「世継ぎが産まれると、更に王家は安泰だ。喜ばない理由はないだろう」


ティアルトはニコニコと笑顔なのだが……眉間には物凄い皺が寄っている。

それを見てフィリーゼはぷっと吹き出した。



「さぁお茶の準備はできた。フィリーゼは抱っこで運んであげよう」



そしてローザンナの後ろに、フィリーゼを抱いたティアルトが続く。

数歩歩くとティアルトは、フィリーゼに軽くゲンコツをくらわせる。


「いだっ!」

「おい、何を言おうとしたんだ?」

「お父様の願いよ」


確かにあの時、ティアルトは『ローザンナを守れますように』と願った。

でも厳密に言うと、もう一つある。


ティアルトの願いは

『ローザンナを守れますように』

そしてもう一つ。

『死ぬまでも、死んでからもずっとローザンナと一緒に居れますように』

そう願っていた。



「あーあ、お母様は可哀想だわね。仮に寿命を全うしても、またこんなお父様と人生を歩まなければいけないなんて」


ぶーっと口を尖らせるフィリーゼに、ティアルトは得意気に微笑んだ。


「その分、俺が幸せにすればいいんだろう?」


(いや、その笑顔が怖いんだって!)

何十回と繰り返した人生は……ヤンデレ熟成期間となってしまったようだった。


あーあ、失敗したかなぁ。

なんてそんな事をフィリーゼは思ってしまった。



そして前を行くローザンナが、微笑みながら振り向いた。


「何を話していたの?」


フィリーゼは無邪気に微笑んだ。

「お母様には内緒よ」





──そして後日、医師の診察により妊娠が確認された。

その後順調な妊娠期間を経て、待ち望んだ王子が誕生した。



「私ね、すっかり出産時の痛みを忘れていたわ……」


前回は何がなんでもこの子に会う!という気持ちが先行していた。だから必死すぎて……産まれた後もほっとする気持ちが強くて、何故かすっかりと陣痛の痛みを忘れていた。


「もう、子供はいいわ……」


あと一人誕生することを知っているティアルトとフィリーゼは、顔を見合せて苦笑いしていた。

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